
無料のKindleアプリをダウンロードして、スマートフォン、タブレット、またはコンピューターで今すぐKindle本を読むことができます。Kindleデバイスは必要ありません。
ウェブ版Kindleなら、お使いのブラウザですぐにお読みいただけます。
携帯電話のカメラを使用する - 以下のコードをスキャンし、Kindleアプリをダウンロードしてください。
心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで 単行本 – 2017/4/15
微生物などの寄生生物は、私たちの脳神経に影響を与え、
感情や行動を操っている。
たとえば、気分や体臭、人格・認知能力を変えたり、
空腹感・体重もコントロール。
ネコやイヌからうつる寄生生物が、
交通事故や学習力低下の要因になりうることも明らかに。
また、人々の嫌悪感に働きかけ、道徳や文化、
社会の相違にまでかかわる。
その脳を操るワザは、あっと驚くほど巧妙だ。
こうした操作力を逆利用して、
うつや不安、ストレスを和らげる療法も開発中。
この分野(神経寄生生物学)の先端科学者たちに取材、
複雑精緻なからくりに迫っていく。
★amazon.com ベストブック(月間)!
きわめてオリジナルで、思考を刺激し、恐しくどきどきさせる・・・必読の1冊だ。
ーージョン・フォロ(amazon シニアエディター)
★養老孟司、竹内薫、池田清彦、松岡正剛 氏、絶賛!
★徹底取材した決定版
このテーマの解説書として決定版と言えるだろう。
ーー塚谷裕一(東京大学教授)『読売新聞』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
::著者:: キャスリン・マコーリフ
サイエンスライター。多くのメディアに科学記事を執筆し、数々の賞を受賞。
年間の最も優れた科学記事を掲載するアンソロジー
『ベスト・アメリカン・サイエンス・ライティング』にも選ばれている。
::訳者:: 西田美緒子
翻訳家。訳書は、ペネロペ・ルイス『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』、
ジェンマ・エルウィン・ハリス編著『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え』、
フランク・スウェイン『ゾンビの科学』など多数。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
::目次::
はじめに: マインドコントロールの達人
第1章: 寄生生物が注目されるまで
第2章: 宿主の習慣や外見を変える
第3章: ゾンビ化して協力させる
第4章: ネコとの危険な情事
第5章: 人の心や認知能力を操る
第6章: 腸内細菌と脳のつながり
第7章: 空腹感と体重をコントロールする
第8章: 治癒をもたらす本能
第9章: 嫌悪と進化
第10章: 偏見と行動免疫システム
第11章: 道徳や宗教・政治への影響
第12章: 文化・社会の違いを生み出す
- 本の長さ328ページ
- 言語日本語
- 出版社インターシフト
- 発売日2017/4/15
- 寸法19 x 13 x 2 cm
- ISBN-104772695559
- ISBN-13978-4772695558
この商品をチェックした人はこんな商品もチェックしています
商品の説明
メディア掲載レビューほか
寄生虫があなたの行動を決めるとしたら
「風邪をひいても世界観は変わる。故に、世界観とは風邪の症状に過ぎない」と看破したのは、ロシアの劇作家・チェホフである。チェホフの言葉にニンマリする人も、しかし、世界観に限らず、政治的立場や嫌悪感情なども、我々の体に入り込んだ寄生生物に操られていると聞いたら、驚くに違いない。
ウイルス、細菌、原虫、寄生虫といった、いわゆる寄生生物は我々の体の健康を脅かすばかりでなく、精神にも甚大な影響を及ぼす。心は脳の機能であり、脳は体の一部であるから、寄生生物が脳に影響を与えるのは、考えてみれば当然であるが、大方の現代人は、自分の心は自分だけがコントロールできると信じている。動物の行動ならいざ知らず、ヒトの心が寄生生物に操られるわけがない、と思っているに違いない。
しかし、ヒトも動物の一種である以上、進化の基本法則から逃れることはできない。寄生生物は自らの種の生き残り確率を最大化するように進化する。トキソプラズマという原虫はネコが最終宿主で、ネコの腸内で有性生殖をおこなって、糞便中にオーシストと呼ばれる胞子状の子虫を放出する。これがネズミの体内に入ると、シストと呼ばれる厚い殻に囲まれた子虫の集合体になり、筋肉や脳に入り込む。ネコがこのネズミを食べると、シストが取り込まれ、ネコの腸内で有性生殖が行われ、トキソプラズマの生活環が完成する。
ネズミの脳内に入ったトキソプラズマはネズミの行動を操作して、ネコに食われやすいように、ネズミの行動を活発に大胆にする。トキソプラズマはネコを飼っている人間にも感染し、全世界の人口の30%が脳にトキソプラズマを住まわせている。トキソプラズマにはヒトの脳とネズミの脳の区別がつかないから、感染した人間は恐怖心や注意力が薄れ、交通事故に遭いやすくなるという。本当かしらと思う人は、是非本書を読んでみてほしい。これに類した話がてんこ盛りだ。
評者:池田 清彦
(週刊文春 2017.06.22号掲載)著者について
年間の最も優れた科学記事を掲載するアンソロジー
『ベスト・アメリカン・サイエンス・ライティング』にも選ばれている。
登録情報
- 出版社 : インターシフト (2017/4/15)
- 発売日 : 2017/4/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 328ページ
- ISBN-10 : 4772695559
- ISBN-13 : 978-4772695558
- 寸法 : 19 x 13 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 329,246位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,207位科学読み物 (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
ここに出てくる寄生生物の多くは昆虫や野生動物などが主で、実際に人間を題材にしたのは、トキソプラズマ原虫とネコの関係、イヌやネコにも感染するトキソカラという回虫がある。ウイルスに関しては狂犬病ウイルスの患者が、狼男や吸血鬼のモチーフになったのは、その感染者が実際に「いた」からという着眼点は良かった。こういうケースは結構未開社会には多く見受けられ、日本でも狐憑きとか犬神憑きといったトランス型の精神「疾患」があったが、もしかしたら感染症や寄生生物のせいかもしれない。
こういった着眼点が良くても、因果関係を追及するには人体実験をいきなりすることが出来ない為、動物実験を繰り返し行って、科学的な因果関係まで追い込む必要があり、中々解明されないケースが多い。以前、魔女裁判が頻発したのは、ヨーロッパで流行したのは、ライ麦に感染した麦角菌が人体に影響を与えたせいであり、それに輪をかけてペスト禍で多くの死者と出したことを裏付けた、メアリー・キルバーン マトシアン「 食物中毒と集団幻想 」という非常に優れた著書を紹介したことがあるが、文化や社会にまで影響を与えた感染症や寄生生物への影響を軽視はまだまだ多い。
アビゲイル・タッカー「 猫はこうして地球を征服した: 人の脳からインターネット、生態系まで 」という本があるが、ここでもトキソプラズマ症による影響のことも書かれており、地球を征服したのは「猫である」と喝破したのは素晴らしい。私淑している栗本慎一郎氏ですら、大の猫好きであり、トキソプラズマ症に感染していた(恐らく間違いなく)からこそ、危なっかしい議論が多くなったことを相対化出来てなかった。
腸内細菌叢(腸内フローラ)に関しては、エムラン・メイヤー(日本語版で「 腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか 」がある)が登場していて、これらのエビデンスは本ですでに知っている内容だったので新鮮味は無かったが、実際に食生活と腸内細菌叢が身体だけでなく本人の「性格」にも影響を与えているという話が上がっていた。現在ではアランナ・コリン「 あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた 」の本では、微生物やウイルスなどの移動ルートとして樹状細胞は細菌の密入国を行っていることが判明したと書かれており、微生物やウイルスは直接的に人間の性格にまで影響を与えていると判断して良さそうというところまで来ている。
この辺の議論は、デイビッド・モントゴメリー&アン・ビクレー「 土と内臓 (微生物がつくる世界) 」、マーティン・J・ブレイザー「 失われてゆく、我々の内なる細菌 」(この本は引用もされている)などでも同様のことが言われている。
私がこの本での嫌悪に関する議論が出る文化論・社会論の後半部は正直先走りしすぎたと考えている。ただ昔は感染症に関してのエビデンス(証拠)が微生物やウイルスとは知られていなかったので、状況証拠から、非接触的な、遠距離での交流などによる交易などで感染症(当時は毒物や、見えない「毒素」だったり、呪術性のある「呪い」と考えられていた)による結果だけでどうすればよいかを「無意識」による行動パターンによる淘汰圧で判断していたと思われる。故人のマーヴィン・ハリスの様に、非常に過激ながら文化人類学の知見に基づいて、その無意識を遡上に出すことで一般の人にも考えさせて行動を促す様に仕向けるしかない。時間はかかるし性急になりがちながら、一気に推し進めれば誤解による「犠牲者」が出るだけで却って反発が多くなるだけだ。
つまり、この辺の議論は、文化人類学や経済人類学、医療人類学などの人類学から追及されなければならない。その中から「無意識」による行動システムや心理学などの知見に基づいた慎重に進めなくてはいけないという話である。従って著者の紹介したその学者の様に突っ走ってしまったら反発を食らうのがオチだ。
特に現代のコロナ禍では、フェイクニュースも多く散見されていて、エビデンスのはっきりしない議論が多すぎるので余計タチの悪いことになっている。今回の新型コロナでもワクチンを打つことで確かに感染しにくくなる一方で、突然変異による変異株が生まれ続けるスピードが早い為に、どうすれば良いかが分からない人々による「政治」活動が事態を一層複雑にしている。ヨーロッパやインドもそうだが、ある程度犠牲者が出るのは「仕方がない」と割り切っているのは、全くもって「民主主義」的でなないであろうが、疫学的には感染者がゼロになるケースは滅多にない(天然痘などの例外を除く)と分っているのでそこは徹底している。
日本ではこういった感染症対策には、まだまだ迷信が付きまとっていたので「運命」論で昇華出来ていたが、迷信が薄らいだ現代では反発が多い。実際には日本の感染症対策はまだ世界レベルでは良い方なのだ。集団主義的であるが故に、出る杭は打たれる議論が目立つだけだ。
私とて、尖がった議論をすれば叩かれるのは嫌なのでこれ以上は言わないが、日本の衛生管理は厳しすぎる故に、都市圏では別の弊害(アレルギーや別の疾患など)もある。要はどうありたいかが先であって、ある程度の感染症は許容する必要があるという議論は、集団主義的な、特に日本では中々進まない。でもそれしかないと私は思っている。
はじめに: マインドコントロールの達人
第1章: 寄生生物が注目されるまで
第2章: 宿主の習慣や外見を変える
第3章: ゾンビ化して協力させる
第4章: ネコとの危険な情事
第5章: 人の心や認知能力を操る
第6章: 腸内細菌と脳のつながり
第7章: 空腹感と体重をコントロールする
第8章: 治癒をもたらす本能
第9章: 嫌悪と進化
第10章: 偏見と行動免疫システム
第11章: 道徳や宗教・政治への影響
第12章: 文化・社会の違いを生み出す
解説 真柴隆弘
という目次で、特に、第4章、トキソプラズマが統合失調症などを引き起こすという個所は有名な記事らしい。第5章までがいわゆる寄生生物によってヒトも含め宿主の心を寄生生物がどのように制御するかという知見をのべる。第6章以降は、バイオトープというか、焦点は腸内細菌なのだが、ヒトの個体が微生物集団にどれほど影響されているかを述べる。それが、人間集団にも影響しているのではないかというのが、第9章以降の話。
養老孟司は、寄生生物によってコントロールされるという表現は、西欧一神教的なものの見方ではないかと言っていたが、昨今の人工知能でも話題になるヒトの「意識」の問題になると、人間の精神的な自立、責任、その他が確かに見直す必要がある。
それはともかく、寄生生物が影響するのなら、その駆除や予防によって色々な可能性が開ける。脳科学というものの立脚点も変わるかもしれない。
私たちは、脳や腸内などに棲み着いたパラサイト(寄生生物)によって操られているというのです。私たちが知らないうちに、私たちの性格や行動が影響されている、すなわち、マインド・コントロールされているというのです。
例えば、トキソプラズマ原虫は、ネズミ→ネコ→ヒトという経路で感染し、私たちの脳に棲み着きます。これまで、医学的に問題になるのは妊婦への感染のケースとされてきたのですが、近年、神経科学者や心理学者らの研究によって、ヒトの気分や性格が変えられてしまい、感染者が危険な行動に駆り立てられることが明らかになってきました。さらに、統合失調症との関わりも指摘されています。
元々、ネズミはネコを恐れるものですが、トキソプラズマに感染したネズミは却ってネコに惹きつけられるようになってしまいます。トキソプラズマがネズミの性ホルモンに作用し、嗅覚を変えてしまうのではないかと考えられています。
また、イヌからヒトの脳へ感染するトキソカラという回虫は、知的障害を起こすリスクがあることが分かってきました。回虫の幼虫が、脳内の学習と記憶に関わる領域に集まり、影響を及ぼすのです。
私たちの腸内の細菌が、肉体の健康に大きな役割を果たしていることは知られてきましたが、動物実験で、腸内細菌が精神面でも重大な影響を及ぼしていることが分かってきました。
これらは、近年、目覚ましい進展を見せている神経寄生生物学という新しい研究分野の成果です。
「もし寄生生物が精神疾患や交通事故の原因だとしたら、どうすれば私たちの脳から立ち退かせることができるのか、さもなければ力を阻止できるのか? もし私たちの腸内細菌が私たちの気分を明るくして不安を小さくしてくれるとしたら、どうすればもっとうまく利用できるのか? もし感染への不安が文化戦争や実際の戦争の背後にまで潜んでいるとしたら、それを知ることが重要ではないのか?」というのが、著者の問いかけです。
研究や実験で一定の結果が得られつつあることは確かですが、相関関係か因果関係かの一層の見極めが必要な段階だと、私は考えています。