痴情の縺れから,はずみで女を殺害した男が床下に遺体を埋め,歳月が流れた。
ボディビルで体を鍛えるのが趣味で定職に就かぬ主人公の男が,
学生時代の級友で今はTVの怪奇番組を手掛ける女局員に声を掛けられ,
主人公の父親の家に霊能者を呼ぶ話を持ち掛けられる。
主人公の父親こそ,かつて痴情の縺れで女を殺して埋めた男で,彼は父親に生き写しなのだ。
主人公,女TV局員,霊能者の3人が,
かつて殺人のあった主人公の父親の家に入るとただならぬ気配を感じる。
この家に巣食う女の怨霊が主人公を父親を勘違いし,恨みを晴らさんと3人に攻撃を開始したのだ。
果たして3人は無事生還出来るのだろうか…。
本家「死霊のはらわた」に勝るとも劣らない血糊の量と創意工夫と手作り感溢れる特撮に感動する。
画質の粗さが逆に迫真を生み,一瞬たりとも退屈しない。
棒読みで素人丸出しの演技の初々しさが素晴らしいんじゃないか!
監督の筋肉への憧れが「燃えよドラゴン」のブルース・リーへの敬愛から生まれており,
ボディビルをやってても就職出来ない設定はクンフーをやってても儲からない設定の引き写しだし,
死霊にバーベルのバーを貫通させてダメージを与える描写は鏡の間でのハンの最期を連想させる。
リー先生を敬愛する人間に悪党は居ない。
俄然深沢監督のファンとなってしまった。
監督・脚本・主演全てが深沢真一の俺イズム,男臭さは,
今の綺麗に小さくまとまったハリウッド映画が忘れてしまったサムシングがある。
死霊のクレイアニメーションを利用した特撮は勿論「死霊のはらわた」リスペクト。
死霊の断末魔の特撮が取り分け素晴らしい。
是非その目で御覧になって欲しい。
音響環境故なのか声質故なのか音声は少々聞き取りにくい。
日本語字幕が付いていると有難かった。
90年代半ばから15年かけて完成させた
「燃えよドラゴン」と「死霊のはらわた」リスペクトに満ち溢れた本作を,
皆様に自信を持ってお勧めする次第である。