興味深い本です。「マナー神経症」など、日本だけでなく、先進国の現代社会を病んでいると思われる精神性の例がいくつか挙げられています。
例えば、他人のために何かをする(してもいいんだ)という意識の欠如は、私個人が特に問題があると感じていることの一つです。私は教育業に身を置く身なのですが、若者(生徒)や、その他の世代の人々(同僚など)から頻繁に、わずかでも、どんなことでも、「損するもんか」という意識を感じます。もともと話のわかった人はいるのですが、この「損しちゃだめだ」に洗脳されている人が変われるチャンスは、子どもができたときです。そこで、「自分」以外のものに関心、興味、慈しみが持てる人はこの本で森氏が提唱していることがおのずとわかると思うのですが、残念ながらこの時点でも子どもが自分の延長になって「何があっても、我が子(と自分)だけは」になっている人も多く見かけます。そういう人が、森氏のおっしゃる「恥をかかせたりして、馬鹿にしたら、いつでも爆発してやる」(114ページ)という人材になってしまうのはよくわかりました。また、他人に配慮する(やさしくする)が元々のゴールである「マナー」が標榜されるあまり、まじめな人ほど極端なマナー遵守に走り、マナーを守れない人に必要以上に非寛容になっているとも思います。例えば、優先席に坐っている人を無条件でにらんでしまうとか、通勤時間中に電車を利用する子ども連れ、障害者を「非常識」としか見れないことなどです(やむを得ない事情で、たまたまその日はやらなくてはいけないというだけのことかもしれないのに)。これは、他人に無関心なのよりはいいのかもしれませんが、こういった感情の発露は得てして「いきなり、車内でメーク中の女性を殴る」とか、びっくりするような形で出て来るというのも何となくわかります。
森氏の挙げるいろいろな例を自分自身の経験に照らし合わせ、「人生は楽しいことばかりじゃない。それを理解するのがとても大切」(153ページ)というのがよくわかりました。確かに「人生は毎日ハッピーであるべきだ」と考えていると、ちょっとでもしょげることがあった時に、ハッピーにしている人に対し漠然と「ずるい」と感じ、しょげることになったことを分析したり反省したりということが無くなってしまうのかもしれません。より多くの人がこの本を読むなりして、「人生、晴れの日ばかりじゃない、雨の日の人には、晴れの日の人がやさしくしていいんだ、雨の日の人は、次に自分の晴れの日にその恩を返せばいいんだ」、ということに気づいたら「失敗してもこわくない、本当にやさしい社会」になれるのにと思いました。こういった意識の全く無い方が森氏の主張を読んだだけで意見を変えるというのは難しいかもしれませんが、もともと上記のような現代社会の精神性に違和感を感じている方には同じように感じている仲間がいると思わせてくれる本です。
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ほんとはこわい「やさしさ社会」 (ちくまプリマー新書 74) 新書 – 2008/1/1
森 真一
(著)
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- ISBN-104480687750
- ISBN-13978-4480687753
- 出版社筑摩書房
- 発売日2008/1/1
- 言語日本語
- 本の長さ175ページ
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上位レビュー、対象国: 日本
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2017年1月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
面白く読ませていただきました。
最近の日本はなんだか少し変ってきている、という疑問に対する一つの解をわかりやすく説明しています。対等性の話はどこかで聞いたことがあるような気もしますが、武士に例えて恥の文化につないでいるところは納得できます。日本人は、ゆきずりの他人に対して挨拶や謝罪をしない、というのは確かに感じますが、これを対等性に繋いでいるのが面白いと思いました。
これまで対等性の原則は、教育や社会インフラがある程度整った先進国?に発生してきたのでしょうが、最近はインターネットの発達により、中進国でも急速に対等意識が広がってきていると思います。これはよいことなのですが、社会インフラや教育による能力差の是正が不十分な場合には、単なるやさしさの問題だけでなく、大きな社会問題になりつつあるように感じます。
ひとつだけ。情報の正確さを維持するための引用かと思いますが、逆に私にはそこが少し読みづらく残念でした。
最近の日本はなんだか少し変ってきている、という疑問に対する一つの解をわかりやすく説明しています。対等性の話はどこかで聞いたことがあるような気もしますが、武士に例えて恥の文化につないでいるところは納得できます。日本人は、ゆきずりの他人に対して挨拶や謝罪をしない、というのは確かに感じますが、これを対等性に繋いでいるのが面白いと思いました。
これまで対等性の原則は、教育や社会インフラがある程度整った先進国?に発生してきたのでしょうが、最近はインターネットの発達により、中進国でも急速に対等意識が広がってきていると思います。これはよいことなのですが、社会インフラや教育による能力差の是正が不十分な場合には、単なるやさしさの問題だけでなく、大きな社会問題になりつつあるように感じます。
ひとつだけ。情報の正確さを維持するための引用かと思いますが、逆に私にはそこが少し読みづらく残念でした。
2016年12月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
やや内向きな感じが強く、読者に対しての訴え感があまり伝わらなかった感じあります。
2009年5月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は現代社会では、「予防的やさしさ」が優勢であると述べる。どういうことか。著者によると、やさしさは大きく二通りある。「治療的やさしさ」と「予防的やさしさ」である。
前者は、人間は生きている以上傷つくことは避けられない、傷ついたときに治療をするのがやさしさである、という考えを前提とする。後者は、人間はいったん傷つくとなかなか治らない。だから、傷つかないように予防に配慮するのがやさしさである、とする。
さらに著者が言うには、やさしさというのは非公式だが実効性のある社会的ルールになっているそうだ。優先席付近で携帯電話の電源を切る、というのは「公式ルール」だが、実効性はあまりない。確かに「あなたって携帯の電源切らないわよね」って言われるより、「やさしくない」って言われる方がルール違反度高い気がする。
合点合点20へー。別にたいしたことは言っていないんだが、こういう整理で語れることがたくさんある。
「予防的やさしさ」を理想として目指すのはいいんだけど、これをルールとしてしまうのはよくないんだよね。このへんのレベルの混同が日本では多い気がする。環境問題とかもそうだし。これもそれも、戦後民主主義と日教組が悪いのか!?(ということは著者はぜんぜん言っていません)。
前者は、人間は生きている以上傷つくことは避けられない、傷ついたときに治療をするのがやさしさである、という考えを前提とする。後者は、人間はいったん傷つくとなかなか治らない。だから、傷つかないように予防に配慮するのがやさしさである、とする。
さらに著者が言うには、やさしさというのは非公式だが実効性のある社会的ルールになっているそうだ。優先席付近で携帯電話の電源を切る、というのは「公式ルール」だが、実効性はあまりない。確かに「あなたって携帯の電源切らないわよね」って言われるより、「やさしくない」って言われる方がルール違反度高い気がする。
合点合点20へー。別にたいしたことは言っていないんだが、こういう整理で語れることがたくさんある。
「予防的やさしさ」を理想として目指すのはいいんだけど、これをルールとしてしまうのはよくないんだよね。このへんのレベルの混同が日本では多い気がする。環境問題とかもそうだし。これもそれも、戦後民主主義と日教組が悪いのか!?(ということは著者はぜんぜん言っていません)。
2011年12月19日に日本でレビュー済み
やさしさを、古いタイプの「やさしいきびしさ」と現代的な「きびしいやさしさ」に
分けて、「きびしいやさしさ」の問題点に着目し述べていく方法は鋭く、納得しました。
しかしながら、数多く出てくる、引用から断定的な結論に持っていく論述展開の多くには、
その正確性、妥当性に疑問を感じました。
とはいうものの、「やさしさ」といった捉えどころの難しい抽象的な概念について、自身の
考えの正当性を主張するには、都合の良い例を都合の良い解釈で引用する方法を取らざるを
得ないのかもしれません。
私が著者に実際にお会いしたとして、上記のようないい加減な感想を直接述べることは
できません。アマゾンの匿名でのレビューだからこそ書けることです。
これも「やさしさ社会では、面とむかっての攻撃はタブー」という著者の考えと
合っていると思います。
分けて、「きびしいやさしさ」の問題点に着目し述べていく方法は鋭く、納得しました。
しかしながら、数多く出てくる、引用から断定的な結論に持っていく論述展開の多くには、
その正確性、妥当性に疑問を感じました。
とはいうものの、「やさしさ」といった捉えどころの難しい抽象的な概念について、自身の
考えの正当性を主張するには、都合の良い例を都合の良い解釈で引用する方法を取らざるを
得ないのかもしれません。
私が著者に実際にお会いしたとして、上記のようないい加減な感想を直接述べることは
できません。アマゾンの匿名でのレビューだからこそ書けることです。
これも「やさしさ社会では、面とむかっての攻撃はタブー」という著者の考えと
合っていると思います。
2014年2月27日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
子供の学校の課題で必要でした。
近所の本屋では売ってなかったので助かりました。
近所の本屋では売ってなかったので助かりました。
2009年1月31日に日本でレビュー済み
社会に蔓延し、全方位的かつ無条件に求められる「やさしさ」を、現代的なきびしい
やさしさ(予防的:いま傷つけないように全力を尽くし、その傷つけない行為を
やさしさとする)と旧来よりあった、やさしいきびしさ(治療的:やさしさに
基づき、基本的には相手にきびしく接し、傷つけたなら癒すことをやさしさとする)、
に分けて著者は考察しています。
予防的やさしさでは、「傷つくことはよくないこと。傷つけると治癒は容易ではない」
と考え、傷つくこと(傷つけること)が拡大して意識され、個々人の受け止め方で
異なる「傷」を事前に知ることは至難となり、結果、発言や行動が制限されます。
対して治療的やさしさには、将来を含め相手に良かれと思う行為を中心におこない、
その結果「思いがけず誰かを傷つけてしまったら、これを癒すのがやさしさだ」と
著者は主張します。
更には、現代では人格崇拝に基づく敬意を過大に評価しなければならず、その修復が
過小評価されていること、そして仲間うちでは対等性が保持されるべきであるという
2つの思想が根底にあることに解を求めます。
このような予防的やさしさが若い世代を中心に広がった背景を、日本社会の変遷を
辿りながら探り、「やさしさ社会」がもたらす現象、例えば、腫れものとしての
自己が拡大した「こわいひとびと」、楽しさ至上主義、ネットへの波及、能力開発への
情熱などを解きつつ、社会へ警鐘を鳴らします。
終章の「気楽なやさしさのすすめ」において著者は「やさしさ」のあるべき姿に
一応の方向性を示しますが、これは一義的に決められるものとは考えにくく、
社会や価値観の変化に伴って今後も「やさしさ」は変化を続けると思われます。
本書を通して、著者の主張を固める考察に全面的に同意できない部分はあるものの、
各個が何を次代へ受け継いでいくか、など意識すべき課題に多くの示唆を与えてくれる
書だと思います。
やさしさ(予防的:いま傷つけないように全力を尽くし、その傷つけない行為を
やさしさとする)と旧来よりあった、やさしいきびしさ(治療的:やさしさに
基づき、基本的には相手にきびしく接し、傷つけたなら癒すことをやさしさとする)、
に分けて著者は考察しています。
予防的やさしさでは、「傷つくことはよくないこと。傷つけると治癒は容易ではない」
と考え、傷つくこと(傷つけること)が拡大して意識され、個々人の受け止め方で
異なる「傷」を事前に知ることは至難となり、結果、発言や行動が制限されます。
対して治療的やさしさには、将来を含め相手に良かれと思う行為を中心におこない、
その結果「思いがけず誰かを傷つけてしまったら、これを癒すのがやさしさだ」と
著者は主張します。
更には、現代では人格崇拝に基づく敬意を過大に評価しなければならず、その修復が
過小評価されていること、そして仲間うちでは対等性が保持されるべきであるという
2つの思想が根底にあることに解を求めます。
このような予防的やさしさが若い世代を中心に広がった背景を、日本社会の変遷を
辿りながら探り、「やさしさ社会」がもたらす現象、例えば、腫れものとしての
自己が拡大した「こわいひとびと」、楽しさ至上主義、ネットへの波及、能力開発への
情熱などを解きつつ、社会へ警鐘を鳴らします。
終章の「気楽なやさしさのすすめ」において著者は「やさしさ」のあるべき姿に
一応の方向性を示しますが、これは一義的に決められるものとは考えにくく、
社会や価値観の変化に伴って今後も「やさしさ」は変化を続けると思われます。
本書を通して、著者の主張を固める考察に全面的に同意できない部分はあるものの、
各個が何を次代へ受け継いでいくか、など意識すべき課題に多くの示唆を与えてくれる
書だと思います。
2009年6月30日に日本でレビュー済み
この方の専門分野の話は面白かったし、とてもためになりました。
他の方も書いていますが
BSEと食人や武士の切り捨てご免など
明らかに事実と異なる記述が散見し
それらのために専門分野の話さえ、嘘くさく感じます。
筆者本人も専門分野外のことはよくわからないとかいてらっしゃいますが
書籍にする段階で各種専門家に問い合わせるべきだったと思います。
これに関しては筆者だけでなくチェックを怠った編集者にも責任があります。
新書をうたうならば、もう少しきちんとして欲しいです。
他の方も書いていますが
BSEと食人や武士の切り捨てご免など
明らかに事実と異なる記述が散見し
それらのために専門分野の話さえ、嘘くさく感じます。
筆者本人も専門分野外のことはよくわからないとかいてらっしゃいますが
書籍にする段階で各種専門家に問い合わせるべきだったと思います。
これに関しては筆者だけでなくチェックを怠った編集者にも責任があります。
新書をうたうならば、もう少しきちんとして欲しいです。