『正論SP Vol2 天皇との絆が実感できる100の視座』を読んで印象に残ったところ。
第33講
不可欠な党派を超えた特別な勢力
わが国において《相争う双方を緩和し、無偏無党の立場から両者を安んじいたわって、各々が度を過ぎないように導く》力をもっているのは、党派を超えて国家・国民のために祈られる皇室しかないと、福沢は指摘しているのです。
民主主義の重要性を理解しつつも、その欠陥を補う役割を皇室に求めた福沢の皇室論は現代においても極めて示唆に富んでいると思います。
(江崎道朗)
第34講
道理に束縛された政府のために
《政府はただ規則の中でかつどうするだけとなり、規則から外れた部分では、いささかも自由がないことだろう。
しかしながら、人間社会はそうした規則の中だけに包含・網羅することはできない。すなわち、政府の容量は小さく、社会の形は大きいと言えるだろう。小をもって大を包もうとしても、もともと無理な話だ。
例えば、よるべない人々を憐れみ、孝行な子や貞節な婦人を賞するようなことは政府の手にあまる。これらは、人情の世界においては最も緊要なことであり、一国の風俗に影響を及ぼすことが最も大きいことだけれども、道理の中に束縛されている政府においては、決してこれに手を着けることができない。
「政府の庫の中にあるものは、一銭の金、一粒の米といえども、その出処は国会で議定して徴収した租税である。金も米も皆これ国民の膏血なのだ。どうして、この膏血を絞って一部の人々の腹の足しにするようなことができようか」などと理屈をこねれば、道理の世界ではこれに答える言葉もあるまい》(『福沢諭吉の日本皇室論』島津書房)
富国強兵では行き届かない部分、つまり学術・文化の高貴さを保ち、福祉を重視して格差を是正する役割を皇室に担っていただくべきであると福沢は考え、実際に皇室はそのような役割を担ってこられたのです。
(江崎道朗)
第35講
フランスに留学し、フランス革命後の政治の混乱もよく知っていた兆民は、ヨーロッパの王室と日本の皇室との違いをよく理解し、意外かもしれませんが、皇室の重要性を積極的に説いていたのです。
英国など我国と較ぶべきには非ず
兆民はこう述べて、政府や国会の混乱に影響を受けずに国家の安定を保たれるのが天皇という存在なのだから、国会が開設し政治の仕組みが変わっていくとしても、国民は引き続き皇室を仰いでいくようにすべきだと主張したのです。
日本の歴史をよく知り、ヨーロッパの政治の欠点をも踏まえて皇室の重要性を説いた兆民ほ、さすがだと言えましょう。
(江崎道朗)
第36講
真に誤りない道は何か
《真に誤りない道は西洋の諸君主国に於いて取れると同様に一方には国君が其国家的使命の明瞭なる自覚の下に国民を率ゐ給ふこと。又一つは人民が極めて透徹なる合理的確信の上に君権を中心として国家の経営に全力を致すことである》
皇室が国家の安寧と国民の幸福を祈って貧民を救済する事業などに取り組んできた歴史を踏まえ、天皇が国家・国民のために動かれ、国民の側もそうした皇室のもとで一致団結していく方が民本主義を発展させ易いことを正確に理解させていけば日本の国柄は安泰だと説いたのです。
この吉野の提案は、残念ながら当時の政府当局には余り理解されませんでした。
言論の自由を否定し、盲目的に天皇崇拝を強制したことが却って皇室に対する反発を強めてしまった歴史を忘れないでおきたいものです。
(江崎道朗)
第75講
「困難な道」と表現された理由
天皇廃止という時限爆弾を憲法に
連合国が、日本国民の手で「天皇」を将来廃止させるため日本に強要したもの、それが日本国憲法だったのです。そして日本が独立を回復しても、日本国憲法体制はいささかも変わっていなかったのです。
(江崎道朗)
第76講
第一に、皇位継承のあり方などを規定した「皇室典範」改正も含め、「国政」ついての発言権が事実上失われました。
第二に、皇室を支える組織が廃止、縮小されてしまいました(枢密院、華族、宮内府)
第三に、皇室財産の大半が強制的に国有財産に編入され、皇室経費は国会のコントロール下に置かれました。
第四に、多額の財産税を課し、皇族の経済的特権を剥奪しました。
第五に、旧皇室典範が廃止されたのに伴って皇室のあり方を規定した法令の大半も廃止されました。皇室の伝統的な儀式、活動などは極めて法的に不安定な状況に置かれてしまったのです。
第六に、学校では「皇室排除」教育が横行しました。
第七に、刑法の「不敬罪」が廃止され、皇室誹謗記事がメディアに氾濫したことも見逃せません。
(江崎道朗)
「天皇」を論じる前に心得るべきこと
小柳陽太郎
「天皇は聴く」存在ということ
ただ聴くということがどれほど大きな力を持つか
しきしまの道とは私心を排することである
「黙って一分間、ものごとを眺める」ということがいかに難しいことか。
上手につくろうという虚栄心とたたかうこと。
ものごとを正確に見ること、そして私心を排してものごとの動きにこちらの心をぴったり重ね合わせること、それが歌の修行。
人の言葉に耳を傾けるのが皇室の伝統。
かかる修正の積み重ねが、実は「万世一系」の具体的な内容。
そこには子供を見つめる母親のまなざしのように、ゆるがない人間の真実、無私の精神があるのです。
天皇の問題について大切なことは、この真実を認めるか否か、すべてはそこにかかっている。議論はそのあとでいい。
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正論SPvol.2 天皇との絆が実感できる100の視座 (日工ムック) ムック – 2017/5/25
安藤 慶太
(編集)
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正論SP(スペシャル)vol.2
天皇との絆が実感できる100の視座
【発行所:産経新聞社 発売所:日本工業新聞社】
皇統や譲位をめぐってさまざまな議論が積み重ねられています。議論の行方が大切だということはいうまでもありませんが、もっと大切なこと、それは国民が天皇を戴く意義や重要性をしっかりと認識することではないでしょうか。
私たちの身の回りには表面的な考え方や悪意に基づく主張、判断を惑わすような言説があふれています。そして学校では天皇の大切さを教えてくれません。 天皇をめぐって展開されるさまざまな議論や論点をどう考えていけば良いのか、ビギナーにも解りやすい平易な記述で解き明かします。
この一冊で天皇をめぐる論点はおおむねカバーしており、きっと読み終えたときには「日本に生まれて本当に良かった! 」と思いがこみ上げてくる、渾身の一冊です。
第一章 全25講 天皇のご存在はなぜ尊いのか
第二章 全25講 天皇を戴く意義に迫る25の手がかり
第三章 全18講 皇位を脅かす国難
第四章 全10講 論じるより感じよ~御製を読み解き昭和史を歩く
第五章 全21講 昭和・平成の歩みの中で
第六章 全11講 元号と改元の意義を考えよう
コックピットから
天皇・皇室と「世界の王室」との違いを知ろう 椛島有三
神様と神話が息づく日本 田中英道
日本史究極の謎「天皇が何故続いたのか」 占部賢志
「朝敵」日本共産党が「白旗」を出した理由 筆坂秀世
マスコミの造語にすぎない「人間宣言」 八木秀次
米国人からみた天皇と日本人の美意識 ケント・ギルバート
八紘一宇にみる天皇と「おおみたから」 三原じゅん子
正倉院の宝飾品を蘇らせた皇室の蚕 三荻祥
「困った憲法」をもてあそぶ内閣法制局
天皇条項政府解釈のデタラメ 江崎道朗
日本人は生命の連続性を皇室にみる 加地伸行
有識者会議の議論を振り返って 百地章
天皇を論じる前に心得るべきこと 小柳陽太郎
渡部昇一氏「天皇・皇室は日本人が守るべき美しい虹」
・元号と改元の意義を考えよう
・五箇条の御誓文を読み解く
・天皇の祈りはなぜ尊いか
・現職教師による「御製を読み解き昭和史を歩く」
・平成とはどんな時代だったか
・女系天皇にはどんな問題があるのか
ほか
天皇との絆が実感できる100の視座
【発行所:産経新聞社 発売所:日本工業新聞社】
皇統や譲位をめぐってさまざまな議論が積み重ねられています。議論の行方が大切だということはいうまでもありませんが、もっと大切なこと、それは国民が天皇を戴く意義や重要性をしっかりと認識することではないでしょうか。
私たちの身の回りには表面的な考え方や悪意に基づく主張、判断を惑わすような言説があふれています。そして学校では天皇の大切さを教えてくれません。 天皇をめぐって展開されるさまざまな議論や論点をどう考えていけば良いのか、ビギナーにも解りやすい平易な記述で解き明かします。
この一冊で天皇をめぐる論点はおおむねカバーしており、きっと読み終えたときには「日本に生まれて本当に良かった! 」と思いがこみ上げてくる、渾身の一冊です。
第一章 全25講 天皇のご存在はなぜ尊いのか
第二章 全25講 天皇を戴く意義に迫る25の手がかり
第三章 全18講 皇位を脅かす国難
第四章 全10講 論じるより感じよ~御製を読み解き昭和史を歩く
第五章 全21講 昭和・平成の歩みの中で
第六章 全11講 元号と改元の意義を考えよう
コックピットから
天皇・皇室と「世界の王室」との違いを知ろう 椛島有三
神様と神話が息づく日本 田中英道
日本史究極の謎「天皇が何故続いたのか」 占部賢志
「朝敵」日本共産党が「白旗」を出した理由 筆坂秀世
マスコミの造語にすぎない「人間宣言」 八木秀次
米国人からみた天皇と日本人の美意識 ケント・ギルバート
八紘一宇にみる天皇と「おおみたから」 三原じゅん子
正倉院の宝飾品を蘇らせた皇室の蚕 三荻祥
「困った憲法」をもてあそぶ内閣法制局
天皇条項政府解釈のデタラメ 江崎道朗
日本人は生命の連続性を皇室にみる 加地伸行
有識者会議の議論を振り返って 百地章
天皇を論じる前に心得るべきこと 小柳陽太郎
渡部昇一氏「天皇・皇室は日本人が守るべき美しい虹」
・元号と改元の意義を考えよう
・五箇条の御誓文を読み解く
・天皇の祈りはなぜ尊いか
・現職教師による「御製を読み解き昭和史を歩く」
・平成とはどんな時代だったか
・女系天皇にはどんな問題があるのか
ほか
- 本の長さ306ページ
- 言語日本語
- 出版社日本工業新聞社
- 発売日2017/5/25
- ISBN-104819151495
- ISBN-13978-4819151498
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登録情報
- 出版社 : 日本工業新聞社 (2017/5/25)
- 発売日 : 2017/5/25
- 言語 : 日本語
- ムック : 306ページ
- ISBN-10 : 4819151495
- ISBN-13 : 978-4819151498
- Amazon 売れ筋ランキング: - 369,199位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 202位文芸総合雑誌
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2018年4月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2018年10月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
天皇陛下の御退位が決まってから、皇室についての疑問、知らなかった事、世界の王室との違いなど、この一冊でわかる本です。なぜ女性宮家、女性天皇がダメなのか、今後の皇室のあり方をわかりやすく書かれていてよかったです。これは永久保存版だと思います。
2017年12月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
まだ読みきれていませんが、内容が濃く毎日読み進めるのが楽しみです。購入して正解でした。
2017年6月11日に日本でレビュー済み
天皇について実は何も知らない。
天皇について最初に読む本は何が良いだろうか?書店を廻ってみても悩む。
そう思っていたら丁度良い本が出た。
本誌は神話から続く皇統の話、天皇陛下はどのようなお務めに尽くされているのかという話、皇位を脅かす国難をどう乗り越えてきたかという話、戦前から問題はあったものの戦後GHQによりさらに困難なものにされた皇位継承の問題、さらに現行憲法は国民の手で皇室を廃止させる目的で強要されている問題、あらゆる問題について多数の執筆陣が論じている。とりあえず基本を学べるのでオススメである。
とりわけ驚いたのは江崎道朗氏が執筆された現代にも続く「困った憲法」をもてあそぶ内閣法制局の政府解釈のデタラメ史だ。
詳しくは本誌を読んで頂きたいが、現行憲法制定当時の『天皇が立憲君主として国政に影響を与えることは当然だ』とする日本政府の見解を内閣法制局は次第に昭和39年、高辻内閣法制次長 『国政に影響を及ぼすような権能、そのようなものはお持ちにならない』、昭和63年、大出内閣法制局第一部長 『天皇の行為によりまして事実上においても国政の動向に影響を及ぼすようなことがあってはならない』と解釈変更していて、その理由は何ら説明もされていない、いい加減なものであるという事実だ。
内閣法制局は憲法解釈を一手に担う役所になるので、その答弁は政府見解である。
また天皇に対する憲法上の制約はどんなものなのかという講で、その憲法解釈に影響を与えているのは『天皇はめくら判を押すロボットだ』とする宮沢俊義憲法学だと倉山満氏は述べている。
日本国憲法第四条「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、権能を有しない」の解釈として、昭和50年吉国内閣法制局長官は『およそ天皇の行動があらゆる行動を通じて国政に対して影響を及ぼすことがあってはならないことは当然でございます』というおよそ、あくまで天皇と国政との関係を断ち切ろうとするGHQによる現行条文を積極的に解釈しようとした昭和21年金森徳次郎国務大臣の『どうしても若干の国務は行わせられなければならぬ』とはかけ離れている答弁をしている。
こういったデタラメ解釈が「天皇陛下のおことばで譲位(退位)が実現してしまったら憲法違反になるのではないか?」というムダな心配を産んでしまうのではないか。
やはり現行憲法制定当時の解釈に立ち返り、『天皇は有名無実なる国の〈象徴〉ではなく、内閣の《承認》を得て政治の一部である国務を行われる』とあくまで天皇は立憲君主であると解釈を立て直すべきであろうという江崎氏の主張は正しい。
あと宮沢俊義東大憲法学VS評論家 葦津珍彦の話も唸った。
元号法制化をめぐる議論のなかで宮沢は「明治憲法の下では元号は天皇即位の際、勅定するとされていたが、いまは憲法上、天皇は一切そういうことに関与できない。元号は国会の法律で決めるほかない」と指摘、これにより天皇は元号決定に対し関与できず、内閣の元号となってしまうため本質的に天皇の元号とはならず似て非なるものとなるのではないか?と疑問が噴出。この問題提起に葦津氏が反論。
「天皇の国事行為は〈内閣の助言と承認〉で行われるのが憲法の定めである。世の俗流解釈では、これをもって、天皇は御自らの意思をなんら発動されることなく、ただ内閣の命ずるがままに進退されると思っている者が存外に多い。天皇の側から意思が示されて、その御意思のとおりに国事行為を為さるのに内閣が同意して、その責任については一切天皇に累を及ぼすことなく、内閣がその責に任ずることを内閣の〈承認〉と云っているのである。
国事行為が、専ら内閣の一存でのみ行われ、天皇の側からの意思の発動が無いのならば〈助言〉の一語で足るのであって〈承認〉の語の意味は全く無用というか分からない語となるだろう」
よって現行憲法下でも天皇の御意思によって元号を制定し、それを内閣が〈承認〉することは何の問題もないと。
天皇はロボットではないのである。
この本は是非、全政治家、全官僚必読に欲しいくらいだ。重要なことが講じられている。今後も皇室が続いていけるよう考えて欲しい。
あと執筆陣の似顔絵はなんか可愛らしいと付け加えておきます。
天皇について最初に読む本は何が良いだろうか?書店を廻ってみても悩む。
そう思っていたら丁度良い本が出た。
本誌は神話から続く皇統の話、天皇陛下はどのようなお務めに尽くされているのかという話、皇位を脅かす国難をどう乗り越えてきたかという話、戦前から問題はあったものの戦後GHQによりさらに困難なものにされた皇位継承の問題、さらに現行憲法は国民の手で皇室を廃止させる目的で強要されている問題、あらゆる問題について多数の執筆陣が論じている。とりあえず基本を学べるのでオススメである。
とりわけ驚いたのは江崎道朗氏が執筆された現代にも続く「困った憲法」をもてあそぶ内閣法制局の政府解釈のデタラメ史だ。
詳しくは本誌を読んで頂きたいが、現行憲法制定当時の『天皇が立憲君主として国政に影響を与えることは当然だ』とする日本政府の見解を内閣法制局は次第に昭和39年、高辻内閣法制次長 『国政に影響を及ぼすような権能、そのようなものはお持ちにならない』、昭和63年、大出内閣法制局第一部長 『天皇の行為によりまして事実上においても国政の動向に影響を及ぼすようなことがあってはならない』と解釈変更していて、その理由は何ら説明もされていない、いい加減なものであるという事実だ。
内閣法制局は憲法解釈を一手に担う役所になるので、その答弁は政府見解である。
また天皇に対する憲法上の制約はどんなものなのかという講で、その憲法解釈に影響を与えているのは『天皇はめくら判を押すロボットだ』とする宮沢俊義憲法学だと倉山満氏は述べている。
日本国憲法第四条「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、権能を有しない」の解釈として、昭和50年吉国内閣法制局長官は『およそ天皇の行動があらゆる行動を通じて国政に対して影響を及ぼすことがあってはならないことは当然でございます』というおよそ、あくまで天皇と国政との関係を断ち切ろうとするGHQによる現行条文を積極的に解釈しようとした昭和21年金森徳次郎国務大臣の『どうしても若干の国務は行わせられなければならぬ』とはかけ離れている答弁をしている。
こういったデタラメ解釈が「天皇陛下のおことばで譲位(退位)が実現してしまったら憲法違反になるのではないか?」というムダな心配を産んでしまうのではないか。
やはり現行憲法制定当時の解釈に立ち返り、『天皇は有名無実なる国の〈象徴〉ではなく、内閣の《承認》を得て政治の一部である国務を行われる』とあくまで天皇は立憲君主であると解釈を立て直すべきであろうという江崎氏の主張は正しい。
あと宮沢俊義東大憲法学VS評論家 葦津珍彦の話も唸った。
元号法制化をめぐる議論のなかで宮沢は「明治憲法の下では元号は天皇即位の際、勅定するとされていたが、いまは憲法上、天皇は一切そういうことに関与できない。元号は国会の法律で決めるほかない」と指摘、これにより天皇は元号決定に対し関与できず、内閣の元号となってしまうため本質的に天皇の元号とはならず似て非なるものとなるのではないか?と疑問が噴出。この問題提起に葦津氏が反論。
「天皇の国事行為は〈内閣の助言と承認〉で行われるのが憲法の定めである。世の俗流解釈では、これをもって、天皇は御自らの意思をなんら発動されることなく、ただ内閣の命ずるがままに進退されると思っている者が存外に多い。天皇の側から意思が示されて、その御意思のとおりに国事行為を為さるのに内閣が同意して、その責任については一切天皇に累を及ぼすことなく、内閣がその責に任ずることを内閣の〈承認〉と云っているのである。
国事行為が、専ら内閣の一存でのみ行われ、天皇の側からの意思の発動が無いのならば〈助言〉の一語で足るのであって〈承認〉の語の意味は全く無用というか分からない語となるだろう」
よって現行憲法下でも天皇の御意思によって元号を制定し、それを内閣が〈承認〉することは何の問題もないと。
天皇はロボットではないのである。
この本は是非、全政治家、全官僚必読に欲しいくらいだ。重要なことが講じられている。今後も皇室が続いていけるよう考えて欲しい。
あと執筆陣の似顔絵はなんか可愛らしいと付け加えておきます。
2017年5月25日に日本でレビュー済み
倉山満先生、江崎道朗先生のものを中心に読む。
舞の海修平さんの正論掲載記事の再掲もおもしろい。
「偽装保守」の輩もいるので注意が必要。西北にいる。
舞の海修平さんの正論掲載記事の再掲もおもしろい。
「偽装保守」の輩もいるので注意が必要。西北にいる。
2017年6月1日に日本でレビュー済み
いままで私は、在外中に各国の方から「日本の皇室は英国の王室と同じか?違う点は何でどう違うのか?」と言うような素朴な質問をされたことがある。ところが恥ずかしい事に私はその質問に対して、正確な回答ができなかった。皇紀2600年を超える伝統について何も学んでこなかったからだ。しどろもどろに「英国よりも長い歴史と伝統がある。」などどお茶を濁してその場をしのいだものだった。
本書は、日本の根幹をなす皇室のご存在の貴さ、その意義について分かりやすく伝えられている。
個人的には、特に田中先生、故渡部昇一先生の「天皇のご存在」そのものについての見解に学ぶことが大きい。
そして「女性宮家」「女性天皇」を実現せんと画策する野党の思惑に要注意だと感じた。皇室の安定した継続を望む姿勢を装いながら「蟻の一穴」から伝統を崩し、日本の皇室の男系天皇を終わらせようとする動き。「女性宮家」「女性天皇」推進は、実はどさくさに紛れ「女系天皇」誕生を虎視眈眈と狙っているプロセスに過ぎない。紙面で陛下に敬語も使わず、元号の廃止呼びかけに血道を上げる朝日新聞が、ことさら熱心に「女性宮家」「女性天皇」を持ち上げる様を見れば、野党と組んで何をしたいのか見えてくる。朝日は、いずれ皇室解体の旗を振ると私は思う。
本書は、日本の根幹をなす皇室のご存在の貴さ、その意義について分かりやすく伝えられている。
個人的には、特に田中先生、故渡部昇一先生の「天皇のご存在」そのものについての見解に学ぶことが大きい。
そして「女性宮家」「女性天皇」を実現せんと画策する野党の思惑に要注意だと感じた。皇室の安定した継続を望む姿勢を装いながら「蟻の一穴」から伝統を崩し、日本の皇室の男系天皇を終わらせようとする動き。「女性宮家」「女性天皇」推進は、実はどさくさに紛れ「女系天皇」誕生を虎視眈眈と狙っているプロセスに過ぎない。紙面で陛下に敬語も使わず、元号の廃止呼びかけに血道を上げる朝日新聞が、ことさら熱心に「女性宮家」「女性天皇」を持ち上げる様を見れば、野党と組んで何をしたいのか見えてくる。朝日は、いずれ皇室解体の旗を振ると私は思う。