帯の煽り文句は、『アップデートする仏教』(藤田一照・山下良道、2013)と『仏教思想のゼロポイント』(魚川祐司、2015)の二書を意識し、当てこすったものであることは言うまでもない。これらはどちらも、テーラワーダ仏教を基礎としつつも、そこで完結せずに日本の伝統仏教(中国大乗仏教)も含めた多様な仏教界全体を活かしていく「第三の道」を模索・提示していこうとする、新しいタイプの仏教書だ。
そうした志は尊いし、賞賛されるべきものでもあるだろう。ただし、時間や紙面の制約上、仕方のないことではあろうが、両者の書籍では、基礎となっているテーラワーダ仏教の教義・実践の解説が、十分になされているとは言い難い。したがって、テーラワーダ仏教やパーリ仏典に精通してない一般読者にとっては、彼らが「一足飛び」「空中戦」の議論をしてしまっているように見える面があることは否めない。
そしてここには、ともすれば、仏教の基礎知識・基礎教養を欠いたまま、半知半解でよく分かりもしないまま、なんとなく「小乗叩き」と「無原則な居直り・空回り」を行ってきた近代未前の中国大乗仏教(の直系である日本伝統仏教)の愚を反復してしまうような輩を、大量に再生産してしまいかねない、またそんな連中に格好の「免罪符」を与えてしまいかねない危うさが、孕まれていることも確かだ。
その点で、テーラワーダ仏教の「核」「真髄」となる部分の、詳細かつ一貫性のあるオーソドックスな説明に成功している本書は、そうした議論・流れに対する「強烈なカウンターパンチ」として機能していると言えるだろう。あるいは、本来まずもって用意されるべきだった「仏教の基礎」を提供できているという点では、「相互補完的」な関係にあると言えるのかも知れない。
本書はいわゆる「四沙門果」「四向四果」の解説本だ。テーラワーダ仏教に興味がある人間なら概要くらいは知っている者も多いだろうが、本書ほど詳細かつ分かりやすくまとまった説明を目にする機会は、意外と少ない。
著者の藤本晃氏は、その「舌鋒の鋭さ」や「日本テーラワーダ仏教協会の関係者」という党派的な理由から、「無難さ」を好む読者からはやや敬遠されがちな印象を受ける。そしてそれ故に、やや過小評価されている印象を受けるが、本書のような解説本を書かせたら、日本でも確実にトップクラスの人物だと言えるだろう。
「テーラワーダ仏教はどんな仏教か」と尋ねられたら、当面は本書を提示しておけばいい。それぐらいの名著だ。

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悟りの4つのステージ 単行本 – 2015/10/24
藤本晃
(著)
- 本の長さ336ページ
- 言語日本語
- 出版社サンガ
- 発売日2015/10/24
- ISBN-104865640266
- ISBN-13978-4865640267
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登録情報
- 出版社 : サンガ (2015/10/24)
- 発売日 : 2015/10/24
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 336ページ
- ISBN-10 : 4865640266
- ISBN-13 : 978-4865640267
- Amazon 売れ筋ランキング: - 401,395位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2016年11月8日に日本でレビュー済み
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2016年11月19日に日本でレビュー済み
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私は長いあいだ大乗仏教徒でしたし、今でも大乗仏教のある種の理念に賛同しているのですが、
結局、「悟り」とは何なのか?
イマイチ理解出来ない雲の上の境地だと思って理解を断念していました。
しかし、藤本氏のテーラワーダ仏教によれば、
三結を断てば、もう預流果の悟りに達するとのこと。
三結とは、怒り、貪り、愚かさの三つですが、
たった三つの煩悩を断つだけでも、もうすでに悟りの4段階の最初のステージに到達できるのだ、とわかり、内心驚きを禁じ得なかったです。
本書こそ、新たなる時代の新しい仏教聖典として、また自分の瞑想修行がどのレベルかを見定める里程標として、すべての仏教徒の方にオススメしたい最良の仏教書です
結局、「悟り」とは何なのか?
イマイチ理解出来ない雲の上の境地だと思って理解を断念していました。
しかし、藤本氏のテーラワーダ仏教によれば、
三結を断てば、もう預流果の悟りに達するとのこと。
三結とは、怒り、貪り、愚かさの三つですが、
たった三つの煩悩を断つだけでも、もうすでに悟りの4段階の最初のステージに到達できるのだ、とわかり、内心驚きを禁じ得なかったです。
本書こそ、新たなる時代の新しい仏教聖典として、また自分の瞑想修行がどのレベルかを見定める里程標として、すべての仏教徒の方にオススメしたい最良の仏教書です
2016年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者は無関係かもしれないが、よくゼロポイントや3.0を引き合いに出せたなと感心する。
スマナサーラ長老は本当に推薦しているのか?
経典の雑学としてはアリかもしれないが、精進する気にはさせてくれない無駄知識。
本書の半分ほどは、六道輪廻を事実(業の相続ではなく記憶ごと、ファンタジックに)として、延々と解説しているだけ。
さらに輪廻の否定に対して悪魔の証明を求めてくる。
この説だと、現代人は阿羅漢にはなれない。
スマナサーラ長老は本当に推薦しているのか?
経典の雑学としてはアリかもしれないが、精進する気にはさせてくれない無駄知識。
本書の半分ほどは、六道輪廻を事実(業の相続ではなく記憶ごと、ファンタジックに)として、延々と解説しているだけ。
さらに輪廻の否定に対して悪魔の証明を求めてくる。
この説だと、現代人は阿羅漢にはなれない。
2016年1月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
悟りの段階を一つ一つ、丁寧に、分析的に説明をしてくださっていると、受け取りました。
私の理解がどこまで進んだのかは、自信がありません。ただ、この階を少しでも昇って
いきたいと感じたことは、お伝えしたいと思います。
私の理解がどこまで進んだのかは、自信がありません。ただ、この階を少しでも昇って
いきたいと感じたことは、お伝えしたいと思います。
2016年3月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
お釈迦様は実に明解で確実な悟り(阿羅漢)への道をきちんと残しておられた。それが四預流支である。詳しくは本書を読んでいただくとして。第一段階の預流であるがその根本は有身見(私があるという感覚、意識)であろう。実に宗教というものが長年にわたって槍玉に挙げてきた自我である。この流れに入ればもはや悪趣におちることなく最高7回人間界へ転生するだけで阿羅漢へといたれるのである。仏教徒にとってこれほどの福音がほかにあろうか。この主題をわかりやすくとりあげて説明しておられる藤本先生も素晴らしい仕事をしておられる。この考えは私は知ってはいたが、これほど明確に説かれた本をほかに知らない。きちんと仏教の本質を押さえて論を展開し、仏教徒の歩むべき道筋を指し示す。これほどのことをはっきりおっしゃった宗教家を私はほかに知りません。
2015年11月5日に日本でレビュー済み
サンガさんお得意のタイトル替えではありませんでした。全面改定版ですね。分量にして1.5倍?でも質はさらにパワーアップして良くなりました。
というか、最近の「悟り」ブームに対するムラムラしたエネルギーが感じられて、よく言えばやる気満々、悪く言えば勧善懲悪的な、「本当の悟り、教えます」という内容になっています。人によってはそれが鼻につくかもしれませんが、悟りについて、とにかく正確なところを知りたいという人には、前著や他の人の本と違って出典や原文や和訳がはっきり出ているのでありがたいです。
帯に「3.0でもゼロポイントでもない悟りのスターティングポイントからゴールまで」と書いてあり、そういうタイトルの著作を意識しているのだと思いますが、実際、他の本と理解が異なる点については、この本の勝ちではないかと思います。出典がはっきりしているだけでも安心できます。
前著から七~八年経っているのですね。その間に爆発的に流行した日本の「悟り」文化について、まえがきと第一章が書き加えてあります。
というか、最近の「悟り」ブームに対するムラムラしたエネルギーが感じられて、よく言えばやる気満々、悪く言えば勧善懲悪的な、「本当の悟り、教えます」という内容になっています。人によってはそれが鼻につくかもしれませんが、悟りについて、とにかく正確なところを知りたいという人には、前著や他の人の本と違って出典や原文や和訳がはっきり出ているのでありがたいです。
帯に「3.0でもゼロポイントでもない悟りのスターティングポイントからゴールまで」と書いてあり、そういうタイトルの著作を意識しているのだと思いますが、実際、他の本と理解が異なる点については、この本の勝ちではないかと思います。出典がはっきりしているだけでも安心できます。
前著から七~八年経っているのですね。その間に爆発的に流行した日本の「悟り」文化について、まえがきと第一章が書き加えてあります。
2015年12月26日に日本でレビュー済み
帯に『「3.0」でも「ゼロポイントでもない」「悟り」のスターティングポイントからゴールまで!「仏陀はニートだった?」「仏道を学んでも人格は成長しない?」「悟ったらすぐに死なないとおかしい?」仏教をめぐる昨今の誤解について・・・パーリ語聖典に基づいて真正面から答え、「悟り」の真実を解き明かしてゆく』とあったので、ただ受けているだけのあの本を意識して書かれてもいるのだろうと思われるが、あくまでメインは帯の後半にあるパーリ聖典に基づいてである。
私も『仏教思想のゼロポイント』は読んだが、仏教というなら、仏陀の教え、経典に基づいて書くべきだと思うが、自分の考えを経典の記述を捻じ曲げて書いているだけの自分教のような本だったので、がっかりしたのだが、そのがっかりした点をこの本ははっきりさせてくれたので、おまけのようなものではあるが、そういう点でもすっきりできた。
藤本氏の悟りについての前作はまだ読んでないのだが、パーリ仏典における悟りを分かりやすく書いてくれて、とても勉強になりました。
ただ、ちょっと残念なのは、用語の意味などのところで、「〇〇なのではないかと思います」という表現がチラホラと出て来るのだが、その辺が上座部仏教界の中でもはっきりしていないのか、それとも藤本氏がまだそこのところを学んでいないだけなのか分からないが、読む方の期待、欲求としては、どこからどこまでもパーリ仏典に沿って、または上座部仏教界で保持している解釈を教えて欲しい訳で、自説は極力排して欲しいところだ。
「日本仏教は仏教なのか」「浄土真宗は仏教なのか」なんて本を出すくらいなのだから、それくらいは望んでもいいだろう。
私も『仏教思想のゼロポイント』は読んだが、仏教というなら、仏陀の教え、経典に基づいて書くべきだと思うが、自分の考えを経典の記述を捻じ曲げて書いているだけの自分教のような本だったので、がっかりしたのだが、そのがっかりした点をこの本ははっきりさせてくれたので、おまけのようなものではあるが、そういう点でもすっきりできた。
藤本氏の悟りについての前作はまだ読んでないのだが、パーリ仏典における悟りを分かりやすく書いてくれて、とても勉強になりました。
ただ、ちょっと残念なのは、用語の意味などのところで、「〇〇なのではないかと思います」という表現がチラホラと出て来るのだが、その辺が上座部仏教界の中でもはっきりしていないのか、それとも藤本氏がまだそこのところを学んでいないだけなのか分からないが、読む方の期待、欲求としては、どこからどこまでもパーリ仏典に沿って、または上座部仏教界で保持している解釈を教えて欲しい訳で、自説は極力排して欲しいところだ。
「日本仏教は仏教なのか」「浄土真宗は仏教なのか」なんて本を出すくらいなのだから、それくらいは望んでもいいだろう。
2018年1月29日に日本でレビュー済み
ブッダの説いた修業法と 修業の進み具合がよくわかる いい本でした! また、在家信者さんとブッダのやりとりなど沢山のエピソードが書かれてあったのも良かったです。