82年発表の15作目。従来のポップな印象な印象から外れた人骨をモチーフにしたジャケット・デザインがちょっと不気味。とは言え前作にあたるアール・クルーとの共演盤における小編成から既成路線と言える管を含む大編成に戻って制作された作品。楽曲は本作にも参加しているマイク・ローレンス(tp)の5.以外はボブのオリジナルだが、前々作で大々的に取り上げたロッド・テンパートンとボブが共作した2.に注目だろう。おそらくは自身のリーダー作で外部のソングライターとボブが共作したのは初めてのことであり、その相手が大々的なヒット・メイカーである点は非常に興味深い。またホブはドラム・マシーンのプログラムも自身で手がけているなど聞きどころも多い。参加しているのはハービー・メイヒン(dr)、ゲイリー・キング(b)、レオナルド・ギブスJr.(per)、ジョン・ロビンソン(dr)、スティーヴ・カーン(g)、リバティー・ディビット(dr)、ダグ・ステグメイヤー(b)、デヴィッド・ブラウン他となっており、既成メンバーに加えて新顔を中心にしたメンバーによる録音を含むなど微妙な変化も含んでいる。また2.のヴォーカル・ナンバーではボブ・ザンテが歌詞を提供し、ヴォーカルとしてパティ・オースティン、ヴィヴィアン・チェリーら他、計6人が加わっている。
1.はかなりイージー・リスニングよりの曲で、エレピでメロディを演奏するスティーリー・ダンのカラオケのような仕上がり。4つ打ちのベードラ(おかずが入りまくるのでほぼ8つ打ちだが・・・)でリズム・キープしており、またシンセも多用しているためこの時代のテクノ・ポップを消化したアレンジなのかもしれないが、そうした雰囲気は良い意味でも悪い意味でもあまり感じられない。時折すり切れるかのような激しいサウンドを響かせるベースが聞き物である。2.は悲しげな笛系のインセから始るオリエンタルな雰囲気の曲。アフリカン・ヴォイス風のコーラス、ファニー/ファットなシンセ・ベースの導入、全編でフィーチャーされたシンセ・サウンドなど従来の彼のイメージとはやや異なったタイプの曲だが、それだけに新鮮である。3.はスラップ・ベースやホーンをフィーチャーした既成路線の曲だが、かなり軽めにアレンジされているように思う。ちょっぴり感じさせるラテンの風味も妙味。4.はピアノを中心にした彼の真骨頂とも言える佳曲。ホーンで厚みを加え、隠し味程度に使われたシンセと彼の作曲能力、アレンジ力の素晴らしさを満喫出来る仕上がりとなっている。6.は彼なりのテクノ・ポップだろうか?キュートかつポップな曲だが、アレンジ/和声に坂本龍一的な雰囲気が感じられるのが興味深い。個人的には裏の彼の代表曲の一つに押したい佳曲である。
彼なりに新しいサウンド/曲に挑戦しているのは特に前半で顕著に現れており、それはそれで興味深いが、そうしたアクセントもあって既成路線の曲の安堵感がより一層深まって味わいが増している。特に目立つ作品ではないが、ベースの演奏に聞きどころが満載であり、本作ならではの魅力も多い。