・エッセイという名目で書かれている作品ですが、
現実感があり、同時に夢のように穏やかなひとつの物語作品
として読むことができる作品です。
・もちろんエッセイとして現実のことを書いているので、他の江國さんの作品に
比べて、設定に嘘や無理な奇抜さがないため、イメージがわきやすく、
それでいながら、物語めいた音や感覚がふんだんに伝わってくる作品です。
・本書から皆さまが感じているような孤独さや、切なさは、
物書きの孤独なのだろうかと個人的に感じるところがありました。
美味しい音楽を沢山聞いて、過去の自分や景色をみつめ、愛犬と
語らいながら、文章を紡いでいく。そんな生活からくる孤独、それでも
文中にあるような暗くはない、立派な孤独なのかなと思うところがありました。
・江國さんの作品のなかで、一番好きな作品です。
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雨はコーラがのめない (新潮文庫) 文庫 – 2007/6/28
江國 香織
(著)
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はじめて雨に会った日のことは、忘れられない。凍えそうに寒い、十二月の、雨の日だった。濃い栗色の巻き毛をした雨は、オスのアメリカン・コッカスパニエル。私たちは、よく一緒に音楽を聴いて、二人だけのみちたりた時間を過ごす。もちろん、散歩にも行くし、玩具で遊んだりもするけど。甘えたがりの愛犬との特別な日常や、過去の記憶を呼び覚ます音楽について、冴え冴えと綴った好エッセイ集。
- 本の長さ165ページ
- 言語日本語
- 出版社新潮社
- 発売日2007/6/28
- 寸法14.8 x 10.5 x 2 cm
- ISBN-104101339244
- ISBN-13978-4101339245
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出版社より
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きらきらひかる | こうばしい日々 | つめたいよるに | ホリー・ガーデン | 流しのしたの骨 | すいかの匂い | |
カスタマーレビュー |
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5つ星のうち3.6
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価格 | ¥572¥572 | ¥572¥572 | ¥649¥649 | ¥693¥693 | ¥693¥693 | ¥605¥605 |
【新潮文庫】江國香織 作品 | 二人は全てを許し合って結婚した、筈だった……。妻はアル中、夫はホモ。セックスレスの奇妙な新婚夫婦を軸に描く、素敵な愛の物語。 | 恋に遊びに、ぼくはけっこう忙しい。11歳の男の子の日常を綴った表題作など、ピュアで素敵なボーイズ&ガールズを描く中編二編。〈坪田譲治文学賞受賞〉 | 愛犬の死の翌日、一人の少年と巡り合った女の子の不思議な一日を描く「デューク」、デビュー作「桃子」など、21編を収録した短編集。 | 果歩と静枝は幼なじみ。二人はいつも一緒だった。30歳を目前にしたいまでも……。対照的な女性二人が織りなす、心洗われる長編小説。 | 夜の散歩が習慣の19歳の私と、タイプの違う二人の姉、小さな弟、家族想いの両親。少し奇妙な家族の半年を描く、静かで心地よい物語。 | バニラアイスの木べらの味、おはじきの音、すいかの匂い。無防備に心に織りこまれてしまった事ども。11人の少女の、夏の記憶の物語。 |
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ぼくの小鳥ちゃん | 神様のボート | すみれの花の砂糖漬け | 東京タワー | 号泣する準備はできていた | ぬるい眠り | |
カスタマーレビュー |
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5つ星のうち3.9
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価格 | ¥572¥572 | ¥649¥649 | ¥693¥693 | ¥781¥781 | ¥605¥605 | ¥737¥737 |
雪の朝、ぼくの部屋に鳥ちゃんが舞いこんだ。ぼくの彼女をちょっと意識している小鳥ちゃん。少し切なくて幸福な、冬の日々の物語。〈路傍の石文学賞受賞〉 | 消えたパパを待って、あたしとママはずっと旅がらす…。恋愛の静かな狂気に囚われた母と、その傍らで成長していく娘の遥かな物語。 | 大人になって得た自由とよろこび。けれど少女の頃と変わらぬ孤独とかなしみ。言葉によって勇ましく軽やかな、著者の初の詩集。 | 恋はするものじゃなくて、おちるもの──。いつか、きっと、突然に……。東京タワーが見える街で繰り広げられる狂おしい恋愛模様。 | 孤独を真正面から引き受け、女たちは少しでも前進しようと静かに歩き続ける。いつか号泣するとわかっていても。直木賞受賞短篇集。 | 恋人と別れた痛手に押し潰されそうだった。大学の夏休み、雛子は終わった恋を埋葬した。表題作など全9編を収録した文庫オリジナル。 |
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雨はコーラがのめない | ウエハースの椅子 | がらくた | 雪だるまの雪子ちゃん | 犬とハモニカ | ちょうちんそで | |
カスタマーレビュー |
5つ星のうち4.3
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5つ星のうち3.9
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価格 | ¥539¥539 | ¥572¥572 | ¥693¥693 | ¥825¥825 | ¥605¥605 | ¥539¥539 |
雨と私は、よく一緒に音楽を聴いて、二人だけのみちたりた時間を過ごす。愛犬と音楽に彩られた人気作家の日常を綴るエッセイ集。 | あなたに出会ったとき、私はもう恋をしていた。出会ったとき、あなたはすでに幸福な家庭を持っていた。恋することの絶望を描く傑作。 | 海外のリゾートで出会った45歳の柊子と15歳の美しい少女・美海。再会した東京で、夫を交え複雑に絡み合う人間関係を描く恋愛小説。〈島清恋愛文学賞受賞〉 | ある豪雪の日、雪子ちゃんは地上に舞い降りたのでした。野生の雪だるまは好奇心旺盛。「とけちゃう前に」大冒険。カラー銅版画収録。 | 恋をしても結婚しても、わたしたちは、孤独だ。川端賞受賞の表題作を始め、あたたかい淋しさに十全に満たされる、六つの旅路。〈川端康成文学賞受賞〉 | 雛子は「架空の妹」と生きる。隣人も息子も「現実の妹」も、遠ざけて──。それぞれの謎が繙かれ、織り成される、記者と愛の物語。 |
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2007/6/28)
- 発売日 : 2007/6/28
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 165ページ
- ISBN-10 : 4101339244
- ISBN-13 : 978-4101339245
- 寸法 : 14.8 x 10.5 x 2 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 24,796位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 614位新潮文庫
- - 869位エッセー・随筆 (本)
- - 3,812位ビジネス・経済 (本)
- カスタマーレビュー:
著者について
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1964年東京生まれ。1987年『草之丞の話』で毎日新聞社主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本 周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞。「409ラドクリフ」(1989年フェミナ賞)、『こうばしい日々』(1991年産経 児童出版文化賞、1992年坪田譲治文学賞)、『きらきらひかる』(1992年紫式部文学賞)、『ぼくの小鳥ちゃん』(1999年路傍の石文学賞)、『が らくた』(2007年島清恋愛文学賞)など作品多数(「BOOK著者紹介情報」より:本データは『 真昼なのに昏い部屋 (ISBN-13:978-4062161053)』が刊行された当時に掲載されていたものです)
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2007年8月9日に日本でレビュー済み
書店で平積みされていて、
最初タイトルを見て
「雨がコーラを飲む・・?」と
不思議に思い、
購入致しました。
そして、読み始めてみると、
これが面白い!!
夜布団の中で、
睡魔に襲われながらも
ガツガツと読んでしまいました(笑)
著者である江國さんと
その愛犬『雨』の
滑稽で平凡な
でもどこか憧れてしまうような、
そんな不思議な空気感が
この本にはあります。
作中で扱われている内容で
江國さんの好きな歌などが
多く取り扱われているのですが、
普段洋楽をあまり聴かない私が、
ついつい洋楽を聴きたくなってしまいましたw
最初タイトルを見て
「雨がコーラを飲む・・?」と
不思議に思い、
購入致しました。
そして、読み始めてみると、
これが面白い!!
夜布団の中で、
睡魔に襲われながらも
ガツガツと読んでしまいました(笑)
著者である江國さんと
その愛犬『雨』の
滑稽で平凡な
でもどこか憧れてしまうような、
そんな不思議な空気感が
この本にはあります。
作中で扱われている内容で
江國さんの好きな歌などが
多く取り扱われているのですが、
普段洋楽をあまり聴かない私が、
ついつい洋楽を聴きたくなってしまいましたw
2015年11月22日に日本でレビュー済み
本書は2004年に出版された江國香織さんの著書『雨はコーラがのめない』です。初出はウェブ連載の記事に加筆と書き下ろしを加えたものです。それぞれが掌編仕立てになっていて、再読時にはランダムにお好みのタイトルから個別にでも読んでいけます。
雨とは彼女の飼い犬である四角い顔をした毛むくじゃらな茶色いアメリカンコッカスパニエルのこと。決して吠えないが現金な性格で、散歩に行くと茂み探索に熱心で、その道すがら色々なものをくっつけてしまうための家で行うブラッシングが大好きで、大の甘党、エンヤは苦手だけどビリー・ホリデーは好きだというそんな楽しくて愛らしくて切ない愛犬の、雨との日常の他愛のない出来事を絡めて綴られる、作家ならではの鋭敏な感性で彼女の好きな音楽が空気のように日々の彼是を演出しています。一般的な愛犬家や江國さんの愛読者だけでなく、日頃からジャンルを問わずに様々な音楽に触れて心をスッキリさせたり暖めたりする掛け替えのない愉悦を日常の隙間に欠かさず作っている方には最高の随筆となるはずです。
表紙のカバーには本書に所収の楽曲が記載されています。リトル・ガール・ブルーやメイド・イン・ヘブン、アイ・ワズ・ボーン・トゥー・ラブ・ユー、ジーズ・フーリッシュ・シングズ、オール・オブ・ミー等の、音楽の強者ならばこれらのタイトルを見ただけでクイズ形式的にすらすらとアーティスト名が言い当てられるのかもしれませんが、ざっと名前が登場するだけでもカーリー・サイモン、エリザベス・シュワルツコップ、クイーン、ハイポジ、メリー・コクラン、シンニード・オコナー、尾崎紀世彦、スティング、スザンヌ・ヴェガ、マドンナ、スリー・ドッグ・ナイト、アリコ(山下有子)、シンプリー・レッド、ケニー・G、門あさ美、ジョージ・マーティン、スウィング・アウト・シスター、ビリー・ジョエル、リサ・ローブ、リッキー・リー・ジョーンズ、マリアンヌ・フェイスフル、UB40、ペット・ショップ・ボーイズ、ペイリー・ブラザース、世良公則、ステイシー・ケント、クミコ、リサ・ジェルマーノ、CCR、ブロンディ、ケリ・ノーブルと彼女が触れるアルバムのアーティストは多岐に及んでいます。ボーナストラック的に音楽の話の登場しない章もありますが、それもまた面白い趣向ですね。
「音楽も、言葉には依存しない。歌詞がいい、というのはいわば付加価値であって、音楽としての力には、それは関係のないことだ」という考え方を前提に、愛犬に語りかける音楽好きな著者の文章がまた良かったりします。ビートルズに対して「音楽への愛をばらまいた功罪っていうかね、それはもう好き嫌いを越えて、感動的としか言えない」やペット・ショップ・ボーイズへの「聴く者を傷つけまいとするかのような、途方もない礼儀正しさがある」等の読ませる部分も登場して、作家ならではの豊穣な想像力と音楽ファンの感性で簡潔にアーティストの個性を巧みに愛犬との穏やかな日常に織り込んでいます。
本書を通して、著者が大変に幅広くそして深く音楽が生活に関与していることを実感します。この点は「(昔好きだった男たちの)記憶と結びついた音楽も、平気で聴けてしまう。あるのは愉快ななつかしさだけで、せつなさとか、秘密めいた痛みとかはない」というような著者自身の性格的なものが極めて大きいと思います。このような力を抜いてさりげなく随筆に伏線化及び結晶化させる手腕が素晴らしいです。
当初の彼女はその気持ちの浮き沈みを音楽から様々に助けられる場面が多かったのが次第に愛犬から助けられるウエイトが高まって行くところがより強固に絆を結びつけていると感じられます。「世間は厳しいが、雨は私が守る」の言葉が思わず出てくるあたり本当に良い飼い主の見本のような方です。より考えさせられる「室内で動物を飼うということは、人間の都合と動物の野性とのせめぎあいなのだ」とする峻厳な行もあります。どれだけ親しい間柄といっても、実際にペットとの暮らしの中で見えてくる、実は同じ音楽の流れる時間の中で「一緒にいても、全然別の世界を生きているのかもしれない」という深遠で埋めがたい、根源的な断絶感も綴られています。やはり書き下ろされた最終章の存在が自然に全体を引き締めています。
内容的には特に古びることのない素敵な非常に読みやすい書物なので、気になった方はぜひ本書を手にとってみてください。音楽は思春期にどのフォーマットから聴くようになったかが意外に大きい要素を占めるもので、著者のようにレコードを聴いていた時代にはアルバムタイトルや曲名をすべて憶えていたのに、CDを聴くようになってからは殆んどジャケットの色彩で朧気に記憶しているだけだという説明に頷ける方もきっと楽しめると思います。
もし古書でお求めになる場合は、どちらかというと個人的には後の文庫版よりも当初の単行本の風合いが好きで、恰も自家製の詩集のように軽くて手に取りやすい赭色のシックな葛西薫さんによる装丁のデザインは普遍性があって優れているように思われます。
雨とは彼女の飼い犬である四角い顔をした毛むくじゃらな茶色いアメリカンコッカスパニエルのこと。決して吠えないが現金な性格で、散歩に行くと茂み探索に熱心で、その道すがら色々なものをくっつけてしまうための家で行うブラッシングが大好きで、大の甘党、エンヤは苦手だけどビリー・ホリデーは好きだというそんな楽しくて愛らしくて切ない愛犬の、雨との日常の他愛のない出来事を絡めて綴られる、作家ならではの鋭敏な感性で彼女の好きな音楽が空気のように日々の彼是を演出しています。一般的な愛犬家や江國さんの愛読者だけでなく、日頃からジャンルを問わずに様々な音楽に触れて心をスッキリさせたり暖めたりする掛け替えのない愉悦を日常の隙間に欠かさず作っている方には最高の随筆となるはずです。
表紙のカバーには本書に所収の楽曲が記載されています。リトル・ガール・ブルーやメイド・イン・ヘブン、アイ・ワズ・ボーン・トゥー・ラブ・ユー、ジーズ・フーリッシュ・シングズ、オール・オブ・ミー等の、音楽の強者ならばこれらのタイトルを見ただけでクイズ形式的にすらすらとアーティスト名が言い当てられるのかもしれませんが、ざっと名前が登場するだけでもカーリー・サイモン、エリザベス・シュワルツコップ、クイーン、ハイポジ、メリー・コクラン、シンニード・オコナー、尾崎紀世彦、スティング、スザンヌ・ヴェガ、マドンナ、スリー・ドッグ・ナイト、アリコ(山下有子)、シンプリー・レッド、ケニー・G、門あさ美、ジョージ・マーティン、スウィング・アウト・シスター、ビリー・ジョエル、リサ・ローブ、リッキー・リー・ジョーンズ、マリアンヌ・フェイスフル、UB40、ペット・ショップ・ボーイズ、ペイリー・ブラザース、世良公則、ステイシー・ケント、クミコ、リサ・ジェルマーノ、CCR、ブロンディ、ケリ・ノーブルと彼女が触れるアルバムのアーティストは多岐に及んでいます。ボーナストラック的に音楽の話の登場しない章もありますが、それもまた面白い趣向ですね。
「音楽も、言葉には依存しない。歌詞がいい、というのはいわば付加価値であって、音楽としての力には、それは関係のないことだ」という考え方を前提に、愛犬に語りかける音楽好きな著者の文章がまた良かったりします。ビートルズに対して「音楽への愛をばらまいた功罪っていうかね、それはもう好き嫌いを越えて、感動的としか言えない」やペット・ショップ・ボーイズへの「聴く者を傷つけまいとするかのような、途方もない礼儀正しさがある」等の読ませる部分も登場して、作家ならではの豊穣な想像力と音楽ファンの感性で簡潔にアーティストの個性を巧みに愛犬との穏やかな日常に織り込んでいます。
本書を通して、著者が大変に幅広くそして深く音楽が生活に関与していることを実感します。この点は「(昔好きだった男たちの)記憶と結びついた音楽も、平気で聴けてしまう。あるのは愉快ななつかしさだけで、せつなさとか、秘密めいた痛みとかはない」というような著者自身の性格的なものが極めて大きいと思います。このような力を抜いてさりげなく随筆に伏線化及び結晶化させる手腕が素晴らしいです。
当初の彼女はその気持ちの浮き沈みを音楽から様々に助けられる場面が多かったのが次第に愛犬から助けられるウエイトが高まって行くところがより強固に絆を結びつけていると感じられます。「世間は厳しいが、雨は私が守る」の言葉が思わず出てくるあたり本当に良い飼い主の見本のような方です。より考えさせられる「室内で動物を飼うということは、人間の都合と動物の野性とのせめぎあいなのだ」とする峻厳な行もあります。どれだけ親しい間柄といっても、実際にペットとの暮らしの中で見えてくる、実は同じ音楽の流れる時間の中で「一緒にいても、全然別の世界を生きているのかもしれない」という深遠で埋めがたい、根源的な断絶感も綴られています。やはり書き下ろされた最終章の存在が自然に全体を引き締めています。
内容的には特に古びることのない素敵な非常に読みやすい書物なので、気になった方はぜひ本書を手にとってみてください。音楽は思春期にどのフォーマットから聴くようになったかが意外に大きい要素を占めるもので、著者のようにレコードを聴いていた時代にはアルバムタイトルや曲名をすべて憶えていたのに、CDを聴くようになってからは殆んどジャケットの色彩で朧気に記憶しているだけだという説明に頷ける方もきっと楽しめると思います。
もし古書でお求めになる場合は、どちらかというと個人的には後の文庫版よりも当初の単行本の風合いが好きで、恰も自家製の詩集のように軽くて手に取りやすい赭色のシックな葛西薫さんによる装丁のデザインは普遍性があって優れているように思われます。
2021年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
タイトルからして個人的には興味をそそられます。でも、好みが分かれるのかもしれませんね。心地よい文章です。
2004年7月2日に日本でレビュー済み
実はこの本は、私が初めて手にとった、
江國 香織さんの本だったりします。
そんなに有名な方だとは知らずに読んでいましたが、
たった数行で本の中に吸い込まれました。
一体、雨ってなんだろう?と思いながら、
ページをめくり、
彼女の目を通して語られる雨は、
人間のように気持ちを語り、
愛らしい。
本当に愛しくて仕方ないんだと、
読みながら実感する。
いつしか、自分も雨のことが大好きになっていた。
大好きな雨と、
雨との生活の中にいつもある音楽。
まるで口にして語るように、
自然な文章で話は進んでいく。
奇麗な言葉、美しい雨。
心を乗せて流れる音楽。
気持ちが溢れだす。
本当に大好きな本。
本を普段読まない人でも、
簡単に読めてしまうと思う。
極上の時間をどうぞ。
江國 香織さんの本だったりします。
そんなに有名な方だとは知らずに読んでいましたが、
たった数行で本の中に吸い込まれました。
一体、雨ってなんだろう?と思いながら、
ページをめくり、
彼女の目を通して語られる雨は、
人間のように気持ちを語り、
愛らしい。
本当に愛しくて仕方ないんだと、
読みながら実感する。
いつしか、自分も雨のことが大好きになっていた。
大好きな雨と、
雨との生活の中にいつもある音楽。
まるで口にして語るように、
自然な文章で話は進んでいく。
奇麗な言葉、美しい雨。
心を乗せて流れる音楽。
気持ちが溢れだす。
本当に大好きな本。
本を普段読まない人でも、
簡単に読めてしまうと思う。
極上の時間をどうぞ。
2008年2月29日に日本でレビュー済み
バッグの中に入れて
いつも持ち歩いている本。
「雨」は著者といっしょにくらしているアメリカン・コッカスパニエルの名前。
音楽にまつわるエッセイなのに、それを超越して
著者と雨の生活空間に一緒にいるような気さえしてくる。
なんだか泣きたくなるのは、きっとこのくらしが永遠ではないのがわかっているから。
雨は決してペットではない。家族である。
いつも持ち歩いている本。
「雨」は著者といっしょにくらしているアメリカン・コッカスパニエルの名前。
音楽にまつわるエッセイなのに、それを超越して
著者と雨の生活空間に一緒にいるような気さえしてくる。
なんだか泣きたくなるのは、きっとこのくらしが永遠ではないのがわかっているから。
雨は決してペットではない。家族である。
2007年7月24日に日本でレビュー済み
このエッセイに出てくる雨と彼女の距離はとても近い。
毎日を一緒に過ごし、言葉は通じなくともコミュニケーションをして、快不快をも共有する。
そしてなによりも音楽。
そう、音楽は空間と時間を彩り、気分さえも変えてくれる。
その音楽をも共有できる雨と彼女の関係はすばらしい。
出てくる音楽は知らないものであっても、彼女がなぜ好きなのか、その好きはどんな気分のときに効果を発揮するのかを教えてくれるので、私も聞いててみようかなと思う。
猫と暮らしたことはあっても、犬と暮らしたことはないので、この距離感はよくわからないけれど、パートナーとしての関係は本当にすばらしいと思うのだ。
相変わらず、ウェットな湿度を感じる関係性をさらりと書いてしまう。
これが鼻につくこともたまにあるんだけどね。やっぱりいいよね。
毎日を一緒に過ごし、言葉は通じなくともコミュニケーションをして、快不快をも共有する。
そしてなによりも音楽。
そう、音楽は空間と時間を彩り、気分さえも変えてくれる。
その音楽をも共有できる雨と彼女の関係はすばらしい。
出てくる音楽は知らないものであっても、彼女がなぜ好きなのか、その好きはどんな気分のときに効果を発揮するのかを教えてくれるので、私も聞いててみようかなと思う。
猫と暮らしたことはあっても、犬と暮らしたことはないので、この距離感はよくわからないけれど、パートナーとしての関係は本当にすばらしいと思うのだ。
相変わらず、ウェットな湿度を感じる関係性をさらりと書いてしまう。
これが鼻につくこともたまにあるんだけどね。やっぱりいいよね。
2007年9月28日に日本でレビュー済み
江國氏と、愛犬「雨」の生活を綴ったエッセイ。
淋しさなんて世界とおんなじなんだから。いつもまわりじゅうにただあるんだから。(p61)
この人の文章は、すごく美しい。でも、どこかに諦めに似た絶望感を
下敷きにしている感じがある。
美しい破綻っていうのだろうか。
だから、薄っぺらくない切さなさが浸み込んでくる。
淋しさなんて世界とおんなじなんだから。いつもまわりじゅうにただあるんだから。(p61)
この人の文章は、すごく美しい。でも、どこかに諦めに似た絶望感を
下敷きにしている感じがある。
美しい破綻っていうのだろうか。
だから、薄っぺらくない切さなさが浸み込んでくる。