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サービス立国論: 成熟経済を活性化するフロンティア 単行本 – 2016/4/1
森川 正之
(著)
サービスこそ成長戦略の核心!
サービス経済化の実態を、豊富なデータと最先端の分析に基づいて明らかにし、日本経済を再び成長軌道に乗せるための政策を提言。
これまで包括的に解明されていなかったサービス産業に焦点を当てた、日本を代表する官庁エコノミストによる画期的な日本経済論。
サービス産業は日本経済の7割以上を占めます。それほど重要なのに、これまでその実態は必ずしもきちんと理解されてきませんでした。むしろ、誤解が多かったのです。
本書は、このサービス産業をめぐる通念を打破し、製造業とは異なる産業としての特性と必要な政策を、イノベーション、労働市場、都市・地域経済、国際化、景気変動との関連などからとらえた経済書です。また、本書では、製造業のサービス化についても取り上げます。
本書は、統計データや内外の理論・実証研究をベースにさまざまな誤解を正し、成熟経済化している日本の活力を高め、新しい成長を実現するために必要な方策を提示します。いずれも、「新発見」があり、読者に新鮮な視点を提供するものです。
1)日本のサービス産業の生産性は低く、規制緩和で引き上げる必要があるという通念は単純に過ぎる。
2)企業間の生産性格差が大きく、「経営の質」や「新陳代謝」が重要。
3)製造業以上にイノベーション、ノウハウなどが業績の差をもたらす。
4)IT利用度を高めればそれだけで生産性が高まるわけではない。組織革新や人材投資が必要。交際費は生産性を高める重要な組織資本投資だといえる。
5)本社機能という企業内サービスが充実している企業ほど生産性が高い。
6)非正規雇用割合の高いサービス産業では雇用の安定と生産性向上が二律背反。
7)人口減少化でのサービス産業の生産性維持には地理的な選択と集中が不可欠。人口減少対策、雇用の安定などについては補完的な政策の割当をすべき。
8)景気動向の判断においてはサービス物価、稼働率が重要――等々。
著者は、豊富なデータをもとに日本のサービス産業を分析してきた、この分野の第一人者です。
サービス経済化の実態を、豊富なデータと最先端の分析に基づいて明らかにし、日本経済を再び成長軌道に乗せるための政策を提言。
これまで包括的に解明されていなかったサービス産業に焦点を当てた、日本を代表する官庁エコノミストによる画期的な日本経済論。
サービス産業は日本経済の7割以上を占めます。それほど重要なのに、これまでその実態は必ずしもきちんと理解されてきませんでした。むしろ、誤解が多かったのです。
本書は、このサービス産業をめぐる通念を打破し、製造業とは異なる産業としての特性と必要な政策を、イノベーション、労働市場、都市・地域経済、国際化、景気変動との関連などからとらえた経済書です。また、本書では、製造業のサービス化についても取り上げます。
本書は、統計データや内外の理論・実証研究をベースにさまざまな誤解を正し、成熟経済化している日本の活力を高め、新しい成長を実現するために必要な方策を提示します。いずれも、「新発見」があり、読者に新鮮な視点を提供するものです。
1)日本のサービス産業の生産性は低く、規制緩和で引き上げる必要があるという通念は単純に過ぎる。
2)企業間の生産性格差が大きく、「経営の質」や「新陳代謝」が重要。
3)製造業以上にイノベーション、ノウハウなどが業績の差をもたらす。
4)IT利用度を高めればそれだけで生産性が高まるわけではない。組織革新や人材投資が必要。交際費は生産性を高める重要な組織資本投資だといえる。
5)本社機能という企業内サービスが充実している企業ほど生産性が高い。
6)非正規雇用割合の高いサービス産業では雇用の安定と生産性向上が二律背反。
7)人口減少化でのサービス産業の生産性維持には地理的な選択と集中が不可欠。人口減少対策、雇用の安定などについては補完的な政策の割当をすべき。
8)景気動向の判断においてはサービス物価、稼働率が重要――等々。
著者は、豊富なデータをもとに日本のサービス産業を分析してきた、この分野の第一人者です。
- 本の長さ362ページ
- 言語日本語
- 出版社日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
- 発売日2016/4/1
- 寸法13.9 x 3.1 x 19.4 cm
- ISBN-10453235692X
- ISBN-13978-4532356927
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商品の説明
著者について
森川 正之(もりかわ・まさゆき)
経済産業研究所理事・副所長
1959年生まれ。東京大学教養学部卒業。通産省(現経済産業省)入省。同省経済産業政策局調査課長、同産業構造課長、大臣官房審議官などを経て、現職。この間、埼玉大学大学院政策科学研究科および政策研究大学院大学院助教授、経済産業研究所上席研究員。経済学博士(京都大学)。
経済産業研究所理事・副所長
1959年生まれ。東京大学教養学部卒業。通産省(現経済産業省)入省。同省経済産業政策局調査課長、同産業構造課長、大臣官房審議官などを経て、現職。この間、埼玉大学大学院政策科学研究科および政策研究大学院大学院助教授、経済産業研究所上席研究員。経済学博士(京都大学)。
登録情報
- 出版社 : 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版; New版 (2016/4/1)
- 発売日 : 2016/4/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 362ページ
- ISBN-10 : 453235692X
- ISBN-13 : 978-4532356927
- 寸法 : 13.9 x 3.1 x 19.4 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 683,647位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 6,660位産業研究 (本)
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2016年8月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
特に専門知識のない読者にも読める記述でありながら、さまざまな角度から「サービス立国論」の妥当性を詳述しています。読み応えのある著作で大満足です。今後の日本の政策運営に当たる方の必読書と思います。
2022年7月12日に日本でレビュー済み
GDPの7割以上を占めるサービス産業の生産性に関して、詳細な分析を行っています。(一部、製造業のサービス化を含む) 生産性に影響する要素として、①企業規模、②人口の規模・密度の高い立地、③ICT導入及び人材育成、④生産性の低い企業が退出して高い企業が参入する新陳代謝などを挙げており、データに基づいて実証しています。
更に、①に関しては大企業病などがあり、単純に企業規模が大きい程よいわけではないと述べています。②に関しては、経済活動の密度が均一に希薄化するような『地方創成』は、経済成長と相容れないと主張しています。③に関しても、単にICTを導入するだけで生産性向上に結びついていない日本企業に対して、組織構造の改革や教育などの人材投資が必要であると述べています。(特に、小規模企業と若い企業のICT投資と人材投資は最適水準未満とのこと)
他にも生産性に影響する多数の要因を分析しており、⑤シナジー効果のある多角化経営、⑥新製品・新サービスの開発、といったイノベーションは企業が主体的に行う必要がある課題だと思います。
都市化に伴って女性の労働参加率と出生率が減少することから、通勤時間を短くするための交通インフラの整備や保育所の拡充が重要と述べており、生産性を高める政策による副作用に注意して、複数の政策をミックスさせた政策を提言しています。
更に、①に関しては大企業病などがあり、単純に企業規模が大きい程よいわけではないと述べています。②に関しては、経済活動の密度が均一に希薄化するような『地方創成』は、経済成長と相容れないと主張しています。③に関しても、単にICTを導入するだけで生産性向上に結びついていない日本企業に対して、組織構造の改革や教育などの人材投資が必要であると述べています。(特に、小規模企業と若い企業のICT投資と人材投資は最適水準未満とのこと)
他にも生産性に影響する多数の要因を分析しており、⑤シナジー効果のある多角化経営、⑥新製品・新サービスの開発、といったイノベーションは企業が主体的に行う必要がある課題だと思います。
都市化に伴って女性の労働参加率と出生率が減少することから、通勤時間を短くするための交通インフラの整備や保育所の拡充が重要と述べており、生産性を高める政策による副作用に注意して、複数の政策をミックスさせた政策を提言しています。
2016年9月8日に日本でレビュー済み
●日本の置かれている現状が、産業構造変化の観点から正しく理解できる。タイミングよく出版されたインパクトのある本なのに、レビュー数が少ないのは不思議だ。
●【内容紹介】にもある通り、イノベーション、労働市場、都市・地域経済、国際化、景気変動などに対して、『サービス経済化』という産業構造変化の切り口から分析している。
●なお私の関心は『人口の大都市集中と地方再生』 『コンパクトシティ』などにあるので、以下の長いコメントはその観点のレビューだとお断りしておく。
【過去の国土政策と産業構造変化】
●日本の国土政策の基本理念は、1962年から五次にわたった【全総=全国総合開発計画】にあるように『大都市集中の弊害を是正し国土の均衡ある発展を目指すべき』というもの。日本国民の地理的人口分布を政策的に誘導しよう(誘導できる)とした。今のコンパクトシティ政策にしてもそれは同じだ。
●実態をみれば、人口減少が始まった現在でも東京圏への人口集中が続いており、過去の政策は失敗したといえよう。むしろ日本の経済成長の足を引っ張った間違った政策だったという評価も多い。
●ここ数十年、日本の産業構造は第三次産業へとシフトしているにもかかわらず、国土政策は製造業中心時代の発想から脱し切れていない。いまだ地方では工業団地を整備して工場誘致しようという政策(うまくいかない)も見られる。著者が言うように『第三次産業(サービス産業)が主体の経済社会では、人口は大都市に集中するのは避けられない』のだ。無理に集中を是正すれば(実際は是正できず税金の無駄遣いになるだけだが)、日本の経済成長が大きく阻害されてしまう(それでいいのなら別の議論になる)。
【東京一極集中は産業構造変化から理解すべき】
●日本の人口移動のドライビングフォースはなにか? それは就業機会だろう。いくら景色がきれいな地域であっても、そこに仕事がなければどうにもならない。若者が社会に出る際、就職したい(就職できる)産業が農林水産業なのか、製造業なのか、第三次産業なのかの違いによって、結果としての居住地分布は変わる。
●生産のために土地そのものを必要とする【第一次産業】、工場用地などの作業用・資材用スペースが必要な【第二次産業】から、サービス中心の【第三次産業】では土地よりも『人と人がどれだけ高密度であるか』が生産性を左右する。
●江戸時代には人口の7割が農業に従事していたというから、都市集中にも限度があった。しかし現代のアメリカでは1%以下の農業人口で、全米の農作物消費量の100%以上を生産し、余剰分を輸出している。機械化が進んで生産性が上がったからだ。農地は依然として必要だが、そこに人間が張り付く必要性は格段に薄まったのだ。
●第三次産業では、一日で何人とフェイスツーフェイスで会えるかが決定的に重要だ。大都市では第三次産業の生産性が高いから、企業が集積し、雇用が発生し、それが高い給与を可能とする。付随してエンタメ産業などの各種サービスも充実し、より都市は魅力的になっていく。
【本書の分析】
●『第三次産業は大都市に集中する』という主張は著者が初めてではない。しかし、サービス産業の実態を知らない私が最初に思いつくサービスは例えばマッサージ業だが『マッサージで高給がとれるわけじゃなし、何も東京でなくとも・・・』と、これまでは『サービス業が都市に集中しなければならない理屈』に今一つしっくりこなかった。
●本書では『サービス業とは具体的にどういう職種か?』からはじめて、その特性をエビデンスに立脚して説き起こしていく。例えば商社は産業分類上『卸売業』でサービス産業。もちろん日本の大商社の本社はすべて東京にある。経営コンサルタントも会計士も弁護士もIT産業も広告業も金融業も不動産業もみなサービス業。すなわち丸紅も楽天もソフトバンクもユニクロも電通もみずほ銀行もみなサービス産業なのだ。
●そして製造業とは決定的に違う特性は『生産と消費の同時性』だと著者は言う。すなわちサービス業では顧客と『時間と空間を共有』しなければならない。製造業では顧客の所在地と無関係の場所で生産し、時間的にも在庫を持っておけば必要な時に顧客に輸送できるが、サービス業では自分自身がいつどこに位置するかが決定的に重要なのだ。
●こういったサービス業の集積のメリットを統計データや内外の理論・実証研究をベースに解説していく。著者自身の長年の研究成果に加え、サービスに関連する内外での多数の研究をも紹介している。これらによって、今までの東京一極集中の必然性と、今後の進展イメージがクリアになっていく。
●いま現在でも『地方拠点強化税制』という国の制度がある。これは東京に本社機能がある企業が地方に移転すれば様々な税制優遇が受けられるというもの。しかし、この制度が暗黙に前提としているであろう製造業はすでに大都市にない。一方で、楽天やソフトバンクなどの本社を地方都市に移転するのは、人がいるから成立している事業を人のいない地域に誘致する本末転倒の議論ではないか。産業構造変化を無視したあまりにもトンチンカンな政策であろう。
【国土政策になぜいままで産業構造論が注目されなかったのか】
●なぜこのような重要な視点が今まで欠けていたのだろう。私見では、都市集中を理解するには工学(都市計画、交通工学、都市工学など)の知見のみならず、社会学(都市地理学、都市社会学)、経済学(都市経済学など)など学際的議論が必要。特に人口移動のドライビングフォースが就業機会であるならば、産業構造変化の分析が基礎になるはずだが、実証研究に必要なサービス統計が著者によればここ10年ほどの間にようやく充実してきたのだという。
●デトロイトが廃墟化する一方、発展するシリコンバレーをも抱えるアメリカでも、本書と同様の視点から研究が進んできているようだ。本書の参考文献にも挙げられているが、エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる』2012(翻訳出版2014)は、書名に似合わずアカデミックな実証研究で興味深い。
●要するに、『インターネットの普及で世界は均等化する』という予言でベストセラーになったトーマス・フリードマン(『フラット化する社会』2005)は完全に間違っていたというのが近年の都市経済学者の見解のようだ。すなわち『世界はフラット化していないどころか、いっそう集中している』。未来予測で有名なアルビン・トフラーも、この点だけは外したともっぱらの評判である。
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ここから先のコメントはレビューというよりも、東京一極集中に関する今後の研究や議論への期待である。
【今後の議論の期待】
●私は大都市で建設不動産業に従事している。ホンネを言えば、まったくのビジネスの観点から、『東京一極集中の人口キャパシティはどこまで大丈夫なのか』、『東京圏内での局所的人口分布はどうなるのか』に強い興味がある。
● 以下は個人的仮説である。
① 東京圏の人口収容キャパシティは今後も十分にある。
② 東京圏郊外の駅は、放っておいてもそれぞれがコンパクトシティになり、東京圏はコンパクトシティが鉄道沿線に連なったメガ構造になる。
【東京圏の異常な鉄道利用度】
●この仮説の論証には、東京圏の鉄道ネットワーク分析がキーになる。この観点ではすでに評論家の増田悦佐氏が【高度成長は世界都市東京から(2013)】などの著書で指摘しているが、私見を加えて展開してみる。
●世界の大都市の中で、首都圏は『(旅客用)鉄道利用が極端な都市構造』である。いわば、世界で東京圏だけが、『朝の1時間でサラリーマン1000万人を都心に集め夕方一時間で郊外に散らせている』。【世界の駅の乗降客数ランキング】で検索すれば出てくるネットではわりに有名なグラフを是非見ていただきたい。この極端な結果には笑うしかない。
●このグラフによるとトップ20はすべて日本。うちトップ10は他とはケタが違う。またトップ100の中では、首都圏66、その他日本14、その他外国18だが、外国は各国代表都市が一つか二つが入っている程度だ。データの出所が曖昧でエビデンスとは言えないものの、おおきくは間違ってないと思う(地下鉄協会による世界都市比較はあるが、東京圏では山の手線など地上路線のJRや私鉄があってそれらを総合したものは見当たらない)。
●もう一つ、エビデンスが明確な情報として、『日本は2つの国からできている!? ~データで見る東京の特異性~』 というヤフーのビッグデータレポートがある。これによれば、東京の人は赤ちゃんからお年寄りまで含めて年間800回以上電車に乗っているという。一方、大半の道府県はせいぜい数十回だ。
●このように東京圏が世界的にも異常な電車社会である理由は、路線延長が格別長いからではないらしい。増田悦佐によれば、日本の鉄道の経営主体がそれぞれ相互接続をした結果、ほとんどの駅が通過駅となったからだと言う。他先進国の場合、鉄道会社の都市の終点駅(頭端駅=ターミナル)が他の鉄道会社の路線と切り離されて(相互に数Km離れている)いるという。
●別の角度からも東京圏の鉄道利用の異常性がわかる。例えばビッグカメラ、ヨドバシカメラなど、ロードサイドビジネスならぬレールサイドビジネスという世界唯一の業態だ。郊外出店戦略のヤマダ電気の不調をよそにレールサイド出店だけでそれぞれ1兆円に達しようかという勢いである。
●また“エキナカビジネス”はJR東日本だけでも1兆円以上。伊勢丹などの都心デパートも一店舗で軒並み1000億以上の売り上げがあるがこれも世界で日本だけ。このような駅中心の小売業態は世界的に見ても日本だけの現象だ。
●東京圏の異常なサラリーマン昼間人口密度によりBtoBの営業は主要駅から歩く範囲で可能となっている。これがサービス産業が集積する理由だ。毎日6万食を配達する“玉子や弁当”なども、オフィスまでの毎日のデリバリが大変なように見えるが、実際は主要駅から歩ける範囲で済む。
●そのサラリーマンを顧客とする飲食店も主要駅周辺の歩いていける範囲に高密度に集積している。最近流行の立ち食いのフレンチレストラン、立ち食いステーキレストラン。立ち食いフレンチなんてパリやニューヨークにあるはずがない(調べたことはないが)。都心主要駅周辺の狭いエリアに、ものすごい数のサラリーマンが夕方うろつくから、世界に類のない業態が成立するのだ。さらに最近急成長しているプレコフーズという会社は、飲食店向けの食材(肉)卸業だが、千円程度の材料でも社員が手に持って歩いて店に配達している。それで100億を超える売り上げだ。これも主要駅から歩ける範囲で十二分に飲食店市場があるからだ。他にも東京だけにしかない業態は多い。
【東京圏の人口キャパに余裕があるか】
●朝夕1時間で1000万人を集散させている東京は、歴史的にも世界的にも唯一の存在だ。サラリーマンの鉄道利用により都心は相対的に自家用車が少なく、その分タクシーと業務用貨物トラックが効率的に走れる。他方ニューヨークなどクルマ中心の都市では、都心が駐車場と道路に取られすぎて密度が上がらないし上限もある。またサンパウロの交通渋滞は想像を絶し、VIPは隣のビルに行くのにヘリタクシーを使う。ムンバイでは電車事故で平均12人が死亡する。北京の大気汚染はいうまでもない。ところが3500万人を擁する東京圏は、それら都市の2倍以上大きいが、交通渋滞、大気汚染、水質汚染、ごみ処理問題、スラム化問題、犯罪などの課題を解決している。
●通勤ラッシュと通勤時間の長さが唯一のネックだが、鉄道の混雑率は毎年低くなっている。むろんゆったりした通勤は理想ではあるが、ある程度混雑しているから鉄道事業が成立し、電車賃も安く抑えられている(諸外国では補助金投入されたうえに運賃は高い)。一人当たりのエネルギー消費はクルマの1/7で、ガソリンを消費する地方居住よりもエコである。サラリーマンの大多数が電車で通勤することで、莫大なメリットを得ているのが東京圏なのだ。
●なお職住近接が言われるが、昼間のワーカー密度という点からいえば、都心に女房・子供を住まわせるとワーカー密度は下がる方向に働くので逆効果である。(ただ都心の生産性が高ければ、必然事務所用地・商業用地としての地価も高く、住宅も比例して高くなる。職住近接が可能なのは一部の高所得者のみ)
●新築マンションは都心及び郊外の駅近物件は順調に売れている。まだまだ東京のキャパシティは十分にあると思われる。
【東京圏では郊外駅それぞれがコンパクトシティになる】
●日本の人口減少が進む中で東京一極集中は続くが、東京圏内の人口分布は、郊外駅それぞれがコンパクトシティー化し、駅から遠い住宅から駅近の高層マンションに人口は移行するだろう。
●新築マンションの販売現場の情報では、近年の新築購入者は、同じ駅勢圏のバス便住宅を売り、駅近のマンションに移る中高年世帯が多いという(エビデンスとなる同一駅勢圏内の年齢別移動人口という統計があればよいが・・・)
●東京圏では駅まで歩けさえすれば、あとは仕事・病院・文化施設ありとあらゆるサービスにアクセス可能である。駅に行けば『どこでもドア』があるようなものだ(無料かつ瞬時移動でなく多少のコストと我慢を要するが)。このように円状の駅勢圏が沿線に数珠状に連なった都市構造は、建築家の大野秀敏(東大名誉教授)が『コンパクトな大都市』として提言した『ファイバーシティ』構想に近くなる。
【いまこそ日本オリジナルの東京論が必要】
●世界的に特異な東京圏の将来を語るには、過去の都市計画論、諸外国の都市事例など全く参考にならない。もっと想像力を駆使したオリジナルの論考が必要だ。経済学や交通工学のエビデンスに立脚した理論構築を期待したい。
●また郊外駅のコンパクトシティ化(東京圏のファイバーシティ化)は、政策的に誘導するまでもなく、経済合理性から実質的に進みつつある。政策的に期待したいのはこの方向を邪魔しないことだが、あえて言えば都心の容積率を増やしてオフィスワーカーの密度を上げること、郊外駅周辺の容積率を増やして駅に中高層マンションを増やすこと、鉄道のネットワーク増強(路線網充実と運行速度増)、環状高速道路の早期開通など。
●唯一解けない課題は、東京圏では女性が社会進出しながら子育てすることが難しい点。本書では保育所の充実が必要としているが、私見では東京圏の通勤時間の問題が大きいと考える。女性が都心の正社員になって子育てする場合、住んでいる郊外駅に保育所があっても、朝7時前に預けて、夕方の迎えは早くても7時になってしまう。また仕事場がある都心の保育所に預ければ、満員電車に子供をのせなければならない。いずれも通勤時間がネックになる。地方なら夕方5時15分には、通勤用の軽自動車で迎えに行けるのだが。
●先日東京都知事にも立候補された増田寛也氏が指摘した『東京は人口のブラックホールだから集中を是正すべき』という論は、本書にも指摘されているように完全に間違いである。エビデンスからは大都市集中と人口減少は無関係である。
●私見だが、有効な対策として先進国で唯一人口減少を克服しつつあるフランス流の子育て支援策しかないように思われる。ごく平均的なサラリーマンとして四人の子供を成人させるため、都心から50Km離れたニュータウンから電車通勤し、今までの人生ですでに累計四年間を電車内で過ごしたことになる地方出身者としての私の個人的実感からでもある。
【蛇足 ~ なぜ人は大都市集中を否定したがるのか】
●『大都市集中と地方再生』を議論すると、エモーショナルな集中否定論が多いのに驚く。いわく『都市化によって交通渋滞、通勤ラッシュ、大気汚染、水質汚染、ごみ処理問題、スラム化問題、犯罪などが増える』という意見。
●一体いつの時代の話なのか? 東京ではかつての光化学スモッグは減り、水質も多摩川にサケが遡上するくらいよくなってきている。殺人的な通勤ラッシュというが、混雑率は年々改善され、首都圏の鉄道事故は皆無に近い(自殺を除く)し、時間も正確だ。
●そもそも一人当たりのエネルギー収支的には、都市に住む方がよほどエコであるという分析がある。インフラ効率も良いし、内燃機関を使う比率も低い。地球環境的には全員都市にすむべきなのだ。それでも依然として大多数の人々は東京一極集中が嫌いらしいのだ。地方の票が欲しい政治家が都市化の弊害を説くのならわかるのだが。
●生まれた地域と今住んでる地域で人を3種に分類して考察してみよう。
①東京生まれの東京在住者
②地方生まれの東京在住者
③地方生まれの地方在住者
●①の人たちは、愚痴で通勤の苦痛を言うことはあっても、本気で東京一極集中を是正すべきとは誰も思ってない(があえて言わないだけだろう)。次に地元の若者を都会に吸い取られている③の方々は一極集中を是正すべきと思っているだろうが、その理由は東京の通勤ラッシュがひどいからではない(もしそうだとしたら余計なお世話)。
●『ふるさとが亡びてしまうのはしのびない』という感情から東京一極集中を否定する②の人々がやっかいだ。そんなにしのびないなら地元に帰ればよいではないか。田舎に帰れない自分の存在こそが地元衰退の元凶であることを棚上げしている。
●確かに東京圏の通勤時間は長い。少なければ少ないにこしたとはないのだが、東京在住者はプラスとマイナス要素を総合的に判断した結果、東京に住むことを選んでいるのだ。
●『日本国民は自由に国内居住地を選べる』という当たり前の事実を思い起こし、移動コストがかかるにもかかわらず、また誰も強制したわけでもないのに、東京一極集中が続いている。国民の自由選択の結果をなぜ人は否定したがるのか? 『若者を吸い取られた妬み』とか『地元を捨てた贖罪意識』からなのだろうか?
●【内容紹介】にもある通り、イノベーション、労働市場、都市・地域経済、国際化、景気変動などに対して、『サービス経済化』という産業構造変化の切り口から分析している。
●なお私の関心は『人口の大都市集中と地方再生』 『コンパクトシティ』などにあるので、以下の長いコメントはその観点のレビューだとお断りしておく。
【過去の国土政策と産業構造変化】
●日本の国土政策の基本理念は、1962年から五次にわたった【全総=全国総合開発計画】にあるように『大都市集中の弊害を是正し国土の均衡ある発展を目指すべき』というもの。日本国民の地理的人口分布を政策的に誘導しよう(誘導できる)とした。今のコンパクトシティ政策にしてもそれは同じだ。
●実態をみれば、人口減少が始まった現在でも東京圏への人口集中が続いており、過去の政策は失敗したといえよう。むしろ日本の経済成長の足を引っ張った間違った政策だったという評価も多い。
●ここ数十年、日本の産業構造は第三次産業へとシフトしているにもかかわらず、国土政策は製造業中心時代の発想から脱し切れていない。いまだ地方では工業団地を整備して工場誘致しようという政策(うまくいかない)も見られる。著者が言うように『第三次産業(サービス産業)が主体の経済社会では、人口は大都市に集中するのは避けられない』のだ。無理に集中を是正すれば(実際は是正できず税金の無駄遣いになるだけだが)、日本の経済成長が大きく阻害されてしまう(それでいいのなら別の議論になる)。
【東京一極集中は産業構造変化から理解すべき】
●日本の人口移動のドライビングフォースはなにか? それは就業機会だろう。いくら景色がきれいな地域であっても、そこに仕事がなければどうにもならない。若者が社会に出る際、就職したい(就職できる)産業が農林水産業なのか、製造業なのか、第三次産業なのかの違いによって、結果としての居住地分布は変わる。
●生産のために土地そのものを必要とする【第一次産業】、工場用地などの作業用・資材用スペースが必要な【第二次産業】から、サービス中心の【第三次産業】では土地よりも『人と人がどれだけ高密度であるか』が生産性を左右する。
●江戸時代には人口の7割が農業に従事していたというから、都市集中にも限度があった。しかし現代のアメリカでは1%以下の農業人口で、全米の農作物消費量の100%以上を生産し、余剰分を輸出している。機械化が進んで生産性が上がったからだ。農地は依然として必要だが、そこに人間が張り付く必要性は格段に薄まったのだ。
●第三次産業では、一日で何人とフェイスツーフェイスで会えるかが決定的に重要だ。大都市では第三次産業の生産性が高いから、企業が集積し、雇用が発生し、それが高い給与を可能とする。付随してエンタメ産業などの各種サービスも充実し、より都市は魅力的になっていく。
【本書の分析】
●『第三次産業は大都市に集中する』という主張は著者が初めてではない。しかし、サービス産業の実態を知らない私が最初に思いつくサービスは例えばマッサージ業だが『マッサージで高給がとれるわけじゃなし、何も東京でなくとも・・・』と、これまでは『サービス業が都市に集中しなければならない理屈』に今一つしっくりこなかった。
●本書では『サービス業とは具体的にどういう職種か?』からはじめて、その特性をエビデンスに立脚して説き起こしていく。例えば商社は産業分類上『卸売業』でサービス産業。もちろん日本の大商社の本社はすべて東京にある。経営コンサルタントも会計士も弁護士もIT産業も広告業も金融業も不動産業もみなサービス業。すなわち丸紅も楽天もソフトバンクもユニクロも電通もみずほ銀行もみなサービス産業なのだ。
●そして製造業とは決定的に違う特性は『生産と消費の同時性』だと著者は言う。すなわちサービス業では顧客と『時間と空間を共有』しなければならない。製造業では顧客の所在地と無関係の場所で生産し、時間的にも在庫を持っておけば必要な時に顧客に輸送できるが、サービス業では自分自身がいつどこに位置するかが決定的に重要なのだ。
●こういったサービス業の集積のメリットを統計データや内外の理論・実証研究をベースに解説していく。著者自身の長年の研究成果に加え、サービスに関連する内外での多数の研究をも紹介している。これらによって、今までの東京一極集中の必然性と、今後の進展イメージがクリアになっていく。
●いま現在でも『地方拠点強化税制』という国の制度がある。これは東京に本社機能がある企業が地方に移転すれば様々な税制優遇が受けられるというもの。しかし、この制度が暗黙に前提としているであろう製造業はすでに大都市にない。一方で、楽天やソフトバンクなどの本社を地方都市に移転するのは、人がいるから成立している事業を人のいない地域に誘致する本末転倒の議論ではないか。産業構造変化を無視したあまりにもトンチンカンな政策であろう。
【国土政策になぜいままで産業構造論が注目されなかったのか】
●なぜこのような重要な視点が今まで欠けていたのだろう。私見では、都市集中を理解するには工学(都市計画、交通工学、都市工学など)の知見のみならず、社会学(都市地理学、都市社会学)、経済学(都市経済学など)など学際的議論が必要。特に人口移動のドライビングフォースが就業機会であるならば、産業構造変化の分析が基礎になるはずだが、実証研究に必要なサービス統計が著者によればここ10年ほどの間にようやく充実してきたのだという。
●デトロイトが廃墟化する一方、発展するシリコンバレーをも抱えるアメリカでも、本書と同様の視点から研究が進んできているようだ。本書の参考文献にも挙げられているが、エンリコ・モレッティ『年収は「住むところ」で決まる』2012(翻訳出版2014)は、書名に似合わずアカデミックな実証研究で興味深い。
●要するに、『インターネットの普及で世界は均等化する』という予言でベストセラーになったトーマス・フリードマン(『フラット化する社会』2005)は完全に間違っていたというのが近年の都市経済学者の見解のようだ。すなわち『世界はフラット化していないどころか、いっそう集中している』。未来予測で有名なアルビン・トフラーも、この点だけは外したともっぱらの評判である。
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ここから先のコメントはレビューというよりも、東京一極集中に関する今後の研究や議論への期待である。
【今後の議論の期待】
●私は大都市で建設不動産業に従事している。ホンネを言えば、まったくのビジネスの観点から、『東京一極集中の人口キャパシティはどこまで大丈夫なのか』、『東京圏内での局所的人口分布はどうなるのか』に強い興味がある。
● 以下は個人的仮説である。
① 東京圏の人口収容キャパシティは今後も十分にある。
② 東京圏郊外の駅は、放っておいてもそれぞれがコンパクトシティになり、東京圏はコンパクトシティが鉄道沿線に連なったメガ構造になる。
【東京圏の異常な鉄道利用度】
●この仮説の論証には、東京圏の鉄道ネットワーク分析がキーになる。この観点ではすでに評論家の増田悦佐氏が【高度成長は世界都市東京から(2013)】などの著書で指摘しているが、私見を加えて展開してみる。
●世界の大都市の中で、首都圏は『(旅客用)鉄道利用が極端な都市構造』である。いわば、世界で東京圏だけが、『朝の1時間でサラリーマン1000万人を都心に集め夕方一時間で郊外に散らせている』。【世界の駅の乗降客数ランキング】で検索すれば出てくるネットではわりに有名なグラフを是非見ていただきたい。この極端な結果には笑うしかない。
●このグラフによるとトップ20はすべて日本。うちトップ10は他とはケタが違う。またトップ100の中では、首都圏66、その他日本14、その他外国18だが、外国は各国代表都市が一つか二つが入っている程度だ。データの出所が曖昧でエビデンスとは言えないものの、おおきくは間違ってないと思う(地下鉄協会による世界都市比較はあるが、東京圏では山の手線など地上路線のJRや私鉄があってそれらを総合したものは見当たらない)。
●もう一つ、エビデンスが明確な情報として、『日本は2つの国からできている!? ~データで見る東京の特異性~』 というヤフーのビッグデータレポートがある。これによれば、東京の人は赤ちゃんからお年寄りまで含めて年間800回以上電車に乗っているという。一方、大半の道府県はせいぜい数十回だ。
●このように東京圏が世界的にも異常な電車社会である理由は、路線延長が格別長いからではないらしい。増田悦佐によれば、日本の鉄道の経営主体がそれぞれ相互接続をした結果、ほとんどの駅が通過駅となったからだと言う。他先進国の場合、鉄道会社の都市の終点駅(頭端駅=ターミナル)が他の鉄道会社の路線と切り離されて(相互に数Km離れている)いるという。
●別の角度からも東京圏の鉄道利用の異常性がわかる。例えばビッグカメラ、ヨドバシカメラなど、ロードサイドビジネスならぬレールサイドビジネスという世界唯一の業態だ。郊外出店戦略のヤマダ電気の不調をよそにレールサイド出店だけでそれぞれ1兆円に達しようかという勢いである。
●また“エキナカビジネス”はJR東日本だけでも1兆円以上。伊勢丹などの都心デパートも一店舗で軒並み1000億以上の売り上げがあるがこれも世界で日本だけ。このような駅中心の小売業態は世界的に見ても日本だけの現象だ。
●東京圏の異常なサラリーマン昼間人口密度によりBtoBの営業は主要駅から歩く範囲で可能となっている。これがサービス産業が集積する理由だ。毎日6万食を配達する“玉子や弁当”なども、オフィスまでの毎日のデリバリが大変なように見えるが、実際は主要駅から歩ける範囲で済む。
●そのサラリーマンを顧客とする飲食店も主要駅周辺の歩いていける範囲に高密度に集積している。最近流行の立ち食いのフレンチレストラン、立ち食いステーキレストラン。立ち食いフレンチなんてパリやニューヨークにあるはずがない(調べたことはないが)。都心主要駅周辺の狭いエリアに、ものすごい数のサラリーマンが夕方うろつくから、世界に類のない業態が成立するのだ。さらに最近急成長しているプレコフーズという会社は、飲食店向けの食材(肉)卸業だが、千円程度の材料でも社員が手に持って歩いて店に配達している。それで100億を超える売り上げだ。これも主要駅から歩ける範囲で十二分に飲食店市場があるからだ。他にも東京だけにしかない業態は多い。
【東京圏の人口キャパに余裕があるか】
●朝夕1時間で1000万人を集散させている東京は、歴史的にも世界的にも唯一の存在だ。サラリーマンの鉄道利用により都心は相対的に自家用車が少なく、その分タクシーと業務用貨物トラックが効率的に走れる。他方ニューヨークなどクルマ中心の都市では、都心が駐車場と道路に取られすぎて密度が上がらないし上限もある。またサンパウロの交通渋滞は想像を絶し、VIPは隣のビルに行くのにヘリタクシーを使う。ムンバイでは電車事故で平均12人が死亡する。北京の大気汚染はいうまでもない。ところが3500万人を擁する東京圏は、それら都市の2倍以上大きいが、交通渋滞、大気汚染、水質汚染、ごみ処理問題、スラム化問題、犯罪などの課題を解決している。
●通勤ラッシュと通勤時間の長さが唯一のネックだが、鉄道の混雑率は毎年低くなっている。むろんゆったりした通勤は理想ではあるが、ある程度混雑しているから鉄道事業が成立し、電車賃も安く抑えられている(諸外国では補助金投入されたうえに運賃は高い)。一人当たりのエネルギー消費はクルマの1/7で、ガソリンを消費する地方居住よりもエコである。サラリーマンの大多数が電車で通勤することで、莫大なメリットを得ているのが東京圏なのだ。
●なお職住近接が言われるが、昼間のワーカー密度という点からいえば、都心に女房・子供を住まわせるとワーカー密度は下がる方向に働くので逆効果である。(ただ都心の生産性が高ければ、必然事務所用地・商業用地としての地価も高く、住宅も比例して高くなる。職住近接が可能なのは一部の高所得者のみ)
●新築マンションは都心及び郊外の駅近物件は順調に売れている。まだまだ東京のキャパシティは十分にあると思われる。
【東京圏では郊外駅それぞれがコンパクトシティになる】
●日本の人口減少が進む中で東京一極集中は続くが、東京圏内の人口分布は、郊外駅それぞれがコンパクトシティー化し、駅から遠い住宅から駅近の高層マンションに人口は移行するだろう。
●新築マンションの販売現場の情報では、近年の新築購入者は、同じ駅勢圏のバス便住宅を売り、駅近のマンションに移る中高年世帯が多いという(エビデンスとなる同一駅勢圏内の年齢別移動人口という統計があればよいが・・・)
●東京圏では駅まで歩けさえすれば、あとは仕事・病院・文化施設ありとあらゆるサービスにアクセス可能である。駅に行けば『どこでもドア』があるようなものだ(無料かつ瞬時移動でなく多少のコストと我慢を要するが)。このように円状の駅勢圏が沿線に数珠状に連なった都市構造は、建築家の大野秀敏(東大名誉教授)が『コンパクトな大都市』として提言した『ファイバーシティ』構想に近くなる。
【いまこそ日本オリジナルの東京論が必要】
●世界的に特異な東京圏の将来を語るには、過去の都市計画論、諸外国の都市事例など全く参考にならない。もっと想像力を駆使したオリジナルの論考が必要だ。経済学や交通工学のエビデンスに立脚した理論構築を期待したい。
●また郊外駅のコンパクトシティ化(東京圏のファイバーシティ化)は、政策的に誘導するまでもなく、経済合理性から実質的に進みつつある。政策的に期待したいのはこの方向を邪魔しないことだが、あえて言えば都心の容積率を増やしてオフィスワーカーの密度を上げること、郊外駅周辺の容積率を増やして駅に中高層マンションを増やすこと、鉄道のネットワーク増強(路線網充実と運行速度増)、環状高速道路の早期開通など。
●唯一解けない課題は、東京圏では女性が社会進出しながら子育てすることが難しい点。本書では保育所の充実が必要としているが、私見では東京圏の通勤時間の問題が大きいと考える。女性が都心の正社員になって子育てする場合、住んでいる郊外駅に保育所があっても、朝7時前に預けて、夕方の迎えは早くても7時になってしまう。また仕事場がある都心の保育所に預ければ、満員電車に子供をのせなければならない。いずれも通勤時間がネックになる。地方なら夕方5時15分には、通勤用の軽自動車で迎えに行けるのだが。
●先日東京都知事にも立候補された増田寛也氏が指摘した『東京は人口のブラックホールだから集中を是正すべき』という論は、本書にも指摘されているように完全に間違いである。エビデンスからは大都市集中と人口減少は無関係である。
●私見だが、有効な対策として先進国で唯一人口減少を克服しつつあるフランス流の子育て支援策しかないように思われる。ごく平均的なサラリーマンとして四人の子供を成人させるため、都心から50Km離れたニュータウンから電車通勤し、今までの人生ですでに累計四年間を電車内で過ごしたことになる地方出身者としての私の個人的実感からでもある。
【蛇足 ~ なぜ人は大都市集中を否定したがるのか】
●『大都市集中と地方再生』を議論すると、エモーショナルな集中否定論が多いのに驚く。いわく『都市化によって交通渋滞、通勤ラッシュ、大気汚染、水質汚染、ごみ処理問題、スラム化問題、犯罪などが増える』という意見。
●一体いつの時代の話なのか? 東京ではかつての光化学スモッグは減り、水質も多摩川にサケが遡上するくらいよくなってきている。殺人的な通勤ラッシュというが、混雑率は年々改善され、首都圏の鉄道事故は皆無に近い(自殺を除く)し、時間も正確だ。
●そもそも一人当たりのエネルギー収支的には、都市に住む方がよほどエコであるという分析がある。インフラ効率も良いし、内燃機関を使う比率も低い。地球環境的には全員都市にすむべきなのだ。それでも依然として大多数の人々は東京一極集中が嫌いらしいのだ。地方の票が欲しい政治家が都市化の弊害を説くのならわかるのだが。
●生まれた地域と今住んでる地域で人を3種に分類して考察してみよう。
①東京生まれの東京在住者
②地方生まれの東京在住者
③地方生まれの地方在住者
●①の人たちは、愚痴で通勤の苦痛を言うことはあっても、本気で東京一極集中を是正すべきとは誰も思ってない(があえて言わないだけだろう)。次に地元の若者を都会に吸い取られている③の方々は一極集中を是正すべきと思っているだろうが、その理由は東京の通勤ラッシュがひどいからではない(もしそうだとしたら余計なお世話)。
●『ふるさとが亡びてしまうのはしのびない』という感情から東京一極集中を否定する②の人々がやっかいだ。そんなにしのびないなら地元に帰ればよいではないか。田舎に帰れない自分の存在こそが地元衰退の元凶であることを棚上げしている。
●確かに東京圏の通勤時間は長い。少なければ少ないにこしたとはないのだが、東京在住者はプラスとマイナス要素を総合的に判断した結果、東京に住むことを選んでいるのだ。
●『日本国民は自由に国内居住地を選べる』という当たり前の事実を思い起こし、移動コストがかかるにもかかわらず、また誰も強制したわけでもないのに、東京一極集中が続いている。国民の自由選択の結果をなぜ人は否定したがるのか? 『若者を吸い取られた妬み』とか『地元を捨てた贖罪意識』からなのだろうか?
2016年12月28日に日本でレビュー済み
日本経済の7割以上を占めるサービス産業-今は「日本のサービス業の生産性は米国の半分でしかない」という文脈で語られるものの、一般的なイメージは漠然としているのではないか。
本書は、サービス産業が我が国にとって実は如何に重要か、それを更に発展させるための政策は? という立場からの実証的な論考である。 政策立案の立場に無い私は、「サービス産業とは? その特徴、生産性、地域性、将来は?」の記述に眼を見張らされた。 サービス産業についてこれほどの広範な分析を嘗て見たことが無かったからである。 成熟した我が国を支えるサービス産業に、経済学の光を当てて投影した像は明晰で分かりやすく、説得力に富む。
政策立案のためには、精確な現状把握がその大前提となる。 単なる印象論のレベルでの現状把握からは誤った方策が導かれる可能性が高い。 サービス産業についてより深く理解したい方に本書をお勧めすると共に、政策立案の立場にある方々が本書を糧とされることを強く願う。
本書は、サービス産業が我が国にとって実は如何に重要か、それを更に発展させるための政策は? という立場からの実証的な論考である。 政策立案の立場に無い私は、「サービス産業とは? その特徴、生産性、地域性、将来は?」の記述に眼を見張らされた。 サービス産業についてこれほどの広範な分析を嘗て見たことが無かったからである。 成熟した我が国を支えるサービス産業に、経済学の光を当てて投影した像は明晰で分かりやすく、説得力に富む。
政策立案のためには、精確な現状把握がその大前提となる。 単なる印象論のレベルでの現状把握からは誤った方策が導かれる可能性が高い。 サービス産業についてより深く理解したい方に本書をお勧めすると共に、政策立案の立場にある方々が本書を糧とされることを強く願う。
2020年4月14日に日本でレビュー済み
第三次産業による国家振興はいまや、多くの国が目指していることだ。
しかしながら、この書は、
米欧亜等で共通してみられる、以下の重要な点への着目が十分でないが故に、
第二次産業への経済分析手法の敷衍的な応用にとどまってしまっているのが残念な点と捉えた。
・人材のネットワーキング状況(ノウハウや取引先紹介、金銭的支援をどう行うか→互いが互いを盛り立て拡大・集積していく過程への着目)
・サービス提供への価格弾力性の大きさ(富裕層個人向けには富裕層目線の金額での提供、グローバル法人には、、、といった、購買サイドの価格感度・要求水準に応じた弾力的な(もしくはフォーカシングした)サービスラインナップ)
・規模の経済の追求(IT・メディア活用でいえば英語ベースでのグローカルプラットフォーム、非IT・メディアでもグローカル展開可能なフォーマットを最初から意識したビジネスモデル設計など)
いずれも、「これからのサービス産業は一国にとどまらない方向に進む」という大前提の視点が、もし冒頭に据えられているならば、おのずと何らかの形で柱として取り上げられたものであろう。
しかし冒頭の入りが「ものづくりからサービスへ」「サービス化する日本経済」と、日本経済の変化に焦点を当ててしてしまったが故に、第6章などでオマケのような形で部分的に取り上げられるに終わってしまった。非常に残念。
しかしながら、この書は、
米欧亜等で共通してみられる、以下の重要な点への着目が十分でないが故に、
第二次産業への経済分析手法の敷衍的な応用にとどまってしまっているのが残念な点と捉えた。
・人材のネットワーキング状況(ノウハウや取引先紹介、金銭的支援をどう行うか→互いが互いを盛り立て拡大・集積していく過程への着目)
・サービス提供への価格弾力性の大きさ(富裕層個人向けには富裕層目線の金額での提供、グローバル法人には、、、といった、購買サイドの価格感度・要求水準に応じた弾力的な(もしくはフォーカシングした)サービスラインナップ)
・規模の経済の追求(IT・メディア活用でいえば英語ベースでのグローカルプラットフォーム、非IT・メディアでもグローカル展開可能なフォーマットを最初から意識したビジネスモデル設計など)
いずれも、「これからのサービス産業は一国にとどまらない方向に進む」という大前提の視点が、もし冒頭に据えられているならば、おのずと何らかの形で柱として取り上げられたものであろう。
しかし冒頭の入りが「ものづくりからサービスへ」「サービス化する日本経済」と、日本経済の変化に焦点を当ててしてしまったが故に、第6章などでオマケのような形で部分的に取り上げられるに終わってしまった。非常に残念。