テクニカル&変態ギタリストの雄、アラン・ホールズワースが1996年に発表したアルバムです。CTIからリリースされた「ヴェルベット・ダークネス」からカウントすると通算9枚目の作品になります。メンバーはかつての僚友、ゴードン・ベック(ピアノ)、ゲイリー・ウィリス(ベース)、カーク・コヴィントン(ドラム)という構成で、ホールズワース自身は前作「ハード・ハット・エリア」に引き続いてギターとシンタックスの併用で臨んでいます。
私が改めて触れるまでもなく「スタンダート」に挑戦と言っても、ホールズワース自身はニュー・クリアスや70年代後半に密かにレコーディングされたジョン・スティーヴンスやゴードン・ベックなどとの「フリージャズ的アプローチ」、そして、MVPで聴かせたスタンダートジャズ的プレイなどを聴いてもわかるように、常にジャズ的な要素を引きずってきました。そうした自身のジャズ的要素が今回たまたま「スタンダート」という形で顕在化しただけで、当然と言えば当然です。だからこそ、ゴードン・ベックと再び組んだのでしょう。取り上げられているのは、コルトレーン、ジャンゴ・ラインハルト、ジョー・ヘンダーソン、ビル・エヴァンス、そして何故かレノン=マッカートニーの代表曲が並びます。
この作品も各方面で賛否両論あるようですが、結局は、テーマをスタンダートに据えただけで聴こえてくるのは、ホールズワース節のオンパレードです。私のような一種偏狭的ファンにとっては、たとえどんな曲を演奏しようが、そこにホールズワースがいれば満足なわけです。アルバム「サンド」以来、悪評が多いシンタックスですが、やっと使いこなせるようになってきたと思います。