ジャック・アタリ氏は、世界金融危機を予見した著書『21世紀の歴史』の中で、
人類の歴史の普遍性を洞察し、その普遍性を元に、人類の未来の予想を試みています。
ただし、この試みが不条理さを含むことアタリ氏は認識しており、
その理由について、「無数の出来事や個人が、歴史の流れに影響を及ぼすからだ」と
記述しています。
この記述を見たとき、私は、バタフライ効果を思い出しました。
「北京で蝶が羽ばたけばニューヨークで嵐になる」というような比喩が有名ですが、
システムの片隅で起きた小さなゆらぎが、システム全体の姿を劇的に変えてしまうこと
が現実に起こっています。
例えば、「マニフェスト選挙」は、北川正恭前三重県知事（現在・早稲田大学大学院教授）
が起こした小さな「蝶の羽ばたき」が全国に波及したものです。
システムが臨界状態にあるときの「小さな羽ばたき」は実際に、とてつもない威力を持ちます。
北川正恭氏は、バタフライ効果の威力を実体験を通して知っており、
意識的にそれを用いようとしている方です。
このような世相の中でのアタリ氏の温故知新的なアプローチには、頭が下がる思いです。
また、真摯に歴史から学び、現実と日々格闘する中で、
私たちは未来への叡智を掴むことができると思っています。
さて、ここでは、アタリ氏が認識され、私も同感した歴史的普遍性についてだけ、
皆様に紹介したいと思います。
あとは、本書を読み、皆様ご自身の体験に基づいて考え抜くことが、
未来を生きる上での賢い方法論だと考えるからです。
・知識の伝承は進化のための条件である。
・いかなる時代であろうとも、人類は他のすべての価値観を差し置いて、
個人の自由に最大限の価値を見出してきた。
・人類史を動かしてきた三つの秩序は、宗教、軍事、市場である。
・巨大勢力がライバルに攻撃されると、勝利するのはしばしば第三者である。
・永遠と思われる帝国でさえ、未来永劫にわたって存続することはありえない。
・欠乏こそが人々を新たな富を探し求めさせる。
不足とは、野心を生み出すための天の恵みである。
・戦争の勝利者になる国とは、常に参戦しなかった国、
または、いずれにしても自国領土で戦わなかった国である。
最後に、アタリ氏は人類の未来に、超帝国、超紛争、超民主主義の
3つの波が押し寄せるといっています。
ただ、アタリ氏は、超帝国、超紛争の未来を望んでいません。
アタリ氏は、”利他主義”に導かれた超民主主義を渇望しています。
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