前作“Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち”は、やる気のないGAGAがソフトを出している日本以外では3D版が出ていますが、さすがにこちらはどこでも3D版は出さないようですね。
本当に淡々とした人間ドラマですから、その心の揺れとかを立体的な空間を使って表現しようというヴィム・ヴェンダース御大の心意気はわかりますが、確かにこの地味な映画を自宅で3D眼鏡をかけて2時間しみじみ鑑賞しようという気にならないだろうとメーカーに判断されるのは仕方ないところなのですかねぇ。(ゴダールのあの無茶苦茶な3Dの使い方なら絶対に3Dで見ないといけないとはなりますが・・・)私は劇場で3Dで観れなかったので、是非体験したかったのですが・・・。
ただそう考えると、本当に物足りない映画に思えてきてしまいます。全てのカットが絵葉書みたいで綺麗なんですが、ここの雪景色とか部屋に差しこむ日差しと、苦悩を抱えた人物たちを立体的に対比させるのが目的の3Dだったとすると、飛び出し感ではなく奥深く沈み込んでいくような表現がされていたかと思うと、このただ淡々と辛い日々を送る人たちを追っただけの映画を平面で観てしまうと監督の真意が伝わってこないような気がします。
それでも物を作る人は辛い経験も糧になるというシビアな目線がいいですし、レイチェル・マクアダムスの平手打ちは惚れ惚れします。もし私が主人公なら絶対にレイチェル・マクアダムスと別れたりしませんから、ここは共感できないポイントです。あと邦題がちょっと気になります。”そのうち全て何とかなるよ”と”誰のせいでもない”は意味が違ってきますよね。誰のせいでもないことなんてなくて、全て皆のせいなので赦しあうのだというのがテーマだと思います。