米軍兵士の視点から第二次世界大戦ヨーロッパ戦線を日本人が描いたユニークな小説。この手のストーリーを外国作品の翻訳版ではなく、違和感ない自然な日本語で読めることに不思議な感じがする。
末尾に列挙された多数の参考文献等。多くの時間とマンパワーを経て創作された一冊であることが充分に伝わってくる力作。
文章のみからなる描写や専門用語を理解しきれず戸惑うこともあった。最後の最後に個人的には無い方がよかったと思う不思議エピソードもあった。
しかし、作品の重さや完成度からしたらそんなことは些細なことだろう。
実際に存在しそうな馴染みやすいキャラクターと緻密な描写で描かれてており、違和感なくストーリーに入り込める。
登場人物に共感して一緒に気持ちが揺れる。ワクワクしたり、感傷的になったり、当たり前と思い込んでいたものが、置かれた環境によっては容易にそうでなくなるものかもしれず不安になったり葛藤したり・・・。私自身、安全なところにいて真の共感はできないのはわかっている。それでも、戦時中での惨状や緊張から悪魔的な高揚感や快感に囚われて、平和下で築かれた価値観が壊れていくくだりやその逆に精神的に耐えられず戦争神経症に侵されるくだりはショックだったし、新鮮な学びでもあった。
謎解きを標榜しながら謎のインパクトが弱いという指摘もあるかもしれない。しかし、曲でいうサビに当たる第5章まで読めば不可欠な要素である信頼の醸成にしっかり効いている。戦争を国どうしから人間どうしの視点に落とし込んだエピソードは珍しくないのだろうがやはり感銘を受けた。
どのシーンも印象的で小説を読んで高揚感で鳥肌がたつほとゾワゾワしたのはひさしぶりだった。
最後に解説について。大抵解説は不要なものが多いもの。しかし、本書は最後の解説も作品の秀逸ぶりに相応しくしっかりしていて、私には新たな視点を与えてくれた有益なものだった。
読んで損無しの一冊だと思う。
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戦場のコックたち 単行本 – 2015/8/29
深緑 野分
(著)
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購入オプションとあわせ買い
1944年6月、ノルマンディー上陸作戦が僕らの初陣だった。特技兵(コック)でも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ。新兵ティムは、冷静沈着なリーダーのエド、お調子者のディエゴ、調達の名人ライナスらとともに、度々戦場や基地で奇妙な事件に遭遇する。不思議な謎を見事に解き明かすのは、普段はおとなしいエドだった。忽然と消え失せた600箱の粉末卵の謎、オランダの民家で起きた夫婦怪死事件など、戦場の「日常の謎」を連作形式で描く、青春ミステリ長編。
- 本の長さ349ページ
- 言語日本語
- 出版社東京創元社
- 発売日2015/8/29
- ISBN-104488027504
- ISBN-13978-4488027506
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登録情報
- 出版社 : 東京創元社 (2015/8/29)
- 発売日 : 2015/8/29
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 349ページ
- ISBN-10 : 4488027504
- ISBN-13 : 978-4488027506
- Amazon 売れ筋ランキング: - 133,675位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
- - 783位ミステリー・サスペンス・ハードボイルド (本)
- カスタマーレビュー:
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4 星
謎解きだけでもなく,反戦や戒めだけでもなく
※以下の内容には【ネタバレ】が含まれる可能性があります極秘で回収される大量のパラシュートや,消えた大量の食材(おいしくない)など,舞台や背景に戦争はあるものの,前半は確かに『戦場の”日常の謎”』で進むのですが,主人公をはじめ,身も心も壊れていく仲間たちや巻き込まれる街や市民,さらには…と,重々しさを増し,非日常へ傾いていく様子は,よくある謎解きとはだいぶ違って映ります.また,徐々に兵たちが追い込まれていく中,それでも何かを口にすることで落ち着き,わずかでも安らぎを取り戻す様子には,極限状態での人間の本能が覗き見えた感覚にも.このほか,待ち望んだ帰郷のはずが,戦地とはあまりにも異なる光景に虚しさを覚え,温もりを噛みしめながらも緊張が抜けず,後ろめたさに苛まれる主人公に胸が痛む一方,幼い日,そして送り出してくれた時と同じ,祖母の厳しくも優しい振る舞いが印象的です.戦争が生み出した憎しみや愚かさ,凄惨な出来事,兵士たちの苦しみと四十数年後など,とても多くの『顔』を持つ作品のようで,それでもただ反戦や戒めを訴えるものでもなく,喜びも悲しみも,あの時,彼らだけが見たものを少しだけですが知ることができたようです.ただ,この内容なら,カバー絵や帯はもうちょっと違っていても良かった気がしました.
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上位レビュー、対象国: 日本
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2021年8月25日に日本でレビュー済み
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2021年10月12日に日本でレビュー済み
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まず本の状態について商品説明通りの良いものでした
内容については個人的にヨーロッパ戦史に詳しかったので
各戦線のエピソードをうまく取り入れて一つの物語として
うまく作り上げたと感心しました
しかしながらヨーロッパ戦史にそれほど詳しくない方等には
どのように捉えられるのか、そしてこの本を日本で出版する
意味はどのあたりにあるのか考えてしまいます
内容については個人的にヨーロッパ戦史に詳しかったので
各戦線のエピソードをうまく取り入れて一つの物語として
うまく作り上げたと感心しました
しかしながらヨーロッパ戦史にそれほど詳しくない方等には
どのように捉えられるのか、そしてこの本を日本で出版する
意味はどのあたりにあるのか考えてしまいます
2021年3月31日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
第二次世界大戦のアメリカ軍のコックが主人公です。ヨーロッパ戦線をドイツに向かって進む。ユダヤ人の収容施設
の悲惨な光景。次々と戦友が亡くなっていく。今 中国のウイグル人の拘束を聞くと 本の描写とかぶります。
最後に生きてうちに帰れて おばあちゃんに肩をたたかれる。最後まで読めてよかった! と思う本です。
の悲惨な光景。次々と戦友が亡くなっていく。今 中国のウイグル人の拘束を聞くと 本の描写とかぶります。
最後に生きてうちに帰れて おばあちゃんに肩をたたかれる。最後まで読めてよかった! と思う本です。
2020年1月4日に日本でレビュー済み
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不思議な作家さんですね
文章が翻訳小説みたい
内容も「ノルマンディー上陸」で、アメリカ・イギリス側の人がこぞって題材にするやつです
軍隊のネタもかなり細かく調べているので言われないと日本人が書いた小説とはわからないくらいです
デビュー当時の村上春樹みたいと例えば誉めすぎか?
村上春樹との共通点は文章が特殊なので合わない人には合わない
私は村上春樹は好きだが、この作者の文章のリズムが嫌い
気になった人は是非一読を…
文章が翻訳小説みたい
内容も「ノルマンディー上陸」で、アメリカ・イギリス側の人がこぞって題材にするやつです
軍隊のネタもかなり細かく調べているので言われないと日本人が書いた小説とはわからないくらいです
デビュー当時の村上春樹みたいと例えば誉めすぎか?
村上春樹との共通点は文章が特殊なので合わない人には合わない
私は村上春樹は好きだが、この作者の文章のリズムが嫌い
気になった人は是非一読を…
2019年7月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
『ベルリンは晴れているか』が素晴らしかったので、他の作品も読んでみた。
本作にも圧倒された。
1942年に志願兵としてヨーロッパ戦線に投入された20歳前後のアメリカの若者の話である。
空挺部隊に配属されるが、料理好きの主人公は料理兵を希望する。
軍隊における料理兵は、チキンと軽蔑されている。
その主人公が、ノルマンディー上陸作戦でフランスに降下してから、ドイツ降伏までの物語である。
本書は、戦争小説であり、青春小説であり、ミステリーでもある。
ミステリーというのは、小さな謎が次々と起こり、主人公の親友を軸に、その謎を解いていく話の連続になっている。
その謎の解決が、爽快であったりもするが、戦争ならではの重いリアリティ、やりきれなさに満ちていたりする。
それにしても、この作者は戦場の軍隊の若造どもの心情を、どうしてこれほどまでにリアリティを持って描けるのだろう。
戦争場面のディテールもリアリティに満ちているが、それはあとがきを読んで腑に落ちた。
史実をかなりの程度下敷きにしており、それを描いたドキュメンタリーや映画もたくさん作られているからである。
が、この若造たちの心情は、作者ならではの想像力と創造力以外ではあり得ない。
大したものだ。
作者は、高校を卒業してパートの書店員を経て専業作家になったという。
今後の作品が楽しみである。
本作にも圧倒された。
1942年に志願兵としてヨーロッパ戦線に投入された20歳前後のアメリカの若者の話である。
空挺部隊に配属されるが、料理好きの主人公は料理兵を希望する。
軍隊における料理兵は、チキンと軽蔑されている。
その主人公が、ノルマンディー上陸作戦でフランスに降下してから、ドイツ降伏までの物語である。
本書は、戦争小説であり、青春小説であり、ミステリーでもある。
ミステリーというのは、小さな謎が次々と起こり、主人公の親友を軸に、その謎を解いていく話の連続になっている。
その謎の解決が、爽快であったりもするが、戦争ならではの重いリアリティ、やりきれなさに満ちていたりする。
それにしても、この作者は戦場の軍隊の若造どもの心情を、どうしてこれほどまでにリアリティを持って描けるのだろう。
戦争場面のディテールもリアリティに満ちているが、それはあとがきを読んで腑に落ちた。
史実をかなりの程度下敷きにしており、それを描いたドキュメンタリーや映画もたくさん作られているからである。
が、この若造たちの心情は、作者ならではの想像力と創造力以外ではあり得ない。
大したものだ。
作者は、高校を卒業してパートの書店員を経て専業作家になったという。
今後の作品が楽しみである。
2019年8月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
精鋭アメリカ第101空挺師団の特技兵(コック)を主人公とした戦場の「日常の謎」を解く連作形式の長編ミステリー。
バンドオブ・ブラザースを彷彿とさせるが、参考文献として挙げられており、参考にしているようだ。
筆者の「ベルリンは晴れているか」も読了したが、本作の方が戦場の過酷さ、主人公たちの葛藤が描かれており完成度が高いと感じた。「日常の謎」も短編の方が合うと思う。
次はどんな作品を書くのか、楽しみな作家と知り合うことができた。
バンドオブ・ブラザースを彷彿とさせるが、参考文献として挙げられており、参考にしているようだ。
筆者の「ベルリンは晴れているか」も読了したが、本作の方が戦場の過酷さ、主人公たちの葛藤が描かれており完成度が高いと感じた。「日常の謎」も短編の方が合うと思う。
次はどんな作品を書くのか、楽しみな作家と知り合うことができた。
2020年10月18日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
とにかく描写が細やかで世界観が確立されています。ミステリ自体はどんでん返しのようなものではないですが、戦争の段階が進むにつれシリアスになっていく登場人物と環境の表現にどんどん引き込まれました。
本を読み終えて驚いたのは、ほとんど恐怖に近いほど絶対に戦争を起こしてはいけないと強く感じていることでした。
いつぞや議員が「土地を取り返すために戦争をするしかないのではないか」と発言し、大問題になったことがありました。戦争を生身の経験として知らない世代の私は「軽薄だな、何を言ってるんだろう」とは思いはするものの発言に対する怒りや事の重大さの認識をいまひとつ欠いていた程度の人間です。
しかしこの本を読んだ後、もちろんそういった意図も表現も本作には無かったと思いますが、戦争のもたらす底のない暗闇、人間の破壊を生々しく感じ、初めて心から戦争を怖ろしいと思ったのです。
これまでいくつもの映画や本で、もっと直接的な残忍さや悲愴さに出会っていたと思います。本作が何をもって私の中でそれらを凌いだのかは分かりませんが、「戦争を起こしてはいけない」という当たり前の感情を強く抱いた点でも、おすすめしたい一作です。
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いつぞや議員が「土地を取り返すために戦争をするしかないのではないか」と発言し、大問題になったことがありました。戦争を生身の経験として知らない世代の私は「軽薄だな、何を言ってるんだろう」とは思いはするものの発言に対する怒りや事の重大さの認識をいまひとつ欠いていた程度の人間です。
しかしこの本を読んだ後、もちろんそういった意図も表現も本作には無かったと思いますが、戦争のもたらす底のない暗闇、人間の破壊を生々しく感じ、初めて心から戦争を怖ろしいと思ったのです。
これまでいくつもの映画や本で、もっと直接的な残忍さや悲愴さに出会っていたと思います。本作が何をもって私の中でそれらを凌いだのかは分かりませんが、「戦争を起こしてはいけない」という当たり前の感情を強く抱いた点でも、おすすめしたい一作です。