オーラバスター、シリーズ通算１２巻目（番外編含む）。全３部作予定（今現在は未完）の、第２期スタートの巻です。
希沙良と十九郎、諒と亮介の穏やかな絆から始まる物語。やがて、唐突に起こる事件…。そんな中、雷将・勝呂との休戦協定に臨む忍。一方、七瀬傍系の集まりに呼び出された十九郎は、ある人物達によって誘拐されてしまいます。
初めて十九郎にスポットライトを当てた作品。彼自身の「魂の片割れ」とでも言うべき希沙良との関係の変化や、ある意味「最も本家に近い」術者として、彼とその不在を介して、（今まで『道者』位しか語られなかった）七瀬本家の暗黒を垣間見れます。
そして初めて、指揮官が不在になった物語でもあります。作中で諒も言っているけれど、忍がいなくなる事は「ディアーナ」や「天冥」など実は何度もあったけれど。今回は十九郎を取り戻すお話なので、忍だけではなく、勿論忍の代理を務められる十九郎自身も不在なわけで。そう言った意味で、「天冥」とも「ディアーナ」とも違う物語です。
しかし、第１期から受け継いだ要素も、非常に多い物語だと思います。希沙良を諒がちょっと気遣ってみたり、それぞれの関係性は紛れも無く、「天冥」後のものです。七瀬伊都子の弱さとか、伽羅王・忍の（一時的な）死とか、一真の十九郎への歪んだ尊敬心とか、「天冥」などで語られた事が実は伏線だったのかと、今さら気付いてみたりしました。
シリーズ全体を眺めれば、忍の「自由」への、１つの布石となる物語と言えるかも知れません。そこで単純に、妖者ＶＳ空者のバトルが始まったぜ！！とならないのが本当に「オーラバ」らしいですよね。
決戦へ向かう為にも、必要だったのかもしれない物語だけれど…今回もとにかくギリギリの切なさや必死さが沢山詰まっています。希沙良と一真のあの屋上のシーンとか。決して冷静さを崩さない、鋼の精神の人・十九郎が、この先どこまで追い詰められてゆくのか。後編を読みたいようで読むのが怖くもある前編。
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