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官能植物 単行本 – 2017/5/12
木谷 美咲
(著)
「生」の根源を解き明かす挑戦(イマジネーション)
そこには「官能」が息づいている――ランをはじめとする花々の美しい姿の中に、食虫植物が虫を捕食する仕組みの中に、あるいは風に漂う独特の匂いの中に、そして薬草としての利用の中に。
本書は、存在に肉薄する植物写真と有機的なデザインをともないながら、暗がりに放り込まれてきた「官能」に光を当てるビジュアルエッセイ。いにしえの神話や聖典、世界各地の伝承伝説、古今の植物学・博物学・心理学などの蓄積の中から「植物に性を見るまなざし」を探り出し、さらに植物の形や生態に対する精緻な観察を通して、深い思索と豊かなイマジネーションを繰り広げていく。
例えば、「ネペンテス」(ウツボカズラ)に男性性と女性性を見出すウォッチングから、ギリシア神話の世界で語り継がれた男女両性者の物語にたどり着く。例えば、ダーウィンが「動物が姿を変えたもの」と呼んだ「ドロセラ」(モウセンゴケ)の粘液から、生と性と死の輝きを考える。例えば、闇夜に咲く「月下美人」の大輪の花とその受粉を媒介するオオコウモリから、吸血鬼信仰に連なる禁忌と美を導き出す。そして例えば、マヤ・アステカ文明の時代に遡るショコラトルの歴史を振り返りながら、媚薬・強精の効果が期待されてきた「カカオ」利用の今昔を考察する。
本書が「形態」「生態」「匂い」「利用」の4章立てで取り上げるのは、身近な観葉植物からアフリカ南部の珍しい寄生植物に至るまで、あわせて35の「美」。各章の末尾に加えた随想(Plants & Human)では、人の営みと植物と官能の関わりを見つめる。
「官能植物」の冒険が、「生」の根源を解き明かす。
第一章 官能的な形態
第二章 官能的な生態
第三章 官能的な匂い
第四章 官能的な利用
■本書 〈 序 〉より ―木谷美咲/著
植物はあまりにも美しい。身近な草花から限られた地域に生える奇妙な種に至るまで、ただそこに存在するだけで、なぜこれほどまでに魅力的なのか。植物の美しさに心打たれていた時、その美の根源に官能が潜んでいることに気づいた。そうだ、植物は官能的なのだ。
「官能」とは「肉体的快感、特に性的感覚を享受する働き」。それは秘するものとして扱われ、時にいかがわしいものとされることもあるのだが、しかし、私はそうは思わない。官能は生の根源であり、世界の真実を解き明かす重要な鍵であると考えている。
植物の官能性に気づく最初のきっかけになったのが、食虫植物との出合いだった。本来なら虫に食われるはずの植物が、逆転して虫を捕食し、栄養に変える姿に、震えるほどの感動を覚えた。植物が虫を捕食する生態は「ヒエラルキーへの反逆」だ。虫たちがもがき苦しみ、やがて死を迎え、その「死」が植物の「生」になる営み。この反逆の仕組み、死と生のドラマを生み出すにいたったのは、過酷な環境に適応するためである。生への執念が生態となって表れたものであり、私はそこに烈しい美を、そして官能を感じたのだ。
私は、植物の官能性について、具に調べ、ひたすら思索した。
官能を感じさせるのは「生態」だけではない。巨大に屹立した植物の形姿やランをはじめとする花たち(花はすべからく生殖器である! )の「形態」にも、虫を誘き寄せる「匂い」にも、媚薬や性具として直接人間の性と結びついてきた「利用」の歴史にも、官能は潜んでいる。そしてそれは、「生命とは何か」という深淵な問いに直結している。
古代の神話や聖典の中にも、世界各地の伝承伝説の中にも、植物に性を見るまなざしが息づいている。
分類学の父リンネ(Carl von Linné 一七〇七〜一七七八)も、植物に官能性を見出し、それが世界を解き明かす重要な鍵と捉えていた一人だ。
彼は著書『自然の体系』で、植物の分類において、雄しべと雌しべによる新たな体系(「性の体系」)を提唱し、系統樹の起点である開花を「植物の結婚、植物界の定住者の生殖行為」と記した上で、二十四綱すべてを人の性の営みになぞらえて解説した。加えて次の一文を「性の体系」の系統樹に掲げている。「植物の花は喜びである。…このように植物は繁殖する! 」。喜び! まさに性とは、生きる喜びであるのだ。
リンネは、植物の性、性へのまなざしを広く世に知らしめた。リンネの分類法は時代とともに見直されたが、初発の理念はここにある。
本書は、三十五の植物を取り上げる。「形態」「生態」「匂い」「利用」の四章に分け、各植物の官能性を観察し、考察していく。また、各章末には、植物と人の関わりの中に官能を見出す随想を加えた。
執筆を進めながら思い至るのは、性に言及することやイメージを膨らませることが、現代ではいかにネガティブに捉えられ、抑圧されているのか、ということだ。官能に対して人々は目をつぶり、正面から向き合おうとせずに振る舞い、艶めかしく複層的な「生」というものをきちんと考えることを忘れてしまっているのではないか。
本書が、暗がりに放り込まれていた植物の官能に光をかざす一助になれば幸いである。
あなたが花を眺めて美しいと感じるその瞬間に、官能は、そこにある。
そこには「官能」が息づいている――ランをはじめとする花々の美しい姿の中に、食虫植物が虫を捕食する仕組みの中に、あるいは風に漂う独特の匂いの中に、そして薬草としての利用の中に。
本書は、存在に肉薄する植物写真と有機的なデザインをともないながら、暗がりに放り込まれてきた「官能」に光を当てるビジュアルエッセイ。いにしえの神話や聖典、世界各地の伝承伝説、古今の植物学・博物学・心理学などの蓄積の中から「植物に性を見るまなざし」を探り出し、さらに植物の形や生態に対する精緻な観察を通して、深い思索と豊かなイマジネーションを繰り広げていく。
例えば、「ネペンテス」(ウツボカズラ)に男性性と女性性を見出すウォッチングから、ギリシア神話の世界で語り継がれた男女両性者の物語にたどり着く。例えば、ダーウィンが「動物が姿を変えたもの」と呼んだ「ドロセラ」(モウセンゴケ)の粘液から、生と性と死の輝きを考える。例えば、闇夜に咲く「月下美人」の大輪の花とその受粉を媒介するオオコウモリから、吸血鬼信仰に連なる禁忌と美を導き出す。そして例えば、マヤ・アステカ文明の時代に遡るショコラトルの歴史を振り返りながら、媚薬・強精の効果が期待されてきた「カカオ」利用の今昔を考察する。
本書が「形態」「生態」「匂い」「利用」の4章立てで取り上げるのは、身近な観葉植物からアフリカ南部の珍しい寄生植物に至るまで、あわせて35の「美」。各章の末尾に加えた随想(Plants & Human)では、人の営みと植物と官能の関わりを見つめる。
「官能植物」の冒険が、「生」の根源を解き明かす。
第一章 官能的な形態
第二章 官能的な生態
第三章 官能的な匂い
第四章 官能的な利用
■本書 〈 序 〉より ―木谷美咲/著
植物はあまりにも美しい。身近な草花から限られた地域に生える奇妙な種に至るまで、ただそこに存在するだけで、なぜこれほどまでに魅力的なのか。植物の美しさに心打たれていた時、その美の根源に官能が潜んでいることに気づいた。そうだ、植物は官能的なのだ。
「官能」とは「肉体的快感、特に性的感覚を享受する働き」。それは秘するものとして扱われ、時にいかがわしいものとされることもあるのだが、しかし、私はそうは思わない。官能は生の根源であり、世界の真実を解き明かす重要な鍵であると考えている。
植物の官能性に気づく最初のきっかけになったのが、食虫植物との出合いだった。本来なら虫に食われるはずの植物が、逆転して虫を捕食し、栄養に変える姿に、震えるほどの感動を覚えた。植物が虫を捕食する生態は「ヒエラルキーへの反逆」だ。虫たちがもがき苦しみ、やがて死を迎え、その「死」が植物の「生」になる営み。この反逆の仕組み、死と生のドラマを生み出すにいたったのは、過酷な環境に適応するためである。生への執念が生態となって表れたものであり、私はそこに烈しい美を、そして官能を感じたのだ。
私は、植物の官能性について、具に調べ、ひたすら思索した。
官能を感じさせるのは「生態」だけではない。巨大に屹立した植物の形姿やランをはじめとする花たち(花はすべからく生殖器である! )の「形態」にも、虫を誘き寄せる「匂い」にも、媚薬や性具として直接人間の性と結びついてきた「利用」の歴史にも、官能は潜んでいる。そしてそれは、「生命とは何か」という深淵な問いに直結している。
古代の神話や聖典の中にも、世界各地の伝承伝説の中にも、植物に性を見るまなざしが息づいている。
分類学の父リンネ(Carl von Linné 一七〇七〜一七七八)も、植物に官能性を見出し、それが世界を解き明かす重要な鍵と捉えていた一人だ。
彼は著書『自然の体系』で、植物の分類において、雄しべと雌しべによる新たな体系(「性の体系」)を提唱し、系統樹の起点である開花を「植物の結婚、植物界の定住者の生殖行為」と記した上で、二十四綱すべてを人の性の営みになぞらえて解説した。加えて次の一文を「性の体系」の系統樹に掲げている。「植物の花は喜びである。…このように植物は繁殖する! 」。喜び! まさに性とは、生きる喜びであるのだ。
リンネは、植物の性、性へのまなざしを広く世に知らしめた。リンネの分類法は時代とともに見直されたが、初発の理念はここにある。
本書は、三十五の植物を取り上げる。「形態」「生態」「匂い」「利用」の四章に分け、各植物の官能性を観察し、考察していく。また、各章末には、植物と人の関わりの中に官能を見出す随想を加えた。
執筆を進めながら思い至るのは、性に言及することやイメージを膨らませることが、現代ではいかにネガティブに捉えられ、抑圧されているのか、ということだ。官能に対して人々は目をつぶり、正面から向き合おうとせずに振る舞い、艶めかしく複層的な「生」というものをきちんと考えることを忘れてしまっているのではないか。
本書が、暗がりに放り込まれていた植物の官能に光をかざす一助になれば幸いである。
あなたが花を眺めて美しいと感じるその瞬間に、官能は、そこにある。
- 本の長さ200ページ
- 言語日本語
- 出版社NHK出版
- 発売日2017/5/12
- 寸法15.7 x 1.7 x 21.6 cm
- ISBN-104140093560
- ISBN-13978-4140093566
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商品の説明
著者について
■木谷 美咲(きや・みさき)
1978年東京都生まれ。食虫植物に出合って、形や生態に魅せられる。執筆活動のほか、テレビやラジオへの出演、イベントへの参加などを通じて、植物の魅力の紹介と普及につとめている。主な著書に『大好き、食虫植物』(星野映里名義/水曜社)、『マジカルプランツ』(山と渓谷社)、『私、食虫植物の奴隷です。』(水曜社)、『不可思議プランツ図鑑』(絵・横山拓彦/誠文堂新光社)、『世界一うつくしい植物園』(監修・森田高尚/エクスナレッジ)など。
1978年東京都生まれ。食虫植物に出合って、形や生態に魅せられる。執筆活動のほか、テレビやラジオへの出演、イベントへの参加などを通じて、植物の魅力の紹介と普及につとめている。主な著書に『大好き、食虫植物』(星野映里名義/水曜社)、『マジカルプランツ』(山と渓谷社)、『私、食虫植物の奴隷です。』(水曜社)、『不可思議プランツ図鑑』(絵・横山拓彦/誠文堂新光社)、『世界一うつくしい植物園』(監修・森田高尚/エクスナレッジ)など。
登録情報
- 出版社 : NHK出版 (2017/5/12)
- 発売日 : 2017/5/12
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 200ページ
- ISBN-10 : 4140093560
- ISBN-13 : 978-4140093566
- 寸法 : 15.7 x 1.7 x 21.6 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 727,108位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 1,143位植物学
- カスタマーレビュー:
著者について
著者をフォローして、新作のアップデートや改善されたおすすめを入手してください。

東京都出身。文筆家
著書に『官能植物』(NHK出版)『珍奇植物生態入門』(枻出版社)『食虫植物のわな』(偕成社)『マジカルプランツ』(山と溪谷社)『私、食虫植物の奴隷です。』(水曜社)『不可思議プランツ図鑑』『食虫植物サラセニア・アレンジブック』(誠文堂新光社)など。「タモリ倶楽部」「いとうせいこうのグリーンフェスタ」「あさイチ」など、TVやラジオに出演多数。
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2017年6月25日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とても楽しい本です。私的には趣味にドンピシャで「待ってました!」という感じです。写真も綺麗、挿し絵も素敵、本文も頷ける。植物好きさんにはたまらん内容でしょう。
2017年5月29日に日本でレビュー済み
漆黒の地に白や赤の文字。鮮やかな植物の写真や絵画。
中々見ない艶やかな字体には
少し暗く落ち着いた美術館で明かりを浴びて観客を誘う
浮世絵の春画を観るような感覚を覚えます。
子供の頃からNHKの趣味の園芸に慣れ親しんだ身には、正直なところ最初驚きでした。
ただ、昨今のネットで見るバナー広告等には
"かわいい"に歪められた性の描写が多く、疑問を感じる事があります。
それに対し、純文学、神話、図鑑、論文等
参考文献の多さ、幅広さから
真面目に生物の3大要求の1つである性を考察した事がうかがわれ
"この本をサラッと語れるのが大人の粋"
と言われているような気がします。
しっかりした表紙に、確かな重さ、ツヤ感のある中の紙には
"紙をめくる愉しさ"も持てます。
観葉植物やアロマテラピーで馴染みのある植物も、新しい切り口で
美術館で時間をかけるように、ゆっくり読み、眺め、観賞する本かと思います。
中々見ない艶やかな字体には
少し暗く落ち着いた美術館で明かりを浴びて観客を誘う
浮世絵の春画を観るような感覚を覚えます。
子供の頃からNHKの趣味の園芸に慣れ親しんだ身には、正直なところ最初驚きでした。
ただ、昨今のネットで見るバナー広告等には
"かわいい"に歪められた性の描写が多く、疑問を感じる事があります。
それに対し、純文学、神話、図鑑、論文等
参考文献の多さ、幅広さから
真面目に生物の3大要求の1つである性を考察した事がうかがわれ
"この本をサラッと語れるのが大人の粋"
と言われているような気がします。
しっかりした表紙に、確かな重さ、ツヤ感のある中の紙には
"紙をめくる愉しさ"も持てます。
観葉植物やアロマテラピーで馴染みのある植物も、新しい切り口で
美術館で時間をかけるように、ゆっくり読み、眺め、観賞する本かと思います。
2017年6月27日に日本でレビュー済み
『官能植物』(木谷美咲著、NHK出版)で取り上げられている35の植物は、いずれも妖しい雰囲気を漂わせています。
写真も文章も妙に官能的なのです。
「花は生殖器。交配は、より艶めかしい生殖器を生み出すことに他ならない」。
「匂いは性と密接に結びつく。・・・嗅覚は、飼い慣らされていない根源的な感覚であり、匂いは、己の獣性を刺激するものでもあるのだ。本能を刺激する獣臭を放つのは、人間のみならず、動物のみならず。植物の中にも、そうした匂いを発するものがある。例えば食虫植物のドロソフィルムは、独特の動物的な匂いを発する」。
「ジャスミンの香りの魅力は、微量な糞尿の匂いにこそある。毒が、その量によっては時として薬にもなりうるように、悪臭と芳香は紙一重。すべては同じところから発せられる。人間を動物に戻す匂いが、官能の扉を開ける、一つの鍵になる」。
妖しく官能を刺激する本書に耽溺するのは、かなり危険です。
写真も文章も妙に官能的なのです。
「花は生殖器。交配は、より艶めかしい生殖器を生み出すことに他ならない」。
「匂いは性と密接に結びつく。・・・嗅覚は、飼い慣らされていない根源的な感覚であり、匂いは、己の獣性を刺激するものでもあるのだ。本能を刺激する獣臭を放つのは、人間のみならず、動物のみならず。植物の中にも、そうした匂いを発するものがある。例えば食虫植物のドロソフィルムは、独特の動物的な匂いを発する」。
「ジャスミンの香りの魅力は、微量な糞尿の匂いにこそある。毒が、その量によっては時として薬にもなりうるように、悪臭と芳香は紙一重。すべては同じところから発せられる。人間を動物に戻す匂いが、官能の扉を開ける、一つの鍵になる」。
妖しく官能を刺激する本書に耽溺するのは、かなり危険です。
2017年6月16日に日本でレビュー済み
魂が浄化された。
美しい浄化されるようで涙が止まらなかった。
植物はこんなにもエロスを感じるとは驚いた。
心が洗われました。
美しい浄化されるようで涙が止まらなかった。
植物はこんなにもエロスを感じるとは驚いた。
心が洗われました。