1万5千人を超える人が津波の犠牲となった東日本大震災。小学生の手を引いて、さらに高台に逃げ、難を逃れた釜石東中学のエピソードは防災教育が功を奏した事例として「釜石の奇跡」と呼ばれた。
釜石東中と同じ地区にありながら200人を超える犠牲を出した施設がある。鵜住居防災センターだ。
もう一つの「釜石の奇跡」はなぜ起こらなかったのか。
防災センターで家族を亡くした遺族に取材をしたノンフィクション、渋井哲也さんの『命を救えなかった』を読んだ。
ある幼稚園教諭は、小さな命をお腹に宿し、翌週からは産休に入るはずだった。津波への意識が高い地域で生まれ育ち、園児たちの安全のためにもしっかり高台に避難しているはず、という家族の予想は裏切られた。
より海側の保育園では犠牲者は出ていない。一方で幼稚園では、園長、教諭と園児が犠牲となった。どうしてなのか。
もちろん生死を分けるのは、個人の判断や運不運の問題でもある。避難所となった高台の麓に住みながら助からなかった女子高生の事例も紹介される。
しかし、防災センターの場合、津波に対して安全とは言えない立地、3階建から2階建への計画変更、参加率を上げるために津波避難所でない防災センターを集合場所にした防災訓練、園庭に出て講話を聞くだけの幼稚園の避難訓練、省みられなかった役所内の懸念のメールと、悲劇の舞台となるべくしてなったという背景も浮かび上がる。
鵜住居防災センターは2013年12月に解体。震災遺構として残ることもなくなった。性急な解体のプロセスを追った本書の後半では、意識的にか無意識か行政の不都合を「なかったことにしよう」としているかのようだ。
数多の犠牲から本当に得るべき教訓を得ているか。ここをおろそかにすれば、次に命を失うのは私たちかもしれない。

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命を救えなかった 単行本 – 2017/3/8
渋井 哲也
(著)
この3・11で7回忌を迎える。
あの日、岩手県釜石市鵜住居(うのすまい)の防災センターに津波から逃れて逃げ込んだ老若男女、計248人にとって、そこは思いもよらない「防災」の場となってしまったのだった。
ここでの犠牲者数は200余人。そのなかに自らの妻も子供もいたひとりの男性に寄り添って、いま改めて3・11がもたらしたものの大きさを数々の写真と振り返る。
あの日、岩手県釜石市鵜住居(うのすまい)の防災センターに津波から逃れて逃げ込んだ老若男女、計248人にとって、そこは思いもよらない「防災」の場となってしまったのだった。
ここでの犠牲者数は200余人。そのなかに自らの妻も子供もいたひとりの男性に寄り添って、いま改めて3・11がもたらしたものの大きさを数々の写真と振り返る。
- 本の長さ288ページ
- 言語日本語
- 出版社電子本ピコ第三書館販売
- 発売日2017/3/8
- 寸法12.9 x 1.7 x 18.9 cm
- ISBN-104807416014
- ISBN-13978-4807416011
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商品の説明
著者について
1969 年、栃木県生まれ。フリーライター。ノンフィクション作家。
地方新聞の記者を経てフリーに。若者の生きづらさ、自殺、自傷、家出、援助交際、少年
犯罪、いじめ、教育問題、ネットコミュニケーション、ネット犯罪などを取材。
東日本大震災やそれに伴う原発事故・避難生活も取材を重ねている。
著書に「絆って言うな!」(皓星社)、「自殺を防ぐためのいくつかの手がかり」「解
決!学校クレーム」(以上、河出書房新社)、「若者たちはなぜ自殺するのか」(長
崎出版)、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」「実録・闇サイト事件簿」
(以上、幻冬舎)など。
児童書には「気をつけよう!薬物依存」「気をつけよう!携帯中毒」「気をつけ
よう!ゲーム中毒」「気をつけよう!ネット中毒」「子どものためのパソコン・I T 用
語事典」(以上、汐文社)。
共著に「中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド」(日本評論社)、「復
興なんて、してません」(第三書館)、「震災以降」(三一書房)、「風化する光と影」
地方新聞の記者を経てフリーに。若者の生きづらさ、自殺、自傷、家出、援助交際、少年
犯罪、いじめ、教育問題、ネットコミュニケーション、ネット犯罪などを取材。
東日本大震災やそれに伴う原発事故・避難生活も取材を重ねている。
著書に「絆って言うな!」(皓星社)、「自殺を防ぐためのいくつかの手がかり」「解
決!学校クレーム」(以上、河出書房新社)、「若者たちはなぜ自殺するのか」(長
崎出版)、「明日、自殺しませんか 男女7人ネット心中」「実録・闇サイト事件簿」
(以上、幻冬舎)など。
児童書には「気をつけよう!薬物依存」「気をつけよう!携帯中毒」「気をつけ
よう!ゲーム中毒」「気をつけよう!ネット中毒」「子どものためのパソコン・I T 用
語事典」(以上、汐文社)。
共著に「中高生からのライフ&セックス サバイバルガイド」(日本評論社)、「復
興なんて、してません」(第三書館)、「震災以降」(三一書房)、「風化する光と影」
登録情報
- 出版社 : 電子本ピコ第三書館販売 (2017/3/8)
- 発売日 : 2017/3/8
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 288ページ
- ISBN-10 : 4807416014
- ISBN-13 : 978-4807416011
- 寸法 : 12.9 x 1.7 x 18.9 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 925,622位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 81,412位趣味・実用
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著者について
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1969年、栃木県生まれ。長野県の地方紙「長野日報」の記者を経て、フリーに。子どもや若者を中心に、自殺や自傷、依存症などのメンタルヘルスをはじめ、インターネットでのコミュニケーション、インターネット規制問題、青少年健全育成条例問題、子どもの権利、教育問題、性の問題に関心を持っている。東日本大震災でも、岩手、宮城、福島、茨城、千葉県の被災地を取材している。中央大学非常勤講師。
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