こんな事を言ったら歴史に詳しい方から笑われるかもしれないが、私は嘗て、豊臣秀次は残酷極まりない恐ろしい人物だと思っていた。
何故なら、私が初めて秀次を知ったのは「仏法僧」(『雨月物語』)だったからである。
ここに描かれた秀次像(正確に言えば秀次の亡霊像)は正しく「殺生関白」そのものだ。
勿論、今では秀次を単なる暴君と思っている方はいないであろうが、恐らく『雨月物語』が書かれた当時の彼のイメージはこのようなものだったのであろう。
だが、それでは一体、豊臣秀次の真の姿は何処にあるのであろうか。
秀吉に翻弄された「悲劇の人」なのか、或いは「残虐な異端児」なのか…。
そんな疑問を持ったなら、是非とも本書を手に取って頂きたい。
ここには、同情や色眼鏡といった先入観なしの秀次像が描かれているのである。
さて、この「人物叢書シリーズ」には全てに共通して言える事なのだが、生い立ちから没するまでの克明な伝記であるのみならず、時代背景や環境、周辺の人物達等の紹介と共に様々な先行研究の考察も含んでいる。
そして本書も豊臣家の系譜に始まり、秀次の生涯、「秀次事件」とも称される自刃の分析、更には事件に伴って三条河原で斬首された近親者達について解説した上で、改めて“創作された秀次像”についても言及しているのだ。
嘗て『雨月物語』に惑わされた私にとっては真実を知る上でも必読の一冊であったと同時に、既に正確な知識をお持ちの方にとっても有意義な一冊となってくれるに違いない。
因みに、取り分け興味深かったのは、秀次の二つの肖像画に着目している所である。
私達がよく知っている瑞泉寺増の秀次像は歴史書や美術書にも頻繁にお目見えするが、実はこの有名な作品は“悪意”を以って描かれた可能性がある事を指摘しており、寧ろ余り知られていない地蔵院蔵の穏やかな肖像画こそが真実に近いのではないかというのである。
「歴史は勝者が作る」事は定説だが、これは何も文書記録に限ったものではなく芸術作品に関しても同様であり、今一度冷静に判断する必要性がある事を教えられたように思う。
また、本書の優れている所をもう一点付け加えるならば、その信頼性の高さだ。
本書は、一次史料だけを手掛かりに、そこから導かれる推論を提示するのみに留めている。
突飛な新説や大胆な憶測は一切ない。
勿論、その分斬新さはないかもしれないが、伝記として、研究書として、そして予習にも復習にも活用出来る解説書として実に有用であり、誠実な一冊であった。
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豊臣秀次 (人物叢書 新装版) 単行本 – 2015/2/23
藤田 恒春
(著)
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織豊時代の武将・関白。秀頼誕生後、「秀次事件」で高野山に果てた、その死の真相と影響を探り、叔父秀吉に翻弄された生涯を描く。
- 本の長さ264ページ
- 言語日本語
- 出版社吉川弘文館
- 発売日2015/2/23
- ISBN-104642052739
- ISBN-13978-4642052733
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登録情報
- 出版社 : 吉川弘文館 (2015/2/23)
- 発売日 : 2015/2/23
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 264ページ
- ISBN-10 : 4642052739
- ISBN-13 : 978-4642052733
- Amazon 売れ筋ランキング: - 547,477位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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2015年10月20日に日本でレビュー済み
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徹底して一次史料だけにもとづいて浮き彫りとなった秀次の生涯。
他に例をみないほどの安定感と信頼性に富む名著だと思う。
これからも秀次研究の基本中の基本の書物として、ながく読み継がれていくことだろう。
それにしても、秀次の生涯とは何だったのか。本書を手にした人は、冷静に考え込んでしまうことになるだろう。
他に例をみないほどの安定感と信頼性に富む名著だと思う。
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それにしても、秀次の生涯とは何だったのか。本書を手にした人は、冷静に考え込んでしまうことになるだろう。
2016年8月30日に日本でレビュー済み
長年、豊臣秀次を研究してきた碩学による1冊で、堅実な考証などから秀次の真の姿があらわれる名著で、調べてもわからないような切腹に妙な評価を与えていないのが良いように思った次第。
2015年4月9日に日本でレビュー済み
織豊時代の武将・関白。秀頼誕生後、「秀次事件」で高野山に果てた、その死の真相と影響を探り、叔父秀吉に翻弄された生涯を描く。
最高の歴史書でした!
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