ロジャー・クラークRoger Clarkeというイギリス人の『A Natural History of Ghosts:500 Years of Hunting for Proof』、Penguin Books,2012の邦訳である。全18章からなり、第一章は、幽霊屋敷で育ち、14歳にして心霊現象研究協会の会員になった著者の子供時代の幽霊熱を振り返る。以降、基本的にイギリスを舞台に、大きくは時代を追う形で、近世の幽霊屋敷、ポルターガイスト現象、ゴーストハント、降霊会、幽霊と近代科学、第一次大戦と幽霊、デジタル時代の幽霊など、幽霊現象が各時代ごとに特徴づけられて叙述される。その中で、カトリック、プロテスタント、メソジスト派の幽霊観の違い、階級による幽霊観の差など、イギリス独特の幽霊事情が解説される。降霊会の女性霊媒が一種の風俗嬢だったというのも、他ではあまり聞かない話だ。ハリー・プライスらいんちき臭い連中のいかさまもエピソードとして出てくる。その間に、デフォーの『ヴィール夫人の幽霊』、M.R.ジェームズ、マッケンらおなじみの怪奇小説作家が登場する。ケネス・クラークの『芸術と文明』など往年のBBCドキュメンタリーから生まれた著作にも通じる、いかにもイギリス的、帰納的な歴史叙述だ。イギリス各地の幽霊屋敷や呪われた場所の解説本は何種類か日本語で読めるが、こういう幽霊史は珍しい。石原孝哉氏の『幽霊(ゴースト)のいる英国史』が幽霊を通してイギリス政治史を辿るのとはまた趣を異にしている。評者は、「幽霊とは宗教自体の幽霊である」という著者の定義、そして幽霊を信じることは子ども時代の自分に戻れる瞬間だという著者の見解に「なるほど」と納得した。
というわけで内容は大変興味深いが、欲を言えば、どうにもインチキと実証できない幽霊現象の話題をもっともっと読みたかった。また、『幽霊とは何か-500年の歴史から探るその正体』という邦題はちょっと違うと思う。著者の目的は幽霊の正体を突き止めることではないのだから。挟みこまれていた「新刊案内」では『幽霊の博物誌-存在を求めて500年』となっており、こちらの方がずっと内容と著者の意図に忠実だ。
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幽霊とは何か──500年の歴史から探るその正体 単行本 – 2016/7/25
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そこに誰かいるの ? イギリスのワイト島の古い屋敷で育ち、子どものころから幽霊に魅せられてきた著者が、500年にわたって各地で詳細に報告されてきた幽霊出没の物語をたどる。呪われた屋敷、取り憑いた幽霊、さまざまな超常現象の体験者、霊媒師、ゴーストハンター。そして、幽霊に深く関わっている宗教と社会的地位、メディアとテクノロジー。時代が変わるにつれ変化していく幽霊の姿を真摯に追いかけた一冊。 【書評抜粋】 とびきりおもしろく(そして不穏な気持ちにさせる)作品だ……ふつうは誰でも幽霊から逃げるのに、著者は幽霊を追い求める。その恐れ知らずの大胆さには、畏敬の念を覚えるほどだ。 ──英紙「ガーディアン」 幽霊目撃の科学的・社会的な面をたどる興味深い歴史……失われた魂のほの暗い世界を行く旅……不気味な味わいとともに語られる物語。 ──英紙「テレグラフ」 思わず引き込まれてしまう……超常現象を調査すれば、かなりの割合でまやかしを暴く必要が出てくる。クラークは、懐疑的になることを忘れていない。ゴーストハントの物語は、同時にいんちきと人々の錯覚が暴露されてきた歴史でもある。……しかし、クラークは、自分が追いかける主題に、少年時代のままの……豊富な知識に裏打ちされた情熱を保ち続けている。 ──英紙「インデペンデント」
- 本の長さ462ページ
- 言語日本語
- 出版社国書刊行会
- 発売日2016/7/25
- ISBN-104336060061
- ISBN-13978-4336060068
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商品の説明
著者について
イギリスのワイト島生まれ。《インデペンデント》紙、《サイト&サウンド》誌などで活躍する映画評論家。幼いころから幽霊に魅せられ、イギリスの有名なゴーストハンター、アンドリュー・グリーンやピーター・アンダーウッドと文通する。1980年代に14歳で心霊現象研究協会(SPR)の最年少会員となり、15歳でパン&フォンタナのホラーブックスシリーズから幽霊物語を出版。本書で、幽霊の歴史をまとめたいという長年の夢をかなえた。
登録情報
- 出版社 : 国書刊行会 (2016/7/25)
- 発売日 : 2016/7/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 462ページ
- ISBN-10 : 4336060061
- ISBN-13 : 978-4336060068
- Amazon 売れ筋ランキング: - 771,123位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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2017年2月13日に日本でレビュー済み
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イギリスのワイト島に生まれ、予てより幽霊に魅せられて来た著者が贈る幽霊研究報告書。
「世界一幽霊人口の多い国」と評されるイギリスの約500年に及ぶ幽霊史を纏めた画期的な一冊である。
さて、本書はあくまでも研究報告書であり、決して“お化け話”を紹介したものではない。
心霊現象研究協会(SPR)の会員でもある著者が、噂話の調査結果や体験談、或いは幽霊研究の歴史を紐解きながら「幽霊とは何か」を世に問うた著作なのだ。
決して「怖いもの見たさ」の好奇心を満たしてくれる作品ではないが、その分、冷静に心霊現象の実態とそれに対する人々の反応について考える事が出来るので、本書と共に有意義な時間を過ごす事が出来るに違いない。
本書は、幽霊屋敷で育った著者の体験談に始まり、イギリスを騒がせた幽霊騒ぎとその顛末、「幽霊物語」の発達、幽霊研究とテクノロジーとの関連等、実に幅広く言及している。
尚、イギリスの幽霊…と言うと、ロンドン塔やハンプトン・コートを思い浮かべる方も多いと思うが、意外な事にこれ等は殆ど登場しない。
その分、コックレーンの幽霊やテッドワースの騎手、或いは大戦中の幽霊船(幽霊潜水艦?)U65の逸話等、当時の人々にとってはより身近な「幽霊騒ぎ」に焦点を当てているのだ。
更には、ポルター・ガイストや降霊会に多くの頁を割いている事からもお解りのように、謂わば“心霊現象を通して見る社会史”に着眼している所に大きな特色があるであろう。
因みに、第二章で「幽霊の分類法」を纏めている事、或いは、キリスト教と幽霊の関係…特にカトリックとプロテスタントの解釈の違いを読み解いている所は興味深い。
何故なら、ポルター・ガイスト然り、悪魔や煉獄の観念然り、魔女の概念然り…私達日本人の幽霊観との違いを実感させられるからである。
本書を読むと「幽霊騒ぎ」の本質を垣間見る事が出来ると同時に、心霊現象が如何に地域や宗教と深く関わっているかについて考える事が出来るのではなかろうか。
「幽霊の社会学」という斬新な構想には惜しみない拍手を送りたいと思う。
但し、心霊現象に真摯に向き合った価値ある著作である一方で、若干の難点もあるのでそれについても触れておきたいと思う。
先ずは、騒ぎの多くが結局はまやかしであったり金銭目当てのパフォーマンスであったり…と言う逸話が多いので、残念ながら「幽霊とは何か」と言う結論が見えて来ない。
勿論、「幽霊など存在しない」という主張ならば、それはそれで明快なのだが、何しろ「幽霊屋敷で育ち、幽霊に魅せられて来た」著者である。
必ずや「それでも幽霊は存在する」という確信があるのではないかと思うと、その点をもう少し深く掘り下げて欲しかったように思う。
そしてもう一点は、全体の構成は決して悪くないのだが、余りにも多くの話題を詰め込み過ぎている所為で、各章の冒頭の書き出しと結末が繋がらなかったり、時系列が前後していたり…という混乱があり、非常に雑然としている点である。
全18章、400頁に及ぶ意欲作であり、幽霊を一つの社会現象と捉えた着眼点は素晴らしい。
然しながら、それだけに単なる研究報告で終わってしまっている淡泊さと文章の解り難さが残念であり、敢て、厳しい評価を下した次第である。
「世界一幽霊人口の多い国」と評されるイギリスの約500年に及ぶ幽霊史を纏めた画期的な一冊である。
さて、本書はあくまでも研究報告書であり、決して“お化け話”を紹介したものではない。
心霊現象研究協会(SPR)の会員でもある著者が、噂話の調査結果や体験談、或いは幽霊研究の歴史を紐解きながら「幽霊とは何か」を世に問うた著作なのだ。
決して「怖いもの見たさ」の好奇心を満たしてくれる作品ではないが、その分、冷静に心霊現象の実態とそれに対する人々の反応について考える事が出来るので、本書と共に有意義な時間を過ごす事が出来るに違いない。
本書は、幽霊屋敷で育った著者の体験談に始まり、イギリスを騒がせた幽霊騒ぎとその顛末、「幽霊物語」の発達、幽霊研究とテクノロジーとの関連等、実に幅広く言及している。
尚、イギリスの幽霊…と言うと、ロンドン塔やハンプトン・コートを思い浮かべる方も多いと思うが、意外な事にこれ等は殆ど登場しない。
その分、コックレーンの幽霊やテッドワースの騎手、或いは大戦中の幽霊船(幽霊潜水艦?)U65の逸話等、当時の人々にとってはより身近な「幽霊騒ぎ」に焦点を当てているのだ。
更には、ポルター・ガイストや降霊会に多くの頁を割いている事からもお解りのように、謂わば“心霊現象を通して見る社会史”に着眼している所に大きな特色があるであろう。
因みに、第二章で「幽霊の分類法」を纏めている事、或いは、キリスト教と幽霊の関係…特にカトリックとプロテスタントの解釈の違いを読み解いている所は興味深い。
何故なら、ポルター・ガイスト然り、悪魔や煉獄の観念然り、魔女の概念然り…私達日本人の幽霊観との違いを実感させられるからである。
本書を読むと「幽霊騒ぎ」の本質を垣間見る事が出来ると同時に、心霊現象が如何に地域や宗教と深く関わっているかについて考える事が出来るのではなかろうか。
「幽霊の社会学」という斬新な構想には惜しみない拍手を送りたいと思う。
但し、心霊現象に真摯に向き合った価値ある著作である一方で、若干の難点もあるのでそれについても触れておきたいと思う。
先ずは、騒ぎの多くが結局はまやかしであったり金銭目当てのパフォーマンスであったり…と言う逸話が多いので、残念ながら「幽霊とは何か」と言う結論が見えて来ない。
勿論、「幽霊など存在しない」という主張ならば、それはそれで明快なのだが、何しろ「幽霊屋敷で育ち、幽霊に魅せられて来た」著者である。
必ずや「それでも幽霊は存在する」という確信があるのではないかと思うと、その点をもう少し深く掘り下げて欲しかったように思う。
そしてもう一点は、全体の構成は決して悪くないのだが、余りにも多くの話題を詰め込み過ぎている所為で、各章の冒頭の書き出しと結末が繋がらなかったり、時系列が前後していたり…という混乱があり、非常に雑然としている点である。
全18章、400頁に及ぶ意欲作であり、幽霊を一つの社会現象と捉えた着眼点は素晴らしい。
然しながら、それだけに単なる研究報告で終わってしまっている淡泊さと文章の解り難さが残念であり、敢て、厳しい評価を下した次第である。