まずこの資料がヒトラー氏の発言であるかについて原典は知りません。ただ、国家社会主義の主張点は私がこれまで見たどの資料より洗練されていて、国家社会主義者の立場に寄り添って読むならば一級の明晰な立場表明がなされています。国家社会主義とそれ以外の立場の違いを推論する上で、私なりのヒントですが以下の散文を書き留めます。
貧しいが大望を持った若者に機会を与えなければならないという主張が原則のように繰り返されます。これは自身のウィーン時代のような状況をドイツで繰り返さないための決意表明でしょう。私には、自身に言い聞かせているように聞こえます。この姿勢はクビツェク氏との再会においても不変でした。
それらと共に、逆淘汰を繰り返すだけの貴族や枢機卿共を最悪の連中だとして非難しています。彼は実のところ、間違いなく特権階級の代弁者ではありませんでした。読者は、イギリス政府だかサイモン何とかセンターの宣伝とは全く違ったヒトラーに戸惑うしかありません。
「敵意に満ちた世界にいる労働者がマルクス主義の誘惑に負けてしまうのは極めて自然なことで、よく理解できる」4行目,p381
このような形での慎重な共産主義への言及、スターリンをチンギスハーン以来の強力な指導者だとして敬意を払っていることから以下のように考えられます。演説でマルクス主義をシンプルな形で攻撃しているのは、あくまで演説時の大衆説得において融通を利かせているだけである。逆に考えると、共産主義と比べて資本家主義を取るに足らない幼稚な相手、欠陥が丸見えの相手として扱っていることが明らかになります。
このまま散文調に短くいきますが、
「国家社会主義者は革命を制止すべき時期をよく知っている。これは国家社会主義の長所の一つだろう。革命を叫んで立ち上がるのもすばらしいが、立ち上がった後、確実に前進できるリアリストでもなければ意味がない。流産に終わった革命、指導力の欠如で堕落した革命では話にもならないのだ。...革命は水門を開く。しかし堰を切って流れ出した群衆の手綱を取るのは、門を開くよりずっと難しいのだ」10行目,p456
そして、国家を指導するにあたり、人種問題と社会的不平等のような困難な問題をどちらも解決する気がない資本家が好き放題しているアメリカのような腐敗した国になるのを防がなければならないと、社会問題を鋭く見据えています。そこから、ナチ党の一貫して掲げてきた全外国人の国外追放という政策がようやく理解可能なものになります。広く宣伝された「無意味にユダヤ人だけを標的にしていた」というより、彼は事態を複雑にとらえています。私は、「ドイツの土地でドイツ人を養うことが不可能になっているならば、ドイツ人を国外に追いやるよりまず外国人を追放すべきだ」という理解の仕方をしました。この問題は、今後移民が増えればこの国でも先鋭化します。

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ヒトラーのテーブル・トーク 上: 1941-1944 単行本 – 1994/12/1
アドルフ・ヒトラー
(著)
- 本の長さ475ページ
- 言語日本語
- 出版社三交社
- 発売日1994/12/1
- ISBN-104879191221
- ISBN-13978-4879191229
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商品の説明
内容(「MARC」データベースより)
ごくわずかの側近を前にした森羅万象に関する遠慮会釈ないヒトラーの談話を日付順に忠実に再現。ゲルマン、ユダヤから、外交、軍事、ダイエット、禁煙まで。ヒトラー及び第三帝国の謎を解明する恰好の資料ついに完訳。
登録情報
- 出版社 : 三交社 (1994/12/1)
- 発売日 : 1994/12/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 475ページ
- ISBN-10 : 4879191221
- ISBN-13 : 978-4879191229
- Amazon 売れ筋ランキング: - 384,550位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 109位ドイツ・オーストリア史
- - 184位西洋史
- - 974位ヨーロッパ史一般の本
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2018年4月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2014年4月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
悪の権化と言われる人間の素顔に迫っている?!のかな。
コマとして使われる人間からすれば、なぜこんな人間(たち)が
権力を握り、非人道的な世界を作るのか?
そしてそのコマたちはいつまでもコマのまま終わるのか?
知れば知るほど、人間社会は、他者への愛も謙虚も失われつつある。
初めから、そのようなものは精神の薬味程度のものなのか!
善なる神がいれば教えてほしいものだ
コマとして使われる人間からすれば、なぜこんな人間(たち)が
権力を握り、非人道的な世界を作るのか?
そしてそのコマたちはいつまでもコマのまま終わるのか?
知れば知るほど、人間社会は、他者への愛も謙虚も失われつつある。
初めから、そのようなものは精神の薬味程度のものなのか!
善なる神がいれば教えてほしいものだ
2014年5月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
今年の夏季休暇の時に、バルコニーで一杯飲みながら、読むつもりです。それまでは、仕事に集中。
2012年5月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
徹底した偏見と独断と怨恨と祖国、民族への愛と狂った理性による談話集。
語り及ぶところならばすべて語りつくす勢いで総統閣下が喋りまくる!
過去の回想、現状分析、未来への希望はもちろん総統閣下の知識はその他多くを網羅します。
我が闘争が論文ならこちらはエッセイ集といったところ。
この書籍はヒトラーの秘書ボルマンが夕食時などでの談話を速記し、
極秘に保存していた文書が、掘り起こされて刊行されたものです。
資料的価値では「我が闘争」を超えているかもしれません。
1941−1944とありますが、内容のほとんどが41年から42年です。
つまり<ドイツ軍が調子良かった時期>に景気よく喋っていたヒトラーの本音を知ることができる。
まあそういうことですね。
43年と44年は語り手もテーブル・トークなどする気分では無かったのかもしれません。
誰の検閲をも受けなかっただけあり、すべてが赤裸々に語られています。
長いナイフのごとくとがった率直さを感じることでしょう。
「我が闘争」だけでヒトラーを知ったと思うのは早計に思いました。
余談ですが、日本に対するツンデレ気味な態度は必見ですよ!
語り及ぶところならばすべて語りつくす勢いで総統閣下が喋りまくる!
過去の回想、現状分析、未来への希望はもちろん総統閣下の知識はその他多くを網羅します。
我が闘争が論文ならこちらはエッセイ集といったところ。
この書籍はヒトラーの秘書ボルマンが夕食時などでの談話を速記し、
極秘に保存していた文書が、掘り起こされて刊行されたものです。
資料的価値では「我が闘争」を超えているかもしれません。
1941−1944とありますが、内容のほとんどが41年から42年です。
つまり<ドイツ軍が調子良かった時期>に景気よく喋っていたヒトラーの本音を知ることができる。
まあそういうことですね。
43年と44年は語り手もテーブル・トークなどする気分では無かったのかもしれません。
誰の検閲をも受けなかっただけあり、すべてが赤裸々に語られています。
長いナイフのごとくとがった率直さを感じることでしょう。
「我が闘争」だけでヒトラーを知ったと思うのは早計に思いました。
余談ですが、日本に対するツンデレ気味な態度は必見ですよ!
2020年2月5日に日本でレビュー済み
有名な「我が闘争」は、超長文な上に面白くもなんともないが、こちらの「ヒトラーのテーブルトーク」は極めて面白い主張がなされている。
「肉食動物はストロングだがタフではない。草食動物はストロングではないがタフだ」
明治時代にドイツから招聘されて東大内科学教授を務めていたベルツ博士による「人力車の俥夫(しゃふ)の走力実験」と同じ主張がなされている。これは現代のスポーツ生理学では「カーボローディング」という現象のことであるが、ヒトラーの鋭い観察眼を表している。
その他、ヒトラーの鋭い見識と博学ぶりには驚かされる。当時のドイツを代表するインテリ達でさえ、簡単にヒトラーを信奉するようになったのも当然だと思われる。
「肉食動物はストロングだがタフではない。草食動物はストロングではないがタフだ」
明治時代にドイツから招聘されて東大内科学教授を務めていたベルツ博士による「人力車の俥夫(しゃふ)の走力実験」と同じ主張がなされている。これは現代のスポーツ生理学では「カーボローディング」という現象のことであるが、ヒトラーの鋭い観察眼を表している。
その他、ヒトラーの鋭い見識と博学ぶりには驚かされる。当時のドイツを代表するインテリ達でさえ、簡単にヒトラーを信奉するようになったのも当然だと思われる。
2007年7月26日に日本でレビュー済み
この『テーブルトーク』はヒトラーさんのエッセイ集と呼べるものである。
内容は街をにぎわす殺人事件を一喝したり、教育システム、行政システムを批判したりする一方で甘美な少年時代を振り返ってみたり、ワーグナーの音楽について感動を込めて述べる。
ヒトラーさんの知識量は百科事典並で、しかも機知に富んだ文章の数々は私たちを決して飽きさせない。
この本はさながらヒトラーという知のジャングルをかきわけていくようなもので、ネバーエンディングストーリーである。
続きが読みたくて、読みたくてたまらない。
大丈夫、下巻を読みましょう。
それでも我慢できない人は『ヒトラーの遺言』という篠原正瑛という人が訳した、本当に最後の最後のヒトラーさんのエッセイ集を読みましょう。
残念ですが、その続きはありません、、、著者がお亡くなりになられたからです。
ですが、希望は残っています。
あなたが新たなる一ページを書き加えるのです。
内容は街をにぎわす殺人事件を一喝したり、教育システム、行政システムを批判したりする一方で甘美な少年時代を振り返ってみたり、ワーグナーの音楽について感動を込めて述べる。
ヒトラーさんの知識量は百科事典並で、しかも機知に富んだ文章の数々は私たちを決して飽きさせない。
この本はさながらヒトラーという知のジャングルをかきわけていくようなもので、ネバーエンディングストーリーである。
続きが読みたくて、読みたくてたまらない。
大丈夫、下巻を読みましょう。
それでも我慢できない人は『ヒトラーの遺言』という篠原正瑛という人が訳した、本当に最後の最後のヒトラーさんのエッセイ集を読みましょう。
残念ですが、その続きはありません、、、著者がお亡くなりになられたからです。
ですが、希望は残っています。
あなたが新たなる一ページを書き加えるのです。
2006年10月16日に日本でレビュー済み
ヒトラーの回想などを踏まえつつ、思想に言及する場面もある。側近を痛烈に皮肉ったりもする。人間・ヒトラーにまた一歩、近づける。そんな本です。