断言するが、これ以上に「書き殴った」という表現が似合う小説は存在しない。何も雑に書かれているとか、ストーリーが練られていないとか、そういう批判をしているのではない。この小説から溢れ続けるエネルギーは、勢い任せで筆の向くまま、全力でどこまでも駆け抜けていく、一言でいうなら「書き殴り」の執筆方法なくしてはありえないのだ。作者ジャック・ケルアックはタイプライター用紙を何枚も何枚も貼り繋げ、さながら長大な巻物のような状態にして執筆に挑んだという。用紙交換の際に勢いが途切れるのを嫌ったためだ。それでは旅の勢いが損なわれ、熱が冷めた別物になってしまう。彼は物語の求める手段を用い、自らの分身に等しいこの小説を書き上げたのだ。
この小説の語り手はジャック・ケルアックの分身サル・パラダイスだが、主人公はディーン・モリアーティをおいて他にはいない。気の赴くままにアメリカ中を駆け巡り、何処にいてもどんちゃん騒ぎを巻き起こすディーンの姿は痛々しいまでに享楽的だ。彼はまるで命がかかっているかのように喚き、暴れ、笑う。語り手のサルや彼の友人たち(バロウズやギンズバーグたち)はみなビートニクの作家として、そしてビート・ジェネレーションの観察者として作品とその名を残したが、ディーン(ニール・キャサディ)は作家ではない。彼は作品を生み出す代わりに、自らの生き様でビートを表現してみせたパフォーマーなのだ。彼こそがビートの熱源であり、震源であり、根源だった。しかし彼は自ら見える形で発信する力を持たない。だから彼はサルというカメラを必要とした。サルもまた、ディーンという無二の被写体を必要とした。しかし彼らの力関係は均衡していない。物事を前に進めるのはディーンだが、サルがディーンから目を離したとき、彼の存在は我々には知覚できない。サルなくしてディーンは存在できないが、ディーンなくしてもサルは存在できる。この歪さこそが彼らの友情を特別なものにしていた。
ゆえにラストシーン、サルとディーンが袂を分かつ場面では、単なる友情の終わりには到底留まらない寂寞の想いが沸き起こる。それは一つの時代の終焉であり、一人の人間の実質的な死なのだから。
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オン・ザ・ロード (河出文庫 ケ 1-3) 文庫 – イラスト付き, 2010/6/4
英語版
ジャック・ケルアック
(著),
青山 南
(翻訳)
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安住に否を突きつけ、自由を夢見て終わらない旅に向かう若者たち。ビート・ジェネレーションの誕生を告げ、その後のあらゆる文化に決定的な影響を与えつづけた不滅の青春の書が半世紀ぶりの新訳で甦る。
- 本の長さ524ページ
- 言語英語, 日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2010/6/4
- 寸法10.67 x 2.29 x 14.73 cm
- ISBN-104309463347
- ISBN-13978-4309463346
- Lexile指数940L
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商品の説明
著者について
ジャック・ケルアック
1922-69年。マサチューセッツ州生まれ。大学中退後、海軍に入隊するがすぐに除隊、47年から大陸横断の旅をはじめる。57年本書刊行、一躍文壇の寵児となる。『地下街の人びと』『孤独な旅人』『荒涼天使たち』など。
1922-69年。マサチューセッツ州生まれ。大学中退後、海軍に入隊するがすぐに除隊、47年から大陸横断の旅をはじめる。57年本書刊行、一躍文壇の寵児となる。『地下街の人びと』『孤独な旅人』『荒涼天使たち』など。
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社; Illustrated版 (2010/6/4)
- 発売日 : 2010/6/4
- 言語 : 英語, 日本語
- 文庫 : 524ページ
- ISBN-10 : 4309463347
- ISBN-13 : 978-4309463346
- 寸法 : 10.67 x 2.29 x 14.73 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 42,583位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 151位河出文庫
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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2023年3月20日に日本でレビュー済み
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作品はすばらしい すすめの一冊
2022年3月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
作者の言葉の豊かさに脱帽。世の中にはこんな才能ある人がいるのですね。40代で亡くなられたのが惜しい。
2019年8月7日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
一言でいうと破滅の物語だ。
主人公はコロンビア大学中退後離婚し父親を亡くした若者だ。
生きるあてもなくディーンという親友とアメリカを放浪する。
ディーンの人生は悲惨だ。
ろくでなしの父親に捨てられ盗みを覚え少年院で暮らし
大人になってからも手癖は悪く女にもだらしなく酒とドラッグに溺れる。
典型的な地に足つかない風来坊だ。
普通の暮らしからひたすら逃げているのだろう。
人格は躁病型だ。
のべつまくなし意味の無い言葉を羅列する。
これも普通からの逃亡だろう。
現実を直視出来ないのだ。
ドロップアウトした者が自分より悲惨な人間に親近感を覚えるのはよくある。
落ち着くのだ。
だが、待っているのは破滅だ。
最後に辿り着いたメキシコで赤痢に罹り高熱を出した主人公をディーンは捨て去る。
これが結果的には良かった。
その後、ニューヨークでディーンと再会した時、主人公は友人とキャデラックに乗りデューク・エリントンのコンサートに行く途中だった。
友人はボロボロの身なりの言葉もまともに喋れない狂ったディーンが同行することを嫌がった。
主人公は仕方なくその場にディーンを置き去りにした。
それがディーンと会った最後になった。
結局、主人公がディーンを見捨てた形になった。
だが、最後まで運命を共にしていたら主人公も破滅していただろう。
「なまじかけるな薄情け」という。
結局、主人公は才能のある甘ちゃんの文学青年だった。
この小説に人生を変えられたと言ったディランも根本的にはそうなのではないだろうか。
主人公はコロンビア大学中退後離婚し父親を亡くした若者だ。
生きるあてもなくディーンという親友とアメリカを放浪する。
ディーンの人生は悲惨だ。
ろくでなしの父親に捨てられ盗みを覚え少年院で暮らし
大人になってからも手癖は悪く女にもだらしなく酒とドラッグに溺れる。
典型的な地に足つかない風来坊だ。
普通の暮らしからひたすら逃げているのだろう。
人格は躁病型だ。
のべつまくなし意味の無い言葉を羅列する。
これも普通からの逃亡だろう。
現実を直視出来ないのだ。
ドロップアウトした者が自分より悲惨な人間に親近感を覚えるのはよくある。
落ち着くのだ。
だが、待っているのは破滅だ。
最後に辿り着いたメキシコで赤痢に罹り高熱を出した主人公をディーンは捨て去る。
これが結果的には良かった。
その後、ニューヨークでディーンと再会した時、主人公は友人とキャデラックに乗りデューク・エリントンのコンサートに行く途中だった。
友人はボロボロの身なりの言葉もまともに喋れない狂ったディーンが同行することを嫌がった。
主人公は仕方なくその場にディーンを置き去りにした。
それがディーンと会った最後になった。
結局、主人公がディーンを見捨てた形になった。
だが、最後まで運命を共にしていたら主人公も破滅していただろう。
「なまじかけるな薄情け」という。
結局、主人公は才能のある甘ちゃんの文学青年だった。
この小説に人生を変えられたと言ったディランも根本的にはそうなのではないだろうか。
2023年12月5日に日本でレビュー済み
ストーリーは分かりやすく恋愛的な展開や事件があるわけでもなく、基本、主人公サルと悪友ディーンがアメリカ大陸を忙しなく移動し、途中、狂った騒がしい夜が描かれるといったシーンが続くので読んでいて退屈に感じる人は多いと思います。
私は本作の重要な要素である「ビート・ジェネレーション」は生きる指針が見つからず消耗していった様々な人々を描いていて、ディーンやサルがその不安を忘れるために一時の享楽にすがっているように思え、作品が何とも物悲しくも感じられました。
取り留めがないストーリーなので本作の魅力を捉えづらいとは思いますが、アメリカの1950年頃の時代背景を知るとともに後のヒッピームーブメントの先駆けとなる価値観の変化の胎動を感じるどこか物悲しくもあり、どこか前向きなエネルギーも感じるとても味わい深い作品でした。
私は本作の重要な要素である「ビート・ジェネレーション」は生きる指針が見つからず消耗していった様々な人々を描いていて、ディーンやサルがその不安を忘れるために一時の享楽にすがっているように思え、作品が何とも物悲しくも感じられました。
取り留めがないストーリーなので本作の魅力を捉えづらいとは思いますが、アメリカの1950年頃の時代背景を知るとともに後のヒッピームーブメントの先駆けとなる価値観の変化の胎動を感じるどこか物悲しくもあり、どこか前向きなエネルギーも感じるとても味わい深い作品でした。
2017年6月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「聖なるマヌケ」なディーンと、ぼく(サル)のふたり旅。
最後は、別々の人生の道に分かれて去る。
ぼくは自分の「影」が消えたように感じ、
ディーンのことばかり考えている場面で、終わります。
その青春の旅路は重い荷を背負った巡礼者のように
行きつ戻りつ、ビートな(くたびれる)旅でした。
その旅がたどった道を、地名と(乗り物)でたどると、
第1部:
ニューヨーク ⇒(バス・ヒッチハイクで)⇒ サンフランシスコ ⇒ ロサンジェルス ⇒ ベイカーズフィールドに逆戻り ⇒(バスで)⇒ ニューヨーク ⇒ パターソン
第2部:
(車で)⇒ ニューヨーク ⇒ ニューオリンズ ⇒(バスで)⇒ ニューヨーク
第3部:
ニューヨーク ⇒(バスで)⇒ デンヴァー ⇒ サンフランシスコ ⇒ サクラメント ⇒(キャデラックで)⇒ シカゴ ⇒(バスで)⇒ デトロイト ⇒(シェアライドで)⇒ ニューヨーク ⇒ ロングアイランド
第4部:
マンハッタン ⇒(バスで)⇒ ワシントンDC ⇒ アッシュランド ⇒ シンシナティ ⇒ セントルイス ⇒ デンヴァー ⇒(フォードで)⇒ ラレード(国境) ⇒ メキシコ・シティ
第5部:
ディーン: ⇒ ニューヨーク
サル: ⇒ ニューヨーク ⇒ サンフランシスコ
「おまえはアメリカの暗い道(ロード)を徒歩で行く巡礼を最後はつづけなさい、
という意味だったのか?」(487頁)。
「とほでいく」?!
広大なアメリカとメキシコを徒歩で行くなんて、巡礼の道のよう。
ケルアック自筆の『オン・ザ・ロード』表紙イメージの写真(501頁)
を見ると、確かに、歩いている、徒歩で!
ほとんど車が通らないような、長い一直線の田舎道の上をとぼとぼと。
親指も上げてないので、止まってくれる車もないようだ。とほほ。
こんな旅の途中でできた、たくさんのともだち。
この物語の最後では、みんな消えてどこかへ行ってしまった。
ビートのきいたジャズがまだ耳の中に残ってビンビン響いているというのに。
最後は、別々の人生の道に分かれて去る。
ぼくは自分の「影」が消えたように感じ、
ディーンのことばかり考えている場面で、終わります。
その青春の旅路は重い荷を背負った巡礼者のように
行きつ戻りつ、ビートな(くたびれる)旅でした。
その旅がたどった道を、地名と(乗り物)でたどると、
第1部:
ニューヨーク ⇒(バス・ヒッチハイクで)⇒ サンフランシスコ ⇒ ロサンジェルス ⇒ ベイカーズフィールドに逆戻り ⇒(バスで)⇒ ニューヨーク ⇒ パターソン
第2部:
(車で)⇒ ニューヨーク ⇒ ニューオリンズ ⇒(バスで)⇒ ニューヨーク
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ニューヨーク ⇒(バスで)⇒ デンヴァー ⇒ サンフランシスコ ⇒ サクラメント ⇒(キャデラックで)⇒ シカゴ ⇒(バスで)⇒ デトロイト ⇒(シェアライドで)⇒ ニューヨーク ⇒ ロングアイランド
第4部:
マンハッタン ⇒(バスで)⇒ ワシントンDC ⇒ アッシュランド ⇒ シンシナティ ⇒ セントルイス ⇒ デンヴァー ⇒(フォードで)⇒ ラレード(国境) ⇒ メキシコ・シティ
第5部:
ディーン: ⇒ ニューヨーク
サル: ⇒ ニューヨーク ⇒ サンフランシスコ
「おまえはアメリカの暗い道(ロード)を徒歩で行く巡礼を最後はつづけなさい、
という意味だったのか?」(487頁)。
「とほでいく」?!
広大なアメリカとメキシコを徒歩で行くなんて、巡礼の道のよう。
ケルアック自筆の『オン・ザ・ロード』表紙イメージの写真(501頁)
を見ると、確かに、歩いている、徒歩で!
ほとんど車が通らないような、長い一直線の田舎道の上をとぼとぼと。
親指も上げてないので、止まってくれる車もないようだ。とほほ。
こんな旅の途中でできた、たくさんのともだち。
この物語の最後では、みんな消えてどこかへ行ってしまった。
ビートのきいたジャズがまだ耳の中に残ってビンビン響いているというのに。
2019年5月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
"やつこそ、ビートだ。ビーティフィク(至福)の根っこであり、魂だ。"人類初の人工衛星がソ連で打ち上げられ、日本初の原子の火が灯った年にアメリカで発刊され、ビートジェネレーションの聖典として話題になった本書は"みんなひとりだと思っている。(中略)でも。ワインをかこむと、みんな、楽しかったな"と著者が述べている様に、仲間との旅という非日常の普遍的な魅力を伝えてくれる。
中でも著者が若い時に亡くした兄を投影しているとも言われる"ペテン師だが、ひとをペテンにかけるのも思いっきり生きたいからで"【興奮しすぎのオカシイやつ】ディーンの奔放さが、このどこから読んでもいい物語にリズムを与えてくれていて、読み進むにつれて何とも不思議な愛おしさを感じさせてくれます。
大量消費時代の繁栄しつつ、冷戦下において画一化、順応を求められた時代のアメリカの空気を感じたい誰か。あるいは"お前の道はなんだい?聖人の道か、狂人の道か、虹の道か、グッピーの道か"カウンターカルチャー好き、ボブ・デュラン好きな誰かにオススメ。
中でも著者が若い時に亡くした兄を投影しているとも言われる"ペテン師だが、ひとをペテンにかけるのも思いっきり生きたいからで"【興奮しすぎのオカシイやつ】ディーンの奔放さが、このどこから読んでもいい物語にリズムを与えてくれていて、読み進むにつれて何とも不思議な愛おしさを感じさせてくれます。
大量消費時代の繁栄しつつ、冷戦下において画一化、順応を求められた時代のアメリカの空気を感じたい誰か。あるいは"お前の道はなんだい?聖人の道か、狂人の道か、虹の道か、グッピーの道か"カウンターカルチャー好き、ボブ・デュラン好きな誰かにオススメ。
2013年4月30日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
なるほど僕自身、『ビート』という言葉からもっと勇ましく、イケイケのHigher and Higherで打っ飛びのイメージを持っていたんだけど、本書の解説によれば、「その言葉はドラックの世界では特別な意味がある。だまされる、とか、ふんだくられる、とか、精神的肉体的に消耗する」ということらしい。
作者のジャック・ケルアックは『ビート・ジェネレーション』の名付け親であり、1957年にアメリカで刊行された本作品はその聖典として今もなお語り継がれている。つまりは新しい読者を獲得し続けていること。私事で言うと、ボブ・ディラン、佐野元春といった主に音楽方面から彼の名前を知ったんだけど、ロックにはビートが不可欠だし、彼らは1960年代のカウンターカルチャーの先駆けだった。
ところで、その時代時代の若者たちに対して、やれ“失われた”“狭間の”“新人類”だの“ゼロ世代”“レス・ザン・ゼロ=ジェネレーションX”とレッテルが張られるのは、それだけ青春という刹那に対して永劫という刻印を押し付けたい人間(近代?)社会の衝動というものがあり、それぞれが代表作という結晶化したもの擁しているんだけど、どれを手にしてもそこに書かれているの僕らにとってかけがえのない人間たち、「なによりも狂ったやつら、狂ったように生き、狂ったようにしゃべり、狂ったように救われたがっている、何でも欲しがるやつら」のこと。時代や世代とは関係なく、誰もが実際に面識があったかどうか知り合いだったかどうか分らないけど、ああ、そんなやつ確かにいたなあ、と思い起こさせる、そんなやつら。
本書のディーン'モリアーティは浮浪者でアル中の息子、煮えたぎる血を抑えられないがゆえにドラックに頼り、ショーペンハウワーの二分法とか口にしながら、「自分が何を言っているのか、ぜんぜんわかっていなかった、要するに、本物の知識人になれるかもしれないという素敵な可能性にとりつかれた少年院出のチンピラ」、一つのホテルで部屋を行き来し複数の恋人たちを逢瀬を重ね、三度結婚し、二度離婚、最後には二度目の妻と二人の赤ん坊と暮らすことになる、そんな「聖なるマヌケ」に惹かれ、一緒に旅するのが本書の「ぼく」、作家のサル・パラダイス。
「こんなぐちゃぐちゃの手書きの夜はぼくらにはとても読めなかった」と溜め息しつつディーンとサルは、目の前にある「でっかく荒々しく膨らんで広がるぼくのアメリカ大陸」を「飛ぶようなものすごいスピードでひゅんひゅんいきながら爆走」していく。
4部構成の本書は分厚いけど、読み進めて行く時間はあっという間だったように気がします。
作者のジャック・ケルアックは『ビート・ジェネレーション』の名付け親であり、1957年にアメリカで刊行された本作品はその聖典として今もなお語り継がれている。つまりは新しい読者を獲得し続けていること。私事で言うと、ボブ・ディラン、佐野元春といった主に音楽方面から彼の名前を知ったんだけど、ロックにはビートが不可欠だし、彼らは1960年代のカウンターカルチャーの先駆けだった。
ところで、その時代時代の若者たちに対して、やれ“失われた”“狭間の”“新人類”だの“ゼロ世代”“レス・ザン・ゼロ=ジェネレーションX”とレッテルが張られるのは、それだけ青春という刹那に対して永劫という刻印を押し付けたい人間(近代?)社会の衝動というものがあり、それぞれが代表作という結晶化したもの擁しているんだけど、どれを手にしてもそこに書かれているの僕らにとってかけがえのない人間たち、「なによりも狂ったやつら、狂ったように生き、狂ったようにしゃべり、狂ったように救われたがっている、何でも欲しがるやつら」のこと。時代や世代とは関係なく、誰もが実際に面識があったかどうか知り合いだったかどうか分らないけど、ああ、そんなやつ確かにいたなあ、と思い起こさせる、そんなやつら。
本書のディーン'モリアーティは浮浪者でアル中の息子、煮えたぎる血を抑えられないがゆえにドラックに頼り、ショーペンハウワーの二分法とか口にしながら、「自分が何を言っているのか、ぜんぜんわかっていなかった、要するに、本物の知識人になれるかもしれないという素敵な可能性にとりつかれた少年院出のチンピラ」、一つのホテルで部屋を行き来し複数の恋人たちを逢瀬を重ね、三度結婚し、二度離婚、最後には二度目の妻と二人の赤ん坊と暮らすことになる、そんな「聖なるマヌケ」に惹かれ、一緒に旅するのが本書の「ぼく」、作家のサル・パラダイス。
「こんなぐちゃぐちゃの手書きの夜はぼくらにはとても読めなかった」と溜め息しつつディーンとサルは、目の前にある「でっかく荒々しく膨らんで広がるぼくのアメリカ大陸」を「飛ぶようなものすごいスピードでひゅんひゅんいきながら爆走」していく。
4部構成の本書は分厚いけど、読み進めて行く時間はあっという間だったように気がします。