ウアクチ、1989年発表の日本デビュー3作目。
1979年の結成以来、自作の創作楽器のみによる演奏をテーマに、
ゴムや瓢箪、鍋の蓋からガラスや竹、塩化ビニールチューブまでの、
ありとあらゆるものを楽器にして、それを演奏してきたウアクチ。
その創作楽器はユニークかつ不思議な魅力に溢れたものばかりだが、
どれもが丁寧かつ繊細に作られており、ちゃんと楽器になっている。
更にそれらを既成の楽器かそれ以上の演奏技術をもって演奏する。
彼らが単なるおもしろ楽器演奏家に留まらない理由はそこにある。
どの楽器も芸術と呼ぶにふさわしい洗練されたもので、それを彼ら
なりに解釈し、演奏法を構築し、卓越した演奏技術によって「昇華」
つまり奏でられるのだ。
楽器創作と楽器解釈・演奏が一体になった事から、楽器創作者の意思
と楽曲製作者の意思、楽器演奏者の意思が全く一致することになる。
今までどの演奏家にも成し得なかった境地がここにある。
その音だが、なんとも例えようの無いもので、聴いていただくのが
一番と思われる。敢えていうなら、"ホットなECM"とでもいおう。
極めて実験的で解釈の難しい音のようでいて、簡単に琴線に触れる
熱き音でもある。いわゆるブラジリアンミュージックを期待すると
ちょっと違う音だと思うが、誰しも一度は聴いてみる価値のある音。
そういって過言ではないのではないだろうか。