「ノルウェイの森」が発売されたのは1987年。自分が大学に入った年。バブル経済の足音が聞こえてきた年。それから二十数年,ようやく再読しました。
1987年という時代はまだ,昭和の文豪と呼ばれる人たちが形成している文学の世界があり(小林秀雄だって生きていた),ぼくは当時,この小説は,そういった古くさい文学世界という背景があってこそ成り立つ小説なのではないかと,漠然と考えていました。もちろん,本書の性的な表現には相当な「刺激」を受けましたが。
しかし再読してみると,本書には,何か不思議な安定感があります。
その安定感が何に由来するか,その1つの要因として,この小説が描いている文学的な世界観が,今の文学的な世界観の「スタンダード」になっていることを,考える必要があるように思います。
内容についての感想ですが,作者はこの小説の1つの試みとして,セックスと死について徹底的に言及すること,をあげています。
たしかに十分な言及,うっとうしいほどの言及がなされています。それらの少なからぬ事柄について共感できるかといわれれば,ちょっと難しいのですが,それは個人的な受容の問題かもしれません。
本書は1987年当時,爆発的に売れました。その理由の1つとして,セックスと死というヒトの2大シークレットについて,わかりやすい文体で描かれているということがありました。
ほとんどの人間は,他人のセックスと死を詳細に,それも自分の理解の範囲内で,のぞき見たいと思っているものです。
とはいえ本書は,短い言葉で表現できるほど,単純な小説ではないようにも思われます。

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村上春樹全作品 1979~1989〈6〉 ノルウェイの森 単行本(ソフトカバー) – 1991/3/15
村上 春樹
(著)
限りのない喪失と再生を描く話題の長篇小説。60年代終りから70年始めにかけての激しくて、物静かで、哀しい、永遠の恋愛小説。青春のきらめき、生と死のあやうい交錯、透明な余韻に揺れるロングセラー。
- 本の長さ420ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日1991/3/15
- 寸法15.3 x 3.4 x 21.2 cm
- ISBN-104061879367
- ISBN-13978-4061879362
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登録情報
- 出版社 : 講談社 (1991/3/15)
- 発売日 : 1991/3/15
- 言語 : 日本語
- 単行本(ソフトカバー) : 420ページ
- ISBN-10 : 4061879367
- ISBN-13 : 978-4061879362
- 寸法 : 15.3 x 3.4 x 21.2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 715,316位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 16,761位日本文学
- カスタマーレビュー:
著者について
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1949(昭和24)年、京都府生れ。早稲田大学文学部卒業。
1979年、『風の歌を聴け』でデビュー、群像新人文学賞受賞。主著に『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞受賞)、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『ノルウェイの森』、『アンダーグラウンド』、『スプートニクの恋人』、『神の子どもたちはみな踊る』、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』など。『レイモンド・カーヴァー全集』、『心臓を貫かれて』、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、『ロング・グッドバイ』など訳書も多数。
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2012年5月11日に日本でレビュー済み
2008年11月9日に日本でレビュー済み
初読後、約10年ぶりに、またしっかりと読みたくなり、あえて全集版を購入しました。
こんなに、セックスに対しては向き合っていた作品だったとは、いまさらながら驚きました。
一般的に恋愛小説として名があげられる作品だけど、ヒトが成長していく過程で愛していたモノ、
記憶、人物、そういったものをやがて、手放すときが訪れたならば、また『ノルウェイの森』を
読み返してみたい。
10年経とうが、村上春樹ワールドは、まったく小説として古びてない。やっぱり素敵だ。
こんなに、セックスに対しては向き合っていた作品だったとは、いまさらながら驚きました。
一般的に恋愛小説として名があげられる作品だけど、ヒトが成長していく過程で愛していたモノ、
記憶、人物、そういったものをやがて、手放すときが訪れたならば、また『ノルウェイの森』を
読み返してみたい。
10年経とうが、村上春樹ワールドは、まったく小説として古びてない。やっぱり素敵だ。
2004年12月25日に日本でレビュー済み
~なんといってもまずはこれです。いったいほかにどの本を選べというのだろうか。これと「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」が双璧だとおもうですが、あえて「ノルウェイの森」です。
この全集版は上下刊が一冊で読めるし、フォントがきれいだし、装丁もかっこいいし、大きいから行方不明になりにくいし。
純文学だとか大衆文学だとかそんなどう~~でもいいジャンルわけを軽く飛び越して読む人の心を揺さぶる本物の「物語」です。流行ものの「セカチュー」だとか「いま会い」と読み比べていただきたい、ドン(机を叩く音)!
まずは文庫でどうぞ。~
この全集版は上下刊が一冊で読めるし、フォントがきれいだし、装丁もかっこいいし、大きいから行方不明になりにくいし。
純文学だとか大衆文学だとかそんなどう~~でもいいジャンルわけを軽く飛び越して読む人の心を揺さぶる本物の「物語」です。流行ものの「セカチュー」だとか「いま会い」と読み比べていただきたい、ドン(机を叩く音)!
まずは文庫でどうぞ。~
2002年3月12日に日本でレビュー済み
赤と緑の装丁は、今でも本屋さんで
よく見かけます。
全集は“おまけ”付き。
それは、作者自身が自作を語る、11ページの小冊子。
登場人物が亡くなっていくことについての説明や、
最終的に本のタイトルが奥様の意見をきいて決まったことなど。
裏話がたくさん出てきます。
ファンの方は必見ですよね。
よく見かけます。
全集は“おまけ”付き。
それは、作者自身が自作を語る、11ページの小冊子。
登場人物が亡くなっていくことについての説明や、
最終的に本のタイトルが奥様の意見をきいて決まったことなど。
裏話がたくさん出てきます。
ファンの方は必見ですよね。
2004年8月3日に日本でレビュー済み
「私を忘れないで」と頼んだ直子。この物語はワタナベがこの約束を果たすために書いたものである。直子と一緒にいたときの感情はそのときにしか感じることのできないものであり、今はその感情を失ってしまった。直子は姉とキズキの死により人を愛することができなくなったのだと思う。これは死の象徴だと思う。また緑は父母の死から愛を得る、生の象徴である。ワタナベは生か死か直子か緑かさまよう。過去に失われたものはなんなのか・・・そして、それによって得るものはなんなのか、考えさせられた。