このライヴをLPで聴いたのは、当然ながらかなり昔のこと。スタジオ盤が廃盤でほぼ全滅のころに、辛うじて入手出来たのがこのレコードだった。だからというわけでもないが、私は、バルバラは「ライヴでこそ映える」と思っている。どの曲もそうだが、おとなしめのスタジオ盤に比べて、ライヴ盤のこの凄さといったら、いったいどう形容すれば良いのだろう。この'78オランピアは、後年のライヴに比べればまだ「端整」と言えるかも知れないが、歌にはピンと張りつめたものが感じられ(この時期の彼女は、精神的にギリギリの状態だったらしい)、スタジオ盤のように「肩の力を抜いて」聴くことは出来ない。超名盤としてお薦めしたいが、聴くにはそれぐらい覚悟が要る。大げさかも知れないが、体力、精神力、ともに消費して得られる一体感は、バルバラならではと言えるだろう。「le mal de vivre」('65)は、間違いなく、このライヴがベストと言える。「mon enfance」('68)や「l'enfant laboureur」('73)だってそうだし、感動的な「ma maison」('73)も、スタジオ盤は地味で、とても目立つ曲ではなかった。「une petite cantate」('65)も、これほど印象に残るパフォーマンスは、後にも先にも無い。これが「ベスト」だ。また、当時の新曲ということでは、「la musique」「l'amour magicien」が特に印象深い。
このディスクは、本当に長期にわたってCD化を待ち望んでいたものである。しかし、どうしても納得が出来ないのが、なぜ、「1枚もの」にこだわったのか、ということ。そのために、「toi」('65)の1曲のみがカットされているが、これは、第2部の第1曲目で、短いとはいえ、大事なナンバーのはず。パフォーマンスもベストと思うので、実に残念としか言いようが無い(他のディスクで聴く事はできるが)。こんな事ぐらいで減点にはしないが、次のパンタン'81が2枚(他も大体)で出ていることを思えば、「もう少し配慮を」と、苦言を呈したくもなる。