本書を書店で見かけ、タイトルに引かれて手に取りページをめくってみたら、これがまた面白い!タイトルに引かれたのは私も高校時代野球部だったからだ。パラパラとページをめくる度に高校野球経験者なら、ああ、わかるというエピソードが満載、思わず吹き出してしまう「あるある」のオンパレードで、私は緩んだ頬のまましばし立ち尽くして夢中でページをめくった。
あまりにも面白かったので新たに新装版が出たのを機に、今回Amazonで購入、取り寄せた。
新装版には、県外から強豪校に入学した野球留学生のエピソードが追加されている。
私はレフトで、主に下位打線の重責を任される事が多かった(笑)。そんな私が特に印象に残ったのは「後逸した打球を取りに行く外野手の背中ほど寂しいものはない」というエピソード。
ああ、わかる。私にも経験がある。
真夏の日曜日の練習試合での事。その日、私は疲れ切っていた。その疲労が注意力の散漫を招き、イージーなレフト前のゴロを後逸してしまった。夏の暑さも、練習内容もチーム全員同じなのだから言い訳にはならないけど、身体的に十全ではなかった事は事実。
監督にこっぴどく怒られると思った私は、チェンジになってベンチに帰り、円陣に立った時、炎天下での試合だったので、後逸を熱中症のせいにしようと、グラついたふりをしたら何のお咎めもなく、即交代を告げられ、木陰に行って休憩を命じられた。とりあえずホッとしたのだが、違う意味での汗がどっと吹き出した事を覚えている。
「太陽が目に入りフライを落球した後、原因をアピールするために手をかざして空を見上げる」。
あるある(笑)。これもやったなぁ。練習のシートノックの時に。
「代走で試合に出たのに牽制球で刺された日の夜、自分がどうしてこの世に生を受けたのかを考える」というエピソードには思わず吹き出した。これをやった2つ上の先輩がいたからだ。
夏の地区予選、県大会での事。僅差で負けていた試合の終盤にノーアウトのランナーが出塁。逆点のチャンスもあり得るチャンス到来での場面。監督が、控えだけど足の速いその先輩を呼んで肩に手を回し、「焦るんじゃないぞ、いいな」と念を押してファーストランナーの代走に送り出した。3年の控えの選手に、最後の公式戦に出場する機会を与えるという監督の恩情もあったかもしれない。が、功を焦ったのかリードを大きく取り過ぎて、牽制球にあっけなく引っ掛かってしまった。
アウトになってベンチに引き上げて来た時、監督は球場に響き渡るような大声で先輩を怒鳴り上げた。その怒声にびびった私たち1年の補欠部員は先輩を正視できなかったが、チラリと見やった先輩はまさにこのエピソードそのまんまの、茫然とした顔をしていた。
次にチラリと見た時、ベンチに腰掛けた先輩は流れ出る汗を拭おうともせず、手を合わせて合掌をしていた。その意味は推し量りかねるが、おそらくチームの勝利を祈念していたのか、はたまたこの世に生を受けた意味を考えていたのか…。
残念ながら、その合掌空しく、結局試合に敗れて初戦敗退という結果だった。
一所懸命やった結果だから笑ってはいけないのだが、しかし、先輩のあの茫然とした顔を思い出すとやっぱり笑ってしまう。
本書を読んで、忘れかけていたそれらの風景が脳裏に甦ってきた。ああ、懐かしい。ただひたすらに懐かしい。
雨が降ると屋内練習になり、いつもよりは早く帰宅できるのが嬉しくてたまらなかった事や、授業中、雨が降り出したのを同じクラスのキャプテンにアイコンタクトで知らせ、お互いニヤっと笑って喜んだのも束の間、放課後には雨は止み、いつものようにグラウンドでの練習になってガックリきた事。雨上がりのグラウンドは軟らかくなってスパイクに泥が付き、足が重くなる。勢い、疲れも倍になる。
また真夏のグラウンドの、むせかえるような暑さの中でノックを受け、その帰りに学校近くの店で部員たちとアイスクリームを食べながら馬鹿話に花を咲かせた事など、いろんな場面がフラッシュバックした。
あの頃、夢中になれた日々があった事は、今にして思えば幸せな事だったと思う。夏が来て、暑い日射しが射す頃になると決まってそう思う。よくやったよなぁ、という感慨と共に。
私は今年還暦を迎えたが、今でも私たちは年に2回、監督も交えて野球部OB会を開いて集い、酒を飲みながら思い出話をして笑い転げている。甲子園はあまりにも遠かったけれど、やっぱりいいな野球部は、というのが率直な結論。
野球部OBの方に熱烈にお奨めしたい本書「野球部あるある 新装版」。読めばきっと懐かしい「あの頃」が甦って来るはず。甲子園を目指して必死でボールを追ったあの日々が。
…と書くとカッコいいが、私たちの時代は本書の中にもあるように、練習中水は御法度、ウサギ跳びも肩車も猫車もあった時代だった。そのせいか、毎年大会本番前に腰痛や膝痛を訴える3年が何人かいたなぁ。もちろん大会に出たいので皆んな監督には黙ってたけど。確かに、その頃が疲れがピークに達する時期ではあった。
何故か真っ先にそんな事を思い出してしまった。
ああ、なんか久し振りにキャッチボールがしたくなったなぁ。
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野球部あるある 新装版 新書 – 2015/8/26
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“あるある本"の元祖で、シリーズ累計10万部超の大ヒット本、『野球部あるある』がパワーアップして復刊!
新コンテンツを加えた新装版として帰ってきました!
理不尽なほど苦しい練習に耐え、監督と先輩には絶対服従。
奇声を発しながら、泥だらけで白球を追いかける不思議な集団。
そんな野球部員という“珍獣"の生態を笑いとともに伝えます。
ツボを突いた“あるある"ネタ+解説文+ひとコマ漫画の3点セットで読者に思わず「あるある! 」と
つぶやかせるスタイルは、多くの類似作品、フォロワーを生んで“あるある本"というジャンルを作り上げました。
そのオリジナルだけに、ネタのキレ味は今も最高!
新装版にあたって「野球留学あるある」の章を新たに収録。
今も全国の野球部で日々繰り広げられるシュールな光景は、現役部員、元部員はもちろん、
彼らを不思議そうに横目で見ていた元一般生徒たちからも、笑いと涙と共感の嵐を呼ぶことでしょう。
著者・菊地選手
1982年生まれ。雑誌『野球太郎』の編集部員を経て、現在はフリーの選手兼編集者。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」として活動しつつ、『中学野球太郎』など様々な媒体に選手目線からの記事を寄稿している。
漫画・クロマツテツロウ
1979年生まれ。高校時代は野球部に所属。月刊少年チャンピオンにて異色の野球部漫画『野球部に花束を』を連載中。単行本も好評発売中。
新コンテンツを加えた新装版として帰ってきました!
理不尽なほど苦しい練習に耐え、監督と先輩には絶対服従。
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今も全国の野球部で日々繰り広げられるシュールな光景は、現役部員、元部員はもちろん、
彼らを不思議そうに横目で見ていた元一般生徒たちからも、笑いと涙と共感の嵐を呼ぶことでしょう。
著者・菊地選手
1982年生まれ。雑誌『野球太郎』の編集部員を経て、現在はフリーの選手兼編集者。野球部員の生態を分析する「野球部研究家」として活動しつつ、『中学野球太郎』など様々な媒体に選手目線からの記事を寄稿している。
漫画・クロマツテツロウ
1979年生まれ。高校時代は野球部に所属。月刊少年チャンピオンにて異色の野球部漫画『野球部に花束を』を連載中。単行本も好評発売中。
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 出版社集英社
- 発売日2015/8/26
- ISBN-104087807649
- ISBN-13978-4087807646
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登録情報
- 出版社 : 集英社 (2015/8/26)
- 発売日 : 2015/8/26
- 言語 : 日本語
- 新書 : 208ページ
- ISBN-10 : 4087807649
- ISBN-13 : 978-4087807646
- Amazon 売れ筋ランキング: - 78,639位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1982年1月2日生まれ、東京都出身。中央大付高、中央大を経て、雑誌『野球小僧』『野球太郎』の編集部員に。2015年に独立し、フリーのライターに転身。アマチュア野球の取材を中心に活動し、時には有望中学球児と真剣勝負をする体当たり取材も敢行する。野球部研究家「菊地選手」としても活動しており、「あるある本」の元祖である『野球部あるある』(全3巻・集英社)は13万部のヒット作になった。他にも著書に『巨人ファンはどこへ行ったのか?』(イーストプレス)、『下剋上球児 三重県立白山高校、甲子園までのミラクル』(カンゼン)、『オレたちは『ガイジン部隊』なんかじゃない!』(インプレス)などがある。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2013年6月12日に日本でレビュー済み
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高校球児の息子にあげようと購入しましたが、すでに部室で回し読み後だったそう・・
ま、自分が読んでも面白かったです。運動部は、今も昔もたいして変わらんのね・・
ま、自分が読んでも面白かったです。運動部は、今も昔もたいして変わらんのね・・
2022年12月5日に日本でレビュー済み
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野球部の息子が楽しく読んでいます。友達と盛り上がれると 良く聞かされてます。
読み終わったら貸してくれと 友達にせがまれるらしいですよ~
読み終わったら貸してくれと 友達にせがまれるらしいですよ~
2017年10月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
いつの時代も、所詮は同じ高校生。
考える事は同レベルなんだな…と思いました。
かく言う私も元高校球児で、同じような体験、経験を積み重ねて引退した過去を持ちます。
現役当時は辛く苦しい毎日でしたが、引退卒業して数十年…今は当時を懐かしく思い出せますし、笑い話にする事が出来てます。
この本はやはり、現役球児よりも、かつて汗を流したOBの身になった人達にこそ手にして貰いたい作品ですね。
考える事は同レベルなんだな…と思いました。
かく言う私も元高校球児で、同じような体験、経験を積み重ねて引退した過去を持ちます。
現役当時は辛く苦しい毎日でしたが、引退卒業して数十年…今は当時を懐かしく思い出せますし、笑い話にする事が出来てます。
この本はやはり、現役球児よりも、かつて汗を流したOBの身になった人達にこそ手にして貰いたい作品ですね。
2013年5月15日に日本でレビュー済み
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学童から野球をしている中学生の息子に購入しました。
しみじみ、、と読み続け、これ本当にあるよね。。と言っていました(笑)
しみじみ、、と読み続け、これ本当にあるよね。。と言っていました(笑)
2015年10月4日に日本でレビュー済み
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前回も購入したけれど、追加の話もあり、また楽しく読みました。
2014年1月31日に日本でレビュー済み
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野球はやってなかったが、それでも面白く読めた。
ボクシングとか相撲とか他のマニアックな部活編も読んでみたい気がする。
ボクシングとか相撲とか他のマニアックな部活編も読んでみたい気がする。
2014年12月16日に日本でレビュー済み
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本の制作は、中学生から草野球までコアな取材力がある『野球小僧』。
ネタも野球をやっていれば、十分に笑えるネタになっています。
ネタも野球をやっていれば、十分に笑えるネタになっています。