本書は総合地球環境学研究所副所長を務める著者が
クジラと人間の関係について
文化、経済、政治、環境などの観点から概観したうえで
あるべきクジラと人間の共存の姿を示すものです。
国際的な研究・報告から、
万葉集、市史のレベルまで―
クジラに関する資料・文献を幅広く精査するなど。
著者のクジラ文化に対する深い愛情が伝わります。
筆者のスタンスは、捕鯨賛成に属するものですが、
単に、捕鯨反対論に潜む誤謬を指摘し、
文化の多様性の観点から捕鯨を禁じるべきでない!!と主張するのではなく
「捕鯨問題以外に日本が世界の中で大きく評価されるか、
逆にたたかれる例がそれほどない状況を知る必要があるのかもしれない。」
「敢然と立ち向かう決意を持って捕鯨再開を目指すスタンスは保持すべきである。」
(←「スタンス「を」保持すべき」と書かない点に注目☆)
と単純な捕鯨賛成論には組しない姿勢も見せており、
そのバランス感覚に強い好感を抱きました。
クジラ文化から捕鯨論争にいたるまで、
人間とクジラに関する問題を幅広くコンパクトにまとめた本書。
捕鯨に対してどのようなスタンスを取るかにかかわらず
多くの方に読んでいただき
自分なりに考えるきっかけにしていただれば―と思います☆

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クジラは誰のものか (ちくま新書 760) 新書 – 2009/1/1
秋道 智彌
(著)
- ISBN-104480064664
- ISBN-13978-4480064660
- 出版社筑摩書房
- 発売日2009/1/1
- 言語日本語
- 本の長さ231ページ
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2009年2月7日に日本でレビュー済み
2010年10月29日に日本でレビュー済み
著者は海洋民族、水産資源の民俗学といったあたりから、鯨の問題に関心を持ち始めたのだという。すでに関連書も何冊も著しているようだ。
これまで何冊か、この人の本は読んだことがあるのだが、良いと思ったことがなかった。しかし、本書を読んでちょっと印象が変わった。
本書は、鯨の文化誌を概観し、そこに著者の意見をいくらか混ぜ込んだような内容である。鯨肉の食べ方、脂の利用、歯を使った彫刻作品、骨でつくった橋など、多種多様の「利用法」が示され、しかも、それが日本のみならず、アメリカ、南洋諸島、ヨーロッパと多くの地域を包含している点が面白い。
「意見」は、公平な立場から客観的に述べられており、信頼感がある。さらに、単に善と悪、日本対アメリカというような構図で理解しようとするのではなく、もっと違った処理の仕方を模索しているのが興味深い。
ただ、全体的には中途半端な印象が強く、もう少し突っ込んだ意見を示してくれればなと思った。
これまで何冊か、この人の本は読んだことがあるのだが、良いと思ったことがなかった。しかし、本書を読んでちょっと印象が変わった。
本書は、鯨の文化誌を概観し、そこに著者の意見をいくらか混ぜ込んだような内容である。鯨肉の食べ方、脂の利用、歯を使った彫刻作品、骨でつくった橋など、多種多様の「利用法」が示され、しかも、それが日本のみならず、アメリカ、南洋諸島、ヨーロッパと多くの地域を包含している点が面白い。
「意見」は、公平な立場から客観的に述べられており、信頼感がある。さらに、単に善と悪、日本対アメリカというような構図で理解しようとするのではなく、もっと違った処理の仕方を模索しているのが興味深い。
ただ、全体的には中途半端な印象が強く、もう少し突っ込んだ意見を示してくれればなと思った。
2009年1月9日に日本でレビュー済み
かねてより、国際捕鯨委員会における反捕鯨国の理不尽とも言える言動には憤りを覚えていたので、これを本屋の書棚で目にした時に思わず手を出した。しかし、私の意気込みとは違って著者は極めて冷静に事態を捉えており、自分の感情的な部分が矯正されたようで、読んでよかったと思っている。
この本を読むまでは、牛や豚を殺しておきながら、一方で鯨は殺してはいけない、ということに論理的な矛盾を感じている人々が反捕鯨国の中にもいるのではないかと思っていたが、あにはからんや、増えすぎるカンガルーを植生保護という名目で殺しておきながら、同じように増え続けて漁業に悪影響を与えている一部のクジラの捕獲には反対して「カンガルーとクジラの問題は違う」との発言や、野生動物と家畜の管理が人間と神に峻別される、という考えなどが紹介されると、これはもう日本人の理解を超えて両者は歩み寄る余地がないのではないかと思ってしまう。
そういう非論理的な発言に対する、どうしょうもなさ、は多くの会議に出席し現場を歩き回って調査した著者が一番感じていると思うのだが、それあらんか、その葛藤を表すかのように、著者は少々視点の違う以下で述べる二つのことを言ってこの本を終えている。それは、「捕鯨に反対する勢力と世論に対して敢然と立ち向かい、捕鯨再開を目指すスタンスは保持すべきである」、と言っておきながら、その後の記述で、「クジラの個体数をめぐる論争や、生存か商業かについての踏み絵的な議論をする前に、いかにして海の汚染を軽減し、生き物の生存について人間が責任をもつべきかを最優先すべきでないのか」、と述べているのである。
その、どうしょうもなさ、を解決するためには、国際捕鯨委員会を脱退し日本独自の道を歩むしかない、いつまでもよい子のふりをして国際会議に出て無駄なお金や時間を費やす必要はないのではないか、とこの本を読んで思ったものである。
この本を読むまでは、牛や豚を殺しておきながら、一方で鯨は殺してはいけない、ということに論理的な矛盾を感じている人々が反捕鯨国の中にもいるのではないかと思っていたが、あにはからんや、増えすぎるカンガルーを植生保護という名目で殺しておきながら、同じように増え続けて漁業に悪影響を与えている一部のクジラの捕獲には反対して「カンガルーとクジラの問題は違う」との発言や、野生動物と家畜の管理が人間と神に峻別される、という考えなどが紹介されると、これはもう日本人の理解を超えて両者は歩み寄る余地がないのではないかと思ってしまう。
そういう非論理的な発言に対する、どうしょうもなさ、は多くの会議に出席し現場を歩き回って調査した著者が一番感じていると思うのだが、それあらんか、その葛藤を表すかのように、著者は少々視点の違う以下で述べる二つのことを言ってこの本を終えている。それは、「捕鯨に反対する勢力と世論に対して敢然と立ち向かい、捕鯨再開を目指すスタンスは保持すべきである」、と言っておきながら、その後の記述で、「クジラの個体数をめぐる論争や、生存か商業かについての踏み絵的な議論をする前に、いかにして海の汚染を軽減し、生き物の生存について人間が責任をもつべきかを最優先すべきでないのか」、と述べているのである。
その、どうしょうもなさ、を解決するためには、国際捕鯨委員会を脱退し日本独自の道を歩むしかない、いつまでもよい子のふりをして国際会議に出て無駄なお金や時間を費やす必要はないのではないか、とこの本を読んで思ったものである。
2009年1月25日に日本でレビュー済み
すでに他の方が触れられているが、本書の前半は日本の文化における捕鯨の位置や関わりについて。後半は半分ほどが捕鯨に関する議論の列挙で、立ち入った議論は行っていない。残りは国際的な捕鯨議論史や現在の世界各地の捕鯨状況など、やや雑多な内容。
著者は捕鯨賛成派で、様々な視点を理解すべきだとか、感情的な議論は生産的ではないとたびたび主張してはいるものの、本書の内容は中道とは言えない。基本的には反捕鯨国の主張と政策の矛盾を批判的に取り上げている。それは結構なのだが、調査捕鯨の問題点は軽く触れるだけで詳細に踏み込んでいない。生物多様性の観点に至っては、「アームチェアに腰掛けて生物多様性を唱えるだけでは人々を納得させられない」とまるで他人事のようだ。しかしそれは論点すり替えだろうし、同じ批判が著者にも当てはまるのではないだろうか。文化保護の重要性を唱えるだけでは生物多様性の問題が解決するわけではないのだ。
著者のような立場にある人物が率先して、なかなか日本には入って来づらい生物多様性の議論を紹介するのが「生産的」ではないだろうか?海洋生態系が手の施しようのないところまで傾けば、捕鯨文化を守るどころではなくなるのだから。
本書は反捕鯨派の主張のうち反論/批判しやすいところだけ取り上げて、都合の悪い部分はスルーしている(正確を期すために言えば、全く無視しているわけではないが)。このような議論は捕鯨問題の要点から読者の目をそらさせることにしかならないと思うのだが。従って捕鯨賛成論者の甘い言葉を聞きたいという人にはお勧めできるが、捕鯨問題をきちんと正確に理解したいという人の役には立たない。
著者は捕鯨賛成派で、様々な視点を理解すべきだとか、感情的な議論は生産的ではないとたびたび主張してはいるものの、本書の内容は中道とは言えない。基本的には反捕鯨国の主張と政策の矛盾を批判的に取り上げている。それは結構なのだが、調査捕鯨の問題点は軽く触れるだけで詳細に踏み込んでいない。生物多様性の観点に至っては、「アームチェアに腰掛けて生物多様性を唱えるだけでは人々を納得させられない」とまるで他人事のようだ。しかしそれは論点すり替えだろうし、同じ批判が著者にも当てはまるのではないだろうか。文化保護の重要性を唱えるだけでは生物多様性の問題が解決するわけではないのだ。
著者のような立場にある人物が率先して、なかなか日本には入って来づらい生物多様性の議論を紹介するのが「生産的」ではないだろうか?海洋生態系が手の施しようのないところまで傾けば、捕鯨文化を守るどころではなくなるのだから。
本書は反捕鯨派の主張のうち反論/批判しやすいところだけ取り上げて、都合の悪い部分はスルーしている(正確を期すために言えば、全く無視しているわけではないが)。このような議論は捕鯨問題の要点から読者の目をそらさせることにしかならないと思うのだが。従って捕鯨賛成論者の甘い言葉を聞きたいという人にはお勧めできるが、捕鯨問題をきちんと正確に理解したいという人の役には立たない。