著者には、とはずがたりの現代語訳
現代語訳 とわずがたり (新潮文庫)
の作品もあります。そちらのほうは約200ページほどの作品です。それを小説化した本書は、500ページもの作品です。よくここまで枚数を増やすことができたものです。それは作者の想像力とこの作品への愛着がなさしめたものです。確かに男性の輪郭は、原作よりは浮き彫りにされたのかもしれませんが、読まされるほうには、後半では食傷気味になってしまいます。、
主人公、二条の生き様はある時代の女性には相当な魅力を持ったのでしょうか。「中世炎上」というタイトルにも相当な意気込みが感じられます。しかし何が炎上しているのでしょうか。前時代の価値観が崩壊していくのでしょうか、それとも中世という「時代」が滅んでいくのでしょうか。本書が、「新枕の女」で始まり、後深草院の最後の言葉が、「すけだい」となっているのも、二条は深い因縁の中のひとつのこまに過ぎないのかもしれません。
二条がもらす「自分の肉体の上を過ぎていった男たちが、ひとりずつあの世に消え去るのは、自分の肉に刻みこまれた罪の後がひとつずつ消え去るような思いもある。」という感慨の部分は、著者の心境の反映でしょうか。でも最後を飾るのは、「口に馴れた経文の句」ではなく、「琵琶の音」だというのも、この当時(1971−72年)の著者の揺れ動く心境を示すものかもしれません。

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中世炎上 (新潮文庫 せ 2-7) 文庫 – 1989/1/1
瀬戸内 晴美
(著)
- 本の長さ546ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日1989/1/1
- ISBN-104101144079
- ISBN-13978-4101144078
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (1989/1/1)
- 発売日 : 1989/1/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 546ページ
- ISBN-10 : 4101144079
- ISBN-13 : 978-4101144078
- Amazon 売れ筋ランキング: - 421,702位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2001年2月17日に日本でレビュー済み
後深草院の寵を受ける美貌の女房、二条の生涯。 実権を鎌倉幕府に奪われた京都の御所での、頽廃的な生活が描かれていて興味深い。 しかし、あまりにも扇情的な描写が本筋と関わり無い所でも出てくるので、少し興ざめ。 二条も初めの頃は共感が持てるが、中盤では何人もの男性と不本意な肉体関係を持った挙げ句、その人達に愛着を覚えるという、なんとも主体性のない性格で飽きてしまう。 出家した後の心理描写、紀行等をもっと入れると二条の性格にも人間としての厚みが見えるのではないかと、残念に思った。
2019年6月23日に日本でレビュー済み
後深草院ご寵愛の二条の華麗なる男性遍歴…のはずですが現代的な感覚からするとクズのオンパレード。二条の母が忘れられず青こ田買いで二条の始めての男になり寵愛するわりに他の男に引き渡すようなこともしちゃう後深草院や、出家したのに二条への煩悩が断ち切れずストーカーのごとく追い求めるメンヘラ系坊主有明の月などなどたくさんの男たちとの恋愛(性欲?)に物のように扱われ翻弄される主人公……ですが嫌だ〰と思いつつもすんなり体を許してしまう主人公も現代的にいえばOh!ビッチじゃん!…(相手が天皇とか大貴族なんで権力的にも逆らえないので仕方ないとはいえ)
中頃までの華やかな宮廷の生活から離れ尼になってからの二条はわびしさが際立つ。回りにいた男たちもいまある地位や立場のため二条に冷たい対応をすらするようになっていた。
そしてついに始めてのひと後深草院が亡くなり二条は葬列に必死について行くが…
中頃までの華やかな宮廷の生活から離れ尼になってからの二条はわびしさが際立つ。回りにいた男たちもいまある地位や立場のため二条に冷たい対応をすらするようになっていた。
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