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コロンビア人パブロ・エスコバルは実在の犯罪者であった。
名優ベニチオ・デル・トロが、そのエスコバル役に扮し、その人柄と生涯の一部を描いた、コロンビアの暗部と同時に、コロンビアの人々の物語だ。
だが、映画は彼ではなく、コロンビアの地に楽園を求めてやって来たカナダ人青年・ニック(ジョシュ・ハッチャーソン)を主人公に描かれる。
彼はサーファーであり、緑の森と真っ青な海辺に憧れ、兄夫婦と、素晴らしき景観の海岸に、木を切り出し、自分たちの住居を作り始める。
そして、街の人々と交流を始めるのだが、その中に、人々から圧倒的に愛され、英雄視されているパブロ・エスコバルがいた。
コロンビアはコカインの原料となる樹木がたくさんあり、彼らは、その葉を噛みタバコみたいにして、幼い頃から嗜好品として、当たり前に噛んでいた。
しかし、やがて彼らは、それがコカインの元となり、世界中で欲しがっている事を知る。そこで、エスコバルは1970年代に、コカインを流通させるメデジン・カルテルを組織し、アメリカ合衆国に向けた最初の密輸経路を確立した。
おかげで、貧乏だったコロンビアの農民たちは潤い、エスコバルに感謝し、人々の救い主となったが、一方、アメリカではコカインの流入国として、彼のカルテルの撲滅に乗り出す。コロンビア政府もアメリカと供に、エスコバル逮捕に動き出すが、民衆に守られたエスコバルの逮捕は容易ではなかった。
エスコバルがそんな人物とは知らないニックは、エスコバルの妹・マリア(クラウディア・トレイザック)と恋仲になり、二人は熱烈に愛し合い、ついには結婚するまでになる。
この時になって、ニックは初めてエスコバルの正体を知る。彼はいわゆるマフィアみたいな組織を作り出していて、一度、その家族になったら、彼らのためにどんな事（つまり犯罪）でもやらなければならない。逆らえば、死が待っていた。
こうして、憧れの楽園を求めてコロンビアにやってきたカナダ青年とその兄家族は、コロンビア・マフィアとも称される、生涯、裏切りを許されないエスコバル一族の一員になってしまったのだ。
そして、ついにエスコバルから人殺しを命じられたのだった‥‥。
本作の素晴らしい所は、最初からエスコバルの明確な正体を見せず、ニックの眼を通して、彼が徐々に恐怖を感じ始め、ついには自分が楽園から地獄へ落ちてゆく形で、物語が展開してゆく所だ。
世界で最も優雅な暮らしを送った極悪人エスコバルはコカインの帝王とか呼ばれて、非常に有名であるが、彼の存在を知らない人には、本作がニックを主人公にしているため、ジワジワとニックが感じてゆく恐怖感を同時に体験し、見終わった時には、ホラー映画よりも怖い現実にショックを受けることだろう。
つまり、世界的に有名な人物の怖さを、非常にうまく描いた脚本の出来映えが素晴らしいということだ。
エスコバルの事を知らなかった私は、見終わって、しばらく、その怖さに声も出なかった（←ちょっと大げさ）。
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