中篇「陰獣」を始め、江戸川乱歩の作品七篇を収めた日下三蔵・編の選集。収録作品ならびに作品初出年は、以下のとおりです。
🧤 石榴(ざくろ)──1934年(昭和九年)
🧤 押絵と旅する男──1929年(昭和四年)
🧤 目羅(めら)博士──1931年(昭和六年)、「目羅博士の不思議な犯罪」改題
🧤 人でなしの恋──1926年(大正十五年)
🧤 白昼夢──1925年(大正十四年)
🧤 踊る一寸法師──1926年(大正十五年)
🧤 陰獣──1928年(昭和三年)
殊に印象に残ったのは、「石榴」と「陰獣」の二篇。話の終盤で明らかになる二重のからくり、作中人物を利用した■■■■仕掛けが、ぞくぞくするくらい面白かったです。
この仕掛け、タイトルは言えませんけれど、アガサ・クリスティーやエラリー・クイーンの作品にも使われていて、それがとても印象的だったのが忘れられません。
それと、「陰獣」を読みながらちらっと思い浮かべた乱歩作品に、『魔術師』『吸血鬼』『化人幻戯(けにんげんぎ)』があります。あれこれ共通するアイテムが目に留まって、そこにはまた、乱歩の嗜好が反映されていて興味深いものを感じました。
「押絵と旅する男」、これはもう名品と言うしかありません。〈押絵と旅する男〉が遠眼鏡を覗くシーンは、何度読んでもわくわく、ぞくぞくさせられます。妖しくも幻想的、美しい逸品ですね。
「目羅博士」は、読むといつも連想してしまう海外の短編小説があります。エルクマン&シャトリアンの「見えない眼」。平井呈一が編んだアンソロジー、『恐怖の愉しみ』の上巻に収録されています。読み比べてみるのも一興。「あれっ!」となるかも。
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江戸川乱歩名作選 (新潮文庫) 文庫 – 2016/6/26
江戸川 乱歩
(著)
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「陰獣」「押絵と旅する男」ほか、大乱歩の魔術に浸れる全七編を収録。
見るも無残に顔が潰れた死体、変転してゆく事件像(「石榴(ざくろ)」)。
絶世の美女に心奪われた兄の想像を絶す る“運命"(「押絵と旅する男」)。
謎に満ちた探偵作家・大江春泥(しゅんでい)に脅迫される実業家夫人、彼女を恋する私は春泥の影を追跡する――後世に 語り継がれるミステリ「陰獣」。
他に「目羅博士」「人でなしの恋」「白昼夢」「踊る一寸法師」を収録。
大乱歩の魔力を存分に味わえる厳選全7編。
目次
石榴
押絵と旅する男
目羅博士
人でなしの恋
白昼夢
踊る一寸法師
陰獣
江戸川乱歩自作解説
解説 日下三蔵
本文より
彼女の項(うなじ)には、おそらく背中の方まで深く、赤痣(あかあざ)のようなミミズ脹(ば)れができていたのだ。それは生れつきの痣のようにも見えたし、又、そうではなくて、最近できた傷痕のようにも思われた。青白い滑らかな皮膚の上に、恰好のいいなよなよとした項(うなじ)の上に、赤黒い毛糸を這わせたように見えるそのミミズ脹れが、その残酷味が、不思議にもエロティックな感じを与えた。それを見ると、今まで夢のように思われた彼女の美しさが、俄かに生々しい現実味を伴なって、私に迫ってくるのであった。(「陰獣」)
著者の言葉
横溝君(注・横溝正史=作家、当時は「新青年」編集長)はその私にどうしても書かせようとして、京都や名古屋の私の旅先へ追っかけてきたものだが、その或る日、名古屋の大須ホテルで横溝君と枕をならべて寝物語をしていて(戦前には横溝君とよく寝物語をしたものである)、実は一つ書いたのだが、どうしても発表する気になれないので、いま破り捨ててきたところだといって、横溝君をくやしがらせたことがある。(中略)
それから一年半ののち、同じ題材で書いたのが、ここに収めた作で、これは私の短篇のうちでも最も気に入っているものの一つである。(「押絵と旅する男」について)
江戸川乱歩(1894-1965)
本名平井太郎。三重県名張市生れ。早稲田大学政経学部卒。日本における本格推理、ホラー小説の草分け。貿易会社勤務を始め、古本商、新聞記者など様々な職業をへた後、1923(大正12)年雑誌「新青年」に「二銭銅貨」を発表して作家に。主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。1947年探偵作家クラブ(後の日本推理作家協会)の初代会長となり、1954年江戸川乱歩賞を設け、1957年からは雑誌「宝石」の編集にたずさわるなど、新人作家の育成に力をつくした。
見るも無残に顔が潰れた死体、変転してゆく事件像(「石榴(ざくろ)」)。
絶世の美女に心奪われた兄の想像を絶す る“運命"(「押絵と旅する男」)。
謎に満ちた探偵作家・大江春泥(しゅんでい)に脅迫される実業家夫人、彼女を恋する私は春泥の影を追跡する――後世に 語り継がれるミステリ「陰獣」。
他に「目羅博士」「人でなしの恋」「白昼夢」「踊る一寸法師」を収録。
大乱歩の魔力を存分に味わえる厳選全7編。
目次
石榴
押絵と旅する男
目羅博士
人でなしの恋
白昼夢
踊る一寸法師
陰獣
江戸川乱歩自作解説
解説 日下三蔵
本文より
彼女の項(うなじ)には、おそらく背中の方まで深く、赤痣(あかあざ)のようなミミズ脹(ば)れができていたのだ。それは生れつきの痣のようにも見えたし、又、そうではなくて、最近できた傷痕のようにも思われた。青白い滑らかな皮膚の上に、恰好のいいなよなよとした項(うなじ)の上に、赤黒い毛糸を這わせたように見えるそのミミズ脹れが、その残酷味が、不思議にもエロティックな感じを与えた。それを見ると、今まで夢のように思われた彼女の美しさが、俄かに生々しい現実味を伴なって、私に迫ってくるのであった。(「陰獣」)
著者の言葉
横溝君(注・横溝正史=作家、当時は「新青年」編集長)はその私にどうしても書かせようとして、京都や名古屋の私の旅先へ追っかけてきたものだが、その或る日、名古屋の大須ホテルで横溝君と枕をならべて寝物語をしていて(戦前には横溝君とよく寝物語をしたものである)、実は一つ書いたのだが、どうしても発表する気になれないので、いま破り捨ててきたところだといって、横溝君をくやしがらせたことがある。(中略)
それから一年半ののち、同じ題材で書いたのが、ここに収めた作で、これは私の短篇のうちでも最も気に入っているものの一つである。(「押絵と旅する男」について)
江戸川乱歩(1894-1965)
本名平井太郎。三重県名張市生れ。早稲田大学政経学部卒。日本における本格推理、ホラー小説の草分け。貿易会社勤務を始め、古本商、新聞記者など様々な職業をへた後、1923(大正12)年雑誌「新青年」に「二銭銅貨」を発表して作家に。主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。1947年探偵作家クラブ(後の日本推理作家協会)の初代会長となり、1954年江戸川乱歩賞を設け、1957年からは雑誌「宝石」の編集にたずさわるなど、新人作家の育成に力をつくした。
- 本の長さ384ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2016/6/26
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-10410114902X
- ISBN-13978-4101149028
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登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2016/6/26)
- 発売日 : 2016/6/26
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 384ページ
- ISBN-10 : 410114902X
- ISBN-13 : 978-4101149028
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 48,559位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1894年三重県生まれ。早稲田大学卒業。雑誌編集、新聞記者などを経て、1923年「二銭銅貨」でデビュー。以後、「D坂の殺人事件」などの探偵小説を 次々発表。怪奇小説、幻想小説にも優れた作品が多い。代表的なシリーズに、「怪人二十面相」「少年探偵団」などがある。日本の小説界に多大なる業績を残 す。65年没(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 大槻ケンヂが語る江戸川乱歩 私のこだわり人物伝 (ISBN-13:978-4041847213)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
-
トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年11月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2023年4月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
何年か前に傑作集を読んだことがあり、これも購入してみました。気になるタイトルは『押絵と旅する男』『陰獣』ですかね。乱歩の代表作ならほかの本でも読めますが、この文庫なら昔ながらの編集で安心感があります。これから楽しんで読みたいと思います。
2023年1月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
怪奇ミステリーとしてはもちろん、大正・昭和初期の時代を読むのも面白い。昭和時代からかつての凌雲閣を振り返る「押し絵と旅する男」、当時の夜の暗さが絶妙なトリックとなる「目羅博士」等々。今よりも夜が暗く曖昧で輪郭も定かではなかったからこそ起こる怪奇な現象の数々は、現代でこそより際立つのではないだろうか。
2023年12月17日に日本でレビュー済み
新潮文庫には『江戸川乱歩傑作選』というロングセラーがあって、編集部から「乱歩ベストの二冊目を編んでくれ」と依頼を受け、ミステリ研究家の日下三蔵氏が7編を厳選。2016年に上梓されたのが本書である。わたしはこのうち4編はすでに読んだことがあり、初読は『石榴』『目羅博士』『人でなしの恋』の3編だった。
いずれも大正末期から昭和初期に発表された作品ばかりである。この時代はいわゆる大正ロマンと呼ばれる、退廃的な文化・風俗の爛熟期だったろう。今読むとなかなかどうして不道徳な作品ばかりで、いかにも乱歩らしさにあふれている。
とはいいながら、まあこんなもんかという気がしないでもない。読むべき名作は、傑作選のほうに網羅されているからだ。本書は、それで足りない場合はどうぞ、というボーナストラックみたいなもの。なんで今ごろ? という気もするが、解説によると2016年は乱歩の著作権が切れたタイミングで、各出版社が自由に乱歩作品を出版できるようになったのだとか。なるほど。
乱歩の美質は、何をおいても文章の読みやすさにあると思う。声に出して読んでみるとよくわかるが、どことなく講談っぽくて、すこぶる調子がよい。これも今日なお読み継がれている大きな理由になっていると思う。
いずれも大正末期から昭和初期に発表された作品ばかりである。この時代はいわゆる大正ロマンと呼ばれる、退廃的な文化・風俗の爛熟期だったろう。今読むとなかなかどうして不道徳な作品ばかりで、いかにも乱歩らしさにあふれている。
とはいいながら、まあこんなもんかという気がしないでもない。読むべき名作は、傑作選のほうに網羅されているからだ。本書は、それで足りない場合はどうぞ、というボーナストラックみたいなもの。なんで今ごろ? という気もするが、解説によると2016年は乱歩の著作権が切れたタイミングで、各出版社が自由に乱歩作品を出版できるようになったのだとか。なるほど。
乱歩の美質は、何をおいても文章の読みやすさにあると思う。声に出して読んでみるとよくわかるが、どことなく講談っぽくて、すこぶる調子がよい。これも今日なお読み継がれている大きな理由になっていると思う。
2019年9月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
江戸川乱歩がこんなに面白いとは思いませんでした。明智小五郎の少年向け小説しか読んだことがなかったので、奥の深さにはまっています。
2016年7月7日に日本でレビュー済み
新潮文庫に於いてロングセラーとして親しまれてきた『江戸川乱歩傑作選』と対を成す、乱歩のbest of bestと言うべき一冊。
没後50年の著作権消滅を経て濫造されている乱歩作品の出版には敬意や畏怖の念が欠けているものが大半で辟易するが、本書は全くの別物だ。
執筆された時代を考慮すれば驚異的なメタミステリの嚆矢であり乱歩の本格探偵小説系統の最高峰「陰獣」や日本幻想文学史上屈指の名編「押絵と旅する男」といった傑作に加え、結末も余韻深き奇妙な味わいの「目羅博士」、異形の純愛小説「人でなしの恋」など日下三蔵氏による編集には文句の付けようもない、素晴らしいセレクションだ。
没後50年の著作権消滅を経て濫造されている乱歩作品の出版には敬意や畏怖の念が欠けているものが大半で辟易するが、本書は全くの別物だ。
執筆された時代を考慮すれば驚異的なメタミステリの嚆矢であり乱歩の本格探偵小説系統の最高峰「陰獣」や日本幻想文学史上屈指の名編「押絵と旅する男」といった傑作に加え、結末も余韻深き奇妙な味わいの「目羅博士」、異形の純愛小説「人でなしの恋」など日下三蔵氏による編集には文句の付けようもない、素晴らしいセレクションだ。
2018年10月8日に日本でレビュー済み
表紙が似ている『傑作選』に負けず劣らず、どの短編も引き込まれます。
編者の解説を読むと、「石榴」と「陰獣」が中編の本格ミステリーで、
その間に“怪奇幻想系”の短編をいくつかサンドイッチするような構成にしている、とのこと。
個人的には短編の“怪奇幻想系”が好きで、特に「押絵と旅する男」「白昼夢」「踊る一寸法師」が気に入りました。
昼夜さまざまな光景の書き分けが上手い。
編者の解説を読むと、「石榴」と「陰獣」が中編の本格ミステリーで、
その間に“怪奇幻想系”の短編をいくつかサンドイッチするような構成にしている、とのこと。
個人的には短編の“怪奇幻想系”が好きで、特に「押絵と旅する男」「白昼夢」「踊る一寸法師」が気に入りました。
昼夜さまざまな光景の書き分けが上手い。
2016年9月25日に日本でレビュー済み
6時間ほどで読めました。
どの短編も面白いです。
読者の読みを先読みする創作力には舌を巻きます。
どんでん返しが2回も3回も起きてあっというラストがあり短編といえど読み応えがありました。
また、グロテスクの中にもユーモアがあったり、空想的ですがロマンチックさがあるなど、
作品に深みがあり、このような文章を書ける人は現代にはとてもいないと思います。
何かの作品の元ネタにでもなりそうな作品で、影響を受ける人も多いでしょう。
また、電車なども出てくるので、どこか現代的な作品風景だったりするので、古臭さが余りありませんでした。
どの短編も面白いです。
読者の読みを先読みする創作力には舌を巻きます。
どんでん返しが2回も3回も起きてあっというラストがあり短編といえど読み応えがありました。
また、グロテスクの中にもユーモアがあったり、空想的ですがロマンチックさがあるなど、
作品に深みがあり、このような文章を書ける人は現代にはとてもいないと思います。
何かの作品の元ネタにでもなりそうな作品で、影響を受ける人も多いでしょう。
また、電車なども出てくるので、どこか現代的な作品風景だったりするので、古臭さが余りありませんでした。