新選組を扱う小説には、隊士の誰か一人を主役とするか【注1】、神の視点で、あるいは周囲の人物を視点とした多視点の群像劇にするか【注2】、はたまた、主にマイナーな隊士を視点人物とした短編連作の傑作もある。
いずれにしても、新選組の人々は、幕末だからこそ身分を越えて歴史の中心地に乗り込むことができて、かつ時代に翻弄されまくった普通の人たち。
だからこその魅力が尽きないわけだが、誰彼構わず利用しやすいだけに駄作も多い。
そんな中で本作は、司馬遼太郎の『新選組血風録』をあるいは越えたかなと思わせる傑作である。
司馬遼太郎は、連作短編という態で主にマイナーな隊士を視点人物として、新選組に重厚感を与えたのだが、本作品は新選組通史はありながら、章ごとに視点人物を変えて連作短編の良さをキープしている。そのうえで、土方や近藤といった中心人物の視点も積極的に取り入れて、一本の歴史小説としての流れも保っている。
視点を務めた章数を多い順にカウントしてみると、
土方歳三…7回
近藤勇…5回
山南敬助、井上源三郎…4回
沖田総司、永倉新八、斎藤一、藤堂平助……3回
原田左之助、佐藤彦五郎…2回
清川八郎、鵜殿鳩翁、山岡鉄太郎、芹沢鴨、武田観柳斎、伊東甲子太郎…1回
山南や井上が沖田/永倉/斎藤の腕の立つ副長助勤トリオよりも視点回数が多いところや、鵜殿鳩翁や山岡鉄舟まで視点人物に名を連ねているあたりが、『新選組血風録』を思わせる厚みを与えている一方、上記のとおり、土方や近藤の視点を忘れないといった感じ。
残念なところを無理に挙げるとすれば、冒頭を土方から始めたのだから、東北から北海道に渡る章をもう少し増やしてほしかった。
新選組を主役にした物語は、剣豪小説や時代小説から入ってきた読者を歴史小説、つまり日本史に興味を持つきっかけになれる。ぜひとも多くの人に読んでもらいたい傑作だ。【注3】
【注1】例えば、広瀬仁紀の『沖田総司恋唄』。
【注2】同じく広瀬仁紀の『新選組風雲録』とか。これは失敗作……
【注3】題名が今ひとつ。「幕末」でない「新選組」などないのに。そーだな、『青嵐!新選組』とか。うーん、アタマ悪い感がすごい。
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新選組 幕末の青嵐 (集英社文庫) 文庫 – 2009/12/16
木内 昇
(著)
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気鋭の時代小説家が描く、新選組の青春群像
幕末、佐幕派の最強剣客集団として名を馳せた新選組。その結成から、鳥羽伏見の戦いまでの人間群像を、土方歳三、佐藤彦五郎、沖田総司ら複数の視点から描く青春時代小説。(解説/松田哲夫)
幕末、佐幕派の最強剣客集団として名を馳せた新選組。その結成から、鳥羽伏見の戦いまでの人間群像を、土方歳三、佐藤彦五郎、沖田総司ら複数の視点から描く青春時代小説。(解説/松田哲夫)
- 本の長さ576ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2009/12/16
- 寸法10.5 x 2.3 x 15.2 cm
- ISBN-104087465179
- ISBN-13978-4087465174
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2009/12/16)
- 発売日 : 2009/12/16
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 576ページ
- ISBN-10 : 4087465179
- ISBN-13 : 978-4087465174
- 寸法 : 10.5 x 2.3 x 15.2 cm
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2021年8月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新選組てどういう組織だったんだろう。学生のときにちらっとやったような、、説明してて言われても説明できない!と思い、なぜか新選組が気になって、この本を購入しました。
ひとりひとりの隊員の目線で描かれつつ、物語が始まっていきます。
それぞれの人物像を理解しながら読み進めることができます。
まだ半分読んだくらいですが、楽しく読めており、わたしのように新選組が気になっている人におすすめしたい一冊です。
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まだ半分読んだくらいですが、楽しく読めており、わたしのように新選組が気になっている人におすすめしたい一冊です。
2020年8月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2時間で読み終えました。
2021年8月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
洒落ではなく、視点が非常に新鮮味がありました。とりわけ組織の中で生きた彼らということを、現代人の視点で分かりやすくおもしろみがありました。
2020年10月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
新選組小説としては『燃えよ剣』『幕末新選組』についで三作目の読了。両作ともに読みごたえと読了感ある快作だったが、この『幕末の青嵐』も負けず劣らず面白かった。新選組を知らない人が初めて読んでも問題ない描写量があるし、すでにいくつか書籍に触れた人でも、新鮮な驚きをもって迎えられるに違いない。
今作最大の特徴は、新選組を代表する事件にそって、視点が次々と移り変わっていくことだろう。これこそが最大の魅力でもある。
たとえば油小路の変では、永倉新八の視点で、いかにして藤堂が果てたかをしっかり描き切っている。
山南さんの切腹では、介錯を担当した沖田が、その苦悩を語る。
鳥羽伏見の戦いでの主役は、いわずもがな土方歳三である。
このほか、近藤に原田、井上に藤堂、さらには武田、伊東、芹沢、清河にまでも、それぞれの視点での物語が用意されている。これにより、一つの事件に固執したり出来事が偏ったりせず、リアルタイムの躍動を体感できる。ゆえに、飽きることがないのだ。
新選組隊士たちの掲げた、それぞれの志についても、大きな尊重をもって描かれている。
彼らは話すことや口調、進んだ先こそ違えど、心の底にあった情熱や友愛の心は共通して、一貫していた。優しさゆえに藤堂を見捨てられなかった永倉の苦悩は切実であったし、追いたてられてもなお武士としての意思を曲げずに切腹を遂げた山南の覚悟には大いに心を揺さぶられた。
新選組小説の、仁侠モノとしてのアツさも、しっかりと残しているのである。
ページ数560ページというボリュームであるが、次々と押し寄せる事件に興奮して、時間も忘れて読み切ってしまった。
武士としての覚悟を持った生きざまには、現代に生きる我々にも通じるものがあるに違いないので、一度手に取ってみてほしい。
今作最大の特徴は、新選組を代表する事件にそって、視点が次々と移り変わっていくことだろう。これこそが最大の魅力でもある。
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鳥羽伏見の戦いでの主役は、いわずもがな土方歳三である。
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彼らは話すことや口調、進んだ先こそ違えど、心の底にあった情熱や友愛の心は共通して、一貫していた。優しさゆえに藤堂を見捨てられなかった永倉の苦悩は切実であったし、追いたてられてもなお武士としての意思を曲げずに切腹を遂げた山南の覚悟には大いに心を揺さぶられた。
新選組小説の、仁侠モノとしてのアツさも、しっかりと残しているのである。
ページ数560ページというボリュームであるが、次々と押し寄せる事件に興奮して、時間も忘れて読み切ってしまった。
武士としての覚悟を持った生きざまには、現代に生きる我々にも通じるものがあるに違いないので、一度手に取ってみてほしい。
2020年12月25日に日本でレビュー済み
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今まで読んだ新選組小説では、名前だけの印象だった人物が、人間としてパッと目の前に現れたような衝撃。隊士以外の、新選組を取り巻く人物の感情が、本人目線て生き生きと描かれ、その構成のせいで、すべての出来事を立体的に捉えることが出来る。この作者の感性は凄いなあ。女性ならではの視点なのだろうか。土方の性格描写は納得出来るし、永倉新八もいい感じ。特に市村鉄之助と佐藤彦五郎のくだりには泣けた。ヤラレターって感じ。
欲を言えば近藤勇、アレで良いのかな?
欲を言えば近藤勇、アレで良いのかな?
2016年8月4日に日本でレビュー済み
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一年前の夏に浅田次郎の新撰組3部作
「壬生義士伝」「輪違屋糸里」「一籐斎夢禄」を読んで
お盆休みには壬生寺・八木邸に参拝
角屋をみに島原界隈を歩き
たった100年ちょっと前の時代を駆け抜けた
あの頃の人たちのことをおもい散策した。
木内昇さんは「よこまち余話」を読んで
懐かしいタッチの物語に引き込まれた
のが作者に興味をもったきっかけになる、
名前からは男性だと想像してたら、なんと女性作家
だとは・・・
「幕末の青嵐」も先の3部作を読んでたおかげで
すんなりと読めた、新撰組の隊士ごとに時系列で
短編集のながれで読みやすかったです。
最後の会津~函館の話は少々泣かせますよねぇ
今年のお盆休みも、京都壬生寺にお参りして
新撰組隊士を供養したいと思いました。
天国で、笑顔で笑ってる隊士たちに会いに
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