著者は、和語と漢語の、すなわち日本語散文の見事な使い手である。
「蟹」や「桃」を読めば、味という人間の最も感覚的なものの一つを、著者がどのように捉え、描写するかがよくわかる。その文章の妙を味わうだけでも本書を読む価値は充分にある。
更に、ユダヤ人問題、より広く人種差別の問題、歴史認識の問題について等々、物議をかもしそうな問題が次から次へと話題にされている。戦争の問題のように、徹底的に具体的な数値にこだわる必要性を論じる場面もあれば、軍人の地位によって、それぞれの戦争観が形づくられることを考察の中心に据えることもある。
人の意表を突く意見になるのは、著者が物事を視る眼が有形無形のタブーに曇らされていないからだろう。過激な表現がされているものばかりではないが、当たり前のことが当たり前のこととして述べられている。読者は、そのような文章に接することが如何に少ないかということに思いあたるのではないか。
著者は、『陽気な黙示録』という書名について触れ、当時は、「その腐れ果てたやばさは未だ幾らか愉快でさえあった」からだと述べる。だが、それ以後の世界が、「いやこれはもう大真面目に恐ろしい世の中だ」と感じざるを得なくなった。それらの経緯を述べた巻頭の文章が、『私たちは笑いながら死んで行く』と題されているところに、現在に対する著者の想いが端的に表れている。
当たり前のことを当たり前のこととして考える姿勢が、己の中で喪われていたことを痛切に感じる。本来、本を読むということが、如何なることであったかを思う。

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陽気な黙示録: 大蟻食の生活と意見これまでの意見編 (ちくま文庫 さ 33-2) 文庫 – 2010/1/6
佐藤 亜紀
(著)
- 本の長さ510ページ
- 言語日本語
- 出版社筑摩書房
- 発売日2010/1/6
- ISBN-104480426701
- ISBN-13978-4480426703
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登録情報
- 出版社 : 筑摩書房 (2010/1/6)
- 発売日 : 2010/1/6
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 510ページ
- ISBN-10 : 4480426701
- ISBN-13 : 978-4480426703
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,076,525位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 3,598位ちくま文庫
- カスタマーレビュー:
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2010年9月20日に日本でレビュー済み
2012年1月25日に日本でレビュー済み
p70からの8行を御覧ください。
この物言いにそうだそうだ!と同意できる方はご自由に。
ですが、造船・戦車・潜水艦etcな重工業系の知識があれば怒りを禁じ得ない。
8行目以降の為にカマしたのならまだしも(いや、ハッタリの為に実務者を馬鹿にしたのは許しがたくないですか?)・・・。
受ける印象は、下品&バカの一言。
8時間走ったら、8時間整備するのが戦車?
湾岸戦争の記録をあたってごらん、と。
甲板と船縁の間が水圧で80センチは開く?
造船所に謝れ!、と。
とにかく目眩がしました。なんだこのヒト・・・・。
と、言うとそれは主題と関係ないと思われるかもしれませんが、バカ・ナショナリストではないミリオタ(よりタチが悪い)を怒らせるのはやめろ。事実のみを語れ、そして根拠とせよ。そんなお話です。
この物言いにそうだそうだ!と同意できる方はご自由に。
ですが、造船・戦車・潜水艦etcな重工業系の知識があれば怒りを禁じ得ない。
8行目以降の為にカマしたのならまだしも(いや、ハッタリの為に実務者を馬鹿にしたのは許しがたくないですか?)・・・。
受ける印象は、下品&バカの一言。
8時間走ったら、8時間整備するのが戦車?
湾岸戦争の記録をあたってごらん、と。
甲板と船縁の間が水圧で80センチは開く?
造船所に謝れ!、と。
とにかく目眩がしました。なんだこのヒト・・・・。
と、言うとそれは主題と関係ないと思われるかもしれませんが、バカ・ナショナリストではないミリオタ(よりタチが悪い)を怒らせるのはやめろ。事実のみを語れ、そして根拠とせよ。そんなお話です。