市川崑の映画はどれも好きで、この「おはん」も公開時まだ二十歳くらいだったけれど、映像に酔いしれ、感動して何度も繰り返し観たものですが、トシを取ったいま観返してみると、おはんと幸吉が愚かに思えてしまいます。市川崑が幸吉を通して描こうとしている喜劇的な部分が、ちょっと子供っぽく映ってしまって……。
当時の新聞評で「大人の気配がないのはどうしたことか」とありましたが、いまではそれがわかるような気がします。
ただ、吉永小百合さんは最後のスター女優だと思いますし、こういう映画はもう作られないでしょう。
丹念に作ってありますし、役者さんもみんないい。
ミヤコ蝶々さんみたいな味の出せる人って……もういない。
そういう意味で、貴重な作品だと思います。