日本映画界稀代のモダニスト市川崑の作品群の中でも極めつけにクールでスタイリッシュ、それでいて軽妙洒脱でオフビートなタッチが横溢した傑作。
今更、レビューもないだろうと思いながらも、やっぱり大好きな映画だけに、その末席に名を刻みたく、書き込ませて頂きます。
とは言え、今作の素晴らしさを語るのに、能書きはそうは要りません。
オープニングのクレジットタイトルから、ひとりの女とそれを追う8人の女たちの諍い、それが一転船越英二と岸恵子の絡みのバスト・ショットでの長回しまで繋がっていく光と影の映像マジックと流麗なカメラワーク、それに被る芥川寸也志の日本的ノワールとメロドラマを融合させたようなテーマ曲。
巻頭の僅か8分に触れられれば、十分理解して頂けると思います。
9人もの愛人を持つTV局プロデューサーが彼女らに殺される妄想を抱き、妻に相談するも、それを中心に画策していたのは妻の方だった、、、なんて、ストーリーを語るだけで、何ともシニカルでブラックなノワール的展開で心ときめくじゃありませんか。
とにかく、全編、登場人物たちの顔、顔、顔のクローズアップが目立ちます。
追いかけたり、すがりついたり、出し抜いたり、翻弄されたり、と、男女の愛の深淵をその表情の数々で顕現化させているよう思えるのが巧いですねぇ。
「誰にでも優しいと言う事は、誰にも優しくない事」〜本編で山本富士子から発せられるこの言葉、けだし、名言です。
モテモテの男性を演じるのは船越英二ですが、ソフトにして飄々とした語り口、優しくてそれでいて子供っぽい、いかにも女性が放っておかないような母性本能をくすぐる男役が絶品で、10人もの女性が嫉妬の炎で燃やすのも無理もないか、と思わせる説得力があります。
そして、上品な東京弁を操り、艶やかで気品がある中でもしたたかな山本富士子が凄いなぁ。
本妻と第一妾の丁丁発止の探り合いと奇妙な連帯、山本富士子と岸恵子、ふたりの名女優の船越英二をめぐる応酬、実にオモシロいがコワくもあるんです。
因みに、おふたりの撮影時の年齢は、30歳と29歳、とても信じられないほどの豊饒とした色っぽさが良いですね。
ラストのオチがもうひとひねりされていれば、とも思いますが、個人的には、川島雄三の「しとやかな獣」、岡本喜八の「殺人狂時代」と並ぶオフビートな傑作。
敬愛するピチカード・ファイヴの小西康陽が愛してやまない映画、その100分の1程にも思いは伝わらないけれど、まだ観ぬ人は是非、御覧下さい。
黒い十人の女 [DVD]
¥1,390 ¥1,390 税込
フォーマット | ブラック&ホワイト, ワイドスクリーン, ドルビー |
コントリビュータ | 岸田今日子, 山本富士子, 中村玉緒, 船越英二, 市川崑, 岸恵子 |
言語 | 日本語 |
稼働時間 | 1 時間 43 分 |
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商品の説明
クール&モダン! フィルムノワールの美学!
市川崑×山本富士子ほか グラフィカルな構図、光と闇のコントラストが印象的なモダニスト市川崑 の真骨頂!
【ストーリー】
妻がいるにもかかわらず、9人もの愛人をもつテレビ・プロデューサー風松吉。
たまりかねた妻と愛人たちは共謀して男の殺害を企てる。
【特典】
劇場予告編/キャスト・スタッフプロフィール
【スタッフ】
監督/市川崑 脚本/和田夏十 撮影/小林節雄 音楽/芥川也寸志
【キャスト】
船越英二 山本富士子 岸恵子 中村玉緒 岸田今日子
©1961角川映画
登録情報
- アスペクト比 : 1.78:1
- 言語 : 日本語
- 製品サイズ : 30 x 10 x 20 cm; 83.16 g
- EAN : 4988111289025
- 監督 : 市川崑
- メディア形式 : ブラック&ホワイト, ワイドスクリーン, ドルビー
- 時間 : 1 時間 43 分
- 発売日 : 2012/11/16
- 出演 : 船越英二, 山本富士子, 岸恵子, 中村玉緒, 岸田今日子
- 言語 : 日本語 (Mono)
- 販売元 : 角川書店
- ASIN : B0092X492G
- ディスク枚数 : 1
- Amazon 売れ筋ランキング: - 156,487位DVD (DVDの売れ筋ランキングを見る)
- - 1,373位日本のミステリー・サスペンス映画
- - 7,140位日本のドラマ映画
- カスタマーレビュー:
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
レビューのフィルタリング中に問題が発生しました。後でもう一度試してください。
2011年10月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2020年8月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ラストシーンで悪寒が走った。
タイトルは黒い十人の女だけど、やはり特筆すべきは船越英二の得意な存在感。貧しさから反転してさらに一回転半しちゃった時代の頂点で時間以外のあらゆるものを優雅に持て余すあの感じ。女の人たちはいつの時代のどこにでもある仮面を貼り付けているだけ。
タイトルは黒い十人の女だけど、やはり特筆すべきは船越英二の得意な存在感。貧しさから反転してさらに一回転半しちゃった時代の頂点で時間以外のあらゆるものを優雅に持て余すあの感じ。女の人たちはいつの時代のどこにでもある仮面を貼り付けているだけ。
2023年9月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
90年代のリバイバル上映を観た記憶があるのですが、退屈感が少し蘇った程度で思い出した箇所はほとんどありませんでした。
まず最初から船越英二演ずる風松吉プロデューサーに愛人がたくさんいるところから始まっていて、
たまに女同士で揉めたりしている。女同士で距離が近いのは全員が職場恋愛だから。
風松吉に仕事の融通を利かせてもらう期待込みで関係を持った女もいたでしょう。
そんな環境でバレないわけがないし、なんだかよくわかんない映画だなと観ていました。
しかし、終盤に差し掛かり、森山加代子演ずる新人女優の百瀬桃子を口説くシーンでピンと来ました。
なるほど口説くのが挨拶のようになって感覚が麻痺しているんだろう。
松吉は徐々に変調をきたし、どのみち自滅することが目に見えているような模写になっています。
映画スチールでは絵になる写真もありますが、映画の中はそんなかっこいいもんじゃないです。
この映画がかっこいいだなんて岸恵子あたりは憤慨するだろう。
一つ気になったのは、船越英二のキスシーンはどうして露骨な模擬なんだろう。卍でもそうだった。
奥さんが厳しかったのかなとか、どうでもいいことだけが頭をよぎった。
テレビの世界を揶揄した映画なのかもしれません。
まず最初から船越英二演ずる風松吉プロデューサーに愛人がたくさんいるところから始まっていて、
たまに女同士で揉めたりしている。女同士で距離が近いのは全員が職場恋愛だから。
風松吉に仕事の融通を利かせてもらう期待込みで関係を持った女もいたでしょう。
そんな環境でバレないわけがないし、なんだかよくわかんない映画だなと観ていました。
しかし、終盤に差し掛かり、森山加代子演ずる新人女優の百瀬桃子を口説くシーンでピンと来ました。
なるほど口説くのが挨拶のようになって感覚が麻痺しているんだろう。
松吉は徐々に変調をきたし、どのみち自滅することが目に見えているような模写になっています。
映画スチールでは絵になる写真もありますが、映画の中はそんなかっこいいもんじゃないです。
この映画がかっこいいだなんて岸恵子あたりは憤慨するだろう。
一つ気になったのは、船越英二のキスシーンはどうして露骨な模擬なんだろう。卍でもそうだった。
奥さんが厳しかったのかなとか、どうでもいいことだけが頭をよぎった。
テレビの世界を揶揄した映画なのかもしれません。
2016年11月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
オリジナルの脚本が知りたくて購入しました。
バカリズムさん脚本の黒い十人の女は最高に面白いので原作はどうなのかな、と。
原作は当時の時代背景を反映した作品でとても面白い。
主演女優さん達がやはり綺麗です。
新旧比較して楽しめました。
バカリズムさん脚本の黒い十人の女は最高に面白いので原作はどうなのかな、と。
原作は当時の時代背景を反映した作品でとても面白い。
主演女優さん達がやはり綺麗です。
新旧比較して楽しめました。
2016年1月20日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ストーリーはアンニュイというか、舞台っぽい感じで特に誰かに感情移入できるお話とは思えません。
女優さんたちが本当にキレイです!! 特に、岸恵子の怜悧な美貌。山本富士子の麗しい気品。中村珠緒のラブリーなフレッシュさは何度観てもため息が出ます。
最近の女優さんたちでは太刀打ちできない存在感がみなさんにあります。
ハリウッド女優にも通じる本当の美人たちが観たいなら、ぜひ観てみてください。
女優さんたちが本当にキレイです!! 特に、岸恵子の怜悧な美貌。山本富士子の麗しい気品。中村珠緒のラブリーなフレッシュさは何度観てもため息が出ます。
最近の女優さんたちでは太刀打ちできない存在感がみなさんにあります。
ハリウッド女優にも通じる本当の美人たちが観たいなら、ぜひ観てみてください。
2019年2月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
多彩な俳優陣今ではあり得ない美人女優十人。ネタバレは嫌いなので1つ☆があげられない所が。それがなければ原作も映画gooです!
2016年3月3日に日本でレビュー済み
ここまで乾き切り、情念と無縁の作品も珍しい。
全編に監督の非常にシニカルで意地悪な視点がある。
まるで矮小な人間たちをにやにやしながら見ている感じ。
情緒や感情に訴えない皮肉さがあり、世相が産んだダーク・ファンタジーでもある。
善悪や倫理など超越している。
オープニングすぐの場面、たくさんの女が深夜の住宅街で縦一列になって尾行するシーンで、
本作がすでに独特な喜劇であることを宣言しているようで唸る。
スタイリッシュさ一辺倒の映画ではなく、含み笑いが噴出するブラックコメディ。
まったくシリアスな点がなく、みなのセリフの端々に漂う非現実なあまりの軽さに苦笑い。
ただときおり、特に後半の展開にギラッとした凄みが感じられ、
醜さと切実さの中に人間の暴力的なまでのイノセンスすらのぞかせる。
昭和30年代の東京。レストランを経営する妻(山本富士子)と9人の女たち。
風松吉(船越英二)と関係がある女たち。船越はテレビ創世期のプロデューサー。
彼女たちはみな顔見知り。やがて不思議な虚実取り混ぜた連帯感が生まれ、
「あの男さえ生きていなければ・・」と動機がわかるようななわからないような殺害を
企てるのだが・・・。
自分のものにならなくてもいいけど他人のものになるのは嫌。
「みなで一斉に手を引けばいいんだけど」というセリフや、
ライバル達をこの手で・・とならないところに女心の不可思議さを感じる。
船越がまるで多くの女が思い描く理想の「ペット」であり、
(例えとして)果たして存在していたのかという感慨さえ抱く。
本作は「黒い十人の女」とあるように女たちを描く映画だが、船越演じるこの無色透明な男が、
女たちを動かすエンジンの役割を果たしている構造が面白い。
彼の(名前通りの)捉えどころのなさが黒い渦を巻き起こす。あまりの他人事ぶりに脱力してしまう。
ただ彼は黒い十人の女たちにとって、思い通りにならない仔犬みたいなんです。
あるいは去勢された種馬、セリフにもあるように影みたいな男。
この男は、強烈な存在感を見せるモンスターたちが創った影・・。
因果応報とは関係ないドライな展開。心通わすことが乏しくなった(?)高度経済成長期の
日本の男たちのオスの力強さの喪失を笑っているのか・・。
社会的アイデンティティを失った後の彼はもはやぬいぐるみ状態。
ここに至って女たちに静かな戦慄さえ覚える。
一口にうまく説明しづらいですが、現在でもあまり類をみないユニークな群像劇が
この時代、1960年に作られたことに驚き。
あの昭和の一時代と密接に結び付きながら、欧州映画のテイストを持つ。
この黒い十人と風を創造した和田夏十の書くセリフもうまく、いちいちふふっと笑ってしまう。
そしてみなさんおっしゃるように女優陣がよく、岸恵子のねじれた溺愛ぶりはさすが。
宮城まり子、岸田今日子も怪演。中村玉緒は彼女らに飲まれる可憐だが底の浅いCMガール役。
伊丹一三(十三)も出演。
2002年にテレビスペシャルとしてリメイクされ、面白く観た記憶がある。
本作鑑賞後にリメイクも市川監督と知り、再見したくなった。
そしてみなさん賞賛するモノクロ画面の冴え。
日本を代表するカメラマンのひとり、撮影の小林節雄、
そして欧州ジャズを思わせる芥川也寸志の音楽の
物悲しくけだるい響きは、本作を視覚的・サウンド的に非常に豊かにしている。
特に船越が自身の最後を妄想して恐れおののくシュールな海辺のシーンは脳裏に焼き付く。
市川監督のセンスは今なお古びていないどころか、現代でもなかなかお目にかかれない。
黒い十人の女、1961,日本, 大映 / 大映 ,劇場アスペクト比 2.35:1 ,
103分, B&M, モノラル, 35mm
-------------------------------------------------------------------------
傷、パラがときおり見受けられるが気にならならいレベル。滲み、甘味もほぼない。
コントラストの強さが演出として指向されていると思われるが
マスターに起因する黒つぶれも若干ある感じ。
音声はやや引っ込み気味でセリフが聞き取りにくい部分も。
リージョン2, NTSC
映像仕様は16:9(スコープ)、画面アスペクト比は2.35:1, 片面 ?層、103min. B&W
音声:日本語、Mono、字幕:―
メインメニューあり、チャプターメニューあり。
全編に監督の非常にシニカルで意地悪な視点がある。
まるで矮小な人間たちをにやにやしながら見ている感じ。
情緒や感情に訴えない皮肉さがあり、世相が産んだダーク・ファンタジーでもある。
善悪や倫理など超越している。
オープニングすぐの場面、たくさんの女が深夜の住宅街で縦一列になって尾行するシーンで、
本作がすでに独特な喜劇であることを宣言しているようで唸る。
スタイリッシュさ一辺倒の映画ではなく、含み笑いが噴出するブラックコメディ。
まったくシリアスな点がなく、みなのセリフの端々に漂う非現実なあまりの軽さに苦笑い。
ただときおり、特に後半の展開にギラッとした凄みが感じられ、
醜さと切実さの中に人間の暴力的なまでのイノセンスすらのぞかせる。
昭和30年代の東京。レストランを経営する妻(山本富士子)と9人の女たち。
風松吉(船越英二)と関係がある女たち。船越はテレビ創世期のプロデューサー。
彼女たちはみな顔見知り。やがて不思議な虚実取り混ぜた連帯感が生まれ、
「あの男さえ生きていなければ・・」と動機がわかるようななわからないような殺害を
企てるのだが・・・。
自分のものにならなくてもいいけど他人のものになるのは嫌。
「みなで一斉に手を引けばいいんだけど」というセリフや、
ライバル達をこの手で・・とならないところに女心の不可思議さを感じる。
船越がまるで多くの女が思い描く理想の「ペット」であり、
(例えとして)果たして存在していたのかという感慨さえ抱く。
本作は「黒い十人の女」とあるように女たちを描く映画だが、船越演じるこの無色透明な男が、
女たちを動かすエンジンの役割を果たしている構造が面白い。
彼の(名前通りの)捉えどころのなさが黒い渦を巻き起こす。あまりの他人事ぶりに脱力してしまう。
ただ彼は黒い十人の女たちにとって、思い通りにならない仔犬みたいなんです。
あるいは去勢された種馬、セリフにもあるように影みたいな男。
この男は、強烈な存在感を見せるモンスターたちが創った影・・。
因果応報とは関係ないドライな展開。心通わすことが乏しくなった(?)高度経済成長期の
日本の男たちのオスの力強さの喪失を笑っているのか・・。
社会的アイデンティティを失った後の彼はもはやぬいぐるみ状態。
ここに至って女たちに静かな戦慄さえ覚える。
一口にうまく説明しづらいですが、現在でもあまり類をみないユニークな群像劇が
この時代、1960年に作られたことに驚き。
あの昭和の一時代と密接に結び付きながら、欧州映画のテイストを持つ。
この黒い十人と風を創造した和田夏十の書くセリフもうまく、いちいちふふっと笑ってしまう。
そしてみなさんおっしゃるように女優陣がよく、岸恵子のねじれた溺愛ぶりはさすが。
宮城まり子、岸田今日子も怪演。中村玉緒は彼女らに飲まれる可憐だが底の浅いCMガール役。
伊丹一三(十三)も出演。
2002年にテレビスペシャルとしてリメイクされ、面白く観た記憶がある。
本作鑑賞後にリメイクも市川監督と知り、再見したくなった。
そしてみなさん賞賛するモノクロ画面の冴え。
日本を代表するカメラマンのひとり、撮影の小林節雄、
そして欧州ジャズを思わせる芥川也寸志の音楽の
物悲しくけだるい響きは、本作を視覚的・サウンド的に非常に豊かにしている。
特に船越が自身の最後を妄想して恐れおののくシュールな海辺のシーンは脳裏に焼き付く。
市川監督のセンスは今なお古びていないどころか、現代でもなかなかお目にかかれない。
黒い十人の女、1961,日本, 大映 / 大映 ,劇場アスペクト比 2.35:1 ,
103分, B&M, モノラル, 35mm
-------------------------------------------------------------------------
傷、パラがときおり見受けられるが気にならならいレベル。滲み、甘味もほぼない。
コントラストの強さが演出として指向されていると思われるが
マスターに起因する黒つぶれも若干ある感じ。
音声はやや引っ込み気味でセリフが聞き取りにくい部分も。
リージョン2, NTSC
映像仕様は16:9(スコープ)、画面アスペクト比は2.35:1, 片面 ?層、103min. B&W
音声:日本語、Mono、字幕:―
メインメニューあり、チャプターメニューあり。
2021年3月4日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
意表を突く演出と先が読めない展開に引き込まれます。
テンポがいいですね~
軽い気持ちで観れる作品です!
テンポがいいですね~
軽い気持ちで観れる作品です!