あとがきより;
「奇跡」というのは、めったにない稀有な出来事というのとはちがうと思う。
それは、存在していないものでさえじつはすべて存在しているのだという感じ方をうながすような、心の働きの端緒、いとぐちとなるもののことだと、わたしには思える。
日々にごくありふれた、むしろささやかな光景のなかに、わたし(たち)にとっての、取り換えようのない人生の本質はひそんでいる。
それが、物言わぬものらの声が、わたしにおしえてくれた「奇跡」の定義だ。
たとえば、小さな微笑みは「奇跡」である。
小さな微笑みが失われれば、世界はあたたかみを失うからだ。
世界というものは、おそらくそのような仕方で、いつのときも一人一人にとって存在してきたし、存在しているし、存在してゆくだろうということを考える。
「われわれは、では、何にたよればいいのか?
われわれが真なるものと、虚なるものとを弁別するのに、感覚よりたしかなものがあるだろうか?」(ルクレティウス「物の本質について」)
これが、福島に生まれ育ち、既に人生の伴侶を喪った70代の詩人によって、昨夏に発せられた声だ。
彼はまだ、ことばというもののもつ力を信じ、人間という生き物の存在を肯定しているように、私には思われる。
古臭いかもしれないが、そういった姿勢はやはり、「安心」や「安定」ということに繋がるだろう。
言ってみれば、西欧的な「救済」ではなく、東洋の「赦し」のような雰囲気。
そんなものを、私は、行間に感じるのだ。
最後に収録されたタイトル作「奇跡ーミラクルー」の終わりもこんなふう。
ただここに在るだけで、
じぶんのすべてを、損なうことなく、
誇ることなく、みずから
みごとに生きられるということの、
なんという、花の木たちの奇跡。
きみはまず風景を慈しめよ。
すべては、それからだ。
これはきっと、俳句を作ったりする方なら誰しも首肯してくださる事柄だろう。
人間というものはいつの間に、そのようにシンプルに生きることが難しくなってしまったのだろうか・・・。
表紙の、ワインのラベルにも使われていたりする、フィオレンティーノの、リュートを奏でる天使の絵も可愛い。
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奇跡―ミラクル― [詩集] 単行本 – 2013/7/6
長田弘
(著)
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本当の奇跡――ミラクルとは何?
静かにゆっくりと予みたい一冊の詩集。
新境地をひらく、詩人の新しい代表作。
著者「あとがき」より
「奇跡」というのは、めったにない稀有な出来事というのとはちがうと思う。
それは、存在していないものでさえじつはすべて存在しているのだという感じ方をうながすような、
心の働きの端緒、いとぐちとなるもののことだと、わたしには思える。
日々にごくありふれた、むしろささやかな光景のなかに、わたし(たち)にとっての、
取り換えようのない人生の本質はひそんでいる。
それが、物言わぬものらの声が、わたしにおしえてくれた「奇跡」の定義だ。
たとえば、小さな微笑みは「奇跡」である。
小さな微笑みが失われれば、世界はあたたかみを失うからだ。
世界というものは、おそらくそのような仕方で、いつのときも一人一人にとって存在してきたし、
存在しているし、存在してゆくだろうということを考える。
「われわれは、では、何にたよればいいのか? われわれが真なるものと、
虚なるものとを弁別するのに、 感覚よりたしかなものがあるだろうか?」
(ルクレティウス「物の本質について」)
静かにゆっくりと予みたい一冊の詩集。
新境地をひらく、詩人の新しい代表作。
著者「あとがき」より
「奇跡」というのは、めったにない稀有な出来事というのとはちがうと思う。
それは、存在していないものでさえじつはすべて存在しているのだという感じ方をうながすような、
心の働きの端緒、いとぐちとなるもののことだと、わたしには思える。
日々にごくありふれた、むしろささやかな光景のなかに、わたし(たち)にとっての、
取り換えようのない人生の本質はひそんでいる。
それが、物言わぬものらの声が、わたしにおしえてくれた「奇跡」の定義だ。
たとえば、小さな微笑みは「奇跡」である。
小さな微笑みが失われれば、世界はあたたかみを失うからだ。
世界というものは、おそらくそのような仕方で、いつのときも一人一人にとって存在してきたし、
存在しているし、存在してゆくだろうということを考える。
「われわれは、では、何にたよればいいのか? われわれが真なるものと、
虚なるものとを弁別するのに、 感覚よりたしかなものがあるだろうか?」
(ルクレティウス「物の本質について」)
- 本の長さ104ページ
- 言語日本語
- 出版社みすず書房
- 発売日2013/7/6
- 寸法15.8 x 1.3 x 21.8 cm
- ISBN-104622077868
- ISBN-13978-4622077862
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商品の説明
出版社からのコメント
著者について
長田弘
おさだ・ひろし
詩人。1939年福島市に生まれる。1963年早稲田大学第一文学部卒業。1971-72年北米アイオワ大学国際創作プログラム客員詩人。毎日出版文化賞(82)桑原武夫学芸賞(98)講談社出版文化賞(2000)詩歌文学館賞(09)三好達治賞(10)毎日芸術賞(14)などを受賞。2015年5月3日死去。
詩集『われら新鮮な旅人』(1965、definitive edition、みすず書房、2011)『メランコリックな怪物』(73/79)『言葉殺人事件』(77)(以上、現代詩文庫、思潮社)『深呼吸の必要』(84)『食卓一期一会』(87)(以上、晶文社)『世界は一冊の本』(94、definitive edition、みすず書房、2010)『黙されたことば』(みすず書房、97)『記憶のつくり方』(晶文社、98、朝日文庫、2012)『一日の終わりの詩集』(みすず書房、 2000) 『長田弘詩集』(自選、ハルキ文庫、03)『死者の贈り物』(みすず書房、03)『人はかつて樹だった』(みすず書房、06)『幸いなるかな本を読む人』(毎日新聞社、08)『世界はうつくしいと』(みすず書房、09)『詩ふたつ』(詩画集、画クリムト、クレヨンハウス、10)『詩の樹の下で』(みすず書房、11)『奇跡―ミラクル―』(みすず書房、13)『長田弘全詩集』(みすず書房、15)。
エッセー『詩は友人を数える方法』(講談社文芸文庫、93)『定本 私の二十世紀書店』(99)『アメリカの61の風景』(04)『知恵の悲しみの時代』(06)(以上、みすず書房)『読書からはじまる』(NHKライブラリー、06)『本を愛しなさい』(みすず書房、07)『読むことは旅をすること――私の20世紀読書紀行』(平凡社、08)『アメリカの心の歌』(1996、expanded edition、みすず書房、12)『なつかしい時間』(岩波新書、13)など。
おさだ・ひろし
詩人。1939年福島市に生まれる。1963年早稲田大学第一文学部卒業。1971-72年北米アイオワ大学国際創作プログラム客員詩人。毎日出版文化賞(82)桑原武夫学芸賞(98)講談社出版文化賞(2000)詩歌文学館賞(09)三好達治賞(10)毎日芸術賞(14)などを受賞。2015年5月3日死去。
詩集『われら新鮮な旅人』(1965、definitive edition、みすず書房、2011)『メランコリックな怪物』(73/79)『言葉殺人事件』(77)(以上、現代詩文庫、思潮社)『深呼吸の必要』(84)『食卓一期一会』(87)(以上、晶文社)『世界は一冊の本』(94、definitive edition、みすず書房、2010)『黙されたことば』(みすず書房、97)『記憶のつくり方』(晶文社、98、朝日文庫、2012)『一日の終わりの詩集』(みすず書房、 2000) 『長田弘詩集』(自選、ハルキ文庫、03)『死者の贈り物』(みすず書房、03)『人はかつて樹だった』(みすず書房、06)『幸いなるかな本を読む人』(毎日新聞社、08)『世界はうつくしいと』(みすず書房、09)『詩ふたつ』(詩画集、画クリムト、クレヨンハウス、10)『詩の樹の下で』(みすず書房、11)『奇跡―ミラクル―』(みすず書房、13)『長田弘全詩集』(みすず書房、15)。
エッセー『詩は友人を数える方法』(講談社文芸文庫、93)『定本 私の二十世紀書店』(99)『アメリカの61の風景』(04)『知恵の悲しみの時代』(06)(以上、みすず書房)『読書からはじまる』(NHKライブラリー、06)『本を愛しなさい』(みすず書房、07)『読むことは旅をすること――私の20世紀読書紀行』(平凡社、08)『アメリカの心の歌』(1996、expanded edition、みすず書房、12)『なつかしい時間』(岩波新書、13)など。
登録情報
- 出版社 : みすず書房 (2013/7/6)
- 発売日 : 2013/7/6
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 104ページ
- ISBN-10 : 4622077868
- ISBN-13 : 978-4622077862
- 寸法 : 15.8 x 1.3 x 21.8 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 311,799位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 52,829位文学・評論 (本)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2022年3月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「今」は大事だという事がわかりました。確かに、変わりない日常はありがたいものですよね。日常にいるとなかなかそのありがたみを感じにくいですが。
2016年4月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
ごく普通の、当たり前の言葉で表現されているのだけれども、心に強く印象に残る詩ばかりでした。
平和であること
それはどういうことなのか
考えさせられます。
平和であること
それはどういうことなのか
考えさせられます。
2013年12月6日に日本でレビュー済み
久しぶりに、現代口語詩を読んだ。良かった。
人がほんとうに幸福でいられるのは、おそらくは、
何かを覚えることがただ微笑だけをもたらす、
幼いときの、何一つ覚えていない、
ほんのわずかなあいだだけなのだと思う。(「幼い子は微笑む」)
得たものでなく、
失ったものの総量が、
人の人生とよばれるものの
たぶん全部なのではないだろうか。(「空色の街を歩く」)
思想は揚言のうちにない。
行蔵(こうぞう)のうちにしかない。(「the most precious thing」)
春宵、人の一生は行路ではないと、
長い帰路だったと、ふかく感じる。(「良寛さんと桃の花と夜の粥」)
と云った箴言が随所にちりばめられていて、人生の最後――失礼な言い方をお赦しください――にさしかかった詩人の知恵に感動する。
信用できない言葉が巷間にあふれる現代において、長田弘氏は、それでもなお、ことばの力を信じようとしている。ちいさなもの、目に見えないものの内に宿る大切なものをことばに定着しようとしている。そして、それが生きる希望へと繋がることを私達に語っている。
人がほんとうに幸福でいられるのは、おそらくは、
何かを覚えることがただ微笑だけをもたらす、
幼いときの、何一つ覚えていない、
ほんのわずかなあいだだけなのだと思う。(「幼い子は微笑む」)
得たものでなく、
失ったものの総量が、
人の人生とよばれるものの
たぶん全部なのではないだろうか。(「空色の街を歩く」)
思想は揚言のうちにない。
行蔵(こうぞう)のうちにしかない。(「the most precious thing」)
春宵、人の一生は行路ではないと、
長い帰路だったと、ふかく感じる。(「良寛さんと桃の花と夜の粥」)
と云った箴言が随所にちりばめられていて、人生の最後――失礼な言い方をお赦しください――にさしかかった詩人の知恵に感動する。
信用できない言葉が巷間にあふれる現代において、長田弘氏は、それでもなお、ことばの力を信じようとしている。ちいさなもの、目に見えないものの内に宿る大切なものをことばに定着しようとしている。そして、それが生きる希望へと繋がることを私達に語っている。
2014年11月12日に日本でレビュー済み
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こういう素晴らしい詩人と同時代に生きて、その言葉を聞けるという幸せ。
2015年4月3日に日本でレビュー済み
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もう少し分かり易いかと思いましたが、ちょっと難しかったです。
2014年5月27日に日本でレビュー済み
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「...君はまず風景をいつくしめ すべてはそれからだ」これを今、迷う日本人に読んでほしい。
長田弘の尊い志に、わたしも加わりたいと思う。
長田弘の尊い志に、わたしも加わりたいと思う。
2013年11月28日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
詩人の心に映じた自然、人間、社会の姿をしたためた感動的な詩集。