河合隼雄先生の『ユング心理学と仏教』がとても面白かったので、その流れで本書を手にしました。心理学を含めた精神医学と、興味の中心は初期仏教ではありますが仏教全般に興味を抱く私としては、タイトルからして魅力的でした。
読んでいる途中に、「明恵上人はゴーダマ・シッダッダが体感した“覚り”と、同じ体験を出来ていたのでは?」と感じました。もしそうであるなら、法然浄土教への痛烈な批判も納得できます。現世で覚りの境地に至った明恵上人にしてみれば、「この世では成仏できない凡夫は、西方極楽浄土に往生してから成仏すれば良い」という法然上人の考え方を受け入れ難かったのではないでしょうか。
本書で知る限りの明恵上人のお人柄からして、他者を痛烈に批判するとは考えにくいです。似たような時代を過ごしたお二人ではありますが、明恵上人と法然上人の間には年齢差があります。敬意を払うべき先輩僧侶が現世で覚りを開くことができなかったことに対する思いが、痛烈な批判という形になったのかもしれません。
また、「明恵上人は覚りを開いていたのではないか」ということを、「夢」という素材を媒介にして伝えてくれた河合先生も、明恵上人と同じレベルで現世を生きていたのではないかな、と思いました。河合先生のご専門はユング心理学であり、日本仏教ではないにも関わらず、これほどまでの著作を完成させたことに、純粋に畏敬の念を抱きます。
私にとっては忘れがたい一冊になりました。
プライム無料体験をお試しいただけます
プライム無料体験で、この注文から無料配送特典をご利用いただけます。
非会員 | プライム会員 | |
---|---|---|
通常配送 | ¥410 - ¥450* | 無料 |
お急ぎ便 | ¥510 - ¥550 | |
お届け日時指定便 | ¥510 - ¥650 |
*Amazon.co.jp発送商品の注文額 ¥3,500以上は非会員も無料
無料体験はいつでもキャンセルできます。30日のプライム無料体験をぜひお試しください。
新品:
¥1,034¥1,034 税込
ポイント: 63pt
(6%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon.co.jp 販売者: Amazon.co.jp
新品:
¥1,034¥1,034 税込
ポイント: 63pt
(6%)
無料お届け日:
3月31日 日曜日
発送元: Amazon.co.jp
販売者: Amazon.co.jp
中古品: ¥290
中古品:
¥290

無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
明恵 夢を生きる (講談社+α文庫) 文庫 – 1995/10/17
河合 隼雄
(著)
{"desktop_buybox_group_1":[{"displayPrice":"¥1,034","priceAmount":1034.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"1,034","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"i8eAv4ItqLSVJ6wkfB%2F3kuKo3NgiYTiSfM6aatKjJxhVoiG97CucjGBcS9gvmsn6m7GqyiDZQo0k%2Fghi6%2BKzSXx65JnTOSqCqxzXwmJRqDR2Q%2FGmlDEPlQjPzLLYpmLs","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"NEW","aapiBuyingOptionIndex":0}, {"displayPrice":"¥290","priceAmount":290.00,"currencySymbol":"¥","integerValue":"290","decimalSeparator":null,"fractionalValue":null,"symbolPosition":"left","hasSpace":false,"showFractionalPartIfEmpty":true,"offerListingId":"i8eAv4ItqLSVJ6wkfB%2F3kuKo3NgiYTiSxcbPY3XKElEwVq2dnokAUsgeN3zlbxuCfgyDKto%2F0u1yBFfJRn9EyHAGvbmiSjuAaqObriYzmLAJLRvQgjki%2F5YX8sxKo%2BHXTzisGGWe76PHy%2BPkL%2FBTWfPQ3%2F3kViQBS%2B0g90AsGcyYY5zMX35yZg%3D%3D","locale":"ja-JP","buyingOptionType":"USED","aapiBuyingOptionIndex":1}]}
購入オプションとあわせ買い
夢で生き方が変わる! 夢で人の心のあり方を知る!!――生涯にわたって自分の夢を記録しつづけた名僧・明恵の『夢記』を手がかりに、夢の読み方、夢と自己実現の関係、ひいては人間がいまを生きるうえで大切なことなどをユング心理学の第一人者、夢分析の大家が実証的に説く。第1回新潮学芸賞を受賞した、人間の深層に迫る名著。
- 本の長さ392ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1995/10/17
- 寸法10.8 x 1.7 x 14.8 cm
- ISBN-104062561182
- ISBN-13978-4062561181
よく一緒に購入されている商品

対象商品: 明恵 夢を生きる (講談社+α文庫)
¥1,034¥1,034
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
在庫あり。
¥1,540¥1,540
最短で3月31日 日曜日のお届け予定です
在庫あり。
総額:
当社の価格を見るには、これら商品をカートに追加してください。
ポイントの合計:
pt
もう一度お試しください
追加されました
一緒に購入する商品を選択してください。
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
著者について
1928年、兵庫県に生まれる。京都大学理学部卒業。臨床心理学者。京都大学名誉教授。現在、国際日本文化研究センター所長。スイスのユング研究所に留学後、日本にユング派心理療法を確立した。著書には『こころの処方箋』(新潮社)、『河合隼雄著作集』(全14巻・岩波書店)、『ウソツキクラブ短信』『こどもはおもしろい』(以上、講談社)、『昔話の深層』『魂にメスはいらない』『日本人とアイデンティティ』『あなたが子どもだったころ』(以上、講談社+α文庫)などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (1995/10/17)
- 発売日 : 1995/10/17
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 392ページ
- ISBN-10 : 4062561182
- ISBN-13 : 978-4062561181
- 寸法 : 10.8 x 1.7 x 14.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 69,431位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 86位講談社+α文庫
- - 332位臨床心理学・精神分析
- - 776位思想
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

(1928-2007)兵庫県生れ。京大理学部卒。京大教授。
日本のユング派心理学の第一人者であり、臨床心理学者。文化功労者。文化庁長官を務める。独自の視点から日本の文化や社会、日本人の精神構造を考察し続け、物語世界にも造詣が深かった。著書は『昔話と日本人の心』(大佛次郎賞)『明恵 夢を生きる』(新潮学芸賞)『こころの処方箋』『猫だましい』『大人の友情』『心の扉を開く』『縦糸横糸』『泣き虫ハァちゃん』など多数。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2022年4月17日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2016年6月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
現代になって明恵が再評価されるのは、自由や平等、基本的人権といったギリシア思想に始まりロックやヘーゲルといった西洋由来の観念が現代の日本人にある程度浸透して、そうした観点から個別的に人を価値判断するようになったからなのだろうかと思う。
例えば本書の中で、ユングのアニマ・アニムスという異性像を援用して明恵の女性に対する見方を詳述しているが、当時仏教においては女性は男性より煩悩を多く持った存在として扱われたり、いわゆる男尊女卑の考え方に基づくものだったが、そんな時代において明恵は女性を極めて平等に見ていたようだ。それはきっと現代の私たちでもできないくらいに。ちなみに妻帯した同い年の親鸞でさえも変成男子説を否定していないようだ。
そうした一見近代的に見える自我の在り方のバックボーンと成っているのが華厳哲学である。僕には華厳の世界は全くわからないし、本書でも詳しくは述べられていないが、事事無碍という一章を割いて解説している。明恵は島に手紙を出したり、その島で拾った石に蘇婆石と名づけ愛玩したりしていたらしいが、それは縁起の元となる「理」と「事」が互いに常に流動的に相互作用する一種の流れのようなものとして捉えられている華厳哲学がもたらした行動ではないかと河合氏は推察している。先に書いた女性に対する考え方もそうしたところに根本がありそうな感じがして、西洋思想が覆う現代日本の最中にあって、大乗以前の仏教哲学の持つ可能性に興味が湧いた。
私たちのようなパンピーは明恵の生涯を知ってどう転んでも参考にはできないが、河合氏は、無意識の部分、未知なる部分、抽象的な部分が与える私たちの客観的(と思っている)意識に再度心を研ぎ澄まして見ることの必要性を、明恵という中世に生きた一人の天才僧の生涯を通じて問いかけている。
例えば本書の中で、ユングのアニマ・アニムスという異性像を援用して明恵の女性に対する見方を詳述しているが、当時仏教においては女性は男性より煩悩を多く持った存在として扱われたり、いわゆる男尊女卑の考え方に基づくものだったが、そんな時代において明恵は女性を極めて平等に見ていたようだ。それはきっと現代の私たちでもできないくらいに。ちなみに妻帯した同い年の親鸞でさえも変成男子説を否定していないようだ。
そうした一見近代的に見える自我の在り方のバックボーンと成っているのが華厳哲学である。僕には華厳の世界は全くわからないし、本書でも詳しくは述べられていないが、事事無碍という一章を割いて解説している。明恵は島に手紙を出したり、その島で拾った石に蘇婆石と名づけ愛玩したりしていたらしいが、それは縁起の元となる「理」と「事」が互いに常に流動的に相互作用する一種の流れのようなものとして捉えられている華厳哲学がもたらした行動ではないかと河合氏は推察している。先に書いた女性に対する考え方もそうしたところに根本がありそうな感じがして、西洋思想が覆う現代日本の最中にあって、大乗以前の仏教哲学の持つ可能性に興味が湧いた。
私たちのようなパンピーは明恵の生涯を知ってどう転んでも参考にはできないが、河合氏は、無意識の部分、未知なる部分、抽象的な部分が与える私たちの客観的(と思っている)意識に再度心を研ぎ澄まして見ることの必要性を、明恵という中世に生きた一人の天才僧の生涯を通じて問いかけている。
2023年5月7日に日本でレビュー済み
割と明恵上人が好きでこちらもKindle Unlimitedであったので思わず読んでしまった。
この河合隼雄氏の受け取った明恵は高潔峻厳で超変わり者の求道者というよりは、ユーモアに溢れて仏道を夢という自分に起る現象を通しても徹底的に見つめていった人だということがわかる。その中には清濁を合わせのむとかいうことでお茶を濁して生きている自分とはまったく違い、どこまでも清濁を見続けていた人という感じがある。
性というものに引っぱられるわたし。それを飛び越えた真如のものとの出遇い。西洋の神話系に出てくる女性の表現に関する河合氏の解説がいいのだけど、この逆方向にいいって一足飛びというのが妙にしっくりきた。
そうそう、明恵上人が大事にされた善妙という女性について調べなければならない。メモ。
夢。じつは自分は夢の話しを他人にしたらドン引きされること間違いなしの悪夢専門なのであった。むしろ悪夢だから覚えているのだろうか。
夢告というのはあるのだろうか。法然上人も親鸞聖人もその体験がご自身の中で大事なこととされている気がする。
自分にはわからないけれど、河合氏が描かれているように、弟子たちは明恵を見て自分には起らないことだけどこの方のは本当だと思っていたのだろう。なんとも楽しくめんどくさそうなこだわりがあるようでいてそのこだわりがある自分もわかって他者に接していた感じがする。すごく会ってみたい。この本を見て明恵上人に会ってみたいと思った。
フロイトやユングに興味のある方、夢に興味がある方、すごい仏教者に興味がある方におすすめ。
先日、京都国立博物館で偶然明恵上人直筆の『摧邪輪』を拝見することが出来た。これが明恵上人か・・・書かれた文字の一つ一つを眺め筆先、それを持つ手、眺める眼差しを思い浮かべてとてもいい時間を過ごすことが出来た。
この河合隼雄氏の受け取った明恵は高潔峻厳で超変わり者の求道者というよりは、ユーモアに溢れて仏道を夢という自分に起る現象を通しても徹底的に見つめていった人だということがわかる。その中には清濁を合わせのむとかいうことでお茶を濁して生きている自分とはまったく違い、どこまでも清濁を見続けていた人という感じがある。
性というものに引っぱられるわたし。それを飛び越えた真如のものとの出遇い。西洋の神話系に出てくる女性の表現に関する河合氏の解説がいいのだけど、この逆方向にいいって一足飛びというのが妙にしっくりきた。
そうそう、明恵上人が大事にされた善妙という女性について調べなければならない。メモ。
夢。じつは自分は夢の話しを他人にしたらドン引きされること間違いなしの悪夢専門なのであった。むしろ悪夢だから覚えているのだろうか。
夢告というのはあるのだろうか。法然上人も親鸞聖人もその体験がご自身の中で大事なこととされている気がする。
自分にはわからないけれど、河合氏が描かれているように、弟子たちは明恵を見て自分には起らないことだけどこの方のは本当だと思っていたのだろう。なんとも楽しくめんどくさそうなこだわりがあるようでいてそのこだわりがある自分もわかって他者に接していた感じがする。すごく会ってみたい。この本を見て明恵上人に会ってみたいと思った。
フロイトやユングに興味のある方、夢に興味がある方、すごい仏教者に興味がある方におすすめ。
先日、京都国立博物館で偶然明恵上人直筆の『摧邪輪』を拝見することが出来た。これが明恵上人か・・・書かれた文字の一つ一つを眺め筆先、それを持つ手、眺める眼差しを思い浮かべてとてもいい時間を過ごすことが出来た。
2014年12月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
内容的に大変参考になりました。明恵研究には必読書では?と思いました。着信、包装などに何も問題はなく、結構でした。
2016年5月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
12世紀に実在した僧侶である明恵上人。
その時代に自身の夢に関して、生涯に渡って記録し、考察していた人が存在していたことに、ただただ驚く。
上人が記した「夢記」を紐解きながら、ユング心理学が専門の著者が、西洋のイメージ(元型)を取り入れつつ
また深く考察していて、本当に奥が深い本だと思う。
特に興味深かったのは、夢に関する考察に留まらず、明恵上人の人生に触れた部分と
(例えば、著者はユング心理学でいう共時性の観点からそれを考察していたり)、
本書の後半に多く割かれた「女性」に関する内容でした。
仏教では、元来女性は救いがたいと考えられてきたといいます。
僧侶であった明恵上人の場合、女性(アニマ)との統合が、夢においてどのように果たされ、
現実においてどのような影響をもったのか。
明恵や親鸞、また著者自身がどのように思われていたのかも垣間見える。
少し、暖かい気分になったり、ユーモラスに感じたりする部分もあったり。
内容が深く、命題が大きいため、消化するのにまだ時間がかかりそうですが、
夢に関する類を見ない資料だと思います。
その時代に自身の夢に関して、生涯に渡って記録し、考察していた人が存在していたことに、ただただ驚く。
上人が記した「夢記」を紐解きながら、ユング心理学が専門の著者が、西洋のイメージ(元型)を取り入れつつ
また深く考察していて、本当に奥が深い本だと思う。
特に興味深かったのは、夢に関する考察に留まらず、明恵上人の人生に触れた部分と
(例えば、著者はユング心理学でいう共時性の観点からそれを考察していたり)、
本書の後半に多く割かれた「女性」に関する内容でした。
仏教では、元来女性は救いがたいと考えられてきたといいます。
僧侶であった明恵上人の場合、女性(アニマ)との統合が、夢においてどのように果たされ、
現実においてどのような影響をもったのか。
明恵や親鸞、また著者自身がどのように思われていたのかも垣間見える。
少し、暖かい気分になったり、ユーモラスに感じたりする部分もあったり。
内容が深く、命題が大きいため、消化するのにまだ時間がかかりそうですが、
夢に関する類を見ない資料だと思います。
2013年8月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
素人の私では少し難しい本でした。仏教が好きな方にはいいかもw
2018年4月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
個人的なことでなので一般的なレビューには当てはまらないかもしれませんが、ちょうどタイムリーにこの本に出逢いました。
とても大切な本となりました。
この時代にずっと夢を記録し続けた明恵に会ってみたいと思う本でした。
とても大切な本となりました。
この時代にずっと夢を記録し続けた明恵に会ってみたいと思う本でした。
2013年11月17日に日本でレビュー済み
河合隼雄の著作は折に触れ読んでいるが、本書は長く読まなかった。鎌倉時代の全く知らない明恵上人(日本史で学ばなかったように思う)、明恵の著した夢の記録となれば古文、また仏教であることから敷居を高く感じていたからである。
文庫版まえがきを読むと、河合は「・・・明恵の『夢記』を読んだ。このときは、とうとう日本人の師を見出したという強い確信を持った」とある。ユングを師とする河合が日本の師を見出したと言うからには、何をさておいても本書を読まねばと思い立った。実際に読むと他著作と隔たりはなかった。河合が分かりやすく書いてくれているからだと思う。
明恵が遺した夢について、ユング派の河合が夢分析をしている。明恵や関わることは本書からうかがい知る範囲であるが、河合の夢分析等に疑問を感じたものもある。
例えば、「乳母の死の夢」は、明恵が幼くして父母とも亡くした後に見た夢なので、天涯孤独となったことを表しているのではなかろうか。乳母の体が切り刻まれていたのは、「平生罪深かるべき者なれば」とあり、明恵が乳母の何か悪事を知っていたのでそうなるのも致し方ないということではなかろうか。
九相詩絵に野ざらしで描かれているのは、若い女であって男ではない。男であれば修行僧が自らに置き換えて自分の生死について考えるが、それを意図して描かれていない。思慕を寄せたり肉欲の対象としても若い女は永続するものではなく、虚しいものだから欲を捨てよ、ということではなかろうか。
明恵は日本での教えに対する懐疑が強く、夢に繰り返しインドの僧が現れる。それは仏陀ではなかろうか。教えを実践するには下山しかないと考えたがインド僧に止められる。下山せずに実践するには捨身しかないと夜、墓場で身を投げ出したが喰われなかった。出家してはじめて捨身が夢で成就したということでは...
仏教が女性は救われないとしてきたにも関わらず、日本で最初に出家したのは女性、尼僧であったということには驚いた。明恵と承久の乱、貞永式目との関係も興味深い。明恵の夢に、ユングが記した夢との類似の指摘もある。
おそらく生前、河合も自身の夢とその分析を記述していたと拝察する。心理療法家としての倫理から、クライエント事例の公表を戒めてきた河合だから、自身の夢を開陳することはご子息に固く禁じていただろう。河合のことは「未来への記憶」や、泣き虫「はあちゃん」からしか伺い知ることはできないが、可能な範囲で河合自身の夢と分析が編纂されて出版されることを望む、ユング自伝のように。
文庫版まえがきを読むと、河合は「・・・明恵の『夢記』を読んだ。このときは、とうとう日本人の師を見出したという強い確信を持った」とある。ユングを師とする河合が日本の師を見出したと言うからには、何をさておいても本書を読まねばと思い立った。実際に読むと他著作と隔たりはなかった。河合が分かりやすく書いてくれているからだと思う。
明恵が遺した夢について、ユング派の河合が夢分析をしている。明恵や関わることは本書からうかがい知る範囲であるが、河合の夢分析等に疑問を感じたものもある。
例えば、「乳母の死の夢」は、明恵が幼くして父母とも亡くした後に見た夢なので、天涯孤独となったことを表しているのではなかろうか。乳母の体が切り刻まれていたのは、「平生罪深かるべき者なれば」とあり、明恵が乳母の何か悪事を知っていたのでそうなるのも致し方ないということではなかろうか。
九相詩絵に野ざらしで描かれているのは、若い女であって男ではない。男であれば修行僧が自らに置き換えて自分の生死について考えるが、それを意図して描かれていない。思慕を寄せたり肉欲の対象としても若い女は永続するものではなく、虚しいものだから欲を捨てよ、ということではなかろうか。
明恵は日本での教えに対する懐疑が強く、夢に繰り返しインドの僧が現れる。それは仏陀ではなかろうか。教えを実践するには下山しかないと考えたがインド僧に止められる。下山せずに実践するには捨身しかないと夜、墓場で身を投げ出したが喰われなかった。出家してはじめて捨身が夢で成就したということでは...
仏教が女性は救われないとしてきたにも関わらず、日本で最初に出家したのは女性、尼僧であったということには驚いた。明恵と承久の乱、貞永式目との関係も興味深い。明恵の夢に、ユングが記した夢との類似の指摘もある。
おそらく生前、河合も自身の夢とその分析を記述していたと拝察する。心理療法家としての倫理から、クライエント事例の公表を戒めてきた河合だから、自身の夢を開陳することはご子息に固く禁じていただろう。河合のことは「未来への記憶」や、泣き虫「はあちゃん」からしか伺い知ることはできないが、可能な範囲で河合自身の夢と分析が編纂されて出版されることを望む、ユング自伝のように。