さすがにニキータ・ミハルコフ、ロシア巨匠の名にたがわぬ奥深い作品になっている。初めは被告であるチェチェン人の問題が表に現れているが、映画が進んで行くにつれて陪審員に選ばれた12人がもつそれぞれの背景が次第に明らかにされていく。それがすべて12人の各様の問題ではなく、それを通してロシアという国が持っている問題がえぐり出されて見えてくる。こうした12人の陪審員の描き方はオリジナル映画をはるかに超えていて感心した。ミハルコフはプーチンの親しい友人だとロシア映画通の知人から聞いたが、だからこそ安全にロシアの恥部をさらけ出す映画が撮れるのかとも思ったりもするが、彼の映画監督生命が心配にもなる。またこの映画の終わりは映画を観る者に委ねられており、映画を見終わってその結末を想像するという楽しみを与えてくれていることも何とも見事な作品としかいいようがない。
この映画は2008年の上映の時も映画館で観たし、DVDが出た時すぐに購入してまた観たがそのDVDを誰に貸したか見当たらなくなってしまったので、今回、再購入した。これからは禁帯出にして1人だけで楽しむことにしようと思う。