以前購入した完全版(モノラル録音)と最近購入したUHQCD(ステレオ録音)を比べてみました。
両者の違いは以下の通りです。
1.マスタリング
完全版: HS2088マスタリング(20bit/88.2kHz)
UHQCD: 最新マスタリング(24bit/96kHz)
完全版が発売された当初(1998年)は、これでもハイビット/ハイサンプリングでした。ちなみにCDの基本仕様は
16bit/44.1kHzで16bitiはCD開発当時のAD/DAコンバータの仕様によるものであり、44.1kHzは1枚のCDに
カラヤンによるベートーベンの交響曲を納めるための妥協によるものでした。技術的に考えると48kHzが妥当
なのですが、それだと1枚に収まらないため、44.1kHzと言う半端な周波数を選んだとのことです。
2.CDの素材
完全版: ポリカーボネート
UHQCD: フォトポリマー(ピット側)+ポリカーボネート二層構造
デジタル情報はCD反射面に刻まれたピットと呼ばれる細かな溝に刻まれます。ポリカーボネートは透明度も高く
強度もあるのでピットを転写する素材として選ばれましたが、UHQCDを開発したメモリーテック(株)によるとピット
への追従性が良いフォトポリマーで転写することでピットの再現性をさらに高めたとのことです。
3.収録曲/収録順
完全版: ブルー・マイナー, クール・ストラッティン, ロイヤル・フラッシュ, シッピン・アット・ベルズ, ディープ・ナイト, ラヴァー
UHQCD: クール・ストラッティン, ブルー・マイナー, シッピン・アット・ベルズ, ディープ・ナイト, ロイヤル・フラッシュ, ラヴァー
LPに収録されていたのはクール・ストラッティン~ディープ・ナイトまでの4曲でしたが、完全版では選から漏れた
ディープ・ナイトとラヴァーが復活しました。しかしUHQCDでもこの2曲がボーナストラックとして追加されたので、
結局曲順だけの違いとなりました。
聴き比べてみたところ、完全版もそこそこ良い音です。録音はルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで行われている
ので、実績のあるモノラル録音機器で制作されたマスターテープの音が再現されていると感じます。勿論モノラルと
いう制限はありますが、各楽器のバランスは整っています。
これに対してUHQCDは音の抜け、艶などが大幅に向上していました。ステレオにしては音場の左右の広がりが
やや不足気味ですが、奥行きは十分あります。また各楽器の位置が明瞭になることでバランスが崩れるかなと
心配しましたが、杞憂に終わりました。最新マスタリングとフォトポリマー採用による効果が十分発揮された結果、
リラックスしてじっくり聴き込むことができるCDへと変貌したように思えます。
この超有名盤をこれから購入しようとする方は勿論、既に所有している方も買い替えて損は無い一枚だと思います。
これを超えられるのはSACDかK2HDしかありませんが、どちらもリリースされていませんのでUHQCDが現時点
では最高と言うことになろうかと思います。