ローマ・カトリック教会が強い権力を持つスペインが舞台で、修道女見習のビリディアナと彼女に求婚する叔父、そして叔父の息子が主な登場人物です。
叔父が自死した後、ビリディアナは残された広大な屋敷を町の浮浪者や物乞いたちの保護施設(作品の中では修道院)にしようとして静かに神へ祈りを捧げ、息子は領地を有効活用するために忙しく働きます。その祈りと労働のシーンが交互に映され、それは聖と俗の隠喩としての対比なのですが、同時にその裏にあるのは虚しいものと実のあるもの、意味のないものと意味のあるもの痛烈な対比です。
ビリディアナが留守の間、屋敷で浮浪者たちは飲み歌い狂い、ハレルヤをバックに踊り始め、饗宴のテーブルには13人の浮浪者たちがそろい、盲人の男は「貧しい私をこの家に招き入れたのは聖なる主、神よ償ってくれ」と杖で手探りしながら言います。さらに女の子は冠を焚火で焼き、最後は妙に軽いレコード音楽をバックにビリディアナ、息子、使用人の女の三人がカードをするシーンで終わります。
ブニュエルが信仰の無力さ・無意味さを強烈に描き出した作品です。