1977年7月発売です。内容の素晴らしさは不変ですので、今も聞き継がれています。
さだまさしさんがソロになり、2枚目のアルバムになります。音楽の完成度はとても高く、その音楽志向のエッセンスが詰まっている感じを今でも受けます。
いずれの作品もそれぞれにドラマがあり、起承転結を感じさせ、素敵な短編小説のような味わいが伝わります。それぞれのストーリーがドラマのようでもあるのが特徴でしょう。
「つゆのあとさき」は誰しも経験する別れの情景を美しく紡いだ佳曲です。別れを比喩的に卒業に例えたようでもあり、一般的な3月の卒業を描いたようでもありますが、映画のワンシーンのように悲しくも美しい情景が目の前に浮かぶようなステキな詩で綴られていました。感情を込めたさだの高音が美しく心に響いてきます。
「飛梅(とびうめ)」は福岡の大宰府天満宮の心字池や太鼓橋の情景を、別れゆく恋人の心情に重ね合わして表現した名曲です。コンポーザーとしても歌手としても卓越した表現力を見せていました。サビの部分の絶唱はリスナーの心を鋭く貫く気迫を感じます。
「雨やどり」は説明不要のヒット曲です。サービス精神がこのような曲を創りましたが、主人公への温かい目が根底に感じられ、ほろっとさせられる曲です。主人公は妹さんのことを描いたというのは有名な話になりました。
「桃花源」は、弟の繁理さんが台湾留学中に採譜したメロディを使用しており、とても抒情的な歌詞をつけていました。日本の故郷の情景を色彩豊かに言葉にしたさだまさしの感性に驚きを禁じ得ません。懐かしさとともに切ない感情に襲われる曲だと思います。
日本語の美しさを至る所で感じさせる詩に彩られている「晩鐘」も好きな曲です。たおやかな言葉に綴られる情景はまさしく美しい日本画の世界です。
亡くなった人のことを思い出す「セロ弾きのゴーシュ」や、軽快なロック調のサウンドが珍しい「吸殻の風景」など印象に残る曲が収められているアルバムです。若い世代の方にも是非聴いて欲しいですね。