71年発表の1st。ロリー・ギャラガーを擁していたテイストのリズム隊であったリチャード・マクラケン(b、g) とジョン・ウィルソン(dr) が、元ブロッサム・トゥズのジム・クリーガン(vo、g) と結成したロック・トリオのデビュー作。方向性としてはテイストを踏襲していると言えるが、ギタリスト/ヴォーカル、そして楽曲の個性の違いがグループのカラーになっている。また12分超の3.や11分超の5.などの長尺曲があるのもスタジオ作では比較的コンパクトな楽曲を収録していたテイストとは異なっている。ジム・クリーガンはスタッドとして3枚のアルバムを発表した後にファミリーに加入するが、その布石となっているのが、ゲストとして参加しているファミリー人脈のジョン・ウェイダー(vln) とポリ・パーマー (vib) の2人で、特にウェイダーは次作ではファミリーを脱退してスタッドの正式メンバーとして加入している他、パーマーはブロッサム・トゥズのアルバムにも参加していた。
1.は意表をつくカントリー風味の爽やかなポップ・チューンで、スライドを交えた無骨なギターとやさしいヴォーカルが良いコントラストを生み出している。2.はトラッド風味の美しいフォーク・ナンバーで、フルートとヴァイオリンが入ってくるとそのままファミリーの楽曲のようにも聞こえるほど雰囲気的には近い。3.はクリムゾン風のフリー演奏〜ブルース・ロックをベースにしたジャム風の曲だが、これがなかなか聞き応えあり。テイストが続いていた場合(ライヴではこの手の演奏も聴かれた)の後の作風を思わせる曲である。何にしても末期テイストとは全く異なった覇気のあるリズム隊にはハッキリとやる気が伝わってくる。4.は完全にジャズ・ロック。このリズム隊はブルースよりもこの種の曲の方がシックリとくる。ロリーとは元々ミス・マッチだったのかもしれない。
テイストより英国風味(特にフォーク)を強めた作風で、グループとしては未完成だった先のグループとは格が違う印象を受ける。英国ロック・ファンなら手放しでお勧めできる佳作である。