いじめ、イジリ、体罰、シカト・・・学校にはというより社会生活においても様々な人間関係に関する問題が山積みで、最悪、自殺やいじめ殺人に至っているのが今の世の中。学園内のこの問題を一気に払拭する方法を発明した薬丸岳のアイディアは素晴らしいと思います。
その方法とは生徒主導の自警団「ガーディアン」による学校秩序の維持。「ガーディアン」に逆らうと反対に「ガーディアン」会員による集団いじめや虐待などの罰が加えられるため、だれもその指示に逆らうことができません。そんなこと気にしないという図太くたくましい不良やアウトローには盗聴盗撮などにより弱味を握り脅迫、恐喝するという非合法手段まで使われます。おかげで学園内には不良が一掃され、いじめが一掃され、一見平和そのものに見えます。
そんなガーディアンが支配する石原中学校に新しく赴任した教師・秋葉は、校内が妙に落ち着いていることに疑問を持ち「ガーディアン」の存在を突き止めます。「ガーディアン」が学園の平和を担保している代わりに問題行動の多い生徒を不登校に追い込んでいると知り、ガーディアン自体を敵視する秋葉ですが、その熱血教師に「ガーディアン」による制裁の鉄槌が迫ります。
「ガーディアン」の正体とはだれか?ほかの教師たちは何をしているのか?学校の自治と平和はどうなるのか?などなかなかドキドキしながら楽しむことができました。
教員、学生、その父兄と登場人物はものすごく多いですし、生徒を苗字で呼ぶ(先生)と名前で呼ぶ(学生)がごっちゃごっちゃで人間関係を把握するのがちょっときついかな。まあこれは学園物の宿命ですね。
いじめがない夢のような学園生活は実は一握りの生徒たちが組織したシステムによって担保されていた、という構図は1984年(ジョージ・オーウェル)を思わせます。また銀英伝のラインハルトに支配されている帝国を思わせます。
ローエングラム王朝で独裁制をひくラインハルトは
「体制に対する民衆の信頼をえるには、ふたつのものがあればよい。公平な裁判と、同じく公平な税制度。ただそれだけだ」
と唱え、事実国民は平和で富みます。ラインハルトによれば民主政治は
「民主共和政とは、人民が自由意志によって自分たち自身の制度と精神をおとしめる政体のことか」
ということです。腐敗がはびこる社会はこういうものでしょう。
一方の自由惑星連合の智将ヤン・ウェンリーは
「政治の腐敗とは、政治家が賄賂をとることじゃない。それは個人の腐敗であるにすぎない」「政治家が賄賂をとってもそれを批判することができない状態を、政治の腐敗というんだ」
と両陣営とも奇しくも、結局自由な言動を抑圧する環境下では真の平和は生まれないといっています。
さて、いじめの張本人、ガーディアンの首謀者、学校を無法地帯にして平気な教師たちと悪役になりがちな登場人物がたくさん出てきますが、本作の場合はどの教師も、保護者も、子どもを守りたいと思っていることが強調されています。しかしネットやSNSが発達した現代では、子どもの生活の多くがバーチャルな舞台にあるため、本人の悩みや苦しみがつかめないといった教師側の苦悩が描きこまれており、またそんな世界で翻弄されて自我を表現できない子供自身の苦しみも十分表現されています。大人も子供も息苦しい世界に生きていて、そこから活路を見出す勇気を考えさせられる佳作です。他の作品ではもっと深刻なタッチで社会問題をえぐる薬丸さんですが、本作ではいつもと違ったソフトトーンで教育についての問題を投げかけてくれています。

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ガーディアン 単行本 – 2017/2/22
薬丸 岳
(著)
匿名生徒による自警団「ガーディアン」が治安を守る中学校に赴任した秋葉は、問題が少なく安堵する。ガーディアンのメンバーは、問題のある生徒らに「制裁」を行っていた。相次ぐ長期欠席を怪しんだ秋葉が生徒の身を案じるが、同僚は激務に疲弊し事なかれ主義だ。秋葉が学校の秘密に気づくと、少年少女は一変し、天国から地獄に叩き落とされる。大人と子供の思惑が幾重にも交差し――薬丸岳史上最大級の衝撃があなたの胸を打つ!
- 本の長さ290ページ
- 言語日本語
- 出版社講談社
- 発売日2017/2/22
- ISBN-104062204789
- ISBN-13978-4062204781
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商品の説明
著者について
薬丸 岳
1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年、初めて執筆した『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞。2016年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞受賞。主著に『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』などの夏目シリーズ、『友罪』、『ラストナイト』などがある。
1969年兵庫県明石市生まれ。駒澤大学高等学校卒業。2005年、初めて執筆した『天使のナイフ』で第51回江戸川乱歩賞を受賞。2016年『Aではない君と』で第37回吉川英治文学新人賞受賞。主著に『刑事のまなざし』『その鏡は嘘をつく』『刑事の約束』などの夏目シリーズ、『友罪』、『ラストナイト』などがある。
登録情報
- 出版社 : 講談社 (2017/2/22)
- 発売日 : 2017/2/22
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 290ページ
- ISBN-10 : 4062204789
- ISBN-13 : 978-4062204781
- Amazon 売れ筋ランキング: - 538,021位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 75,103位ノンフィクション (本)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2021年8月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2019年6月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
斬新な設定でとても面白く、いつもは寝ている電車内で降車駅まで読み続けていました。
2018年11月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
薬丸岳の本は、全て読んでいます。本当に良い作品生み出しテーマが少年犯罪など、重たい話であっても深く読者に考えさせる作家だと思っています。ですが、この作品だけは、なんかポイントがわからない。設定にそもそも、無理があると思います。あまりにも稚拙な感じがあり、ラストに近ずくにつれ、ヒョットして、無理矢理、終わらせるつもりなのではと思ってしまいました。読後も、特に感慨深いものがなく、途中も、中だるみしてしまった、薬丸岳さん本で初めて味わった、ガッカリ感です。
2017年10月15日に日本でレビュー済み
はいどうもこんにちは。
文章力と構成の巧さは相変わらずですね。
しかし、作品としてのテーマ性や精神性のなさも相変わらずで、
読了した後「もう一度読みたい」と想わされる要素は皆無でした。
この作者は、現実の「悪意」や「絶望」などの描写は本当に巧いのに、
どうしてソレに使い古されたキレイゴトや善意で対抗しようとするのか理解に苦しみます。
その接合性や説得力のなさ、無意味どころか逆効果というコトに気づいてないのでしょうか?
他の作品でも悪党から自分の身内を守るため「殺しはいけない」と言いながらも
結局は「殺す事」でしかその悪行を阻止出来なかったという処から
いい加減その「自己矛盾」に気づいて欲しいものです。
故に主人公、教師秋葉の考えや行動には一切共感出来なかった、
というより現実と自分が見えていない「偽善」と「欺瞞」に辟易とさせられました。
だって彼のやっている主なコトは、
『ただキレイゴトを言うだけで、結局は何もしていない』という一文に尽きるからです。
自分の教師としての「信念」とやらと相反するからガーディアンを無くす(潰す)と
息巻いていますが、ソレすらもガーディアンという存在に甘えての戯言に過ぎません。
彼個人ではいじめも恐喝も虐待も止められないのに、
「やり方が間違っている」と代替案も示さず
結局「オレが気に入らないからお前ら間違ってるんだよ」という
半ば逆ギレにも似た余りにも幼稚な行動理念が彼という人間の全てだからです。
「やり方が正しくても誰も救えない人間」と「やり方が間違っていても誰かを救える人間」
幼稚園児じゃないんですからどちらが本当に「正しい」かは明白です。
大雅がいじめから救われたのも、真凛が不良仲間から逃れられたのも、
葵が売春を免れたのも全部ガーディアンが動いたからに他なりません。
(秋葉はガーディアン本人から教えられるまでその「問題」の存在すら知らなかった。
葵を警察に連れていけたのも『ガーディアンのおかげ』なのです)
それを「本当の解決」等と嘯いて二の足を踏んでいたら(何もしなかったら)
いじめは際限なくエスカレートしますし、虐待はいつ強姦に変わるか解らず
売春はその様子も動画に撮られ奴隷にされるのは誰の眼にも明らかでしょう。
なのに何で「本当の解決」等という教師の「自己満足」のために
生徒が犠牲にならなければならないのか?
結果が間違ってても過程が正しければそれでいいのか?
そんな何もかもが全てキレイにまとまる「楽園」のような状況が出来上がるまで、
一体いつまで罪も無い子供が苦しみ続けなければならないのか?
全く本当に意味が解りません。
『やらない善よりやる偽善』
苦しんでいる者は「いつか」じゃなく『今』救いが欲しいんです。
そういう重大な事に眼を背けて、どうしても「善が悪に勝つ」という幼稚な理論を
ゴリ押ししようとするから折角の文章もあちこちで破綻が呻きをあげています。
一例を挙げますと大雅が優奈に
「ガーディアンには感謝しない、でもおまえには感謝してる」
というシーンがありますが、コレも「ガーディアンの助け在りき」の
言葉だという事に本人は気づいていません。
いじめがなくなったから心に余裕が出来た、色々考える時間も生まれた。
もしガーディアンの助けがなくいじめが「現在進行形」で続いていたら、
果たして彼は同じ言葉を優奈に告げられたのでしょうか?
エスカレートしたいじめの末期なんてそれこそ悪魔でもやらないような
残虐な所業のオンパレードで最悪「今、おれ、ここに、いなかった」かもしれません。
優奈だっていつまで彼を庇い続けられるか疑わしいもの、
自分も標的になって強姦でもされたら「アンタなんか庇うんじゃなかった!」
と後悔したかもしれません。
まるで飢えている時にご飯を食べさせたら心底感謝されたにも関わらず、
それが当たり前になったら「おまえの飯はまずい、もっと美味いものを持ってこい」
という厚顔無恥な人間と同種の気持ち悪さを感じさせられ
八巻も最低ですが被害者である彼にも同情出来なくなりました。
要するに、この作者が一番勘違いをしているのは「善意」とは、
「善意」VS「悪意」のような『対立概念』ではないというコトで、
「善意」とは、「悪人にではなく」
『そうでない人々と穏やかに生きるため』 に存在するモノだというコトです。
核ミサイルという悪意の塊が飛んできている時、祈ったらソレは止まるんですか?
どっかの莫迦が刃物振り回して襲い掛かってきた時、
慈愛に充ちた顔をしていたら刺されずに済むんですか?
だったらなんで刑務所は、人間の「善性」を説かず
毎日強制労働をさせているのでしょう。
「悪意」は「悪意」でしか止められない(コレは往々にして『正義』という言葉に置き換えられますが)
「善意」は使い物にならない、というより使う「人と場所」が違うのです。
この「善意万能説」もまた、秋葉のような偽善と欺瞞だらけの人間を生みだしてしまうのですが、
そういう意味で彼は教師に向いてなく、厨二病の英雄願望を拗らせた哀れな男だなというのが
最後に残った感想です。
文章力を踏まえ特別に星は2つ、しかし作品としては星1つです。
ソレでは。ノシ
文章力と構成の巧さは相変わらずですね。
しかし、作品としてのテーマ性や精神性のなさも相変わらずで、
読了した後「もう一度読みたい」と想わされる要素は皆無でした。
この作者は、現実の「悪意」や「絶望」などの描写は本当に巧いのに、
どうしてソレに使い古されたキレイゴトや善意で対抗しようとするのか理解に苦しみます。
その接合性や説得力のなさ、無意味どころか逆効果というコトに気づいてないのでしょうか?
他の作品でも悪党から自分の身内を守るため「殺しはいけない」と言いながらも
結局は「殺す事」でしかその悪行を阻止出来なかったという処から
いい加減その「自己矛盾」に気づいて欲しいものです。
故に主人公、教師秋葉の考えや行動には一切共感出来なかった、
というより現実と自分が見えていない「偽善」と「欺瞞」に辟易とさせられました。
だって彼のやっている主なコトは、
『ただキレイゴトを言うだけで、結局は何もしていない』という一文に尽きるからです。
自分の教師としての「信念」とやらと相反するからガーディアンを無くす(潰す)と
息巻いていますが、ソレすらもガーディアンという存在に甘えての戯言に過ぎません。
彼個人ではいじめも恐喝も虐待も止められないのに、
「やり方が間違っている」と代替案も示さず
結局「オレが気に入らないからお前ら間違ってるんだよ」という
半ば逆ギレにも似た余りにも幼稚な行動理念が彼という人間の全てだからです。
「やり方が正しくても誰も救えない人間」と「やり方が間違っていても誰かを救える人間」
幼稚園児じゃないんですからどちらが本当に「正しい」かは明白です。
大雅がいじめから救われたのも、真凛が不良仲間から逃れられたのも、
葵が売春を免れたのも全部ガーディアンが動いたからに他なりません。
(秋葉はガーディアン本人から教えられるまでその「問題」の存在すら知らなかった。
葵を警察に連れていけたのも『ガーディアンのおかげ』なのです)
それを「本当の解決」等と嘯いて二の足を踏んでいたら(何もしなかったら)
いじめは際限なくエスカレートしますし、虐待はいつ強姦に変わるか解らず
売春はその様子も動画に撮られ奴隷にされるのは誰の眼にも明らかでしょう。
なのに何で「本当の解決」等という教師の「自己満足」のために
生徒が犠牲にならなければならないのか?
結果が間違ってても過程が正しければそれでいいのか?
そんな何もかもが全てキレイにまとまる「楽園」のような状況が出来上がるまで、
一体いつまで罪も無い子供が苦しみ続けなければならないのか?
全く本当に意味が解りません。
『やらない善よりやる偽善』
苦しんでいる者は「いつか」じゃなく『今』救いが欲しいんです。
そういう重大な事に眼を背けて、どうしても「善が悪に勝つ」という幼稚な理論を
ゴリ押ししようとするから折角の文章もあちこちで破綻が呻きをあげています。
一例を挙げますと大雅が優奈に
「ガーディアンには感謝しない、でもおまえには感謝してる」
というシーンがありますが、コレも「ガーディアンの助け在りき」の
言葉だという事に本人は気づいていません。
いじめがなくなったから心に余裕が出来た、色々考える時間も生まれた。
もしガーディアンの助けがなくいじめが「現在進行形」で続いていたら、
果たして彼は同じ言葉を優奈に告げられたのでしょうか?
エスカレートしたいじめの末期なんてそれこそ悪魔でもやらないような
残虐な所業のオンパレードで最悪「今、おれ、ここに、いなかった」かもしれません。
優奈だっていつまで彼を庇い続けられるか疑わしいもの、
自分も標的になって強姦でもされたら「アンタなんか庇うんじゃなかった!」
と後悔したかもしれません。
まるで飢えている時にご飯を食べさせたら心底感謝されたにも関わらず、
それが当たり前になったら「おまえの飯はまずい、もっと美味いものを持ってこい」
という厚顔無恥な人間と同種の気持ち悪さを感じさせられ
八巻も最低ですが被害者である彼にも同情出来なくなりました。
要するに、この作者が一番勘違いをしているのは「善意」とは、
「善意」VS「悪意」のような『対立概念』ではないというコトで、
「善意」とは、「悪人にではなく」
『そうでない人々と穏やかに生きるため』 に存在するモノだというコトです。
核ミサイルという悪意の塊が飛んできている時、祈ったらソレは止まるんですか?
どっかの莫迦が刃物振り回して襲い掛かってきた時、
慈愛に充ちた顔をしていたら刺されずに済むんですか?
だったらなんで刑務所は、人間の「善性」を説かず
毎日強制労働をさせているのでしょう。
「悪意」は「悪意」でしか止められない(コレは往々にして『正義』という言葉に置き換えられますが)
「善意」は使い物にならない、というより使う「人と場所」が違うのです。
この「善意万能説」もまた、秋葉のような偽善と欺瞞だらけの人間を生みだしてしまうのですが、
そういう意味で彼は教師に向いてなく、厨二病の英雄願望を拗らせた哀れな男だなというのが
最後に残った感想です。
文章力を踏まえ特別に星は2つ、しかし作品としては星1つです。
ソレでは。ノシ
2019年3月17日に日本でレビュー済み
中学校を舞台にした生徒たちの自警団のお話。
親や先生、大人を信用できない生徒たちが、
自分たちで学校の問題を解決すべく、
自警団を結成しいじめや暴力、授業妨害など、
問題を起こす生徒を不登校に追い込んでいきます。
なかなか面白かったです。
そして、刑事夏目さんも少しだけ登場します。
親や先生、大人を信用できない生徒たちが、
自分たちで学校の問題を解決すべく、
自警団を結成しいじめや暴力、授業妨害など、
問題を起こす生徒を不登校に追い込んでいきます。
なかなか面白かったです。
そして、刑事夏目さんも少しだけ登場します。
2017年3月3日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
岳さんの小説の中でも飛びぬけて登場人数が多いサスペンスな恐怖を味わえます。あの夏目刑事もゲスト出演するので最初頁の出だしから登場人物の相関図と相互の関わりをメモしながらの深読みがおすすめです。イッキ読みの特Aランクで楽しめました。
2023年4月27日に日本でレビュー済み
中学校の生徒たちを裏で統制する自警団グループ「ガーディアン」。
「ガーディアン」は、学校に害をなす生徒たちを不登校に追い込み、学校生活に平穏をもたらしていた。生徒たちが「ガーディアン」の存在をひた隠しにするため公になることはない。歪な平和に気づいた着任したての教師は、この秘密に迫ろうとし、自身がターゲットになってしまうのだった…。
排除対象者の机に折鶴が置かれると、生徒たちによる圧力が始まるという不気味な設定である。「ガーディアン」のメンバーは一部早々に明らかになるものの、彼らの指示が日本人の同調圧力を喚起し、大きな力になってしまうというのが恐ろしい。
読み進めながら、出口なしの状態に追い込まれていく者たちの心情を思い、イライラがつのる。
これはユートピアなのか。テーマとして面白いが、この答えの出し方に不満が残ってしまう。クライマックスからラストにかけて失速の感は否めない。オチが難しいのは分かるのだが…。
「ガーディアン」は、学校に害をなす生徒たちを不登校に追い込み、学校生活に平穏をもたらしていた。生徒たちが「ガーディアン」の存在をひた隠しにするため公になることはない。歪な平和に気づいた着任したての教師は、この秘密に迫ろうとし、自身がターゲットになってしまうのだった…。
排除対象者の机に折鶴が置かれると、生徒たちによる圧力が始まるという不気味な設定である。「ガーディアン」のメンバーは一部早々に明らかになるものの、彼らの指示が日本人の同調圧力を喚起し、大きな力になってしまうというのが恐ろしい。
読み進めながら、出口なしの状態に追い込まれていく者たちの心情を思い、イライラがつのる。
これはユートピアなのか。テーマとして面白いが、この答えの出し方に不満が残ってしまう。クライマックスからラストにかけて失速の感は否めない。オチが難しいのは分かるのだが…。
2017年4月24日に日本でレビュー済み
先生が生徒を守ってくれないなら、自分たちで守るしかない。生徒による自警団「ガーディアン」によって平和が守られる中学校の隠された真実が明らかになる。
ガーディアンという自警団が、問題のある生徒に無視という制裁を加えることで、秩序を保つというのはよく考えられていた。「子供は大人が思っているよりもっと残忍で狡猾で、複雑だ」と生徒が語っている通り、極端ないじめや自殺が問題となる中で、いかに自分たちの身を守るか、生徒の切実な思いが伝わってきた。
登場人物が多くて多少の読みにくさがあるが、それだけさまざまな問題があるということでもあり、今の子供たちがいかに大変かよく分かった。
「いじめや困難は学校だけで起こるのではなく、生きている限りさまざまな困難に直面する。今、目の前にいる生徒を守ることだけでなく、その生徒が将来の困難に打ち勝てるよう見守っていくことも、教師の仕事だと思う」
秋葉先生が考え抜いた言葉が印象に残っている。
ガーディアンという自警団が、問題のある生徒に無視という制裁を加えることで、秩序を保つというのはよく考えられていた。「子供は大人が思っているよりもっと残忍で狡猾で、複雑だ」と生徒が語っている通り、極端ないじめや自殺が問題となる中で、いかに自分たちの身を守るか、生徒の切実な思いが伝わってきた。
登場人物が多くて多少の読みにくさがあるが、それだけさまざまな問題があるということでもあり、今の子供たちがいかに大変かよく分かった。
「いじめや困難は学校だけで起こるのではなく、生きている限りさまざまな困難に直面する。今、目の前にいる生徒を守ることだけでなく、その生徒が将来の困難に打ち勝てるよう見守っていくことも、教師の仕事だと思う」
秋葉先生が考え抜いた言葉が印象に残っている。