全体的に良くかけていると思うのだが、調べもしないで自分の主張について都合のいい憶測を書いている箇所があるのが惜しい。
新聞の横並び体質を批判している19ページを見てみると、
「新聞休刊日も各紙とも同じ日に設定しているのか、なぜ一斉に休刊しなければならないのか。、その理由がさっぱりわからない」 とある。
本書の読者は、元新聞記者の稲垣氏でさえ新聞休刊日の事情がわからないのだから、きっとそれは新聞の病んだ部分なのかな、と思わされる。
ところが、著者は休刊日を同じ日に設定している理由を、単に自分で調べていないだけなのである。
各紙一斉休刊の理由はこうだ。
新聞販売店は、看板の新聞の他にも、多くの少部数の新聞を扱っている。スポーツ紙、英字新聞、農業新聞、工業新聞など、各業界に特化した新聞、中学生新聞、小学生新聞などというものもある。
これらが各々ばらばらに休刊日を設定していたらどうなるか。新聞販売店の従業員、新聞輸送の運転手さんらは、一年中何らかの新聞を配達しなければならず、休みを取るのが不可能になってしまう。私が働いたことのある店では朝日のほかに、サンケイ、東京新聞を取り扱っていた。
朝日が休刊でもサンケイが休みでないなら、配達員はその日は業務につかなければならなくなる、ということになってしまう。
そういうことがないよう、新聞休刊日は各紙とも同じ日に設定している。
そのおかげで、販売店の従業員は、たまの休みをスキー旅行で楽しんだり、学生なら帰省したりできるのである。
お正月も、各紙一斉に休刊するから、これら末端の配達員もゆっくり休めるのである。つまり新聞休刊日は、配達関係の人たちの福利厚生のために設定されているのだ。
このようなことは、新聞業界の人なら調べればわかることだと思うのだが、著者は
まったく調査をしていない。
そして、「恐らく各紙バラバラに休刊すると、ある一紙が休刊したときに、その読者が他紙を覘いて、こっちのほうがまし、と乗り換えるのを一致して防ごうという思惑かもしれない」という無責任な想像で書いている。
他の部分が良く書けているだけに、残念でならない。
もしかすると、同様の無責任な憶測が、あちこちに隠されているかもしれない、とさえ思えてくる。
せっかくの力作なのに、それを台無しにするお粗末さが、この本の価値を落としている。次回にはがんばってほしいという応援の気持ちをこめて星ひとつ。

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新聞・テレビはどこまで病んでいるか: 靖国教科書小泉改革報道他 (小学館文庫 R い- 23-1) 文庫 – 2001/9/1
稲垣 武
(著)
「靖国」「教科書」「人権」「森降ろし」「小泉改革」……。
「正義」を振りかざした報道にあなたは躍らされていないか。元朝日新聞記者が日本の空気を操作する新聞・テレビの報道を徹底検証し、そのタブーに鋭く迫る。
自社に都合のいいニュースのみ繰り返し報道する「世論操作」、善悪二元論から抜け出せぬ「ワンパターン思考」と「偽善性」、自らを棚にあげ他者を攻撃する「特権意識」、何でも自主規制の「事無かれ主義」と「横並び主義」等、大新聞・テレビにはびこる病理の数々を解明する。
その意見は本当にあなたの意見ですか?
「正義」を振りかざした報道にあなたは躍らされていないか。元朝日新聞記者が日本の空気を操作する新聞・テレビの報道を徹底検証し、そのタブーに鋭く迫る。
自社に都合のいいニュースのみ繰り返し報道する「世論操作」、善悪二元論から抜け出せぬ「ワンパターン思考」と「偽善性」、自らを棚にあげ他者を攻撃する「特権意識」、何でも自主規制の「事無かれ主義」と「横並び主義」等、大新聞・テレビにはびこる病理の数々を解明する。
その意見は本当にあなたの意見ですか?
- 本の長さ221ページ
- 言語日本語
- 出版社小学館
- 発売日2001/9/1
- ISBN-104094024565
- ISBN-13978-4094024562
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商品の説明
出版社からのコメント
「小泉」「教科書」「靖国」…日本の世論を操作する新聞の病巣。
登録情報
- 出版社 : 小学館 (2001/9/1)
- 発売日 : 2001/9/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 221ページ
- ISBN-10 : 4094024565
- ISBN-13 : 978-4094024562
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,067,293位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 433位メディアと社会
- - 1,237位ジャーナリズム (本)
- - 5,023位小学館文庫
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2010年9月1日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2007年11月12日に日本でレビュー済み
朝日の問題点がよく分かる素晴らしい本だと思います。
人権屋の偽善というものがいかに厄介かということが理解できました。
ただ、正論の連載だったのか産経新聞には少し甘いんじゃかと。
朝日が中国の手先なら、産経もアメリカの手先なんですから・・・
人権屋の偽善というものがいかに厄介かということが理解できました。
ただ、正論の連載だったのか産経新聞には少し甘いんじゃかと。
朝日が中国の手先なら、産経もアメリカの手先なんですから・・・
2006年11月8日に日本でレビュー済み
長年にわたり日本のマスコミは「第四の権力」と呼ばれる特権階級であった。しかし
最近ではインターネットの普及に伴い、情報の媒介者としての独占が失われた上に、
情報入手の別回路を得た国民の目は厳しくなり、その信頼は揺らいできている。
元朝日新聞記者の著者稲垣武氏は、本書の刊行意図を「メディア・リテラシーの能力を
高めるために、実際のテレビ報道や新聞記事を題材に、筆者なりの分析を試みたもの」
としている。マスメディアの悪しき体質を多様な事例を用いて暴いているが「マスコミ
には固有の生理と病理があり、自己変革は難しい」とする。だからこそ偏向した報道や
論評に影響されず、真実を見抜く能力"メディア・リテラシー"が求められていると説く。
マスメディアがここまで腐敗した原因は、記者クラブ制に保護された情報独占体制、
横並び主義による無競争体質といった、日本最後の護送船団方式が生んだといえる。
だがそれ以上に、垂れ流される情報を受け入れ、しばしば世論誘導に乗せられ、
メディアに批判的な目を向けてこなかった国民にも大きな責任がある。マスコミも
一大権力である以上はチェックを怠ってはならないし、国民がメディアの歪みを見抜く
目を養っていかなければならない。そのための十分な材料が本書には詰まっている。
最近ではインターネットの普及に伴い、情報の媒介者としての独占が失われた上に、
情報入手の別回路を得た国民の目は厳しくなり、その信頼は揺らいできている。
元朝日新聞記者の著者稲垣武氏は、本書の刊行意図を「メディア・リテラシーの能力を
高めるために、実際のテレビ報道や新聞記事を題材に、筆者なりの分析を試みたもの」
としている。マスメディアの悪しき体質を多様な事例を用いて暴いているが「マスコミ
には固有の生理と病理があり、自己変革は難しい」とする。だからこそ偏向した報道や
論評に影響されず、真実を見抜く能力"メディア・リテラシー"が求められていると説く。
マスメディアがここまで腐敗した原因は、記者クラブ制に保護された情報独占体制、
横並び主義による無競争体質といった、日本最後の護送船団方式が生んだといえる。
だがそれ以上に、垂れ流される情報を受け入れ、しばしば世論誘導に乗せられ、
メディアに批判的な目を向けてこなかった国民にも大きな責任がある。マスコミも
一大権力である以上はチェックを怠ってはならないし、国民がメディアの歪みを見抜く
目を養っていかなければならない。そのための十分な材料が本書には詰まっている。
2006年12月12日に日本でレビュー済み
実態が非常に不透明な「第四の権力」であるマスコミについて、いかに卑怯な情報操作・偏向報道などが行われているのかが良くわかる良書です。政治・時事ニュースを知るのに新聞・テレビは欠かせない存在でしたが、本書に書いてあるようなことを知らないとねじ曲げられた情報をそのまま鵜呑みにしてしまう危険性があります。マスコミは警察や政治の腐敗・堕落を大々的に批判しますが、マスコミ自身が自らを省みることはあまり無いですからね(結局「権力」というものは腐敗する運命にあるのでしょうか?)
特にこれから政治等を学んでいくであろう若い人たちに読んでもらいたいですね。
ぜひ著者に続編を執筆していただきたいです。というのは本書が出版されたのはもう5年も前で、マスコミとそれを取り巻く状況、更に日本の政治、世界情勢(特に近隣諸国との関係)も大きく変化しました。
インターネットや本書のようなマスコミ批判に対応して、TV、新聞などの印象操作・情報操作・偏向報道の仕方もより巧妙になってきている感がありますし、既存のマスコミに対抗しうる大きな存在として一気に普及したインターネットもまた、多くの欠点をかかえていると思いますので、そのあたりを分析、批評してもらいたいです。
特にこれから政治等を学んでいくであろう若い人たちに読んでもらいたいですね。
ぜひ著者に続編を執筆していただきたいです。というのは本書が出版されたのはもう5年も前で、マスコミとそれを取り巻く状況、更に日本の政治、世界情勢(特に近隣諸国との関係)も大きく変化しました。
インターネットや本書のようなマスコミ批判に対応して、TV、新聞などの印象操作・情報操作・偏向報道の仕方もより巧妙になってきている感がありますし、既存のマスコミに対抗しうる大きな存在として一気に普及したインターネットもまた、多くの欠点をかかえていると思いますので、そのあたりを分析、批評してもらいたいです。
2001年9月24日に日本でレビュー済み
タイトルと帯びの「日本の“空気”を操作するメディアの病理」という言葉にひかれて買った書き下ろし文庫ですが、メディア・マスコミの現状問題を鋭く追及している斬新なノンフィクションでした。著者は元朝日新聞記者で、その朝日新聞批判が多かったですが、マスコミ批評は日本では数少ないだけに、価値ある一冊ともいえるでしょう。教科書問題や靖国参拝問題も、多くのメディアは中国・韓国の非難を受け入れ、それに同調する報道ばかりでしたし、本書で書かれている内容も「横並び主義」と「事なかれ主義」がどれだけ多いかというのも改めて気づかされました。例えば、新聞休刊日などをとっても、これは完全な横並び主義でしょうし、各紙同時に価格の値上げをするというのも一種の談合でしょうが、これを問題にするメディアもいなかったというのも問題でしょう。確かにメディア報道でのタブーなどもあるでしょうが、そのタブーについても本書は鋭く問題を浮き彫りにしており、報道に惑わされず、自分自身でしっかりと様々な事件や問題を見据えなければならない大切さも痛感しました。