最近読みました。私は昨年、ツィッターで消費税増税を推進したことや財務省論理に染まったことを批判したら菅元総理にブロックされた者です。この本が書かれた当時、この本にあるような彼の国会質問をラジオで聞いたり、中央公論での対談を読んで彼の主張に賛同していました。
今では、この本の内容に菅氏の欠点を見ることができます。官僚機構が問題の源になることはあります。しかし、ある程度の手厚さの福祉国家・日本を運営している既存の官僚機構の成果にも目を配らないと、先の改革はうまく行かないと思います。この本は国家機構や厚生官僚たちの問題点ばかりにするどい目を向けており、それには理があるものの、片手落ちです。
官僚が失敗した時にどう責任を取らせるか彼がいろいろ考察する節があります。それはそれで一理あるでしょうが、菅氏のこのような考えから見える彼の心は狭いと思います。将来は不確実で多くの場合正確な予想は難しく、誰もが実は五里霧中で物事を進めている中、組織の個々人に刑事、民事を超える事後的な罰を負わせることの是非は菅氏が考えているよりももっと深く考えるべきだと思います。
菅氏が理論的な影響を受け、本書の対談にも登場する松下氏という学者の地方分権という主張にも問題があると思います。福祉国家にはある程度の中央集権が必要なのです。各地方の統治責任者や有力者が必ずしも十分な福祉策を支持するとは限らないのです。
また、菅氏も松下氏も、国家権力の様々な性質について猜疑的な対抗心はいだきながらも、それらを外から批判することに終始し、実際に権力を担っていた時の自らの責任についての考察はあまりしていないように感じました。カイワレ大根問題への対応において、まだ原因が不確実な中で情報公開という点のみに固執した決断は、情報公開が大事なこととはいえ限られた情報に接した時の一般人のパニック心理にだけにおもねったものでした。実害があったと思います。この本でそのことについて粗末な開き直りしかしていないのは菅氏の認識の限界だと思いました。2007年、小沢氏が福田総理と大連立を組もうとした動機の一つは、このような菅氏の権力をめぐる未熟な点を見たからかもしれません。
市民と自ら称し官僚機構にもっともな批判を寄せるが、そういう菅氏自身の拠って立つ立場は何かと考えると、権力を動かす官僚と自民党を敵として叩いて見せて、自らを引き上げること以外のものは見られません。右翼排外的な石原慎太郎元東京都知事と同様、敵を叩いて見せることで自らを引き上げるのが彼のやり方ではないのかと疑います。菅氏の場合はその敵役が国家を運営する官僚機構だったので、与党になった時は彼らが陰に陽に足を引っ張り、そのうちに消費税増税のように彼らの論理に染まり洗脳されてしまうことになりました。そのようになった後でも彼らをうまく動かすことができなかったのです。
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大臣 (岩波新書 新赤版 558) 新書 – 1998/5/28
菅 直人
(著)
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購入オプションとあわせ買い
1996年1月,橋本内閣の厚生大臣に就任.以後300日,薬害エイズ,介護保険法案,O-157,豊島産廃不法投棄と,さまざまな課題に直面するなかで,何を求め,どう動いたか.市民派政治家が体験した「大臣」という仕事の虚実を具体的に公開し,大臣・内閣,国会,官僚組織ひいては日本の政治の目指すべき姿を熱く説く.
- 本の長さ232ページ
- 言語日本語
- 出版社岩波書店
- 発売日1998/5/28
- ISBN-104004305586
- ISBN-13978-4004305583
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登録情報
- 出版社 : 岩波書店 (1998/5/28)
- 発売日 : 1998/5/28
- 言語 : 日本語
- 新書 : 232ページ
- ISBN-10 : 4004305586
- ISBN-13 : 978-4004305583
- Amazon 売れ筋ランキング: - 1,473,692位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2004年9月23日に日本でレビュー済み
本物の大臣経験者が、率直に書いた本なだけあって、
内閣や官庁の実態の説明はとても興味深い
(とりわけ、普段は「内閣応接室」の
一瞬の映像しか目にすることのないわれわれにとって、
閣議のレポートはひじょうにおもしろいと思う。)。
のみならず、話は「官僚内閣制」から「国会内閣制」へ、
という憲法理論にまで広がり、深みをみせる。
閣僚や役所のリアルな実態を知りたい向きも、
憲法や政治のあり方を議論したいおカタイ向きも、
ともに楽しめる一冊ではなかろうか。
内閣や官庁の実態の説明はとても興味深い
(とりわけ、普段は「内閣応接室」の
一瞬の映像しか目にすることのないわれわれにとって、
閣議のレポートはひじょうにおもしろいと思う。)。
のみならず、話は「官僚内閣制」から「国会内閣制」へ、
という憲法理論にまで広がり、深みをみせる。
閣僚や役所のリアルな実態を知りたい向きも、
憲法や政治のあり方を議論したいおカタイ向きも、
ともに楽しめる一冊ではなかろうか。
2003年6月2日に日本でレビュー済み
本書は現在民主党代表である筆者が、さきがけに属していた当時、1996年1月から11月まで厚生大臣を務めた経験をもとに書かれた、貴重な「体験談」である。実際大臣を務めた人でないと分からない、就任から日々の仕事、官僚たちとの関係など非常に興味深い内容である。
同時に議院内閣制という政治システムを、自身の経験や憲法の観点から筆者が独自に検討、分析しており、現在の政治を考える上で必読の書といえるだろう。
同時に議院内閣制という政治システムを、自身の経験や憲法の観点から筆者が独自に検討、分析しており、現在の政治を考える上で必読の書といえるだろう。