この本が強く印象的なのは、
50代にして起業、そして70代で学問を志したおばちゃんの奮闘、ではない。
裕福な家に生まれ、大企業の重役(になるひと)に嫁いだ病弱な女性の、
自分の娘に英才教育を施す母の凄み、そして平穏で慈愛に満ちた家庭の様子である。
このたぐいの人々は自分で、自分のことを語ることはまず、なかったし、
大学の同級生にそういう家の人がいても、仕事上で知り合ったひとがそういう家の人間であっても、
大きなお屋敷、塀の向こう側のことはよくわからない。
たまたま有名人になり、
こうして本になって、語られることが貴重である。
外国人タレント専門の芸能プロダクションとして成功した背景には
(日本の芸能界とは無縁であり、全く相容れない存在である)著者の家庭環境が
大きく関係しているとおもう。
とりわけ、寡黙でまじめで、お堅いご亭主の存在。
そこに、日本人の美徳と高潔さ、そして不思議さとある種の哀しみをおぼえる。
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