ジャスミン革命から一向に進まない中東の民主化と、その後のISの台頭をどう理解したものか、とあれこれ本を探す中でこの本を知った。どなたかも指摘されているように、用語は古典的で難解ではあるけれど、kindleで読めば辞書参照も容易だったので、わたしは早々に慣れた。むしろ、(存命の著者と)自分が共に生きているとは思えないほどに初見の単語が多いことに対し、言葉がすさまじいスピードで廃れていくことの実感と恐怖感を味わった。
内容に関しては、作者の難解な、そして多少くせのある¥レトリックに慣れた後は、退屈どころか一気に引き込まれてしまい、眠りに就く前の数分間の読書のはずが睡眠不足に陥った。どこまでが史実なのか、どこまでが著者の推論なのかが峻別しづらいきらいはあるにしても、中東問題に興味のある人、アラビアのロレンスが好きで深堀したい人にとっては、非常にエキサイティングな本ではないだろうか。欧米列強の身勝手さとアラブ社会への無理解が今の中東の混沌の原点になっていることをあらためて再確認するとともに、イラクとシリアの未来は暗いと言わざるをえない、という深くどんよりとした読後感をもらたす。
自分にとってはおそらく生涯ベスト10に入る本。修辞句の難解さにひるんで敬遠するのは、あまりにもったいない。ただしアラブ問題に全く興味のない方は、おそらく1〜2ページで睡魔に襲われることになるのでは。
Kindle 価格: | ¥880 (税込) |
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イラク建国 「不可能な国家」の原点 (中公新書) Kindle版
サッダーム・フセインを放逐し、イラクに救済者として降り立ったアメリカは、民主主義という福音がこれほど無力とは思っていなかったろう。なぜ戦後復興は泥沼に陥ったのか。宗派や民族の対立、いびつな国土という混乱の種は、イラク誕生時すでに蒔かれていた。一九二一年、暴発した排外運動を封じ込めようと、苦肉の民政移管でこの人工国家を生み出したガートルード・ベルの苦悩を軸に、イラクが背負う困難を照らし出す。
- 言語日本語
- 出版社中央公論新社
- 発売日2004/4/25
- ファイルサイズ4973 KB
- 販売: Amazon Services International LLC
- Kindle 電子書籍リーダーFire タブレットKindle 無料読書アプリ
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登録情報
- ASIN : B00LMB0F9C
- 出版社 : 中央公論新社 (2004/4/25)
- 発売日 : 2004/4/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 4973 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 付箋メモ : Kindle Scribeで
- 本の長さ : 195ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 311,034位Kindleストア (Kindleストアの売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2014年12月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
国のあり方について、新しい理解を得ることができました。折に触れ読み返しています。
2014年6月6日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
35年も前、何の予備知識もなしにイラクに行き、そこで仕事をして以来、少しは赴任した国や民族について知らなければと、帰国後に色々と中東の地理や歴史や宗教についての本を読んできました。しかし、イラクの建国についてこんなに細かなことまでは知らずに来ました。この本自体の存在も知らずにいたのですが、偶然この本を知ることになり、当然のように買い求めて足らない知識を補いました。イラクの建国のことがよーく解り、満足しています。そして、第1次大戦時の大国、特にイギリスやフランス、ドイツなどの列強がいかに中東で勝手なことをしてきたかを思い知らされました。
2017年5月5日に日本でレビュー済み
大きく、地政学、世界情勢、歴史といった大枠から解説した良本
政情が少々変わろうと変わらない基本的な状況を、比較的バイアスの少ない目で解説している
日本がどう受け止められているのかとか他、私の少ない現地経験からも首肯することばかりで納得です
政情が少々変わろうと変わらない基本的な状況を、比較的バイアスの少ない目で解説している
日本がどう受け止められているのかとか他、私の少ない現地経験からも首肯することばかりで納得です
2005年9月24日に日本でレビュー済み
アメリカが泥沼に嵌った感のあるイラク情勢。
それはイギリスの嵌った罠でもあり、イギリスの撒いた種でもあった。
本書は砂漠に憧れ、アラブに身を捧げたイギリス人女性ガートルード・ベルを軸にとした中東現代史である。この書が魅力的なのはガートルード・ベルという女性の波瀾万丈の人生もあるが、その背景にアラビアのロレンス、ファイサル、イブン・サウードら著名な人物からヴァッスムス、ニーダーマイヤー、フィルビーら現代では忘れられた人々まで、多彩な人士の多彩な人生との交錯があるからである。
また人間模様だけでなく、政治・軍事・外交の話としても興味深い。
インドとドイツのグレートゲーム、現地政権との駆け引き、イギリスのアラブ局とインド政庁の対立などイラク建国に至る帝国主義の歴史が一読の元に理解出来る記述となっている。
そして、現代のイラクの混沌である。
それまでの宗教・民族の自然な境界を無視した線引き。それ以前に部族主義の当地に近代国家を樹立しえるのか。現代のイラクの混沌の種は既に建国前から撒かれたものである。クルド人問題しかり、シーア派の問題しかり。サダム・フセインの登場も、イランとの対立も、クルド人の弾圧も国家の成り立ちから想像しうるものであった。国家という枠があれば枠にあわせて国民意識が生まれるともいう。しかし、空中楼閣の如き人工国家であるイラクという枠組みは正常に機能しなかったのである。アメリカのイラク統治は一度イラクの建国という時点に思いを致して再構築する必要があるであろう。歴史の教訓を無視しては未来を築く事は出来ない。
それはイギリスの嵌った罠でもあり、イギリスの撒いた種でもあった。
本書は砂漠に憧れ、アラブに身を捧げたイギリス人女性ガートルード・ベルを軸にとした中東現代史である。この書が魅力的なのはガートルード・ベルという女性の波瀾万丈の人生もあるが、その背景にアラビアのロレンス、ファイサル、イブン・サウードら著名な人物からヴァッスムス、ニーダーマイヤー、フィルビーら現代では忘れられた人々まで、多彩な人士の多彩な人生との交錯があるからである。
また人間模様だけでなく、政治・軍事・外交の話としても興味深い。
インドとドイツのグレートゲーム、現地政権との駆け引き、イギリスのアラブ局とインド政庁の対立などイラク建国に至る帝国主義の歴史が一読の元に理解出来る記述となっている。
そして、現代のイラクの混沌である。
それまでの宗教・民族の自然な境界を無視した線引き。それ以前に部族主義の当地に近代国家を樹立しえるのか。現代のイラクの混沌の種は既に建国前から撒かれたものである。クルド人問題しかり、シーア派の問題しかり。サダム・フセインの登場も、イランとの対立も、クルド人の弾圧も国家の成り立ちから想像しうるものであった。国家という枠があれば枠にあわせて国民意識が生まれるともいう。しかし、空中楼閣の如き人工国家であるイラクという枠組みは正常に機能しなかったのである。アメリカのイラク統治は一度イラクの建国という時点に思いを致して再構築する必要があるであろう。歴史の教訓を無視しては未来を築く事は出来ない。
2004年4月25日に日本でレビュー済み
イラク建国の母は「アラビアのロレンス」の女性版ともいえるガートルード・ベル(スフィンクスの前でチャーチル、ロレンスと一緒に撮った珍しい記念写真も、この本には収録されている)。祖国とアラブに引き裂かれ、悲劇的な最期を迎える、この英国人女性を軸に、複雑怪奇、動機不純なイラク建国の歴史が語られていく。
第1次大戦後、英国が拝外運動の封じ込めに、穏健なスンナ(スンニ)派を優遇する一方、中部と南部で多数派の反抗的なシーア派の影響力を削ぐため、クルド人の住む北部地域を加えて国境線を引くなど、植民地としての「管理のしやすさ」を優先した結果、イラクは不安定な人工国家になってしまったという。この北部地域をイラクに加える政策に、ロレンスやアーノルド・トインビーに疑問を呈したり、第1次大戦中、ドイツがイスラムを反英闘争に立ち上がらせようと、聖戦(ジハード)を訴える情報戦を仕掛けるなど、歴史的なエピソードにも興味は尽きない。
だが、何よりも感じるのは、この本の帯にもある「なぜ(米国によるイラクの)戦後復興は泥沼に陥ったのか。宗派や民族の対立、いびつな国土という混乱の種はイラク誕生時すでに蒔かれていた」という事実だ。死屍累々の歴史を読んでいると、「死者は復讐する」という言葉を思い出す。
第1次大戦後、英国が拝外運動の封じ込めに、穏健なスンナ(スンニ)派を優遇する一方、中部と南部で多数派の反抗的なシーア派の影響力を削ぐため、クルド人の住む北部地域を加えて国境線を引くなど、植民地としての「管理のしやすさ」を優先した結果、イラクは不安定な人工国家になってしまったという。この北部地域をイラクに加える政策に、ロレンスやアーノルド・トインビーに疑問を呈したり、第1次大戦中、ドイツがイスラムを反英闘争に立ち上がらせようと、聖戦(ジハード)を訴える情報戦を仕掛けるなど、歴史的なエピソードにも興味は尽きない。
だが、何よりも感じるのは、この本の帯にもある「なぜ(米国によるイラクの)戦後復興は泥沼に陥ったのか。宗派や民族の対立、いびつな国土という混乱の種はイラク誕生時すでに蒔かれていた」という事実だ。死屍累々の歴史を読んでいると、「死者は復讐する」という言葉を思い出す。
2005年2月6日に日本でレビュー済み
ヒロインに「砂漠の女王」と呼ばれたガートルート・ベルという女性、脇役に「アラビアのロレンス」を配し「物語仕立て」で人口国家「イラク」の誕生の経緯を精緻に描いた好著。著者は、このチグリスとユーフラテスという二つの大河の流れる悠久の歴史を誇るこの土地でこれほどまでに悲劇が繰り返されるのかを知るためには「この『不可能な国家』の成り立ちに寄り添い、イラクの『原罪』は誰が、いつ、どこで、どう犯したのかを突き止めなければならない」とする。鉄血宰相ビスマルクを更迭したヴィルヘルム二世の野望、インドを押さえるイギリスの中東への勢力強化、メッカの名門ハシム家とリヤドの豪族サウド家の対立など、著者はこの地で繰り広げられた難解なパワーゲームを明快に整理し、読者に提示する。
2007年4月6日に日本でレビュー済み
「イラク建国」というタイトルでこの書を選ぶと失望するかもしれません。
私なら「“中東”誕生」とでもつけたいです。 敗戦国・旧オスマントルコ領にイギリスが線引きして、今日我々が知っている「中東」がつくられていく。そのまさにど真ん中にいた女性ベルがいかにイラクに関わったかについては、もっと知りたいくらい記述が少なく、アフガニスタンやペルシャ(イラン)、サウジアラビアなどに話題が飛び、全体としてまとまりに欠いています。 また文章も、「詩」か「古文」を読んでいるのか、と錯覚するくらい、古風な漢語に溢れていて、歴史を表す文体ではありません。自分の好きなことだけを書きつないだ、という感じで、読んでいて退屈しました。
私なら「“中東”誕生」とでもつけたいです。 敗戦国・旧オスマントルコ領にイギリスが線引きして、今日我々が知っている「中東」がつくられていく。そのまさにど真ん中にいた女性ベルがいかにイラクに関わったかについては、もっと知りたいくらい記述が少なく、アフガニスタンやペルシャ(イラン)、サウジアラビアなどに話題が飛び、全体としてまとまりに欠いています。 また文章も、「詩」か「古文」を読んでいるのか、と錯覚するくらい、古風な漢語に溢れていて、歴史を表す文体ではありません。自分の好きなことだけを書きつないだ、という感じで、読んでいて退屈しました。