長年「ブラック・ジャック」を書き続けた反動が生んだと言われる、手塚治虫屈指のギャグ漫画のアニメ化。制作会社の倒産によってわずか1ヶ月(全四話)で放送を打ち切られた作品としても知られる。
しかし、あくまで打ち切りの理由はマネージメントにあったわけで、作品そのものに問題があったわけではない。一部省略がされていたり他の話からエピソードを引っ張って来たりしてはいるもののストーリーは原作にほぼ忠実、しかもそれを手掛けたのが「タイムボカン」の小山高男グループなのだから!当然音楽は山本正之&神保正明の黄金タッグだ。息をもつかせぬギャグと駄洒落のつるべ打ち、随所に組み込まれた時事ネタや時代劇ネタ、そしてツボを心得た声優の快演…と、鉄壁の小山ワールド。「ボカン」シリーズのトミー・山よろしく、進行役のキャラクター、コウモリ安のルックスは、演じる肝付兼太氏そのまんま。ぜひこの時代ならではの"テレビまんがの欄熟"をまるかじりして頂きたい。
それだけではない。本作には後に小山氏が手掛ける大ヒット作「Dr.スランプ アラレちゃん」で展開されたギャグの片鱗もかいま見えるのだ。テレビアニメの始祖手塚治虫、中興の祖タイムボカン、そして80年代を制したアラレちゃん…製作された1982年時点での、テレビアニメの過去・現在・未来が本作には詰まっている。忘れられていた時代のミッシング・リンクが、ここにはあるのだ。