
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
海の地政学──海軍提督が語る歴史と戦略 単行本 – 2017/9/7
佐藤優氏 推薦!
(作家・元外務省主任分析官)
「政治的、軍事的観点からも海が『生き物』であることがわかる。海を制する国家の内在的論理が見えてくる」
中国・北朝鮮への対応、そして日本の針路とは?
NATO軍最高司令官を務めた
米海軍提督が語る「21世紀の海洋戦略」。
米海軍出身者初のNATO欧州連合軍最高司令官を務めたジェイムズ・スタヴリディス提督。現役時代から尊敬を集め、現在はタフツ大学フレッチャー・スクールで学長を務める元海軍大将が、歴史への深い洞察と自らの豊富な艦隊勤務の経験をもとに、今後、世界の行方を左右する海洋戦略を語る。
地中海の覇権をめぐる古代ギリシャ諸国やローマの海戦、コロンブスやマゼランらによる大航海、太平洋を舞台にした日米の艦隊戦、台頭する中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動向など、古今東西の海事史に照らして現下の情勢を見定め、通商、資源、環境面にも目を配りつつ、「海」がいかに人類史を動かし、今後も重要であり続けるかを説き明かす。
海軍理論家マハンの系譜を次ぐ新たな「シーパワー(海上権力)」論に、日本と世界の針路が見える。海事・貿易関係者、国際情勢に関心のある読者は必読の書。
解説/奥山真司(地政学/戦略学者)
(作家・元外務省主任分析官)
「政治的、軍事的観点からも海が『生き物』であることがわかる。海を制する国家の内在的論理が見えてくる」
中国・北朝鮮への対応、そして日本の針路とは?
NATO軍最高司令官を務めた
米海軍提督が語る「21世紀の海洋戦略」。
米海軍出身者初のNATO欧州連合軍最高司令官を務めたジェイムズ・スタヴリディス提督。現役時代から尊敬を集め、現在はタフツ大学フレッチャー・スクールで学長を務める元海軍大将が、歴史への深い洞察と自らの豊富な艦隊勤務の経験をもとに、今後、世界の行方を左右する海洋戦略を語る。
地中海の覇権をめぐる古代ギリシャ諸国やローマの海戦、コロンブスやマゼランらによる大航海、太平洋を舞台にした日米の艦隊戦、台頭する中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の動向など、古今東西の海事史に照らして現下の情勢を見定め、通商、資源、環境面にも目を配りつつ、「海」がいかに人類史を動かし、今後も重要であり続けるかを説き明かす。
海軍理論家マハンの系譜を次ぐ新たな「シーパワー(海上権力)」論に、日本と世界の針路が見える。海事・貿易関係者、国際情勢に関心のある読者は必読の書。
解説/奥山真司(地政学/戦略学者)
- 本の長さ328ページ
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2017/9/7
- ISBN-104152097078
- ISBN-13978-4152097071
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
ページ 1 以下のうち 1 最初から観るページ 1 以下のうち 1
商品の説明
出版社からのコメント
「今日の安全保障環境における海洋の重要性と影響力を、スタヴリディス提督ほど理解している人物はいない……必読書である」
――ジョン・マケイン(共和党上院議員)
「著者はその知性を総動員して、われわれが海の世界をクリアかつ鋭敏に理解することを助けてくれる。荒れ狂う世紀に不可欠な分析だ」
――ロバート・M・ゲーツ(元米国防長官)
――ジョン・マケイン(共和党上院議員)
「著者はその知性を総動員して、われわれが海の世界をクリアかつ鋭敏に理解することを助けてくれる。荒れ狂う世紀に不可欠な分析だ」
――ロバート・M・ゲーツ(元米国防長官)
著者について
アメリカ合衆国海軍大将(退役)。1976年、アナポリスの米海軍兵学校を卒業後、35年以上を現役の海軍軍人として過ごす。複数の駆逐艦や空母打撃群などの指揮を執り、7年にわたり四つ星の海軍大将として勤務。2009年から13年まで、米海軍出身者では初のNATO(北大西洋条約機構)欧州連合軍最高司令官を務めた。退役後、2013年よりタフツ大学フレッチャー・スクール学長。NATO司令官時代の回想録The Accidental Admiral(2014年)などの著書がある。国際安全保障に関する論評を、《ニューヨーク・タイムズ》《ワシントン・ポスト》《アトランティック》などに寄稿している。
登録情報
- 出版社 : 早川書房 (2017/9/7)
- 発売日 : 2017/9/7
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 328ページ
- ISBN-10 : 4152097078
- ISBN-13 : 978-4152097071
- Amazon 売れ筋ランキング: - 272,586位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,796位外交・国際関係 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

著者の本をもっと発見したり、よく似た著者を見つけたり、著者のブログを読んだりしましょう
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2023年12月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
海軍軍人として40年以上を過ごし、米海軍出身者としては初のNATO欧州連合軍司令官を務めた著者によるシーパワー論である。▼全世界にある海とその特徴(歴史)を概観しつつ、最後にはマハンのシーパワー論を現代に引き直して、米海軍の戦略について述べている。▼全世界の海を実際に回っている著者の記述は、迫力がある。シーパワー論は、海軍軍人が述べてこそ輝くように思える。▼著者の博識さは随所で披見され、頁数以上に中身も分厚い本である。手に取ってみて読むに値する本である。
2017年9月22日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は、いわゆる七つの海と人がどのように関わって来たのかを俯瞰しつつ、最終章である第9章で、アメリカのこれからの海洋戦略に触れています。海を道として行われる人の交流や物の交易、歴史に名だたる海戦についてはざっくりと述べられています。ここは紙幅の点からみれば致し方ないですが、やや駆け足気味の感があるのは否めません。
第7章では北極海について述べています。地球温暖化とともに現実味を帯びてきた北極海航路ですが、著者が、特に自前の砕氷船の数の不足の面で、いささか懸念を滲ませながらも、北極海とそれを臨む他の国々と如何に関係を構築していくか論述しているのは非常に興味深いです。
なお、本書の題に「地政学」とありますが、例えばマッキンダーを持ち出してハードな地政学に触れているかといえば、そういった作りではありません。確かに第9章では、アルフレッド・セイヤー・マハンがかつて考察したシーパワー(海上権力)の概念を用いて説明を行っていますが、本書はアメリカ(海軍)が今後もどのようにして海洋を通じて他国と係っていくか、という(あくまでも著者の考える)政策論となっています。
最後に、著者の言っている事はよく分かるのですが、親分がトランプさんだとどうなりますかね? 良くも悪くも。
第7章では北極海について述べています。地球温暖化とともに現実味を帯びてきた北極海航路ですが、著者が、特に自前の砕氷船の数の不足の面で、いささか懸念を滲ませながらも、北極海とそれを臨む他の国々と如何に関係を構築していくか論述しているのは非常に興味深いです。
なお、本書の題に「地政学」とありますが、例えばマッキンダーを持ち出してハードな地政学に触れているかといえば、そういった作りではありません。確かに第9章では、アルフレッド・セイヤー・マハンがかつて考察したシーパワー(海上権力)の概念を用いて説明を行っていますが、本書はアメリカ(海軍)が今後もどのようにして海洋を通じて他国と係っていくか、という(あくまでも著者の考える)政策論となっています。
最後に、著者の言っている事はよく分かるのですが、親分がトランプさんだとどうなりますかね? 良くも悪くも。
2019年1月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
米軍経験者の忌憚のない意見であり、現在の極東情勢を理解する一助となった。
2017年11月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者のジェイムズ・スタヴリディスは、1955年アメリカのフロリダ州出身。1976年に海軍兵学校を卒業してから海軍士官としての経歴を重ね、最終的に欧州のNATO軍最高司令官を務めたのち2013年に退役するまで、実に37年にわたって米海軍の軍人として生きてきた人物。
本書で著者は、海洋の地政学とそれが国際社会にどのように影響を与えているのかについて、自身の海軍軍人としての経験を踏まえながら分かりやすく述べる。
著者が実際に軍艦で航行した太平洋、大西洋、インド洋、地中海、南シナ海、カリブ海、そして北極海の地政学的な位置付けについて、歴史的なエピソードと、船から見える風景や港の様子、頬をなでる風の感触、潮の流れなど船乗りとしての経験、海軍軍人として感じるその海の緊迫感などを織り交ぜながら描く。
本書の特徴は、「海を制するものは世界を制する」というマハンの名著「海上権力史論」を強く意識したシーパワー論である。
著者がマハンの名前を初めて聞いたのは、海軍兵学校の一年生の時に「シーパワー」という眠いだけの科目をとった時だという。
三つの要素(生産活動、海上交通、植民地や同盟)に対する国家の海での取り組みにはシーパワーが必要であり、地理や海岸線の規模などの地政学的条件や、国民気質とそれを反映した政府の性格という要因が、国家がシーパワーを効果的に作り出し行使する能力に影響を及ぼす、とマハンは説く。
米海軍の世界的海洋戦略の構築に何度も参加した自身の経験から、マハンの考え方は現在のアメリカにもあてはまり時代を超えた意味をもつと著者は述べる。
本書のもう一つの特徴は、「アメリカ視点」であり、「世界の秩序を担っているのはアメリカであり、とりわけ米海軍だ」という自身の経験による強い自負を反映している。
NATO軍最高司令官を務めた米海軍軍人がどのような世界観を持ち、現代の国際情勢をどう見ているのか、知る機会は少ない。
日本の海上自衛隊に対する大きな信頼感、中国の海洋進出や北朝鮮に対する見方、ペルシア湾(本書ではアラビア湾と表記)情勢の実情、重要性の高まるインド洋、北氷洋の現状と今後の課題などについて、米国艦隊の艦橋司令室からはどのように見えるのかを知ることができる稀有の書として一読の価値あり。
本書で著者は、海洋の地政学とそれが国際社会にどのように影響を与えているのかについて、自身の海軍軍人としての経験を踏まえながら分かりやすく述べる。
著者が実際に軍艦で航行した太平洋、大西洋、インド洋、地中海、南シナ海、カリブ海、そして北極海の地政学的な位置付けについて、歴史的なエピソードと、船から見える風景や港の様子、頬をなでる風の感触、潮の流れなど船乗りとしての経験、海軍軍人として感じるその海の緊迫感などを織り交ぜながら描く。
本書の特徴は、「海を制するものは世界を制する」というマハンの名著「海上権力史論」を強く意識したシーパワー論である。
著者がマハンの名前を初めて聞いたのは、海軍兵学校の一年生の時に「シーパワー」という眠いだけの科目をとった時だという。
三つの要素(生産活動、海上交通、植民地や同盟)に対する国家の海での取り組みにはシーパワーが必要であり、地理や海岸線の規模などの地政学的条件や、国民気質とそれを反映した政府の性格という要因が、国家がシーパワーを効果的に作り出し行使する能力に影響を及ぼす、とマハンは説く。
米海軍の世界的海洋戦略の構築に何度も参加した自身の経験から、マハンの考え方は現在のアメリカにもあてはまり時代を超えた意味をもつと著者は述べる。
本書のもう一つの特徴は、「アメリカ視点」であり、「世界の秩序を担っているのはアメリカであり、とりわけ米海軍だ」という自身の経験による強い自負を反映している。
NATO軍最高司令官を務めた米海軍軍人がどのような世界観を持ち、現代の国際情勢をどう見ているのか、知る機会は少ない。
日本の海上自衛隊に対する大きな信頼感、中国の海洋進出や北朝鮮に対する見方、ペルシア湾(本書ではアラビア湾と表記)情勢の実情、重要性の高まるインド洋、北氷洋の現状と今後の課題などについて、米国艦隊の艦橋司令室からはどのように見えるのかを知ることができる稀有の書として一読の価値あり。
2017年11月6日に日本でレビュー済み
内容は平易で、エスタブリッシュが読む本というよりは大学生とか、社会人になる前の人向けですね。
現職自衛官がよく読んでいるという話も聞きましたが、英語の勉強もかねて原著「 Sea Power: The History and Geopolitics of the World's Oceans 」の方を読んでいるのだろうと思いました。
現職自衛官がよく読んでいるという話も聞きましたが、英語の勉強もかねて原著「 Sea Power: The History and Geopolitics of the World's Oceans 」の方を読んでいるのだろうと思いました。
2017年11月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書は米退役海軍大将が自身の経歴を絡めながら、七つの大洋(ここでは太平洋、大西洋、インド洋、地中海、カリブ海、南シナ海、北極海)の歴史と地政学を素描し、さらに各海域の様々な問題に関する米海軍の将来の課題と処方箋を提示するものだ。
たかが退役将校の著作と侮るなかれ。著者は米海軍士官の中でも知的人材として高く評価され、2016年の米大統領戦では両陣営が副大統領や国務長官候補として検討した人物である。本書で提示される課題と処方箋は、現在の米海軍戦略を直接反映するものと言って差し支えないだろう。
本書の大きな特徴は、自伝と歴史、地政学、現代情勢の分析を軽妙な語り口で融合させていることだ。第1章から第7章までの各章はそれぞれ七つの大洋を扱うほぼ独立したエッセーである。第8章では現代の海洋問題として海賊、漁業、環境、石油汚染、資源開発を挙げる。「アメリカと海――21世紀の海軍戦略」と題する最終章では、マハンのシー・パワー論と最新の米海軍戦略文書(「21世紀のシー・パワーのための協力戦略」2015年)が簡単に紹介され、それを踏まえて七つの大洋それぞれでの米海軍の行動指針が提示される。
シー・パワーと米海軍のグローバルな活動の重要性を改めて強調する本書の出版は、トランプ大統領が誕生してから再び表出している米国の孤立主義を踏まえると、非常に時宜を得たものと言えよう(著者自身、本書の中でトランプに二度批判的に言及している)。
本書はシー・パワーに関する気軽な読み物(エッセー集)である。『海の地政学』という邦題から重厚な戦略本を期待すると裏切られてしまうだろう。歴史や地政学の個別の論点についてさらに深く知りたいなら本書の参考文献を読め、ということか。個人的には、インド洋と北極海の重要性の高まり、海底ケーブルを巡る戦略的課題の指摘が興味深かった一方で、南シナ海に関する記述には目新しさがなかった。
以上は本書の内容に関するコメントだが、翻訳の問題を指摘しておきたい。評者は英語版を予約注文して読み、その後日本語版を入手した。本書の文章は比較的読みやすいために一瞥しただけでは気づかないかも知れないが、原文と対照すると大小様々な誤訳や脱落が存在する。軍事に関する専門用語を知らないために、著者が示唆していることが正確に伝わらない箇所も多い。少し検索すれば避けられた誤訳も多いが、それすらしない非常にいい加減な訳者である。また、恐らくは訳者が理解せずに訳した文章を読みやすくするために切り貼りする過程で、著者のニュアンスが失われてしまっている。
原著は★4だが、翻訳の問題から邦訳版は★2とする。評者が原著と突き合わせて確認した箇所だけでも相当な誤訳があり、本書全体ではどれほどになるのか想像もつかない。さらに誤訳が比較的読みやすい日本語で覆い隠されているために、本書が抱える問題は一層根深いものとなっている。基礎レベルの誤訳や誤解を繰り返し原著の内容を理解できない訳者を選定し、監訳者をつけない出版社の責任も大きい。
_______
以下、「はじめに」に含まれる目立つ誤訳を挙げる。
・17頁「そのたびに思い出すのは海での暮らしだ」の原文は"the line has always had profoundly nautical implications for me"で、単にその台詞が著者にとって海と関係が深いものに思われたということだろう。
・同17頁「…日々は思索には最適だった」とあるが、これは大海原の景色が夢の背景にぴったりだったということだろう。"dreaming"は冒頭の『テンペスト』の台詞に呼応しているのであって、ここでわざわざ「思索」と訳すのは間違っている。
・18頁「『老人と海』の主人公さながらに」とあるのは、「海の老人(The Old Man of the Sea)」の誤訳。もともとはギリシャ神話の神を指す。and/ofの読み間違えと思われるが、『老人と海』の主人公が六分儀や航海歴、潮汐表を自在に駆使していたか考えれば避けられた基本的な間違い。
・同18頁「世界の海がかつてはつながっていたと同時にわかれてもいた」の「かつては」は、原文の"at once"を読み間違えたのだろうか。
・19頁「北太平洋でのグリーンランド、アイスランド、イギリスの相互不信による新たな冷戦の不幸な勃発」というのは、GIUKギャップの誤訳。これも調べればすぐに分かる用語。
・同19頁「お祭り気分の一週間のクルージング」の「お祭り気分」は、世界最大のクルーズ会社であるカーニバル社のこと。固有名詞であることを示すためにCarnivalと大文字で表記されているのだが。
・20頁「ハルゼーが高速空母を率いて西太平洋へと向かったときに」とあるのは本来「ハルゼーが高速空母任務部隊を西太平洋での戦闘に急行させたときに」(as he lashed his Fast Carrier Task Force into combat in the western Pacific)とすべきであり、これはレイテ沖海戦でのハルゼーの行動を指していると思われる。
たった四頁の中でこれだけの大きな誤訳があるのだから、後は推して知るべしである。その他、「水兵(sailor)」(17頁)とあるのは「水夫」の方が文脈に合っているし、「艦首(bridge)」(18頁7行目)は「艦橋」、「大国(great national enterprises)」(19頁)は「大きな国家事業」の誤訳だろう。
残りの章も似たようなものだが、第九章からもいくつか大きな誤訳を指摘しておきたい。
・280頁「私には眠いだけだった」(for me it was anything but a sleeper)は意味が真逆である。
・282頁「海軍大佐」は「海軍少将」(rear admiral)の誤訳。また、あたかも死去してから昇進したかのように読めるが、これは事実ではない。時制の誤訳。
・285頁「スパルタは…内陸部で発展していた」は「重心(center of gravity)が内陸部にあった」というクラウゼヴィッツの表現だし、「ソ連は…地政学的には内陸国」も「地政学的な内的位置(interior position)」というジョミニの用語だが、訳者はそれに気づいていないようだ。
・287頁「マハンは、王を称える植民地制度を過去の遺物と考えたことだろう」とあるが、「マハンは[世界中の同盟国や友好国を]植民地という観点から考えたことだろう。それは――神を讃えよ――過去の遺物である。」となる。マハンが植民地主義者だったことは有名であり、これも意味が逆転している。著者は当時とは時代が変化したことを神に感謝しているのだ。
・289頁「現在では…艦隊の本領になっている」は、時制の誤訳。これはマハンの時代のことであって、マハンにとっては敵艦隊の破壊こそが艦隊の本領たるべきだったのだ。
・293頁「すみやかに導入できるはずだ」は、「(通信速度が)遥かに速い」。
・296頁「一九八六年の「海洋戦略」は…海軍の先見性を本当の意味で反映したものだった」は、「一九八六年の「海洋戦略」は海軍の想像力を刺激した」。"capture one's imagination"という言い回しを知らないのか。
・300頁「量からしか質は生まれない」(quantity has a quality all its own)は、「量にはそれだけで質がある」。
・301頁の米海軍の編制について、原文では第3艦隊が担当するのは「太平洋」ではなく太平洋「沿岸」、第2艦隊が担当したのは「大西洋」ではなく「東海岸」だと明記されている。また、5行目で「太平洋・大西洋両艦隊」とあるのは、「第2艦隊および第3艦隊」の誤り。
・311頁の「冒頭で述べたように、海での長年の経験から、私は海洋の地政学的重要性と、海が本当の意味でひとつであることを理解するようになった」というのは、「海の航行と理解には非常に個人的な要素があり、また、海が本当にひとつであるという着想には重要な地政学的要素があるという考えから本書を書き始めた」とする方が良いだろう。
他にも、「雲の漂う」(291頁)は「混雑した」(crowded)だし、「潜水艦ケーブル」(293頁)は「海底ケーブル」(submarine cable)、「海軍参謀総長」(295頁)は「海軍長官」、「戦闘の自由」(298頁)は「行動の自由」(freedom of action)、「勢力均衡面では」(303頁)は「全体としてみると」(on balance)、「乗り継ぎ」(305頁)は「移動中の」(in transit)、「巡洋艦」(308頁)は「空母」、「有効な」(同)は「生存可能な」(survivable)、「旗艦を置く」(同)は「本部を置く」(headquartered)など。繰り返すが、これらはあくまで目についた例であって、その他大小無数の誤訳や脱落がある。
たかが退役将校の著作と侮るなかれ。著者は米海軍士官の中でも知的人材として高く評価され、2016年の米大統領戦では両陣営が副大統領や国務長官候補として検討した人物である。本書で提示される課題と処方箋は、現在の米海軍戦略を直接反映するものと言って差し支えないだろう。
本書の大きな特徴は、自伝と歴史、地政学、現代情勢の分析を軽妙な語り口で融合させていることだ。第1章から第7章までの各章はそれぞれ七つの大洋を扱うほぼ独立したエッセーである。第8章では現代の海洋問題として海賊、漁業、環境、石油汚染、資源開発を挙げる。「アメリカと海――21世紀の海軍戦略」と題する最終章では、マハンのシー・パワー論と最新の米海軍戦略文書(「21世紀のシー・パワーのための協力戦略」2015年)が簡単に紹介され、それを踏まえて七つの大洋それぞれでの米海軍の行動指針が提示される。
シー・パワーと米海軍のグローバルな活動の重要性を改めて強調する本書の出版は、トランプ大統領が誕生してから再び表出している米国の孤立主義を踏まえると、非常に時宜を得たものと言えよう(著者自身、本書の中でトランプに二度批判的に言及している)。
本書はシー・パワーに関する気軽な読み物(エッセー集)である。『海の地政学』という邦題から重厚な戦略本を期待すると裏切られてしまうだろう。歴史や地政学の個別の論点についてさらに深く知りたいなら本書の参考文献を読め、ということか。個人的には、インド洋と北極海の重要性の高まり、海底ケーブルを巡る戦略的課題の指摘が興味深かった一方で、南シナ海に関する記述には目新しさがなかった。
以上は本書の内容に関するコメントだが、翻訳の問題を指摘しておきたい。評者は英語版を予約注文して読み、その後日本語版を入手した。本書の文章は比較的読みやすいために一瞥しただけでは気づかないかも知れないが、原文と対照すると大小様々な誤訳や脱落が存在する。軍事に関する専門用語を知らないために、著者が示唆していることが正確に伝わらない箇所も多い。少し検索すれば避けられた誤訳も多いが、それすらしない非常にいい加減な訳者である。また、恐らくは訳者が理解せずに訳した文章を読みやすくするために切り貼りする過程で、著者のニュアンスが失われてしまっている。
原著は★4だが、翻訳の問題から邦訳版は★2とする。評者が原著と突き合わせて確認した箇所だけでも相当な誤訳があり、本書全体ではどれほどになるのか想像もつかない。さらに誤訳が比較的読みやすい日本語で覆い隠されているために、本書が抱える問題は一層根深いものとなっている。基礎レベルの誤訳や誤解を繰り返し原著の内容を理解できない訳者を選定し、監訳者をつけない出版社の責任も大きい。
_______
以下、「はじめに」に含まれる目立つ誤訳を挙げる。
・17頁「そのたびに思い出すのは海での暮らしだ」の原文は"the line has always had profoundly nautical implications for me"で、単にその台詞が著者にとって海と関係が深いものに思われたということだろう。
・同17頁「…日々は思索には最適だった」とあるが、これは大海原の景色が夢の背景にぴったりだったということだろう。"dreaming"は冒頭の『テンペスト』の台詞に呼応しているのであって、ここでわざわざ「思索」と訳すのは間違っている。
・18頁「『老人と海』の主人公さながらに」とあるのは、「海の老人(The Old Man of the Sea)」の誤訳。もともとはギリシャ神話の神を指す。and/ofの読み間違えと思われるが、『老人と海』の主人公が六分儀や航海歴、潮汐表を自在に駆使していたか考えれば避けられた基本的な間違い。
・同18頁「世界の海がかつてはつながっていたと同時にわかれてもいた」の「かつては」は、原文の"at once"を読み間違えたのだろうか。
・19頁「北太平洋でのグリーンランド、アイスランド、イギリスの相互不信による新たな冷戦の不幸な勃発」というのは、GIUKギャップの誤訳。これも調べればすぐに分かる用語。
・同19頁「お祭り気分の一週間のクルージング」の「お祭り気分」は、世界最大のクルーズ会社であるカーニバル社のこと。固有名詞であることを示すためにCarnivalと大文字で表記されているのだが。
・20頁「ハルゼーが高速空母を率いて西太平洋へと向かったときに」とあるのは本来「ハルゼーが高速空母任務部隊を西太平洋での戦闘に急行させたときに」(as he lashed his Fast Carrier Task Force into combat in the western Pacific)とすべきであり、これはレイテ沖海戦でのハルゼーの行動を指していると思われる。
たった四頁の中でこれだけの大きな誤訳があるのだから、後は推して知るべしである。その他、「水兵(sailor)」(17頁)とあるのは「水夫」の方が文脈に合っているし、「艦首(bridge)」(18頁7行目)は「艦橋」、「大国(great national enterprises)」(19頁)は「大きな国家事業」の誤訳だろう。
残りの章も似たようなものだが、第九章からもいくつか大きな誤訳を指摘しておきたい。
・280頁「私には眠いだけだった」(for me it was anything but a sleeper)は意味が真逆である。
・282頁「海軍大佐」は「海軍少将」(rear admiral)の誤訳。また、あたかも死去してから昇進したかのように読めるが、これは事実ではない。時制の誤訳。
・285頁「スパルタは…内陸部で発展していた」は「重心(center of gravity)が内陸部にあった」というクラウゼヴィッツの表現だし、「ソ連は…地政学的には内陸国」も「地政学的な内的位置(interior position)」というジョミニの用語だが、訳者はそれに気づいていないようだ。
・287頁「マハンは、王を称える植民地制度を過去の遺物と考えたことだろう」とあるが、「マハンは[世界中の同盟国や友好国を]植民地という観点から考えたことだろう。それは――神を讃えよ――過去の遺物である。」となる。マハンが植民地主義者だったことは有名であり、これも意味が逆転している。著者は当時とは時代が変化したことを神に感謝しているのだ。
・289頁「現在では…艦隊の本領になっている」は、時制の誤訳。これはマハンの時代のことであって、マハンにとっては敵艦隊の破壊こそが艦隊の本領たるべきだったのだ。
・293頁「すみやかに導入できるはずだ」は、「(通信速度が)遥かに速い」。
・296頁「一九八六年の「海洋戦略」は…海軍の先見性を本当の意味で反映したものだった」は、「一九八六年の「海洋戦略」は海軍の想像力を刺激した」。"capture one's imagination"という言い回しを知らないのか。
・300頁「量からしか質は生まれない」(quantity has a quality all its own)は、「量にはそれだけで質がある」。
・301頁の米海軍の編制について、原文では第3艦隊が担当するのは「太平洋」ではなく太平洋「沿岸」、第2艦隊が担当したのは「大西洋」ではなく「東海岸」だと明記されている。また、5行目で「太平洋・大西洋両艦隊」とあるのは、「第2艦隊および第3艦隊」の誤り。
・311頁の「冒頭で述べたように、海での長年の経験から、私は海洋の地政学的重要性と、海が本当の意味でひとつであることを理解するようになった」というのは、「海の航行と理解には非常に個人的な要素があり、また、海が本当にひとつであるという着想には重要な地政学的要素があるという考えから本書を書き始めた」とする方が良いだろう。
他にも、「雲の漂う」(291頁)は「混雑した」(crowded)だし、「潜水艦ケーブル」(293頁)は「海底ケーブル」(submarine cable)、「海軍参謀総長」(295頁)は「海軍長官」、「戦闘の自由」(298頁)は「行動の自由」(freedom of action)、「勢力均衡面では」(303頁)は「全体としてみると」(on balance)、「乗り継ぎ」(305頁)は「移動中の」(in transit)、「巡洋艦」(308頁)は「空母」、「有効な」(同)は「生存可能な」(survivable)、「旗艦を置く」(同)は「本部を置く」(headquartered)など。繰り返すが、これらはあくまで目についた例であって、その他大小無数の誤訳や脱落がある。
2020年8月4日に日本でレビュー済み
すべての強国は、海洋国家であるか大陸国家であるかで二分される。アメリカとイギリスは海洋国家である。ロシア、フランス、ドイツは大陸国家である。どちらが強いか? それは海洋国家である、と著者はおっしゃる。古くは1700年代半ばの七年戦争から ー フランスとイギリスとの戦い。「本当の意味で最初の世界的紛争」(本書78頁) ー ソ連とアメリカとの冷戦にいたるまで、勝ったのは海洋国家であるイギリスであり、アメリカであった。なぜか? 敵に海上封鎖をおこなえたからである。逆に敵が海上封鎖をしようとしてもできなくさせられたからである。「七年戦争は、世界的海軍を持ち、海上交通路を制する者が勝利のカギを握ることが示された戦いだった」(78頁)。要は兵糧攻めである。なんせ、「現在、世界貿易の95%は海を経由する」(344頁) 。
著者にすれば、太平洋戦争にしても、「そもそもの発端は南シナ海での小競り合いの繰り返しだったのである」 (196頁)。 1944年「10月下旬の命運を左右するレイテ沖海戦を経て日本艦隊は壊滅的な打撃を受け、南シナ海は『アメリカの湖』となった。フィリピン諸島を奪還され、南シナ海経由の資源を絶たれた日本は、原子爆弾で武装したアメリカの前に降伏を余儀なくされた。」(201頁)。
本書は、また「船乗りの海での日々」(21頁)をも描きだされる。要は、海軍にいらっしゃいというお誘いだ。著者はこうお誘いである。「私は階段を数段上って艦橋に出た。ほの暗い通路を抜け出た瞬間、降り注ぐ太陽の光と潮風、見渡す限り広がる海に圧倒された。船乗りになりたい。ダマスカスに向かう途中で天からの光に導かれてキリスト教徒となった聖パウロのように、私は唐突にそう思った。幼い頃から海に親しんでいたわけでもない。そてでもこのとき太平洋は私の喉元を掴み、静かに言った。『おかえり』。私は二度と振り返ることはなかった」(27頁)。
流石に「七冊目」(338頁)ともなると、モノ書きとしても手馴れたものである。海軍提督とは思われない。読んでて大船に乗ったような気分であった。おかげで3回も読んでしまった。
著者にすれば、太平洋戦争にしても、「そもそもの発端は南シナ海での小競り合いの繰り返しだったのである」 (196頁)。 1944年「10月下旬の命運を左右するレイテ沖海戦を経て日本艦隊は壊滅的な打撃を受け、南シナ海は『アメリカの湖』となった。フィリピン諸島を奪還され、南シナ海経由の資源を絶たれた日本は、原子爆弾で武装したアメリカの前に降伏を余儀なくされた。」(201頁)。
本書は、また「船乗りの海での日々」(21頁)をも描きだされる。要は、海軍にいらっしゃいというお誘いだ。著者はこうお誘いである。「私は階段を数段上って艦橋に出た。ほの暗い通路を抜け出た瞬間、降り注ぐ太陽の光と潮風、見渡す限り広がる海に圧倒された。船乗りになりたい。ダマスカスに向かう途中で天からの光に導かれてキリスト教徒となった聖パウロのように、私は唐突にそう思った。幼い頃から海に親しんでいたわけでもない。そてでもこのとき太平洋は私の喉元を掴み、静かに言った。『おかえり』。私は二度と振り返ることはなかった」(27頁)。
流石に「七冊目」(338頁)ともなると、モノ書きとしても手馴れたものである。海軍提督とは思われない。読んでて大船に乗ったような気分であった。おかげで3回も読んでしまった。
2018年3月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
基本的な事実関係が間違っていたり、海事用語がおかしかったり、記述のつじつまが合わなかったりで、読むのが苦痛になり放り出してしまいました。他の方のレビューで原文と比較していかに翻訳が良くないかを示していらっしゃいますが、なるほど、と納得しました。
本来は軽妙で面白いエッセイのようなのですが。非常に残念です。
本来は軽妙で面白いエッセイのようなのですが。非常に残念です。