こんにちは、古舘 健です。
偉大なロレンツォと呼ばれ、大きな影響力を持っていたメディチ家の当主、ロレンツォ・デ・メディチに向けてマキアヴェリが書いた君主体制を分析した本です。
本書の中で、古代ギリシア、ローマのアレクサンドロスやハンニバルを分析していました。興味深かったのは、ハンニバルの冷徹さが組織の裏切りや内輪もめを防いだ、という著者の見解です。
「君主は、たとえ愛されなくてもいいが、人から恨みを受けることがなく、しかも恐れられる存在でなければならない。(中略)あまたの兵士の指揮にあたるとき、そのばあいには、冷酷、などという悪名など、頭から無視してよい。(中略)彼は、無数の人種がまざりあった大軍を率いて、異郷の地で戦いを起したが、旗色のよいときも悪いときも、一度として軍団のなかで、兵士同士の内輪もめや、指揮官への謀反が起きなかった。
このことは、ひとえにハンニバルの非人道的な冷徹さのおかげだった。(P100)」
衝撃的な視点がたくさんありました。例えば、<愛されなくても恐れられたほうがよい>や<復讐のおそれがないように徹底的に侮辱するか消す>などです。
「民衆というものは頭を撫でるか、消してしまうか、そのどちらかにしなければならない。というのは、人はささいな侮辱には復讐しようとするが、大いなる侮辱にたいしては報復しえないのである。したがって、人に危害を加えるときは、復讐のおそれがないように、やらなければならない。(P18)」
肝心のロレンツォ・デ・メディチは、本書を目に留めなかったようです。ロレンツォは広く学問や芸術を保護し、フィレンツェのルネサンスは最盛期を迎えます。ロレンツォが亡くなってからメディチ家は衰退に向かいます。もし偉大なるロレンツォが本書を目に止めていたとしたら、メディチ家の歴史は変わっていたかもしれませんね。
本書は時代を超えた普遍的な価値をもっています。
道徳的な観点から本書の記載には賛否両論がありますが、3万6 千で10から20万の兵をもつペルシア王ダレイオスを二度破ったアレクサンドロス大王や、数で圧倒するローマ連合に連戦連勝だったハンニバルなど歴史的な君主を分析して導き出された視点は、一読の価値があります。ぜひチェックしてみてください。
以下は、本書の抜粋です。ためになった箇所を一部、抜粋しご紹介します。
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P57
「残酷さがりっぱに使われた(中略)それは自分の立場を守る必要上、いっきょに残酷さを用いても、そののちそれに固執せず、できるかぎり臣下の利益に方法に転換したばあいをいう。一方、へたに使われたとは、最初に残酷さを小出しにして、時がたつにつれて、やめるどころかますます激しく行使するばあいをさす。」
P60
「民衆を敵にまわすばあい、君主に起こりうる最悪の事態は、民衆から見放されることである。だが、たとえ貴族を敵にまわして、貴族から見放されても、反抗されたにしても、恐れるにおよばない。というのは、貴族は、機を見るに敏であり、したたかだから、つねに自分自身の安泰のために先走って、勝ち目のあるほうに取り入ろうとする。」
P81-82
「勝ちたくないと思う人は、せいぜい外国の支援軍を利用するといい。外国支援軍は、傭兵軍よりはるかに危険度が高いのである。(中略)
要するに、傭兵軍のいちばん危険なことは、彼らが怖気づくことであり、外国支援軍においては、彼らが勇猛に走るときである。
したがって、賢明な君主は、つねにこうした武力を避けて、自国の軍隊に基礎をおく。そして、他国の兵力をかりて手にした勝利など、本物ではないと考えて、第三者の力で勝つぐらいなら、負けることをねがった。」
P130
「君主たるものはあらゆる行動において、大人物で、ずば抜けた人間だという評判をつかむように努力しなくてはいけない。
また君主は、どこまでも味方であるとは、とことん敵であるとか、いいかえれば、この人物は支持し、あの人物は敵視するということを、なんのためらいもなく打ち出すこと、それでこそ尊敬されるのである。いずれにしても、どっちつかずの態度より、この方策のほうがつねに有効であろう。」
P137
「君主は、国内から幾人かの賢人を選びだして、彼らにだけあなたに自由に真実を話すことを許す。(中略)君主は、諸般の事項について彼らに訊ね、その意見を聴き、そののち、自分が独りで思いどおりに決断をくださなくてはいけない。しかも、こうした助言が、また個の助言者が、率直に話せば話すほど歓迎されることを、めいめいに十分汲みとってもらえるように、対応しなくてはいけない。また彼らのほかは、だれのことばにも耳をかさず、君主自身の決断をかならず守り、その決断を貫くことである。」
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◆目次◆
献辞
一 君主国にはどんな種類があり、その国々はどのような手段で征服されたか
二 世襲の君主国
三 混成型の君主国
四 アレクサンドロス大王が征服したダレイオス王国は、大王の死後も、後継者への謀反が起きなかった。その理由はどこにあるのか
五 都市、あるいは国を治めるにあたって、征服以前に、民衆が自治のもとで暮らしてきたばあい、どうすればよいか
六 自分の武力や力量によって、手に入れた新君主国について
七 他人の武力や運によって、手に入れた新君主国について
ハ 悪辣な行為によって、君主の地位をつかんだ人々
九 市民型の君主国
一〇~二六 長いので省略します。
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さいごまで読んでくださり、ありがとうございます!
ぜひチェックしてみてください。

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君主論 改版: 新訳 (中公文庫 マ 2-3 BIBLIO S) 文庫 – 2002/4/25
- ISBN-104122040124
- ISBN-13978-4122040120
- 出版社中央公論新社
- 発売日2002/4/25
- 言語日本語
- 本の長さ244ページ
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登録情報
- 出版社 : 中央公論新社 (2002/4/25)
- 発売日 : 2002/4/25
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 244ページ
- ISBN-10 : 4122040124
- ISBN-13 : 978-4122040120
- Amazon 売れ筋ランキング: - 422,141位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 80位中公文庫BIBLIO
- - 556位政治学 (本)
- - 2,364位政治入門
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年10月17日に日本でレビュー済み
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2019年1月28日に日本でレビュー済み
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合理的。賛否量論の君主論だがビジネスを円滑に進めるヒントもたくさん詰まっている。
誰が読み、どう使うかが重要でしょう。
誰が読み、どう使うかが重要でしょう。
2017年5月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
国や王様を俯瞰で捉えた本です。
王様に宛てた文書なので「どういう行動をすると、王様として危ないか?安泰か?」ということが、歴史上の王様の生きざまを例にして書かれています。
ざっくり言うと「侵略・支配を失敗しない方法」や「あなたが侵略して領土を広げるには?」みたいな内容かもしれません。
そういった意味での「君主論」です。そのまま現代に置き換えると、どこの国がダメな国かハッキリとわかります。
アメリカは?ロシアは?中国は?そして日本は・・・・・・・?
あ、そういえばどの国がどの領土を欲しがるか?も分かるようになります。
割と浅はかですよ、人間ってwww
王様に宛てた文書なので「どういう行動をすると、王様として危ないか?安泰か?」ということが、歴史上の王様の生きざまを例にして書かれています。
ざっくり言うと「侵略・支配を失敗しない方法」や「あなたが侵略して領土を広げるには?」みたいな内容かもしれません。
そういった意味での「君主論」です。そのまま現代に置き換えると、どこの国がダメな国かハッキリとわかります。
アメリカは?ロシアは?中国は?そして日本は・・・・・・・?
あ、そういえばどの国がどの領土を欲しがるか?も分かるようになります。
割と浅はかですよ、人間ってwww
2016年1月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
当時は斬新だったのだと思います。名著扱いですし、、、現代にそのまま応用できるものではなく、社会背景、時代が違うなと。
2017年4月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
マキャヴェリズムという言葉はあまりいい意味では使われないが、マキャヴェリの
『君主論』は、要するに君主が権力を維持するためには、何をしなければならない
のか、何をしてはならないのかについて、古今東西の史実を例証としてあげながら
縦横に論じたものにほかならない。マキャヴェリの鋭い人間観察と透徹した史観の
光る古典であり、現代にも通用する政治理論です。多数の邦訳が出版されているが、
下手な翻訳が多い。数ページ読んだだけで投げ出したくなる代物が多いのだが、本
書はわかりやすい、自然な日本語になっているので、気持ちよく読める。
『君主論』は、要するに君主が権力を維持するためには、何をしなければならない
のか、何をしてはならないのかについて、古今東西の史実を例証としてあげながら
縦横に論じたものにほかならない。マキャヴェリの鋭い人間観察と透徹した史観の
光る古典であり、現代にも通用する政治理論です。多数の邦訳が出版されているが、
下手な翻訳が多い。数ページ読んだだけで投げ出したくなる代物が多いのだが、本
書はわかりやすい、自然な日本語になっているので、気持ちよく読める。
2011年5月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
君主論の内容を抜粋している塩野七生の「マキアヴェッリ語録」に感銘を受け、全文を読みたくなって購入しました。
しかし、以下の三点でこの本をお勧めしません。
・訳文が日本語の文章として変。
学生の下手な訳文を読まされてる気分になる。 訳語の選択から、重複表現に至るまで問題多し。
・文章が読みにくい
平仮名が15文字とか平気で続いて読みにくい。 「ばあい」「すべて」「りっぱ」など、
誰でも読めるものが漢字表記されてないことで、読みづらくしてる。
また、読点(、)がやたら多く割りに、区切ってほしいところで区切ってない。
そのため読み手は、文字の区切りや、文節の区切りを注意して読まないと理解不可能。また、どの文節がどこに係るかも頭を悩ませる。
(ちょっと文章が長くなると主語・述語の確認を必要とする)
・校正が不十分。
「いろいろな困難」とするところを、「いろいろの困難」など。
以上3つの事柄で、マキアヴェリの文書の特徴である、力強さと明快さが失われてる。
内容自体は、一読の価値があるので、他の訳本を読むことをお勧めします。
以下、不満詳細。
ハッキリいっておくと、現代の人に、「これが、マキアヴェリの君主論。」と思われたら、マキアヴェリがかわいそう。
マキアヴェリが再起をかけて、ときの最高権力者ロレンツォ・デ・メディッチに献上した渾身の文章<<君主論>>を、
「そんな訳でいいの?」と思ってしまう。
(訳語をよく考えずにあててるため、文章の格調が下がり、もしメディッチがよみがえり、この訳文を読んだら気分を害す恐れあり。)
(少なくともマキアヴェリは、メディッチからフィレンツェ史の執筆を依頼されるなど、評価を得ました。)
下手な訳文の例をあげれば、「常識はずれの、ひどい運の悪さ」「アレクサンドル六世が息子のヴァレンティーノ公をえらくしようとのぞんだとき」などで、
前者は「馬から落馬した」並みな重複表現に近いものを感じ、後者は「息子のヴァレンティーノ公に権威を与えようと思い」とか
「出世を望んだとき」など、もうちょっといい表現があるように思える。数ページごとにそんな稚拙な訳が出てきて、
「適切な訳が思い浮かばないし、とりあえず直訳しました」という感じがある。
現代のイタリアの文豪モラヴィアをして「運動選手の筋肉の動きは皮膚の下にかくれていても感ぜられるのに似て、
マキアヴェリの文章にこもる力は一読するだけで感ずる」とまでいわせた迫力を、訳者の文章からは全く感じません。
また、訳者自身が注で述べてるように、マキアヴェリは明徹な論旨の運びをする人です。
塩野七生の訳からは、迫りくる力強さと、スッと頭に入る簡潔さを感じましたが、
この本の訳者の文章に、力強よさも明瞭さもありません。文章が理解できなくて読み直しを必要とします。
同じ内容を口下手な人と、口のうまい人が語った差を感じる次第です。原文は同じはずなのに、これほどまでに、差がでるとは…。
昭和2年生まれの訳者が、訳本を世に出してから長年たって、気になるところを改めて手直しして出版したということで、
新訳といってるだけで、実際は新訳とはいえない。最近の文章に慣れてる人には、読みづらくて仕方ない。
(新訳とは、すでに翻訳がある外国語文学を、<<新たに>>翻訳することで、本人が訳したものを手直しすることではないと思うのですが…。)
訳者は、京都大学大学院修了し、大阪外国語大学で教授を務めた方ですが、学術論文は書けても、文才は無かったのだろうと
残念に思う限りです。また歴史学者でも、政治学者でもないために、内容自体に対する理解がないことが感じられます。
しかし、以下の三点でこの本をお勧めしません。
・訳文が日本語の文章として変。
学生の下手な訳文を読まされてる気分になる。 訳語の選択から、重複表現に至るまで問題多し。
・文章が読みにくい
平仮名が15文字とか平気で続いて読みにくい。 「ばあい」「すべて」「りっぱ」など、
誰でも読めるものが漢字表記されてないことで、読みづらくしてる。
また、読点(、)がやたら多く割りに、区切ってほしいところで区切ってない。
そのため読み手は、文字の区切りや、文節の区切りを注意して読まないと理解不可能。また、どの文節がどこに係るかも頭を悩ませる。
(ちょっと文章が長くなると主語・述語の確認を必要とする)
・校正が不十分。
「いろいろな困難」とするところを、「いろいろの困難」など。
以上3つの事柄で、マキアヴェリの文書の特徴である、力強さと明快さが失われてる。
内容自体は、一読の価値があるので、他の訳本を読むことをお勧めします。
以下、不満詳細。
ハッキリいっておくと、現代の人に、「これが、マキアヴェリの君主論。」と思われたら、マキアヴェリがかわいそう。
マキアヴェリが再起をかけて、ときの最高権力者ロレンツォ・デ・メディッチに献上した渾身の文章<<君主論>>を、
「そんな訳でいいの?」と思ってしまう。
(訳語をよく考えずにあててるため、文章の格調が下がり、もしメディッチがよみがえり、この訳文を読んだら気分を害す恐れあり。)
(少なくともマキアヴェリは、メディッチからフィレンツェ史の執筆を依頼されるなど、評価を得ました。)
下手な訳文の例をあげれば、「常識はずれの、ひどい運の悪さ」「アレクサンドル六世が息子のヴァレンティーノ公をえらくしようとのぞんだとき」などで、
前者は「馬から落馬した」並みな重複表現に近いものを感じ、後者は「息子のヴァレンティーノ公に権威を与えようと思い」とか
「出世を望んだとき」など、もうちょっといい表現があるように思える。数ページごとにそんな稚拙な訳が出てきて、
「適切な訳が思い浮かばないし、とりあえず直訳しました」という感じがある。
現代のイタリアの文豪モラヴィアをして「運動選手の筋肉の動きは皮膚の下にかくれていても感ぜられるのに似て、
マキアヴェリの文章にこもる力は一読するだけで感ずる」とまでいわせた迫力を、訳者の文章からは全く感じません。
また、訳者自身が注で述べてるように、マキアヴェリは明徹な論旨の運びをする人です。
塩野七生の訳からは、迫りくる力強さと、スッと頭に入る簡潔さを感じましたが、
この本の訳者の文章に、力強よさも明瞭さもありません。文章が理解できなくて読み直しを必要とします。
同じ内容を口下手な人と、口のうまい人が語った差を感じる次第です。原文は同じはずなのに、これほどまでに、差がでるとは…。
昭和2年生まれの訳者が、訳本を世に出してから長年たって、気になるところを改めて手直しして出版したということで、
新訳といってるだけで、実際は新訳とはいえない。最近の文章に慣れてる人には、読みづらくて仕方ない。
(新訳とは、すでに翻訳がある外国語文学を、<<新たに>>翻訳することで、本人が訳したものを手直しすることではないと思うのですが…。)
訳者は、京都大学大学院修了し、大阪外国語大学で教授を務めた方ですが、学術論文は書けても、文才は無かったのだろうと
残念に思う限りです。また歴史学者でも、政治学者でもないために、内容自体に対する理解がないことが感じられます。
2018年1月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
失脚したり謀反されたりしない君主には何が必要かという事が分かりやすく書かれている
一般教養としても読むべき一冊
一般教養としても読むべき一冊
2016年7月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
予備知識が不足していたせいか、読みづらく、途中で挫折して読むのをやめた。
本書を読む前に読んでおくべき本あれば、教えて下さい。
本書を読む前に読んでおくべき本あれば、教えて下さい。