本書の主な内容は、北海道開発局が設置される際の紆余曲折です。
道庁とは別に、国の機関としての北海道開発局が設置される、その是非をめぐる論争、当時のGHQの考え、といったものが紹介されます。
まず、注意すべきなのは、「北海道開発局とは何か」というタイトルでありながら、「北海道開発局は具体的に何をやる組織なのか」については、ほとんど全く説明がありません。あくまで、二重行政となる機関が設置されるに至った経緯が淡々と綴られるだけです。
300ページもある本ですが、内容は物足りないと言わざるを得ません。正味300ページですが、「開発局設置前の北海道の様子」を紹介する(北炭夕張の事故など)章が70ページ以上あるなど、北海道開発局の内容や問題点とは直接関係のない内容も多く、視点が定まりません。設置の背景としては、当初は設置に反対していたGHQが翻意したことが大きいと述べられているのですが、肝心のその翻意の理由については、具体的にはほぼ全く書かれていないなど、いまひとつ肩透かしを食わされる部分も多いです。おおむね時系列で経緯が追われてはいますが、ときおり話が前後するなど、読みにくい点もあります。
そして最も物足りないと思うのは、著者の意見といったものが、ほぼ全く見られない点です。こではひょっとすると、著者が中立を是とする新聞記者であるからかも知れません。
結局のところ、北海道開発局をつくったことは良かったのか悪かったのか、半世紀にわたる北海道開発局の仕事は良かったのか悪かったのか、何らの意見も示されていません。いちばん最後のページに、「(北海道開発局の功罪を)きっちりと議論することが今こそ必要」と結んでいるだけで、この本による検証は完全に放棄しています。「あとがき」にようやく、ほんの2ページほど、二重行政によって投資が非効率的であったのではないかという意見が開陳されますが、その具体的で定量的な根拠は全く紹介されておらず、単に著者の「感覚的な感想」でしかないので、ほとんど意味がありません。
わたしは北海道の上川地方で生まれ育ち、いまはなき開発局の仕事も或る程度は見てきました。北海道をいまのように豊かな場所にしたことに一定の評価をしたいと思っていますし、敬意を表したいと思っています。二重行政と繰り返し述べられますが、それが良かったのか悪かったのかの態度表明や具体的指摘がなく、少なくとも良かった点について何ら述べられていないというのは、道産子としては非常に物足りなさを感じました。

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北海道開発局とは何か GHQ占領下における「二重行政」の始まり 単行本 – 2003/10/15
伴野 昭人
(著)
「植民地」を支配するのは道庁か開発局か──GHQ文書で判った内務省と農水省の激しい攻防。戦後北海道の運命を決めた瞬間を描く。
【目次】
第一章 北海道開発庁―設置決定とGHQの反対
第二章 GHQと北海道開発
第三章 北海道開発庁の誕生
第四章 沈黙か揺れるGHQ
第五章 北海道開発局の発足
第六章 沖縄と広島―「憲法第九五条」を訪ねて
終章 開発とは何か
年表〔占領期の北海道開発連年表/占領後期の開発庁・開発局の主な歩み]
【目次】
第一章 北海道開発庁―設置決定とGHQの反対
第二章 GHQと北海道開発
第三章 北海道開発庁の誕生
第四章 沈黙か揺れるGHQ
第五章 北海道開発局の発足
第六章 沖縄と広島―「憲法第九五条」を訪ねて
終章 開発とは何か
年表〔占領期の北海道開発連年表/占領後期の開発庁・開発局の主な歩み]
- 本の長さ323ページ
- 言語日本語
- 出版社寿郎社
- 発売日2003/10/15
- ISBN-10490226904X
- ISBN-13978-4902269048
商品の説明
出版社からのコメント
在庫僅少です。美本無し。
内容(「MARC」データベースより)
GHQ文書や当時の関係者の証言に加え、農林省、旧経済企画庁などの官庁文書や国会、道議会の議事録などを基に、北海道開発庁と開発局の設置をめぐるダイナミックな政治過程を再現。北海道開発局はこうして生まれた!
登録情報
- 出版社 : 寿郎社 (2003/10/15)
- 発売日 : 2003/10/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 323ページ
- ISBN-10 : 490226904X
- ISBN-13 : 978-4902269048
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,275,860位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2013年6月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2003年12月3日に日本でレビュー済み
~タイトルを見たときに、即買した。色々な視点で読むことができるが、一つはなぜ北海道に二つの総合行政官庁があるのか、というテーマ。もう一つは、北海道開発局は国のために存在するのか、道民の生活を向上させるために存在するのか、というテーマだ。不要論の高まりの中、私たちは、やはり二重行政の不効率性に着目せざるを得ないだろうと思うが、開発局設~~置に反対した当時の道知事が開発行政は国を富ませるだけでなく、当地の道民の生活向上に役立たなければならないと述べたその精神は、今も引き継がれているかどうか、考えさせられる。~