再編ハンブル・パイが残した2枚の作品、80年発表の『ON THE VICTORY』と81年発表の『GO FOR THE THROAT』を収録したCD。再編スモール・フェイセス解散後、スティーヴ・マリオット(vo、g) とジェリー・シャーリー(dr) は元ジェフ・ベック・グルーブ、ストリートウォーカーズらで活躍したボブ・テンチ(vo、g)、アンソニー・ジョーンズ(b、vo) らを迎えてハンプル・パイを再編し2枚の作品 (本CD) を残した。『ON THE VICTORY』はフレッシュな雰囲気を感じさせると共に往年のハンブル・パイの雰囲気を踏襲した優れた内容であり、マリオットのヴォーカルの絶好調ぶりが聞いていて清々しい。メンバーのバック・コーラスもソウルフルな本格的なものであり、このメンツがあってこその聴きどころだろう。隠れた猛者テンチのギターソロ、バッキングも素晴しい。オリジナルの楽曲は言う間でもなく素晴しいがーオーティス・レディングの「My Lover's Prayer」も秀逸。サックスの導入など適度に感じるモダンさも良い。『GO FOR THE THROAT』では何と言ってもスモール・フェイセス時代のヒット「ティン・ソルジャー」の再演が嬉しい。他にもマリオットとシャーリーの共作の「Keep It On The Island」は彼ららしさ満載の屈指の名曲だ。プレスリーの「オール・ショック・アップ」の他、リチャード・サパの曲を2曲取り上げるなど選曲の妙も感じられるが、売り上げは芳しくなかったらしく本作の後グループは解散。マリオットはソロ活動に戻った。
再編ものの評価が低いのはパイに限ったことではないが、その評価が偏見の上で形成されていることは常となっていると思う。ヴォーカル、演奏、楽曲のどれをとっても文句の付けようのないものであり、ややモダンな雰囲気を新生面としてみるか、軟化と見るかで評価の違いは出るとは思うが、こういう作品をダメ出ししてしまうと他の多くのアーティストの作品の立場がないだろう。