応用倫理学、というと一時期勢いよく流行したが、それが冷めると「そもそも応用倫理学とは何のためにあるのか」という疑念が向けられるようになった。
実際、応用倫理学というと、ともすれば「小難しい外国人の学説を並べ立てて、上から目線で問題にずかずか介入してくるだけ」にもなっている。
では、応用倫理学はどのように考えて何をすべきなのか、そもそも倫理とはどのようなものであり、どう論じうるのか。
本書は、そういった問題を基礎から掘り下げていくメタ応用倫理学の希有な入門書である。
まず前半では、メタ倫理学の基本的な論点が簡潔に紹介される。
功利主義・直観主義・徳倫理という基礎付け問題、原則主義(倫理に共通する「原則」の抽出こそ重要)と決議論(積み上げられた事例を元に、個々の事例で倫理的判断をしていくことが重要)の対立等がそこでは述べられる。
また、「倫理は各人の心の問題に過ぎない」という相対主義的な立場と、「優れた人だけが倫理を分かりうる」というようなエリート主義とという双方からの批判にどのように答えるかも考察される。
後半では、具体的に誰に対して、どのように倫理学をなすべきかが考えられる。
筆者は、不可避的な政治性を認識した上で、「思慮な傍観者」としての視点との往復を擁護する。
筆者の主張には大枠は賛成なのだが、「エッセイ」という形式を擁護する議論には問題があるように思う。
というのも、筆者は海外の「Essay論」を援用してエッセイという形式の可能性を訴えるのだが、英語の「Essay」と日本語の「エッセイ」は全然違うものであり、「Essay」は日本語で言う「小論」に近い。
なので、海外の「Essay論」をもって「エッセイ」という形式を擁護するのはずれているように思う。
細かい部分には批判的なコメントをしたが、全体的にはよくまとまっており、数少ないメタ倫理学入門書になっていると思う。
なお注意として、個別具体的な「生命倫理」等はほとんど書かれていない。
なので、そういう知識を欲しい方は別の本も併せて読むといいだろう

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倫理学という構え: 応用倫理学原論 単行本 – 2012/9/1
奥田 太郎
(著)
- 本の長さ314ページ
- 言語日本語
- 出版社ナカニシヤ出版
- 発売日2012/9/1
- 寸法13.9 x 3 x 19.5 cm
- ISBN-104779506778
- ISBN-13978-4779506772
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登録情報
- 出版社 : ナカニシヤ出版 (2012/9/1)
- 発売日 : 2012/9/1
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 314ページ
- ISBN-10 : 4779506778
- ISBN-13 : 978-4779506772
- 寸法 : 13.9 x 3 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 358,536位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 2,326位倫理学入門
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