性典として有名な本ですが、性技に関する内容は全体の2割ちょっとで、全体としては恋愛指南書といった感じです。
なのでここではインド古典としての内容、ならびに翻訳本としての構成についてレビューしたいと思います。
セックスのハウツー本が欲しい方には図解が乗った要約版かDVDをお勧めします。
挿絵がないこの本を読んだだけでは正しい体位と違ったやり方をしてしまう恐れがあるので。
本書は意外にも女性向けに書かれた章が多く、およそ半数近くがそれに当たります。
また序章にあたる総論部では、女性に教育は無意味と説く諸学者に対し、女性にも学問を理解できると反論し、さらにそこから話を広げ、論典を読まない庶民階級にも学問できる可能性を示唆します。
私はここに仏教徒やジャイナ教徒のみならず、ヒンドゥー教徒もカースト制度の裏で平等の精神を育んでいたのを垣間見たような気がしました。
古典ゆえ現代の倫理観とは相容れない内容もある本書ですが、これはインドの思想史や教育史において大きな一歩だったのではないでしょうか。
私はカーマスートラを読んで、なぜ「マハーバーラタ」や「ラーマーヤナ」といった同時代の叙事詩が一般の人々に支持されるようになったのか理解できたように思います。
カーマスートラはグプタ朝時代の民俗研究においてよく評価されるそうですが、かの時代を生きた人々の思想を知るためにも本書はきっと役に立つでしょう。
翻訳本としてもよくできた構成だと思います。
本文に入る前に序説として訳者の解説が3章に渡って書かれており、原典の成立背景などを書き記すことでカーマスートラにかかる偏見を払拭し、本書の目的に正しく導いてくれます。
また訳注もかなり充実しており、インドについてほとんど何も知らない人でもお話についていくことができるようになっています。
惜しむらくは訳注に「拙著○○を見よ」「××著の○○を見よ」といったものがいくつかあり、本書では解説されない項目が存在することでしょうか。
カーマスートラの内容を理解するのに支障はないのですが、これだけ訳注が充実しているのだからこの解説も書いて欲しかったなぁ、という欲が残るのです。
私が気にかかったのはこの1点だけです。古代インドの思想や風俗に興味のある方はご一読されることをお勧めします。

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完訳カ-マ・ス-トラ (東洋文庫 628) 単行本 – 1998/1/9
- 本の長さ372ページ
- 言語日本語
- 出版社平凡社
- 発売日1998/1/9
- ISBN-104582806287
- ISBN-13978-4582806281
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登録情報
- 出版社 : 平凡社 (1998/1/9)
- 発売日 : 1998/1/9
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 372ページ
- ISBN-10 : 4582806287
- ISBN-13 : 978-4582806281
- Amazon 売れ筋ランキング: - 497,691位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 150位東洋文庫
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2017年7月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年12月11日に日本でレビュー済み
新古品、または在庫品と思われます。汚れ等がなく満足です。
2009年11月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何か良さそうなことがあったら、取り入れようかな、と思って読んだのですが、秘薬を使ったり、全く使えそうなことがありませんでした。
多くの妻達の心得も、愛されなくてもひたすら夫に尽くして、他の妻達には優しく、という感じで・・・。
多くの妻達の心得も、愛されなくてもひたすら夫に尽くして、他の妻達には優しく、という感じで・・・。
2005年5月27日に日本でレビュー済み
私はインド文学に関してはほとんどド素人なのですが、ひょんなことからこの本を読むことになりました。
経典なので身構えて読んだのですが、素人でも理解できるとても分かりやすい本でした。
基本的には日常の言葉で書かれており、必要な用語には分かりやすい注釈がつけてあります。
出てくる話も普通の人が十分に理解できる形で書かれており、だからといって低俗になったりはしていない、まさに「性学」の経典だと思います。
経典なので身構えて読んだのですが、素人でも理解できるとても分かりやすい本でした。
基本的には日常の言葉で書かれており、必要な用語には分かりやすい注釈がつけてあります。
出てくる話も普通の人が十分に理解できる形で書かれており、だからといって低俗になったりはしていない、まさに「性学」の経典だと思います。
2005年8月20日に日本でレビュー済み
カーマ・スートラ。この甘美で官能的な響きの虜になったのは、およそ470日前である。以来、この一冊の書のせいで、私は大量のカルピスを流すに至った。これは風俗界の五輪の書である。一生に一度、読まなければ死に際に後悔する。性は全ての創造の源泉である。